うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる   作:嵐家マダ

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不運の後の幸運は続くもので

「誠治さん! この方で間違いありませんか?」

 

 飛び出してきた九重を抱きとめた俺に、ロスティが確認する。

 

「ああっ! 間違いない」

「すぐに会長に視てもらいましょう。もしかしたら、何か影響が出てしまっているかもしれないので」

「そうだな」

 

 数分前の空気感とは完全に切り替わり、俺たちは会長さんと千里のいるであろう執務室へ駆け戻った。

 

 ◇◇◇

 

「会長。誠治さんの後輩さんを空間から出すことはできました。ですが、何らかの後遺症がある可能性もあるので、一度視てもらえませんか?」

「二人とも……意外と、いや、かなり早かったね。でも、状況は分かったよ。彼女をそこのソファに寝かせて」

 

 会長さんに言われるがままに、九重の身体をソファに寝かせる。

 すると、以前男二人の情報を視たときのように、会長さんが九重の額に手を当てた。

 

「——っ!? これは……」

「会長?」

「何か視えたんですか?」

 

 だが、その次の瞬間には飛び退くように、九重から離れ、驚愕の表情を浮かべる会長さん。

 

「……いや、その逆だ。何も視えない。……フェル、誠治君。彼女を袋の空間に閉じ込める前、もしかして消却の魔女に何かされていなかったかい?」

「……そういえば、九重は急に胸を押さえて倒れて、そのあとすぐ……いや、ほぼ同タイミングでデリートが表れていたな」

「そうだったわね。……そういえば、あの胸を抑えるような仕草、九重さんに魔力を消された男たちも似たような恰好で倒れていなっかった?」

 

 言われてからもう一度九重の恰好を見て、思い出す。

 確かにあの男たちも胸を抑えるようにして倒れていた。

 ……魔力を消されると、こうなる? もしくは魔力が胸や心臓付近に宿ったりしているのだろうか?

 いや、そんなことより九重は大丈夫なのか?

 

「フェルの言うとおりだよ。間違いなく、この九重君は魔力を消されて、その反動で気を失っているのだろうね。でも、魔力を消されている以外には身体に変化は起きていないはずだから、このまま目を覚まさない、と言うことはないだろうけど……」

 

 俺の内心の疑問に答えるように会長さんが言う。

 だが、その言葉尻はどうにも煮え切らないような雰囲気だ。

 

「何か、心配事が?」

「……いや、具体的にどう、こう、という訳ではないんだけどね。前回の男たち二人は、消されていても、わずかに得られる情報はあっただろう? それが完全にないとなると……不安を抱かない、という訳にはいかないだろう?」

「なるほど……」

「それに……少なからず私もあの時よりは魔力量が増加しているはずだろう? それでも視えないとなると……相手のレベルとともに、不安も大きくなるよ」

「また、あの時みたいな方法で視ることはできないのか?」

「……誠治君の方からそう言ってくれるのは嬉しいけどね。このレベルを力押ししようとすると、それこそ一晩中でも効かないかもしれない。目的なくするだけなら、大歓迎なんだけどね……。魔法を使いながら、魔力を増幅され続ける、と言うのはさしもの私でも耐えられるかはわからないよ」

「……いや、そうだよな。すまない」

「いいよ。さっきは無理を言ってしまったし。助けられる手段が目の前にある中で、それを実行できないというのはつらいかもしれないけど、今は回復を待つのが先決だと思う」

「……ああ。そうだな」

 

 熱くなった思考が少しずつ、冷めていく。

 そうだ。もしかしたら、もう二度と会えなかったかもしれない九重に再会することはできたんだ。

 一つ前進しているのだから、ここで焦ることはない。

 

「それじゃあ、九重さんの身体にはその魔力が消えている点以外、気になるところはないってことでいいのかしら?」

「そうだね。私の視える限りではそうなってる。二、三日様子を見て、もしまだ目を覚まさないようなら病院へ連れて行こう」

「……病院? なんて言って診せるんだ?」

「魔法使い専門のお医者さんがいるんです。魔法による負傷は、普通のけがとはまた違いますから」

「そうなのか……」

 

 魔法使いの専門医がいると聞いて、少し安心する。

 でも、そうだよな。この魔女協会は国と絡んでいたりするんだもんな。

 そういうものがあってもおかしくはない。

 

