うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる   作:嵐家マダ

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大切なのは持続力。やっぱりこれ。

 九重からいつもとは様子の違う連絡をもらって、数日が経過した。

 あれから何件かメッセージを送ってみたが、既読はつかないままだった。

 

 今朝も起きてすぐに確認したのは九重とのトーク画面。

 しかし、約束を明日に控える今日も俺のメッセージは未読のまま。

 

「……その様子じゃ、今日も変わりはなかったみたいね」

 

 寝ぐせのついた髪を後ろでまとめながら隣で起き上がった千里が言う。

 

「……ああ」

「まあ、向こうが一週間後を指定してきたんだから、それまでは話したくない事情があるのかもしれないわね」

「そうだな」

「さて、じゃあ、顔洗って、今日も厳しくいくわよ!」

「おう。けど、ここ数日毎日ずっと魔法を使い続けてるよな? 疲れないか?」

「大丈夫よ。私もロスティも会長も小さいころから魔女だったから。……それに、魔力については……むしろ毎晩増えてるし……」

「……そうか」

「……ええ」

 

 千里の頬にほんのりと朱がさす。

 慣れたと言っても早朝からは目に毒な千里の恰好から目をそらしながら、俺たちは朝の支度を始めた。

 

 ◇◇◇

 

「……真ん中だ!」

 

 目隠しを取りながら、逆さになっている三つの紙コップのうちの一つに指をさす。

 

「……やるじゃない、正解よ」

 

 すると、手品の答え合わせのように千里がそのコップを開き、その中には丸められたレース生地の布が入っていた。

 

「さすがです誠治さん!」

「……フェル? どうして私の……がそこに?」

「……それは今は置いておいて。でも、ほんとにさすがと言うか。あなたの気配察知能力はすごいわね誠治」

「そうなのか?」

 

 俺が今やっていたのは感覚を強化して、物の気配を感じ取る訓練だった。

 目隠しをして、手は後ろで組み、会長さんやロスティは普通の会話をしている状況下で中にものが隠されているコップを当てるという訓練。

 最初はこんなもの何の訓練になるんだ? と思っていたが、続けていくうちに本当に物の気配? と言うか、そこに何かがあるということを感じられるようになったのだから面白いものだった。

 

「ええ、私は魔法の特性上探知が得意だけど、ロスティ。あなた、同じこと百発百中で出来る?」

「百発百中はきっと無理です。誠治さんはやっぱりすごい才能がありますよ!」

「……まあ、そうだね。誠治君に魔法使いとしての才能があるのは間違いないよ。けどフェル? 一体どうし——」

「じゃあ、次に行くわよ! あ、その中身は誠治に上げるわ」

「え、おう」

「あ、待つんだ誠治君。それは——」

 

 紙コップの中から出てきたなんだかおしゃれなハンカチのようなそれを広げてみる。

 すると——

 

「……え、これ」

「ひゃぁっ! は、破廉恥です!!」

「ひ、広げないでくれ誠治君!!!」

 

 ハンカチか何かだと思っていたそれは、とてつもなく際どい下着だった。

 まじまじと見る前に、顔を真っ赤に染めた会長さんが俺の手からそれを奪い取って、抱え込む。

 

「フェル……」

「会長は悪い誘いを誠治にした前科があったので、その罰ってことで」

「……ぅ」

 

 若干涙を浮かべて千里を見る会長さんと、それを飄々と躱す千里の図はなんだかいつもと立場が逆転しているようで不思議な感じだった。

 会長さん、こんな顔もするんだな……。

 

「か、片づけてくるから」

 

 そんなことを思っていれば、下着を握りしめたまま、会長さんは部屋を出て行ってしまった。

 

「さ、会長への制裁も終わったし、次はどうしようかしら?」

 

 すると、満足そうな笑みで会長さんを見送る千里が思案顔を浮かべた。

 次に行くわよ、とか言っておきながら、決まってなかったのか……。

 でも、そういうことなら丁度いい。

 このタイミングでここ数日気になっていたことを聞いてみよう。

 

