地獄のブートキャンプは、容赦なく一週間にわたって続いた。
最初の3日間で、帝国陸海軍から選りすぐられたはずの精鋭たちのプライドは、粉々に叩き割られていた。
朝5時、耳をつんざく起床ラッパが鳴り響いても、あまりの疲労と筋肉痛に布団から出るのを拒む者すら現れた。
だが――そこに待っていたのは、旧日本軍特有の陰湿な連帯責任の鉄拳制裁などではなかった。
「布団とお友だちになりたいお嬢ちゃんがいるぞ! ママのおっぱいが恋しくて泣いているのか、この甘ったれ野郎がッ!」
耳の穴へ直接怒鳴り込まれる、さらに精神をズタボロにする追加の罵詈雑言。
親兄弟、果ては一族郎党の骨の髄まで引き合いに出されて罵倒されれば、血気盛んな帝国軍人として怒りが頂点に達するのは当然であった。
だが、教官たちはその殺気立つ拳を合気道の如く軽くいなし、冷笑とともに地面へ這いつくばらせた。
「怒りがあるならそのガッツを足腰に変えてみせろ! 敵の機関銃に怒鳴り返しても弾は止まらんぞ!」
毎朝、吐瀉物を撒き散らす寸前まで走らされるランニング。
足並みを揃えさせるために歌わされるのは、軍歌などではなく、前世の米軍や自衛隊で歌い継がれてきたリズミカルな「ミリタリー・ケイデンス」であった。
『Mama and Papa were laying in bed!(ママとパパはまだ寝てる!)』
『I was crawling in the mud!(俺は泥水すすってる!)』
『Pick up your rifle, look ahead!(銃を持て! 前を見ろ!)』
朝靄の立ち込める房総の丘陵に、五百名の野太い歌声が木霊する。
怒りをリズムに変え、疲労を叫び声で吹き飛ばすこの現代軍事心理学の調教法は、確実に兵士たちの脳の回路を「精神論の頑固者」から「即応する戦闘機械」へと書き換えていった。
そして4日目からは、地獄の「障害物踏破訓練」が幕を開けた。
数人がかりで一本の重い丸太を肩に担ぎ、息を合わせてひたすらグラウンドを疾走するログ・キャリー。
垂直に聳え立つ木枠の巨大バリケードを、乗り越え。
泥水が張られた地面すれすれに張られた有刺鉄線の下を、銃口を泥に浸けぬよう抱え込み、肘と膝だけで這い進むロークロール。
さらには、ナイフと素手を組み合わせた実戦的近接格闘術――CQCの徹底的な叩き込み。
「……身体が鈍っているな。少し付き合うか」
その過酷極まりないコースへ、作業服の袖をまくった竜宮をはじめ、マスタング、クリームヒルト、アナスタシアの首脳陣も自ら飛び込んでいった。
前世で死線を潜り抜けてきた彼らにとって、この程度の障害物コースはまさに「昔取った杵柄」であった。
若返った十代から二十代の肉体ゆえ、純粋な筋力やスタミナにはまだ未完成の柔らかさがあったものの、重心移動の巧みさと、痛みを無視して身体を動かす精神の図太さにおいては、教官陣すら舌を巻くレベルであった。
特に凄まじかったのは、日独露の血を引く二大女傑――ライヒのクリームヒルトと、イワンのアナスタシアの張り合いであった。
「フン、ロシアの娘さんにしては、少々足元がお留守じゃないか!」
漆黒の軍服を泥で汚しながら、百キロ近い巨大丸太の前端を軽々と担いだクリームヒルトが、プラチナブロンドの髪を振り乱して挑発的に笑い飛ばす。
すると、丸太の後端を肩に食い込ませていたアナスタシアが、碧眼に冷たい炎を宿して即座にやり返した。
「口が減らないな、プロイセンの温室育ち。シベリアの泥濘に比べれば、この程度は砂場の遊びだ!」