「まあ、そういうことなら、ベッドに寝かせてあげましょう。ロスティ、まだ開いている部屋はあるかしら?」

「……魔力が増えたので、部屋を増やすのも簡単です。とりあえず誠治さんの部屋のもう一つ奥に部屋を増やしました。そこに寝かせましょう」

「分かった。フェル、悪いんだが、九重の着替えとかを準備してもらっていいか? さすがにこのまま何日も寝かせるのは息苦しそうだ」

「そうね。いいわ、任せて」

「私は念のため医者に連絡を通しておくよ。九重君のことは任せるね?」

 

 そう言って会長さんは自分のデスクに戻り、作業を始める。

 俺はソファからもう一度九重を抱き上げ、自室の隣に出来たという新しい部屋に向かった。

 

 ◇◇◇

 

「……これで、いいわね」

 

 九重を寝かせた後で、千里に着替えなどを任せ、終わるのを待っていると中からそんな声が聞こえてきた。

 

「終わったか?」

「ええ、もう入ってきていいわよ」

 

 言われて、中に入る。

 寝かされている九重は未だに苦しそうな表情を浮かべているが、着替えさせてもらったおかげか、それでも幾分かは楽そうにも見えた。

 

「とりあえず、交代で様子を見ましょう。最初は私が見てるから、誠治とロスティはシャワーでも浴びてきたら? あ、もちろん一人ずつよ?」

「何の念押しだよ……」

「そ、そうですよ! ……それに、そんなシャワーを浴びなきゃいけないようなことなんて、してませんからっ!!」

「え? でも、誠治にしか開けないような袋を開けるようになるくらいには魔力が増えたんでしょ?」

「そ、それは……そう、ですが……! で、でも、してないですから! ねっ! 誠治さん!」

「……あ、ああ。そうだな」

「で、では、私は先にシャワーを使わせてもらいます!」

 

 浴びるんだか浴びないんだか、どっちなんだとツッコミたくなるのをグッと抑えて、部屋を出ていくロスティを見送る。

 その顔は真っ赤に染まっていた。

 

「……で? どこまでしたのよ? あの様子ってことは、最後まではしてないの?」

「……してない。なあ、千里。俺の魔力増幅の効果って、日によって差があったりするか?」

「話を逸らした……ってわけじゃなさそうね? そうね、確かに言われてみれば、……初日、と言うかあの、ホテルの日が一番増えた、かも?」

「……なるほど」

「あ、もしかして、回数を追うごとに増える魔力量が減るとか? 一回目がすごく多くて、二回目以降はそれなりになっていくみたいな」

「ああ、いや、うん。それもあるかもしれないんだが……」

「何よ? 煮え切らないわね」

「いや……」

 

 数十分前のロスティの様子を思い出す。

 

 ◇◇◇

 

「そ、そ、そそその! こういうのって、き、キスからすれば、いいんでしょうか?」

「……正解があるものじゃないと思うけど、ロスティがしたいと言ってくれるなら、そうしよう」

「……じゃ、じゃあ、……したい、です」

 

 一緒に腰を掛けたベッドの上で、俺のズボンをギュッと力強くつかみながら、控えめに上を向いて唇をすぼめるロスティ。

 そんなロスティに俺も顔を近づけて——。

 

「ん♡……誠治さん。今なら、開けられるかもです」

 

 その後すぐ、ロスティは袋を開けたのだった。

 

 ◇◇◇

 

「千里、これは、仮説だぞ? 仮説なんだが……」

「……ええ、?」

「俺が魔力増幅を起こすトリガーが性的興奮を伴う接触、だっただろ? それに対して、魔力を増やされる側、つまり相手にも受け方があるかもしれないんだ」

「受け方?」

「ああ。……その、例えば、なんだけど、極度の興奮状態に増幅される側があった場合、その興奮に比例して、増幅される魔力も大きくなる、みたいな」

 

 ロスティとキスをする直前、顔が近づくにつれて、彼女の拍動はくっきりと耳に届くほどに強く音を立てていた。

 緊張や期待、恐怖、憧れなど、ロスティ本人ではないため推測に過ぎないが、色々な感情が相当強く彼女の中を渦巻いていたと思う。

 その結果が、キスだけで、俺しか開けないはずの袋を開いたという結果だ。

 

 そして、千里の体感でも、あのラブホの日が一番魔力が増えた気がする、とのこと。

 裏付けが取れた、と言うほどではないが、馬鹿に出来ない仮説な様な気がしている。

 

