即死回避持ち転生者、自分の身を顧みず戦ってたら部下の妖達が盛大に曇った 作:⅓夜城
「ハァッ!!」
金剛が大槍を振るうと同時、轟音が響き複数の黒い巨狼がまとめて宙を舞う。木々をへし折りながら吹き飛んでいった骸に、されど、迫り来る
「金剛前に出過ぎだ!琴華は———チッ!」
「Gyuooooo‼︎‼︎‼︎‼︎」
咆哮から少し遅れて、無数の影の手が俺へと向かってきた。
咄嗟に神素で強化した脚で地面を蹴り、空中へと退避。自由落下に入りつつ、電磁拳銃で影の手を撃ち抜いていく。
『勢いを削ぐ、ブレイクアロー発射。巻き込まれるなよ』
着地と同時、無線からそのような声が響き、上空のヘリから2発のミサイルが黒い群に撃ち込まれる。
—————爆炎。
途端に黒い群はその侵攻を止め、俺たちは体勢を立て直す事が出来た。
「クソ…どれだけ増えるんだ」
「真、左翼が押されてる。琴華が援護に行ってるけどここまで数が多いと…」
「あぁ、不味いな」
真白に応えながら俺は顎から垂れる汗を拭い、眼前でこちらを睨む狼共を見据える。
……なぜこんな事になっているのか、少し時を遡ろう。
◇
…基地の
数分間で広々とした部屋に所狭しと詰め込まれると、照明が暗くなり壇上が光に照らされる。
「全員揃ったな。非番の者も応じてくれて感謝する。…早速本題に入ろう」
壇上の上で、険しい顔をしつつ切り出す日暮大佐。
同時にホログラムディスプレイが日暮大佐の横に投影され、目標付近の地形が立体的に映し出された。
「時刻は今から約2時間前。国土監察庁のセンサー網が、ここから80km南にある
日暮大佐がディスプレイを指差すと、ホログラムが拡大され、背の高い木々の間に佇む複数の黒い巨狼が映し出された。
「
影狼種か、これはまた大物が……
真和連邦が定める妖の武力換算指標で、上から4段階目に位置するコイツは群一つで街一つを壊滅させる事もある。防御力は大したことないんだが……警察機構じゃ阻止は不可能だろう。
「一先ず、河見省司令部は当該個体群に〈フグツ〉のコードネームを割り振った。以後はその呼称で進める。さて、諸君らも知っての通り、影狼種はそれなりに強大な妖だ。知性もかなり高い。だが、これだけなら緊急招集を掛けたりなどしない……フグツは我々に敵対行動を仕掛けてきた」
日暮大佐の声に、軽くざわつくブリーフィングルーム。
ある意味当然と言えば当然だ。普通知性の高い妖は、生まれたばかりであっても真和連邦側から丁寧に説明を行えば、禊を受けることを了承するのが大半だからだ。
だが、今回の影狼群…フグツはどうやら違うらしい。
「監察庁からの報告では、フグツはあろう事か説明官からの情報開示を受けた後に攻撃したらしい。現地対処班による武力威嚇も効果なしだそうだ。以上の事実を以て、事態は我々国防軍に上げられた」
なるほど、よくあると言えばよくある事案だな。
妖の一部には、生まれた瞬間から優越思想を持っているモノも居る。大方フグツもそういった個体だったのだろう。
「フグツが現在居座っている地点は山間部といえど最寄りの民家まで30kmもない。武力行使レベルは弐までとする。場合によっては肆までの行使を許可するが、決して市街地方向へ撃つなよ」
「それから、大まかな作戦の流れはこうだ。先ず薄明班と
◇
『司令部より全班、君崎班が敵首魁と思われる個体と接敵、交戦を開始した。また
「了解…!」
通信を切り、拳銃のマガジンを入れ替える。
空軍まで出てきたか……まさかここまで事態が悪化するとは思わなかった。
任務に出た当初、俺も軍司令部も、影狼の群を相手にするだけで半ば百鬼夜行のような相手をする事になるとは全く想定していなかった。神素濃度の値と総量から想定される規模ではなかったからだ。
だが現実に、大量の影狼が襲ってきている。
機動歩兵達に加え、戦闘ヘリ、真白、琴華、金剛が片端から殲滅しているが、それでも追いつかないほどの量と速度。