ギリギリと音を立てて、アナスタシアが丸太の反対側を力任せに押し上げてみせる。
泥水を跳ね上げ、男顔負けのストライドで並み居る陸軍歩兵たちをごぼう抜きにしていく二人の可憐な少女の姿に、泥濘に這いつくばっていた帝国兵たちは、目を白黒させて絶句するしかなかった。
「……ば、化け物かよ……あの女の子たち……」
「負けてられっか……! あんな小娘に置いていかれて、帝国軍人の看板が背負えるかッ!」
少女たちの超人的な走破性が、叩きのめされていた兵士たちの最後の男の意地と闘争心に火をつけた。
泥にまみれ、歯を食いしばり、有刺鉄線の下を血を流しながら這い進む将兵たち。
その泥まみれの光景を、丸太を担ぎ終えて息を整える竜宮は、銀縁眼鏡を拭いながら静かに見届けていた。
精神論の虚勢は完全に剥ぎ取られた。
残ったのは、泥と汗の中で鍛え上げられた、仲間を信じて過酷な現実を突破する本物の「ガッツ」と「身体感覚」。
一週間のブートキャンプを終えようとする房総の演習場に、旧弊な大日本帝国の軍隊を過去の遺物へと葬り去る、世界最強の「特戦隊」の強靭な骨格が、確かにその産声を上げつつあった。
入門編のブートキャンプで帝国軍人としての虚勢を粉砕された選抜兵たちを待ち受けていたのは、2週目から始まった「近代ゲリラ戦」という名の、底知れぬ泥沼の講義であった。
房総半島の奥深くに広がる鬱蒼とした照葉樹林。
日露戦争以来、大陸の開けた平原での大会戦しか想定してこなかった帝国陸海軍の将兵たちに対し、元グリーンベレーや自衛隊レンジャーの教官陣が叩き込んだのは――前世において米軍を恐怖の底へ叩き落とし、同時に特殊部隊が血を流して洗練させた「ベトナム戦争仕込みのジャングル戦闘術」そのものであった。
「いいか、ウジ虫ども! これから貴様らが足を踏み入れる南方のジャングルでは、見栄えの良い隊列を組んだ奴から順番に頭を撃ち抜かれる!」
グローバル大佐が連れてきた元米特殊部隊の教官が、泥まみれの木立の中から亡霊のように姿を現して怒号を浴びせる。
三週間にわたる密林での特訓は、まさに狂気の沙汰であった。 敵の側背を瞬時に食い破る「L字型・V字型アンブッシュ」。
竹槍や跳躍地雷を用いたブービートラップの設置と、極細のテグス糸を見抜くトラップ探知術。
泥水を全身に塗りたくって体温と匂いを遮断し、シダの葉一枚すら揺らさずに進む「ゴースト・ステップ」。
さらには、地下に掘り抜かれた蜘蛛の巣のようなトンネル陣地に潜み、数倍の敵を翻弄して補給線をズタズタに切り裂く長距離偵察のノウハウ――。
「……信じられん。こんな陰湿で、だが恐ろしいほど隙のない戦い方があったのか」
かつて「正々堂々たる銃剣突撃」を叩き込まれていた陸軍の将校たちが、青ざめた顔で泥にまみれながら戦術ノートに鉛筆を走らせる。
敵を視界に捉える前に仕留め、反撃を受ける前に煙の如く霧散する。
やがて来るべきソロモン諸島やニューギニア、ビルマの熱帯雨林において、何十万もの日本兵を餓死と病魔、そして米軍の火力制圧から救い出すための「絶対生存のジャングル戦術」が、彼らの骨身へと容赦なく刻み込まれていった。
3週間が過ぎる頃には、五百名の将兵たちはもはや別人の如き面構えとなっていた。
軍服の襟章を外し、全身に泥と迷彩を施した彼らは、鬱蒼とした原生林の中で気配を完全に消し去り、教官陣ですら油断すれば背後からナイフを突きつけられかねないほどの「冷酷な狩人」へと脱皮を遂げていたのである。