「なあ、ここ数日ずっと気配を感じ取るような訓練しかしてないけどいいのか?」

 

 俺の気になっていたことはこれだ。

 訓練の種類について。

 いや、訓練自体のバリエーションはかなり豊かで飽きないのだが、鍛えている内容がどうも気配を掴むとか、そういう方向に偏っているのだ。

 

「ええ、なにせそれが狙いだもの」

「? どういうことだ?」

「簡単な話よ。そもそも魔法を一週間やそこらで修めるというのはふつうあり得ない話なの。あなたは尋常ではない魔力量と才能を備えているからできてしまっているけど、それでも限界があるわ。だから、一点に絞った訓練を続けたの。気配を掴む訓練が多いのは相手が消却の魔女だからよ」

「……あ! そういえば、フェルも近くに来なきゃ見つけられないくらい気配を隠すのがうまいんだったな九重は」

「そう。明日の話し合いで何が起こるのかはわからないけど、もし逃げなくちゃならない時、相手の位置が分からないんじゃどうしようもないでしょ? そういう意味で、気配を感じ取るっていうのはすごく大事なことなのよ」

「なるほどな……」

 

 予想以上にしっかりと考えてもらっていたことに内心で驚く。

 初めてロスティに魔法を教わった時は、色々と順序立てて説明、解説をしてもらいながらだったからこそ、実践形式……と言うか、半ば遊びのような千里の訓練にはどれだけ意味があるのだろうかと心配する俺もいたのだが、どうやら彼女の中ではきちんと実利に基づいた訓練だったらしい。

 

「でも、フェル。誠治さんはもう、気配察知に感知してはかなりの域に達していますよ? これ以上やっても効果は薄くないですか?」

「そうなのよね。正直、誠治の才能を舐めていたわ。多分、狭い範囲での気配探知については私より上かもしれない」

「……そんなになのか?」

「ええ。確かめてみましょうか。ロスティ、ちょっとそこで動かないでね」

「え、はい?」

 

 言われた通り、ロスティは動きを止めた。

 それを確認すると千里は、俺に耳打ちをしてくる。

 

「ロスティの履いている下着の色を当ててみて。多分、今のあなたならできるわ」

「はぁっ!? なんでそんな」

「いいから、やってみなさい!」

「はぁ……分かった。でも、あとでお前がロスティに謝ってくれよ?」

「分かってるわよ。さ、早く」

 

 あまり気乗りはしないが、俺も自分の実力がどの程度かは気になるので、ロスティには申し訳ないがやってみることにした。

 目を閉じ、心を落ち着かせて、第六感のようなものを働かせるイメージをしていく。

 すると、脳裏に少しづつ何かが浮かんでくるような、感覚があった。

 より深く、感覚に自分を沈めていく——すると……。

 

「薄ピンクのリボン付き?」

「……え? ええっ!?!?」

「ふふっ、やるじゃない」

 

 脳裏にはっきりと浮かび上がったそのイメージを口にしてみれば、動きを止めてくれていたロスティが困惑した表情を浮かべた後で、いきなりしゃがみ込み、そんな様子を見て、千里はニヤリと笑った。

 

「どうやら大正解だったみたいね」

「は、は、破廉恥です! 酷いです! 誠治さんの変態!」

「いや、今のはフェルに……」

「ロスティは私の許可なく誠治に魔法を教えた罰ね。ふぅ、これですっきりしたわ。私、やられっぱなしって好きじゃないのよね」

「うぅ、うわぁーん! 負けず嫌い痴女! 自分はどうせ紐のすっごいの履いてるくせにぃぃぃぃ!」

 

 晴れやかな表情を浮かべる千里に、捨て台詞を吐いて部屋を飛び出していくロスティ。

 そんな捨て台詞に思わず、千里の方へ意識を向けてみれば……。

 

「……誠治、今、私の下着、見ようとしたでしょ」

「……いいや?」

「……どう? 確認しておく?」

「………………」

 

 もう、それは履いてるとは言わないんじゃないですかね?

