即死回避持ち転生者、自分の身を顧みず戦ってたら部下の妖達が盛大に曇った 作:⅓夜城
「ん…」
「むにゃ…」
「すぅ…すぅ…」
「……暑っちぃ」
どうも。真です。現在僕は真白、金剛、琴華の3人に纏わりつかれて布団に寝転がっています。正確には金剛が上下逆さまになって右足を俺の体の上に乗せ、真白と琴華が両腕を抱いてきている状況です。
…なんでこんなことになってるのか説明するには、少し時を遡る必要がある。
◇
「薄明以下4名、帰還しました」
「ご苦労だった。楽にして良い」
複数のモニターの灯に照らされた司令室の中で、俺は敬礼を解き、休めの姿勢で次の言葉を待つ。
眼前に立つ軍服の男性は、俺の上官にしてこの地域の司令官を務める「
「鬼火に誘われた巫女候補を奪還…その際排除したのは下位の醜妖2体。君の部隊には朝飯前だったか?」
「そうですね、特段困難な任務ではありませんでした」
「なら良い。我々としては君の部隊は保険的意味合いが強かったが…まぁ彼女の能力を考えれば君達が最初に見つけるのは当然だな」
嘆息しながら言う日暮大佐。その目はやや遠くを見ていて…大方
この国では人間ならざるもの…妖と呼ばれる存在にも社会的地位が認められている。より正確には、禊…
ただし同様の権利を持つと言っても、人間と妖じゃ存在が根本から異なる。すると当然、人間にとっての報酬が、妖に対しての報酬にならないこともある。
特に上位妖なんかは何を要求してくるか、数千年経っても人類には想像がつかない。故に、上位妖を擁する組織はその報酬に日々頭を悩ませてるワケだが…
「報酬についてですが、今回は寝床を共にするよう自分に要求してきました」
「何?」
◇
(……いやマジで暑いんだが)
妖の体温は基本的に人間よりも高温だ。冬なら良い、だが今は春も終わりに差し掛かっている……まぁ彼女たちが給料の代わりに要求してきた対価だから、逃げることはしないけどな。
ただそれはそれとして、何で添い寝なんて希望してきたのか。別に俺と寝たからと言って西方国家の
「苦労してるわねぇ」
「…しゃーねぇだろ。こんなんだけど高位妖には変わりないし」
「けど
「いや、俺の意思でコイツらと契約した以上、出来る限り希望に沿う義務がある」
頭上から降ってきた声にそう答える。同時に顔へ被ったのは、金色の尻尾。
「…すいません〈コノハ〉さんや、くすぐったいんですけど」
「あら、妖狐の尻尾なんて中々触れる物では無いのに」
くすくすと笑いながら顔を覗き込んでくる、金色の毛と瞳を備えた
最初は居候させてただけのはずが、今では完全に遊ばれている。
「てかコノハもコノハだよ。なんだってこんなオンボロの家に住み着いてんだ」
俺が祖父から引き継いだこの家は築70年。疑似神木が建材に用いられてるとは言え、至る所にガタが来ている。
基本的に高潔さを好む妖狐が住み着くには、あまり適当な家じゃないと思うんだが。
「妾の祠から1番近い人の営みが此処だからよ」
「それはそうだけどさ…あと神格から妖に堕ちた存在が居座ってると醜妖が寄ってきかねないんですけど」
「此の身から滲む神気は総て妾が掌握しているわ。其の心配は無用よ」
「単純に神素濃度が上がるだけでも寄ってくるんだって…」
この辺り一帯はケムトカミ様の眼護下、加えて国防軍の監視網が敷かれてるとは言え、一切醜妖が居ない訳じゃない。
妖の中でも別格な妖狐の神素など、醜妖にとっては格好の餌だ。ならば当然集まってくるわけで…
と、思った瞬間。
「此れで信用に値する?」
「ッ…!」
コノハが言うと同時、金色の光が彼女の体から放たれた。
—————光が収まり、反射的に閉じていた目を開ける。