だが――竜宮が用意したカリキュラムに、息を継ぐ暇など爪の先ほども存在しなかった。
「……全員、よく密林の泥水を飲み干したな」
木立の影から現れた竜宮が、銀縁眼鏡の位置を直しながら冷淡に告げた。
その背後には、房総のコンビナート建設地に突貫で建てられた、コンクリートと煉瓦造りの巨大な模擬市街地――「キルハウス」が不気味に口を開けていた。
「だが、ジャングルを制しただけで満足してもらっては困る。
……現代戦において最も血が流れ、最も多くの死傷者を出す地獄――『市街地戦闘』の講義を始めるぞ」
次なる地獄の幕開けであった。
ドアを蹴破ると同時にスタングレネードを投げ込むダイナミック・エントリー。
角の向こうを安全に索敵する「カッティング・パイ」の足捌き。
窓や屋上に潜む狙撃手(スナイパー)を制圧するための上下階立体クリアリング。
そして、建物の一室一室を、跳弾と爆風を計算に入れながら掃討していく精密なルーム・スイープ――。
平原での突撃しか知らなかった照和の軍人たちが、二十一世紀の特殊部隊が実践する「都市型近接戦闘」の過酷な洗礼を受ける。 泥のジャングルから、コンクリートの迷宮へ。
元「民大将」が仕掛ける戦術革命の奔流は、大日本帝国の将兵たちを、世界中のいかなる正規軍をも闇討ち同然に蹂躙しうる、史上最強の「現代特殊戦旅団」へと、休むことなく鍛え上げ続けていた。
精神の解体と再構築に1週間。
密林でのゲリラサバイバルに3週間。
そして、迷宮のようなコンクリート市街戦に3週間――。
地獄のカリキュラムを7週にわたって生き延びた五百名の将兵たちを待ち受けていたのは、この過酷な教育の総仕上げとなる最後の1週間――『戦車随伴歩兵戦』、機甲諸兵科連合の講義であった。
演習場の中央に整列した将兵たちの前に、地鳴りのような重低音とともに現れた機甲部隊の威容。
それを見た瞬間、帝国陸海軍の選抜兵たちは、再び自らの目を疑うこととなった。
そこに姿を現したのは、彼らが知る八九式中戦車のような、リベット留めでノロノロと時速十数キロで走る前時代の「鉄の棺桶」などでは断じてなかった。
低く鋭利に傾斜した避弾経始の砲塔を掲げ、油気圧サスペンションで車高を自在に上下させながら地を這うように疾走する、105mmライフル砲を備えた――前世の陸上自衛隊の象徴たる『七四式戦車』の雄姿。
砂塵を巻き上げ、ゴムタイヤの八輪駆動で時速80キロの猛スピードで突進してくる「機動装輪装甲車」と「装輪指揮車」。
小型ガスタービンエンジンが高周波の唸りを上げ、時速50キロで軽快にドリフト旋回を決める快速駆逐戦車「ヘッツァー」。
そして――その機甲車両の群れと寸分の狂いもなく歩調を合わせ、4.5mのスマートな肢体で大地を駆けるタクティカルモジュール「雷轟」。
「……な、なんだあの化け物じみた戦車隊は……!?」
「速すぎる……! あんな速度で走る鉄の塊に、どうやって歩兵がついていくというのだ!」
息を呑む兵士たちの前に、74式戦車のハッチから身を乗り出した西住阿保が、冷徹な声をスピーカーから響かせた。
「いいか、貴様ら! 従来の帝国陸軍が教えてきた『鈍足な戦車の後ろに隠れてノロノロとついていく』などという自殺戦術は、今この瞬間をもって綺麗さっぱり忘れろ!」
西住の檄が、砂煙の舞う演習場を切り裂く。
