即死回避持ち転生者、自分の身を顧みず戦ってたら部下の妖達が盛大に曇った 作:⅓夜城
数日後。
国防軍の軍人であると同時に大学生でもある俺は、普通に大学へと向かっていた。ちなみに学徒兵とかって言う制度はこの国にはない。有用と認められた人間は13歳以上という制限はつくが、それ以外は何ら成人と変わりなく国防軍へ入隊出来る。
もちろん専用の訓練課程に始まり、任務の難易度や殺人を伴う任務に割り当てられないなど考慮はされる。
けど、場合によっては5歳児が完全武装の歩兵、ひいては上位妖にすら勝てる世界だ。
小中学生が軍事に関わるのは地球基準だとかなり違和感があったけど、そういうものだと慣れてしまった。
それから、学生やその他職業と兼任の兵士は基本的にローテーションで任務に当たる。俺は今日は非番ってわけだ。
明確に代わりの効かない奴ならこうもいかないらしいけど、俺は常時待機している必要まではない。
強いて言うなら、先鋒や偵察に最適だから
俺の固有妖術——人間が10歳を迎える頃に発現するその人間だけに許された能力——は、不死まではいかないものの、かなり高い生存性を確保出来るのが大きな利点だ。
なんせ殺すには6秒以上かける必要がある上、悠長にやってたら
気絶させられたりしたらダメだけど、大抵の上位妖は一撃必殺みたいなところあるから意外とここまで生きて来れた。後は————
「なぁ、あそこのクレープ食べて行かない?」
「ダメに決まってるだろう…もう講義まであまり時間ないんだよ?」
後ろで話す紅髪のヤンキー美女と銀髪のイケメン美女……ではなく、金剛と琴華。そして真横でため息を吐く真白。うん、コイツらに命救われてるって言おうとしたけど、なんか癪だな。主に金剛。
ちなみに私服に身を包んだコイツらも、俺と同じ大学に通っている。
人間と共存する誓約———禊を受けた証である腕輪をつけて。
もし仮に地球でケモ耳や角を生やした人間が歩いていたら大騒ぎになっているだろう。だけど、神室ではこれが日常だ。
すれ違う人たちや道行く通行人たちも、真白達に視線を向けはすれど騒いだりはしない。何なら河童とか外見上は人間と全く異なる妖だって普通に居るし。
言うなれば日本人が外国人を見る感覚に近いかもしれない。……あ、それとコノハはお留守番である。
「よぉ相棒。まだ生きてたか」
「んな簡単にくたばってたまるかよ」
大学に着くと、学部が違う真白達と分かれて友人である〈
茶髪に同じ色の瞳を持つ春人も、同じく国防軍の軍人兼大学生だが、偵察や哨戒に長けてる俺とは対照的に、正面戦闘に於いて無類の強さを持っている。刀一本で。
強力な妖術もだが、コイツの場合刀を用いた攻撃のバリエーションが豊富すぎる。正直、真っ向からぶつかって勝てる奴はあんまり多くないレベルだ。
それから酔っ払った時に
イナリカミ様は真和連邦建国の時から庇護を与えて下さってる、正真正銘、最上位の神格だ。
強いと言っても、単独で国家転覆が出来るとかではない春人個人に加護を与えるなどあり得ない、多分。
「ねみぃー」
……あくびをしながら隣を歩くその姿に、凄まじい風格を感じるのは気のせいだろうか。
『本日の央州の神素濃度は、
スマホでニュース番組を流しながら、大学の門をくぐり空を見上げる。
すると、雲の上に浮かぶ
「急に空見上げてどうし……ん?あぁ〈
「定期的な配置入れ替えでこの上通るって昨日やってたから、いるかなって」
「なるほどね」
大気の影響で若干霞んで見える白銀色のそれは、遠目に見たらゆっくりだが実際は時速数百kmの速度で移動しているはずだ。
空中機動都市。神格災害から逃れるために造り出された、空飛ぶ領土。
この世界の昔の人の発想は中々ぶっ飛んでると、実際に目にするたびに思う。
無論他にも、海を漂う海上遊弋都市に、全ての大陸及び主要な島を繋ぐユニバーサルリニアレール、果ては軌道エレベーターなどなど…
俺がこれらを知った当初は、神や妖が存在する世界にSF詰め込みすぎだろって思ったさ。でも、ある意味必然……まぁ今は良いや。
バサバサと羽ばたくような音が背後から聞こえたので、後ろを振り返る。
「おはようお二人さん、今日一限目入れてるん?」
「おは、
「なるなる、なら一緒に行こかな」
振り返った先に居たのは、もう1人の友人、加賀見。その背中からは翼が生え、頭部は人間のものではない。
春人に関しては軍で既に顔を合わせていたこともあってなんだかんだ新歓の時に仲良くなったが、〈鴉天狗〉である加賀見と仲良くなったのは割と最近だ。
俺と春人の任務先にあった天狗の
ちなみに、真和連邦に限らず神室の国々は領土であってもそこが有効支配下にあるとは限らない。
詳しくは割愛するが、国家の領土は人類居住領域と未管理領域の2つに大別され、街を一歩出た先に禊を受けていない自然妖や野生動物が大量にいる場所はいくつもある。
そして、妖の中には禊を受けたからと言って人間の街で暮らすことに忌避感を覚える者も居る。だから、未管理領域には古代から続く——と言ってもネット環境などは備わっている——妖の集落などがあったりするんだ。
「にしても腹減ったな」
「朝飯食べてって来おへんかったんか」
「朝イチに任務出てたんでね……家帰ってシャワー浴びたらもう時間なかった」
「…それは御愁傷様やな」
腹を鳴らし、情けない声を出す春人。確か今朝は省境を接する
とりあえず、講義までまだ時間はある。ならば先に食堂で腹ごしらえをしてもらうのも手だ。
「二限まではまだまだ時間あるから食堂行くか」
「お、ならボクもついてくで」
「2人とも……ありがとう。奢ってくれるなんて」
「待て誰もそんなことは言ってねぇ」
やっぱ行くのやめようかな。
◇
「あぁーーー生き返るーーー」
「サンドイッチ2個でオーバーリアクション過ぎるやろ」
「男子大学生なんてこんなもんだ。俺と加賀見が食細いだけで」
「そんなもんかぁ…?」
加賀見が呆れた眼差しを向けるのも気にせず、サンドイッチを頬張る春人。相当腹が減っていたらしく、一気に2個同時に……いや3個同時に食いやがった……
「えぇ…一気に3個かいな……ま、まぁええわ。そや真、聞きたいことあってんけど」
「どした?」
「なんかウチの族長が、郷に来た人間を呼んでこい言うててんな。せやからどっかで時間空いてへんかなって。多分お堅い式とちゃうから、気楽に答えてや」
「そうだな。俺は次の当直が2日後だから、それが終わったらで良いか?」
「おう、構わへん。んで春人は……飲み込むのも待っとくな?」
見やると、春人は必死に口を動かしどうにか咀嚼しようともがいていた。
全く加減をしろ—————
『緊急招集、緊急招集。司令部より、
……何?