うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望
千里が置いて行ってくれた袋を開くと、頼んでいたものの他に、俺が仕事中によくつまんでいたグミやらガムなどのお菓子類や好きなジュース、最新刊を買えていなかった漫画や小説の続き、筆記用具やノートなどが入っており、すごく気を使ってくれていたことを感じる。
「……」
こんな気遣い、何をどうしたってグッとくるだろう。惚れちまうぜ、おい。
脳内で一人、ぼやきながら椅子に座りなおす。
「さて、よく考えよう。俺は九重をどうしたいのかを」
早速、買ってきてもらったハイパーミントのガムを二粒口に放り込み、おもむろにノートを開く。
悶々と考え続けるだけじゃ、また堂々巡りをしてしまいそうだったので、書き出してみることにした。
「まずは……」
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・九重悠月
・短大卒、二十一歳
・元職場の後輩
・消却の魔女
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ひとまず、九重についての俺の知る基本的な情報を書き出してみた。
文字の中から九重が浮かび上がるような、そんな感覚がある一方で、最後の消却の魔女と言う部分は未だに消化しきれないのか、想像がつかなかった。
「次は……性格とかにしておくか」
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主観
・人懐っこく、可愛がられるタイプ
・仕事は特段早くはないが、ミスの少ないタイプ
・酔うと物理的に距離が近くなるタイプ
・意外と良く泣くタイプ
客観(魔女)
・界隈から恐れられる存在
・容赦のない性格
・史上最強の魔女
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ゆっくり時間を掛けながら書き出した九重の特徴は、俺の記憶にある通りの彼女だ。
理想の後輩を体現したような存在で、とにかく甘え上手。
頼るのもうまく、チームで動くときも彼女のいるいないでチーム全体の士気が違う。
そんな一方、魔女として聞いた客観的な彼女の姿は俺の知る九重からは到底想像のつかない存在だ。
会社のお局さんですら、九重には冷たくできないほどだっていうのに……。
……と、こう書き出してみて改めて、俺の知る九重と魔女としての九重の乖離がかなり大きいことがわかる。
だが、ロスティのあの怯え方を見るに、魔女としての九重が実際こういう存在だと見られているのも理解できた。
「……そのうえで、だ」
改めて九重悠月と言う存在を捉えなおしたうえで、俺はどうしたいのか。
もちろん、ついさっきの会長さんからの質問に対する答えは本心だ。
どちらかの手を取るくらいなら、俺は両方の手を取るだろう。
だが、その場合でも問題は付随する。
両方の手を取ったところで、これまで通りとはいかないはずだ。
なにせ、九重と魔女協会は明確に敵対関係にあった存在なのだから。
つまり、両方の手を取るには、その関係を解消させなくてはならない。
九重を魔女協会に加入させるのは難しくとも、俺伝手に魔女としての彼女と意思伝達が可能な状況を作らなくてはならないだろう。
そのために俺がすべきは——。
「……って、これが答えか」
急にガムのミントが効いてきて、頭の中のもやもやしたものが晴れていくような感覚。
文字に書き起こして、考えを整理してみれば、意外とあっさり自分の答えは見つかった。
いや、見つかったというより明確になったと言うべきか。
「俺は九重とも、これまで通りの……完全にこれまで通りとは言わずとも、あまり変わらない関係で居たい。だから、そのためには——一度、ちゃんと九重と話してみる必要がある」
そうだ。
うじうじ悩んでいても何も変わらない。
それに、魔女としての九重の話はどこまで行っても客観視だ。
もしかすると、九重側にもそうせざるを得ない事情があったのかもしれない。
どれだけ危険だろうと、俺は、九重とちゃんと顔を合わせて話したい。
もしそれで、九重がとんでもないものを腹に抱えていたとしても、その時はその時だ。
俺は千里たちと九重、その両方の手を取るために、今、九重と話したいんだ。
おもむろに立ち上がり、部屋を出る。
俺の中にはもう、混乱も迷いも残っていなかった。
◇◇◇ ——九重悠月視点——
一時間弱の残業を終え、会社を出ると、スマホには一件の通知が入っていた。
もしかしたら先輩からの連絡かも? なんて淡い期待を抱きながらメッセージアプリを開くと、そこには——。
『廃墟ビル六階』
顔も見たくない存在からの集合の連絡が入っていた。
目的地だけの簡潔なメッセージが、事の重大さを物語っている。
「……っ。まあ、さすがにバレますよね」
多少の驚きはあれど、揺らぎはしない。
こうなることも覚悟の上だった。
「……どうせ近くに寄るし、先輩に会ってから行こうかな」
自宅に向かう方向とは違う電車に乗り、私は先輩の住むマンションの最寄り駅へと向かった。
電車を降りて、十分もしない距離を歩けば先輩の家だ。
……また、あの痴女さんがいるのだろうか?