「戦車という兵器は、遠距離の敵を粉砕する無敵の矛であると同時に、近距離の死角から肉薄してくる敵歩兵の地雷や火炎瓶、対戦車ロケットに対しては、ただの巨大な盲目の巨人に過ぎん!歩兵の真の役目は、戦車を盾にして身を守ることではない! 戦車の死角を完璧に塞ぎ、敵の対戦車歩兵を先回りして瞬時に射殺する『戦車の目と耳』となることだ!」
そこから始まった訓練は、まさに現代の「機械化装甲擲弾兵」の教範そのものであった。
装輪装甲車の後部ハッチから、走行中の勢いを殺さずに一瞬で展開する急速下車戦闘。
74式戦車の砲撃の衝撃波を避けつつ、履帯の死角から現れる模擬敵の対戦車班を、カラシニコフの精密な点射とシモノフの狙撃で瞬時に蜂の巣にする「対戦車歩兵カウンター戦術」。
ヘッツァーの側面を突こうとする敵陣地へ向け、パンツァーファウストとバズーカを即座に叩き込み、雷轟の75mm低圧砲の弾着に合わせて一気に突入する立体制圧――。
時速50キロで疾走する機甲部隊と、装甲車から飛び出して敵の息の根を止め、即座に乗車して次の戦場へと急行する高速機動歩兵の完全な連動。
かつて「歩兵の進撃速度」に戦車を合わせさせていた前時代のドクトリンを完全に逆転させ、「戦車の最高速度」に歩兵が近代兵器と装輪車を駆使して追随する――第二次世界大戦の電撃戦すら遥かに飛び越えた、二十世紀末の「諸兵科連合作戦」が、彼らの肉体と反射神経へと徹底的に叩き込まれていった。
1週間後――。
最終総合演習を終え、硝煙と砂塵の立ち込める演習場に整列した五百名の将兵たちの姿は、2ヶ月前とは完全に別世界の「戦闘集団」へと変貌を遂げていた。
泥と油に塗れた迷彩服。 無駄な虚勢を捨て去り、研ぎ澄まされた刃物の如き冷徹な光を宿す双眸。
銃を構える指先、周囲を警戒する視線の配り方、そして機甲車両と完全に呼吸を合わせた立ち振る舞い――。
そこには、精神論のビンタに怯えていた旧弊な帝国軍人の面影など、塵芥ほども残っていなかった。
「……見事なものだな、西住」
管制塔のバルコニーから、整然と隊列を組む五百名の「装甲擲弾兵」を見下ろしながら、竜宮は銀縁眼鏡の奥で満足げに目を細めた。
隣で煙草を燻らせるマスタングも、獰猛な笑みを浮かべて頷く。
「ええ。これなら、米国の海兵隊だろうが、ドイツの国防軍装甲師団だろうが、正面からぶち当たっても一方的にミンチにできますよ。……大高閣下と高野閣下も、腰を抜かして喜ぶでしょう」
精神の再構築、密林ゲリラ、都市型近接戦闘、そして高速機甲随伴。
2ヶ月に及ぶ地獄のブートキャンプをくぐり抜けた五百名の精鋭たちは、やがて大高の陸軍「清風会」と高野の海軍「特戦隊」の教官として各地へ散り、帝国陸海軍の全軍へ向けて、この悪魔の如き近代戦術の種を爆発的に蒔き広げていくことになる。
「全隊、訓練終了! ――これより、貴様らを一人前の『近代特殊戦兵士』と認める!」
竜宮の号令が響き渡った瞬間、五百名の喉から放たれたのは、万歳三唱などではない。
地鳴りのような、統制されたプロフェッショナルたちの咆哮であった。
「「「サー・イエス・サーッ!!!!」」」
照和十三年の青空の下。 精神論の迷宮を完全に脱し、未来の戦場を支配する「世界最強の特殊部隊」が、いま、完全なる産声を上げた瞬間であった。
実のところ、わずか2ヶ月という異例の短期間で、これほど完成された「現代歩兵」を仕立て上げることができたのには、極めて明確な工学的・軍事的な理由が存在していた。
通常、素人を一から一人前の兵士に鍛え上げる場合、最も時間を要するのは「過酷な行軍に耐えうる足腰の構築」と「基礎体力・筋力の練成」である。