 胸元の開きすぎた格好にも慣れてきたが、やっぱり千里は痴女なのかもしれない。

 

 ◇◇◇

 

 昼過ぎ。

 ようやくキッチンダイニングに会長さんとロスティが戻ってきて、遅めの昼食を食べた後、俺たちは残り半日の時間をどう過ごすかを話し合っていた。

 

「ほんと、何をしようかしら。二人とも、何かアイデアはある?」

「やっぱり今からでも別の魔法を練習するというのは?」

「それは難しいだろうね。余計な知識は混乱を招く原因にもなりかねない」

「そう、ですよね……」

 

 もう、これ以上成長しない程度まで気配察知が出来ているのなら、それでいいのでは? と思ったのだが、対面する相手が相手なため、妥協はしないのだとか。

 ありがたい限りだが……もう時間もないしな……。

 

 なんて考えていた時、俺の中に一つの疑問が降って湧いた。

 

「……そういえば、俺の固有魔法って結局何なんだ?」

 

 そんな疑問を口にすると、頭を悩ませ視線を落としていた三人の顔が一斉に上がり、視線がこちらに集まる。

 

「それよ!」

「それです!」

「それがあったね!」

「え、おう?」

 

「固有魔法なら、最初からある程度は自分の意志で自由に使えるし」

「魔法次第では、奥の手にも強い武器にもなりうるね」

「あれだけ魔法が使えるならもう見つけて起こすだけですし」

 

 三人は口々に呟きながら、うんうんと頷いている。

 どうやら妙案を出せたらしい。

 

「えっと、それで、俺の固有魔法は分かるのか?」

「そういえば、誠治にはまだ固有魔法の詳しい説明ってしてなかったわね」

 

 そういうと千里はロスティの方を見た。

 

「わ、私ですか!?」

「こういう説明はあなたの方が得意でしょう? 時間もないことだし、お願いするわ」

「わ、分かりました!」

 

 説明を任されたロスティは少しだけ胸を張りながら立ち上がり、説明を始める。

 

「それでは、簡単に説明しますね」

「頼む」

「まず、固有魔法と言うものは理論的には、その人が魔力を認識できるようになった瞬間から使えるようになっている魔法なんです」

「ふむ?」

「まあ、今日までやってきた訓練がいらない、最初から使える魔法と思ってもらえれば。なので、今日訓練していたような強化魔法が固有魔法の人もいますし、以前フェルが見せたという火球が固有魔法の人もいます」

「なるほど」

「でも、使えるからと言って最初から分かっている物でもないんです。現に今の誠治さんが自分の固有魔法が分からないように。固有魔法は自分の中に眠っている魔法なんですよ」

「眠ってる……」

「はい。なのであとは自分の中の魔法を見つけてあげて、起こしてさえあげられれば、晴れて誠治さんも固有魔法が使えるようになるという訳です」

「なるほどな。……それで、その見つけ方はどうすればいいんだ?」

「それは……人それぞれなんです。大抵は固有魔法を意識すれば、自然と頭に浮かび上がってくると言いますか、分かるんですが……たまに、不意に降ってきたなんて人もいるらしく」

「そうなのか……」

「でも、成長性が薄くなってきた気配察知の訓練を続けるよりは固有魔法を探す方がきっと有益だと思います!」

 

 言い切ると、ふぅ、と一息をついてロスティが椅子に座りなおした。

 

「ありがとう、ロスティ。じゃあ、よくわからないけど、探してみるよ」

「はい、頑張ってください!」

「誠治、ここでいいの? 邪魔なら私たちは出ていくけど」

「いや、大丈夫、だと思う。良ければ、普通にしててくれ」

「分かったわ」

 

 俺がそう言えば、一瞬の沈黙の後、何事もなかったかのように三人は世間話を始める。

 さすがは女子三人と言うべきか、話題には事欠かないらしい。

 

 俺はそんな三人を傍目に見ながら、ゆっくりと自分に集中していく。

 方法は人によるとのことだったが、基本的には意識をすればいいらしいので、それから試してみる。

 

 ……固有魔法。

 俺の固有魔法は一体何なんだ?