それを考えると、少しだけ胸が痛んだ。
今日は堂々と正面から入り、エレベーターを使って先輩の部屋のある階まで向かう。
そして、部屋の前までやってきて……気が付いた。
「この気配……魔力の、残滓?」
部屋の中、私が先輩の気配だと思って捉えていたものは、魔力の残滓で本体ではなかった。
そして、私が勘違いしてしまうほどの大きな残滓が残されていた意味を察する。
「……まさか、本当に先輩自身が魔力の元、なの? ……待って、じゃあ、今先輩は!? どこに?」
あまり探知は得意ではないが、それでも魔法にはそこそこの自身がある。
かなりの広さまで魔力探知を広げてみたが、それらしい気配は感じ取れなかった。
「これだけ大きな魔力……動けば痕跡が残るはず——!」
と、そこまで言いかけて、咄嗟に振り返った。
すると、そこには——廃墟ビルに居るはずだった相手が立っていた。
「なるほど。九重君が監視を申し出た理由はそう言うことでしたか。でもまさか、人が魔力の元になるとは、面白いこともあったものですね」
「……いつからここに?」
「さて、いつからだと思う? 私のかわいいお弟子ちゃん?」
「——っ! 誰があなたなんかの!」
「おっと、酷いなぁ……君を二代目の消却の魔女にしてあげたのは私なのに」
「そんなこと、私は望んで——」
「君が、望んだんだろう?」
「……っ」
「ふふっ、さて、場所を変えようか。こうして顔を合わせるのも二年ぶりだろう? 積もる話もあるしさ」
「わかり、ました」
女性にしてはかなり大きい百七十センチ後半のこの女の後をついて歩く。
それだけでも目立つのに、まるでハロウィンの仮装かのようなローブまで纏っている。
だが、道すがらに誰一人の視線も感じることがない。
それもすべて、この女の圧倒的なまでの魔法力が為せる技だった。
消却の魔女と呼ばれる魔女は実は二人いる。
二年前、魔女の界隈を騒然とさせたその魔女の正体はこの女の方だ。
そして、この女こそ、ギルドを立ち上げ、魔法による世界支配を目論む元締めでもある。
移動してきたのは、もともと呼ばれていた廃墟ビルの六階。
今朝、私が先輩についていた監視たちを処理した場所でもあった。
「まあ、好きに座ってよ」
「……」
言われるがままに彼女とは一番遠い椅子に座る。
「じゃあ、まずは申し開きを聞こうかな? どうして監視を処理した?」
「それは……その役割は私が請け負ったはずでしたので」
「ふむ、なるほど。まあ、その言い分は理解できるか」
面白そうに笑いながら、女は大きく足を組み替えた。
「……じゃあ、彼らが居なくなっていることに気付いたのはいつかな?」
「——! それは……」
「そう。さっき、だよね? 君はもしかしたらその先輩とやらに対してカモフラージュをするために日中は職場にいたとか言うつもりかもしれないけど、その前に、どうしようもない事実として、監視を失敗しているんだよね」
「……っ」
「別に宣言通り任務を遂行してくれるなら方法に文句を付ける気はないけどさ。失敗はダメだよね? さて、じゃあ九重君に質問しよう。……任務に失敗した場合は?」
笑うような口調から一変。
感情のない声で私を詰める。
「……相応の代価を支払う、もしくは……確実な方法で任務を遂げる……です」
「うんうん、覚えているじゃないか! さて……」
「だ、代価を! ま、また魔力の元を探してきます! 今度はさらに力の強いものを!」
「いや、探す必要はないだろう? もう見つかっているんだからさ」
「——っ! いや、それはっ——」
「出来ないのかい? じゃあ、私が直接出向くと——」
「で、出来ます! やらせてください!」
「ふふっ、そうだよね。君は最も優秀な私の弟子だ。期待しているよ?」
「……はい」
「でも、あんまり時間を掛けられても困るからね。う~ん、そうだね。じゃあ、明日から一週間以内に彼を……いや、あの魔力の元を連れてきてもらおうか」
「一週間……」
「出来るよね?」
「……はい。分かりました」
「よし、いい子だ。じゃあ、準備が出来たら連絡してよ。それじゃあまたね」
それだけ言い残すと、目の前にいたはずの消却の魔女は一瞬にしてその姿を消した。
背後を確認するも、そこには開け放たれたままのドアがあるだけだ。
膝から力が抜け、その場に崩れ落ちる。
「先輩……ごめんなさい……」
力なく溢れ出た言葉は先輩への謝罪だった。
◇◇◇ ——永礼誠治視点——
「フェル、会長さん! 居るか?」
部屋を飛び出した俺は、昨日朝食を食べたキッチンダイニングの部屋に飛び込んだ。
「誠治? どうしたの?」
「誠治君?」
そこには予想通り、千里と会長さんの姿があった。
二人でエプロンを付けてキッチンに立っている。
どうやら料理中だったらしい。
「聞いてほしいことがあるんだ」