視界内で金色の燐光が漂い、付近に
「〈
「やっぱお前チート過ぎるよね」
神庭……神格、或いはそれに準ずる最上位の妖だけが使える結界術だ。邪気を祓い、低位の醜妖は領域の端に触れるだけで消滅する。
んで、コイツはそんな超高度な術を伸びをするついでみたいに展開しやがった。
……お察しの通り、コノハはただの妖狐じゃない。
〈
本来であれば最高位の神社や神域に住まう妖…のはずなんだが…。
どうやらコノハは元々そういった場所が居心地が悪く感じてた上、神格から堕ちたついでに自らの本来の領域に引っ込み、その一番近くに建っている俺の家に居座った……って言うのが事の顛末だ。
うん、かなりふざけた理由だとは思う。
でもまぁ……妖が
実際さっきまでの問答は既に何回か経験済みだったりする。
気が気じゃないのは変わらないけど。
「うぅん……妾もそろそろ眠ろうかしら」
言いながらコノハは俺の頭上にすり寄り、包むようにして体を横たえる。
これで頭部含む全身が温もりに覆われる事になったが……
「さっき俺暑いって言ったのになんで寄ってくるんだよ」
「良いじゃない、それとも此方の方が好み?」
瞬間、コノハの姿が狐から……少女の姿へと変わった。
巫女服を纏い、金色の髪に瞳、尻尾と獣の耳は相変わらずある。
「此れならこの娘たちと同じよ?」
「そう言う問題じゃない」
……なぜ余計眠れなくなりそうな姿に変化したのか。
◇
この星、
神素で構成され、明らかに通常の生物とは一線を画す存在。妖や神と呼ばれる彼ら彼女らは、常に人類と共にあった。
時に争い、時に共存し、国を興し、法を定め、今日まで歴史を紡いできたんだ。
そして俺は、この世界で未知を探求する人間になりたかった。
なぜなら、妖や神なんてものが存在しない世界…地球に住んでいた時の朧げな記憶が俺にはあったからだ。医者曰く、神素による別次元からの記憶の運搬だとか言われたが、個人的には輪廻転生によるものじゃないかと思ってる。
…話が少し逸れた。まぁ地球と違ってこの世界では科学が発展しても人類未到の地はまだまだ広く、毎月のように神素に関する新たな発見がもたらされる。
大森林の奥には何があるのか、古代に存在した文明はなんで滅んだのかなど、肉体年齢相応に、俺の探究心は人一倍強かった。
けど、叶わなかった。……7歳の時、俺の家が神格災害に襲われた。
-第23次
人格を持たず、意志も持たない自然そのもの。殺すことも、壊すことも禁止されていて、国防軍や庇護を与えてくださっている神格達は、ただその行進を遅らせたり進路を逸らすことしかできない。
そんなモノが、頭の上に顕現したんだ。
『直ちに避難してください!』
「逃げるぞ、シン!」
「頭を下げなさい!早く!」
雷が鳴り雨が降りしきる中、
……無銘神が通った跡は、決まって醜妖が大量に発生する。
俺を庇った父は喰われ、母は妹の代わりに妖術を受け、死んだ。
国防軍が来てくれなければ、間違いなく俺も妹も生きてはいない。いや、妹に関しては妖術をの欠片が当たり、今も意識喪失状態にある……13年間もだ。
だから、俺は国防軍に入った。同じ思いをする人を、出来る限り減らすために。
幸い、妖術の才能には恵まれていた。
中でも固有妖術と呼ばれるモノは破格と言っても良い。天が俺に与えてくれたのは、仮称〈即死回復〉————致命傷を受けてから5秒以内に脳活動停止、或いは心停止した場合、即座に心身の全機能が回復する、という極めて有用なモノだった。
この恩恵を活かして戦わなければならない。己の役目を果たすために。
そして、大切な存在と共に生きるために。
深夜の自室で寝息をたてる少女達を眺めながら、そんなことを思うのだった。