 千里のような転移魔法?

 ロスティの空間そのものを作り出す魔法?

 会長さんの視る魔法?

 

 知っている限りの魔法を思い浮かべてみるが、どれもピンとこない。

 

 じゃあ、次は俺がどんな魔法を使ってみたいかを思い浮かべてみよう。

 

 ……幼稚だけど、空は飛んでみたいよな。

 お金とか、物を増殖させられる魔法も夢だよな……まあ俺は魔力を増幅させられるんだけど。

 ずっと休みになる魔法……は、もう仕事辞めてるからいらないか。

 漫画やアニメとかで見る属性魔法? 的な奴もロマンだよなぁ……。

 

 妄想は捗るが、だからと言って、これだ! となるものはやはりない。

 ううむ……中々に手ごわいな、固有魔法。

 でも、自分の中に眠っている、と言うことは少なからず自身に関係することだったりしないだろうか?

 みんなの固有魔法のルーツを聞いたわけではないので、全く根拠のない推論だが、そういうことがあってもおかしくはないはず。

 

 俺、俺かぁ……。

 俺はと言えば……何があるだろう?

 

 体形は174センチ、66キロ。

 多少ガタイが良い自覚はあるとはいえ、中肉中背の一般的、ごく標準的な体格だろう。

 

 顔だって普通だ。

 中高大とそれぞれ一人ずつ彼女はいたが、特段モテるという訳でもなく、だからと言って全くモテないわけでもない。

 世間的に見れば、恵まれている方なのかもしれないが、だからと言って、俺はと言えば、とはならないだろう。

 

 性格もとりわけ善人でもなければ悪人でもない。

 目の前で困っている人がいれば、助けが必要か聞く程度のことはしてきたつもりだが、これだって別に多くの人に当てはまることだろう。

 

 そうなると、やはり、俺はと言えば、魔力の元、だろうか?

 ごく普通な、これと言って特筆することのない人生を生きてきた俺にとって、魔法、そして魔力の元と言うのはこれ以上ないほどの特徴と言える。

 それに、俺は世にも珍しい人間の魔力の元と来た。

 

 そうなると、俺は魔力の元だから、固有魔法がなかったりするんじゃないか?

 ……なんて、そんなことを考えて、集中が切れかかった時、不意に三人の会話が聞こえてきた。

 

「それにしても誠治ってすごいわよね。あの持続力は、他に類を見ないんじゃない? 他を知らないけど……」

「……そう、だね。魔力増幅がなければ、潰れてしまうよね」

「は、破廉恥ですよ!」

「でも、ロスティだってこの間部屋を覗いてたじゃない。気になってるんでしょ?」

「……っ!」

 

 ……なんて会話をしてくれちゃってるんだろう彼女たちは。

 集中しているとはいえ、目の前にいるんですけど?

 出来れば、そういう話は俺のいないところでやってほしいよ……。

 

「ああいうのをきっと絶倫って言うのよね」

 

 その時だった。

 

「——!」

 

 千里の言葉を聞いた途端、俺の脳裏にその二文字が大きく表れる。

 

 絶倫。

 

「……これ、そういうことなのか?」

 

 呟くと、三人の視線がこちらに集まった。

 

「誠治?」

「誠治君?」

「誠治さん、何かわかりましたか?」

 

 三人の視線を受けながら、俺は意識したその言葉、固有魔法の能力を実感していく。

 

「……ああ。分かったよ」

「ほんと!?」

「なんだったんだい?」

「聞かせてください!!」

 

 キラキラと目を輝かせる三人にすごく申し訳ないような気分になる。

 

「……魔力切れを起こさない。それが、俺の固有魔法らしい」

 

「「「へ?」」」

 

 三人の虚を突かれたかのような声がシンクロした。




ハメ匿最終日!
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