……どうにかして耐えなければ。
幸い、弾薬も妖力もまだまだ残っている。やれないことは————
「っぶな!?」
大口を開き、飛びかかってきた影狼を屈んで躱す。
土塊を飛び散らせながらこちらに向き直り、影狼は低く唸り声をあげた。
その瞳は赫怒の如く紅色で……
咄嗟の3連射撃。
弾丸は影狼の右前脚に着弾し、それを弾けさせる。
これが同階級に位置する別の妖だったらこうもいかなかったろうが、ここは影狼の脆さに感謝だ。
「Gyn⁉︎⁉︎⁉︎」
悲鳴をあげて怯む影狼。
この隙を逃す訳にはいかない。そう思い、俺は影狼へと急接近。勢いそのまま、顔面へと妖術を叩き込む。
「連邦弐式戦技———
威力十分。
盛大に顔面が砕けた影狼の胴体へ追撃を入れると、肋骨が折れる感触が脚部装甲を介して足に伝わってきた。
そのまま振り抜き、吹き飛ばす。無論こちらは木々をへし折るほどの威力などあるはずもなく、近場にいた影狼数体を巻き込んで停止するに留まった。
正直もう休憩したいが、今の一連の動作の間に真白達が数十体纏めて葬っている以上、まだまだ休んではいられない…!
「真!」
真白の叫びと共に、背後から別の影狼が飛びかかってきた。
距離は極至近、回避は不可能、ならば!
「クソッ…!」
振り下ろされる前脚に腕部装甲を合わせ、受け流す。…刹那、装甲と爪が擦れ合って火花が散った。
削れたのは向こうの爪だが、冷や汗が出るな。
「Gya⁉︎⁉︎」
「逝ね…!」
なお影狼はまさか受け流されると思っていなかったのか、間抜けな体勢で地面へと落下。姿勢を整えようともがいているそこに、真白の妖術が撃ち込まれた。
……巨大な半透明の白蛇が高速で件の影狼を食い破り、そのまま付近に居た影狼達をまとめて呑み込んでいく。
瞬きの間に俺の周囲へ空白地帯が生じ、真白が駆け寄って来た。背後では彼女の白蛇が未だ暴れ回っているが。
「真!大丈夫!?」
「問題ない!」
現状、俺と真白が居るこの付近はまだマシな方だ。金剛が無双している右翼も同様だろう。だが、琴華が居る左翼は状況が違う。
琴華は神通力と薬学に長けているが、対多殲滅能力では金剛や真白には及ばない。大規模妖術を1発叩き込んでお終いとも出来ない今、彼女は苦戦を強いられている事だろう。
加えて琴華以外にも居るのは小数の機動歩兵だけであり、加えて森林という地理的状況も鑑みると、何処かが突破されていても可笑しくない。
『薄明、左翼は俺達が援護に向かう。ここは任せた』
「了解…!」
『最後に1発だけ置き土産をやろう』
上空のヘリからの通信。
数瞬後、再び爆炎が影狼の群れの只中で上がった。
複数の影狼が上空に打ち上げられ———また爆炎に飲み込まれて神素へと戻っていく。
大量の蒼白い燐光が立ち昇っていく様は、いっそ幻想的とすら思えた。んな事言ってる場合じゃないけど。
『クリティカルヒットだな。よし、では移動する』
「ハハっ…全く…」
軽口を叩きながら頭上から離れるヘリを見送り、俺は視線を下に戻す。
未だ数自体はそこそこ残っているものの、影狼の群は最初の勢いを完全に失っていて、この中央で殲滅が完了するのは時間の問題だ。
出来るだけ早く片付けて、さっさと左翼の援護に向かうべきだろう。
……などと思い、気を一瞬抜いたのが良くなかった。普段なら気付けただろう地中の振動への反応が遅れる。
「真ッ!?!?」
「なんッ…!?」
地中から俺を捉える、無数の影の手。
同時に、俺の左腕が背後から接近していた影狼に噛みちぎられる。
「真!今行————」
「チッ…」
凄まじい痛みが走り、そして、
———————俺の心臓を杭が貫く。
「また———ダ———」
真白の叫びが、徐々に遠ざか……。
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