「……なるほどね。確かに、魔力の元とその使用者の相性なんかを研究しようとした人がいたって話をずっと昔に聞いた覚えがあるわ。一理あるかもしれないわね」

「だよな……。いや、だからなんだって、話なんだが」

「いや、貴重な情報でしょう? あなたは今や魔女協会における最大の強みにして、弱点。そして、ギルドの長であるデリートにまで目を付けられているのだから。誠治についての情報が揃っていくのはいいことよ」

「そうか。そうだよな」

 

 自分の立場を改めて考える。

 今回のことは本当に運が良かったとしか言いようがない。

 もし俺が捕まっていたら、本当に何がどうなっていたかわからないのだ。

 

「……なあ、千里。今日はほんと、ありがとう。千里が一緒に来てくれて、無理やりにでも転移魔法を使ってくれて、ほんとに助かったよ」

「……な、何よ急に。そんな改まる必要ないわよ。だって、私と誠治は共同生活者。パートナーだもの」

 

 言いながら、晴れやかな笑顔でこちらに手を差し出してくる千里。

 

「パートナー……そうだな。これからもよろしく頼むよ、千里」

 

 俺はその手を取り、千里と握手を交わした—— と、思ったところで、急に手を引かれる。

 

「ええ。……ところで、誠治」

 

 耳元に寄せられる千里の顔。

 

「さっきの仮説、検証してみない?」

「……え? さっきのって、あれか? 興奮の度合いとかの……」

「ええ。だって、あなたの情報は重要でしょ……。それに……受け手の興奮の度合いもだけど、誠治の興奮の度合いも関係しているかもしれないでしょ? その……私は、これからも、誠治と……したい、と思ってるから、その満足度を高めるためにも、ね?」

「——っ!」

 

 千里の手が、俺の手をさらに強く掴み、空いた逆の手で、俺の頭を抱え込み、双丘クッションへと押し付ける。

 

「……どう? 私の心臓の音、今はどんな感じかしら?」

「ま、まふぇ。せ、せめひぇ、夜ひ(待て。せめて、夜に)……」

 

 言葉を発しようにも、顔を押し付けられているせいでうまく話せない。

 

「んっ♡ 今、少しだけ魔力が来たわ。やっぱり関係あるのかもっ……んぅ♡」

 

 嬌声を頭上に浴びながら、俺は何とか顔の位置を変え、普通に喋れるポジションを確立する。

 そして、深呼吸を一つして、渦巻いた欲望をしまい込んだ。

 

「千里、ここではさすがになしだ。気を失っているとは言え、九重の部屋だし」

「……んっ、そ、そうね。それは確かにそうよね」

 

 俺の言葉に、冷静さを取り戻し、ようやく顔を開放する千里。

 だが——

 

「……でも、今日の夜には、確かめてみましょう? 私に感謝してくれているなら、その、ご褒美、ってことで」

「………………分かった」

 

 握手しているのは逆の手をこれでもかと握り込み、手のひらに爪を食い込ませて、ギリギリで理性を保つ。

 これで性経験一週間弱なのだから、もう恐ろしい。

 

「……戻りました。誠治さん、次お風呂いいですよ」

 

 そんなことを考えて入れば、今日はタオル巻きではなく、しっかりと着替えを終えてきたロスティが風呂から戻ってくる。

 

「あ、ああ。分かった。じゃあ、風呂もらうな」

「はい! ……誠治さん? フェル? なにか、ありました?」

「……いや、なにもないぞ?」

「え、ええ。何でもないわ。それよりロスティ、私もお手洗いに行きたいから、一旦九重さんのこと任せるわね」

「分かりました……?」

 

 お互い、早足気味に部屋を出る。

 そして、顔を合わせることなく、道を分かれた。

 

 ……もし、千里の言った仮説が正しかったら、今日の増幅量は……多いかもしれない。

 

 ◇◇◇

 

 脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入る。

 魔女協会の浴室、と言うか浴場は数人が同時に使える前提だが、魔女協会と言う名前の通り、俺以外に男はいない。

 だから、俺は、このデカい風呂を独り占めできるのだ。

 

 そんなことを考えながら、シャワーを被っていれば——。

 ガララっと、扉の開く音がして、誰かが浴室に入ってきた。

 

 咄嗟に顔を上げる。

 すると、正面の鏡から、ちょうど背後の人物が見えた。

 

「……誠治君。ここ数日私を放置した責任は取ってもらうからね?」

 

 そこにいたのは熱に浮かされたような、とろけた表情をした会長さんだった。




疲れマ〇の女性版ってあるのかな?というラストシーン。
高評価、お気に入り登録が最高のモチベなので、ぜひお願いします!!
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