貞操逆転世界を三大欲求強めに生きるだけ   作:逆転逆転逆転逆転逆転

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6話 まったく、強引なんですから

 

「ん、ぁ、もう、くすぐったいですよ、先輩」

 

 慣れてないからだろう、先輩の手はぎこちない。

 とはいえ、時間をかければ大丈夫、両手を上げた僕のパジャマは、彼女によって脱がされた。

 ……当然、お風呂から下着はつけていない。

 

 丸裸になった僕は、すっと腕を伸ばして、先輩の細い手を掴んだ。

 そして。

 

「……ぐはー」

 

 そのまま強引に、ベッドへと引っ張る。

 

「あはは、押し倒されちゃいました、せんぱい」

 

 先輩は何も言わない。

 ただ、じっと、僕の身体を見つめている。

 自分がこれから何をすればいいか、分からないとでも言いたげに。

 

 なら、教えてあげよう。

 

「ねえ、先輩」

 

 幸い、教本なら、すぐ隣にあるんだから。

 

「あの絵では、僕をどうしてたんです?

 僕に、なにをしてたんです?」

「……っ」

 

 言った途端、先輩の表情が強張る。

 真っ赤になったその顔は、激しく息を漏らしており、手はぷるぷると震えていた。

 

「いいですよ。

 先輩の好きにしてくれて、したいこと、なんでもゆるしてあげます」

 

 僕は彼女の頬に、そっと手を伸ばす。

 火傷しそうなくらい暖かいほっぺたは、初めて触る。

 

 あと、一息だ。

 

「それとも」

 

 僕は声色を整えるため、一瞬喉を鳴らす。

 そして、すぐに。

 

 

「——せ、せんぱい、急に、なにするんですかっ!」

 い、いや、ちかづかないでくださいっ!」

 

 先輩に向かって、叫んだ。

 

「信じて、たのに。

 先輩はこういうことしないって、う、うぅ」

 

 

「……先輩は、こういう反応の方が、お好みでしょうか?」

 

 その言葉を発した瞬間。

 

「あっ」

 

 先輩を止めていたものが崩れ去る。

 まさに、そんな音がした。

 

 ベッドへと、沈み込む僕。

 溶け合う身体は、僕と先輩を一つにしてしまう。

 

「……まったく、強引なんですから」

 

 最後、彼女の頭を軽く撫でてから、僕はゆっくりと、その目を閉じた。

 

 

 

 

「——ん、朝、かぁ」

 

 カーテンから差す陽の光。

 ……うむ、実に良い朝だ。

 こんな日は、外にショッピングにでも行こうかしら。

 

 なんてね。

 

「ね、せんぱい?」

 

 隣には、先輩がいる。

 いや、正確には隣というか……外側?

 

「せんぱーい? 起きてますかー?

 そんなに抱きしめられたら僕出られないんですけど」

 

 完全にホールドされた手足は動きそうにない。

 仕方なく、僕はどしどしと頭を押しつけて先輩を無理やり起こした。

 

「……あま、はる」

 

 まだ寝ぼけてるのか、先輩は、僕の顔に向かって自分の顔を近づける。

 

 ……んぁ、まだやるのかな、先輩。

 

 そう思って、二回戦の準備をしようと、僕がカーテンに手を伸ばしたときである。

 

「……あ、あ」

 

 先輩が止まった。

 まるで、正気を取り戻したとでも言いたげに、真っ青な顔をして。

 

「せんぱい? すんごい顔色ですが大丈夫ですか?」

 

 心配する僕を無視して、先輩はベッドから立ち上がる。

 もちろん、裸のままで。

 

「トイレ、いく」

 

 そして、先輩は部屋を出ていった。

 口元を手で押さえたその後ろ姿は、なんか、すごい哀愁が漂っていた気がする。

 

 

「……あちゃー」

 

 その後聞こえてきた音は、先輩の名誉のためには割愛しよう。

 

 まぁ、うん、あんだけお酒飲んでたし、こうなっても仕方ないよね。

 ゲロゲロしちゃっても仕方ないよね。

 うんうん、僕はちゃんと理解してますからね、先輩。

 

「大丈夫ですか? 先輩。

 背中、さすってあげます」

 

 数分後に帰ってきた先輩の顔は魂が抜けたようであった。

 これが二日酔いという奴か……お酒、飲まなくてよかったぁ。

 