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせる。
そして——
「食べながら聞かせてもらうよ。フェル、ロスティを呼んできてくれるかな?」
「分かったわ」
真剣な表情でそう答えた。
ロスティも揃って四人。
テーブルを囲んで夕食を食べ始める。
「……それで、誠治。話って言うのは?」
「ああ。九重のことについてだ」
「……しょ、消却の魔女ですか?」
「ああ。そう呼ばれてるらしいな。けど、あいつは俺にとってはただの後輩なんだよ」
「……それで? 誠治君はその九重さんをどうしたいんだい?」
「どうしたい、ってわけじゃない。けど、欲を言えば皆と仲良くなってほしい。だから、そのための話し合いがしたいんだ」
「話し合い、ね……電話なら、好きにして大丈夫よ? ここは一応電波も拾ってるから」
「いや、電話じゃダメなんだ。俺はどうしてもあいつがそんなに恐ろしい存在だとは思えない。だから、その確認をしたいんだ。直接会って、目を見て話して」
明らかに形勢不利の中、それでも俺はめげずに語り掛ける。
「誠治君。消却の魔女と言うのは君が思う以上に、本当に危険な存在なんだよ」
「ああ……でも、それでもなんだ」
「……誠治が行くってことは、自動的に私も行くことになるのだけど、私を危険に晒すとしても?」
言いにくそうにしながらも、俺のためを思ってだろう。
一番いやなことを言ってくれる千里。
でも——。
「フェルなら、一緒に来てくれると信じてる」
俺が守るとか、かっこいいことを言いたいところだが、そんな無責任なことは言えないし、俺には出来ないだろう。
だから、こう言うしかない。
頭を下げ、手を伸ばす。
「………………会長」
「ふっ……なんだか妬けるね。でも、こんな顔を見せられたら、駄目とは言えないな」
「……」
そんな俺の手に温かな感触が触れた。
それも、三人分。
「分かったわ。一緒に行ってあげる」
「もしかしたら、消却の魔女を仲間に加えられるかもしれないしね」
「わ、私もできる限りのお手伝いはします」
「……みんな!」
顔を上げれば、顔を朱に染めながら仕方なさそうに手を取る千里と、今一度、選ぶ権利は俺にあると言うような会長さん、恐怖を嚙み殺して手を取ってくれたロスティの顔が映る。
「でも、一つ条件があるよ」
「ええ、そうね」
「誠治君には身体強化の魔法を身に着けてもらう」
「魔法使いとしての最低限よ。それができるようになるまでは、いくら頼まれても行かないから! 明日からは猛特訓ね」
そんな二人の言葉に俺は思わず、ロスティの方を見てしまう。
するとロスティもこちらを見ており、ばっちりと視線が交差した。
「……」
「……」
「……なによ二人とも、固まっちゃって?」
「……いや、フェル。その、だな……。実は、身体強化の魔法、もう使えるようになったんだ」
「……え?」
俺がそう言うと、フェルは声を出して固まり、会長さんは察したように軽く笑った。
「なるほど、誠治君は手が早いね。まさか私より先にロスティと、とは……」
「ち、違いますっ! 私はただ、誠治さんに見られたくないものを見られてしまっただけで……あ」
「……誠治?」
「いや、違うぞ? 俺はただロスティの……」
「い、言わないでください誠治さん!!!」
「……っ」
「ふ~ん。へぇ~。そっかそっか。私が誠治のために町を駆け回ってる間に、誠治はロスティとあんなことやこんなことをして、それだけでは飽き足らず会長にも手を出そうとしていたと……」
「いや、ちが……」
否定しかけて、言葉が止まる。
ロスティとのことのニュアンスは違えど、千里の言っていることはすべて正しい。
だが、その停止が良くなかった。
「否定しなさいよっ! このすけこまし!」
「うごぉっ……」
隣からわき腹に向けて鋭い手刀が飛んでくる。
「もう、明日からは魔法訓練、容赦しないから」
「……はい」
フイ、と顔を背ける千里に、どう説明しようか、と考えたところで、俺のポケットから通知音が鳴った。
「……見れば?」
千里の一言でスマホを取り出すと、そこには一件のメッセージ通知。
「……噂をすれば、九重からだ。内容は——」
九重悠月『一週間後の夜。先輩のお宅に伺います。ご在宅いただけることを願っています』
いつもとは雰囲気の違う文面。
間違いなく、何かがあったと感じさせられる雰囲気だ。
「……誠治、冗談じゃなく、明日からは厳しく鍛えるわよ」
そんな文面から、俺と同じ印象を感じ取ったらしい千里が、表情を真剣なものにして言う。
「ああ、頼む」
俺もそれに真剣な顔で答えた。
甚大なエロ要素枯渇回。
なのでこの後は仲直りっくすがあったということに……してもいいかもしれない。千里も修業は明日からって言ってるので笑
明日でハメ匿最終日なので、良ければ高評価、お気に入り登録を何卒……!!