だが、選抜されて集まってきた帝国陸海軍の将兵たちは、日頃から過酷を極める猛訓練に耐え抜いてきた筋金入りの男たちであった。
泥水を啜り、何十キロもの背嚢を背負って野山を駆け巡る基礎体力という「ハードウェア」は、すでに完璧に完成されていたのである。
彼らの頭を狂わせていたのは、ただ単に時代遅れの精神論と、前時代の自殺的な用兵思想という「歪んだプログラム」に過ぎなかった。
古臭いだけで、根は誇り高い本物の軍人なのだ。
論理的で合理的な現代戦の戦術を一度理解し、その圧倒的な生存率とキルレシオを肌で実感しさえすれば、彼らは驚くべき速度でそれを吸収し、現場で実践することができた。
すなわち、これはゼロからの育成などではない。
完成された頑強な肉体に対し、21世紀の戦術思想を一気に流し込む――『ソフトウェアの強制アップデート』であったからこそ、わずか2ヶ月で完了したのだ。
そして――第一期生の五百名がこの地獄を巣立つと同時に、演習場には早くも次なる「生贄」の車列が雪崩を打って到着した。
大高弥三郎と高野五十六という陸海の巨頭は、最初から生ぬるい実験で終わらせる気など毛頭なかったのだ。
彼らの真の狙いは――大日本帝国の陸海軍将兵を、一兵卒の末端に至るまで、文字通り全員「現代戦スペック」へと塗り替え、全軍を根本から近代化することであった。
だが、いくら第302中隊が千名規模の大隊に膨れ上がっていようと、彼らだけで日本全国の何十万という将兵をマンツーマンで直接教育し続けることなど、物理的に不可能であった。
そこで竜宮が構築したのは、極めて合理的で自己増殖的な「教官育成システム」であった。
訓練の拠点を、房総の特設演習場から、広大無辺な裾野を誇る「富士の麓の陸軍大演習場」へと一気に拡大・移転。
そして、過酷な2ヶ月のブートキャンプをくぐり抜けた第一期生の卒業生たちを、今度は各部隊の「助教」として教官陣の脇に配置したのだ。
第302中隊の歴戦の転生者たちが総監として全体を統括し、その下で第一期生たちが、かつて自分が浴びせられたのと寸分違わぬ「ハートマン節」の罵声を次の後輩たちへ向けて叩きつける。
教えられた者が次の教え手を務めるという、ネズミ講の如き乗数効果の教育連鎖。
「――背筋を伸ばせ、このウジ虫どもがッ! 貴様らが誇る大和魂とやらは、朝の点呼で小便を漏らすためにあるのかッ!」
富士の雄大な稜線を仰ぎ見る演習場に、第一期生たちの怒号が響き渡る。
数週間前まで泥水をすすって目を白黒させていた男たちが、今やキャンペーンハットを斜めに被り、完璧な発音のミリタリー・ケイデンスを歌い上げながら、新入りの陸海軍兵士たちを泥濘へと叩き落としていた。
その光景を、演習場を見下ろす指揮テントから眺めながら、竜宮は銀縁眼鏡の奥で薄く笑った。
「……ウイルスのように広がっていますね、ハートマン節が」
「ああ。だが、効果は劇的だな。竜宮殿」
隣に並ぶ大高弥三郎中将が、双眼鏡を下ろして心底から満足げに頷いた。
「これなら、半年もあれば陸軍の主要師団と海軍の特戦隊に、近代戦の骨格を行き渡らせることができる。……兵を無駄死にさせず、最小の出血で敵を圧倒する真の皇軍の姿が、いま富士の裾野で急速に形作られている」
富士の吹き下ろす冷風の中、響き渡る無数の銃声と、74式戦車や機動装輪車の地鳴り。
精神論の迷宮を完全に脱ぎ捨て、世界最強の「現代歩兵軍団」へと脱皮を遂げていく帝国陸海軍の姿を、竜宮は来るべき世界大戦の嵐を見据えながら、静かに、そして確信を込めて見届けていた。