 そう思いながら、裸の先輩にくっついていたとき。

 ふと、先輩の声が聞こえた。

 

「……ごめ、ん。昨日は、どうかしてた。

 ちがう、べつに。

 あんなことをするつもりじゃ、なかった」

 

 それは、言い訳か、謝罪か、それともその両方か。

 とにかくとんでもないことをやらかしたとでも言いたげな言葉だ。

 

 そして、それに対する僕の反応は。

 

「——え、そうだったんですか?」

「へ?」

 

 もちろん、こうである。

 

「ふふっ、僕は、先輩に期待してたんだけどなー

 実際、昨日の夜は、すっごく満足できましたから」

「……それって、どういう、こと」

 

「だって、言ったじゃないですか」

 

 後ろから、先輩にくっついたまま、僕は彼女の耳元でそっと囁く。

 

「僕は、三大欲求が強めなんですよ?」

 

 何度目かも分からない、その宣言を。

 

「……天春は、こういうこと、よくするの?」

「さぁ、どうでしょうか。

 それを教えるには、少々好感度が足りていないようです。

 なので、もっと仲良ししないと、ですね」

 

 彼女の問いを答えるのは、無粋というやつだろう。

 ……教えてあげるには、時間もないしね。

 

「ふふん、それじゃあ、僕は1限あるのでここらで失礼します。

 ……あ、部活はちゃんと来てくださいよ?

 二日酔いの二人の面倒を見るのは僕なんですから」

 

 僕は彼女にそう告げた後、立ち上がる。

 目指すは部屋の外。

 歩き出した僕はすでにドアノブに手をかけている。

 

「——それじゃあ、また学校で。

 今度はもうちょっと、ロマンチックなのが良いかもですね」

 

 そして、僕は彼女の前から姿を消した。

 ……一糸纏わない、生まれた姿のまま。

 

 ん?

 

「あの、すいません、僕の服は?」

「返さないと、だめ?」

 

 いや駄目だろ。

 

 

 

「先輩、可愛かったな。

 ふふ、久しぶりにあんなに激しくされちゃった」

 

 大学への通学路を歩きながら、僕はボソッと小さな声で呟く。

 

「それに、あの絵、すごかったなあ」

 

 頭に浮かべているのは、先輩のパソコンに入っていた、例のイラスト。

 今思い出せば、あれはただのイラストではなかった。

 

「あ、今度また見せて貰おっと。

 ふふー、自分がでてくる漫画とかすっごくワクワクだもんね」

 

 セリフも、コマ割りもちゃんとしてたし、ストーリーらしきものも存在していた。つまり、あれは漫画なのだろう。完成はまだしていないようだが。

 

「音夢さんは前に小説書いてるって言ってたし、櫻井さんはデザインがすごく上手いんだよね。……ふふ、もしかしたら、すごいこともできるかもしれない」

 

 今までは文芸部という名だけでろくに活動もしていなかったが、花実先輩という最後のピースによって、その状況は変わりそうだ。

 ……まぁ、絵のことは一応みんなには黙っとくけどね。

 少なくとも、しばらくは。

 

 そんなことを考えていたとき。

 不意に、ポケットのスマホがピコンと鳴った。

 ——櫻井さんだ。

 

『今日のお昼も一緒に食べにいくよね?

 なんか、食べたいものとかある?』

『櫻井さんのおすすめでいいですよー!

 楽しみにしてます!』

 

「——ん、よしと」

 

 さっと返信して、僕はまた歩き出した。

 どうやら、今日の楽しみはまだ終わってないようである。

 

 

 これはただ、誰しもに備わった三つの欲求に、ほんの少し、素直になって生きてる僕の話。

 

 そして。

 

 

「美味しいお店、見つけとかないと。

 二人に、取られちゃう前に」

 

「……やっぱ、ねれない。

 天春と一緒じゃないと、寝れない、なんで、こんなの」

 

「……あまはる、あまはる、あまはる」

 

 

 ——それに付随して、徐々に様子がおかしくなっていく少女たちの話である。

 

 

 




まあ冷静に考えて絵の中で可愛い後輩くんを犯す妄想してるだけのエロ漫画知識だけで経験者ぶった無愛想処女オタクでしかない先輩が、天春くんに勝てるわけないんですよ

ということでプロローグ終了。
そしてストックが切れました。
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