うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望。
「か、会長さん……いきなりどうしたんです?」
咄嗟に体を洗う用に持ち込んでいた小さいタオルを、徐々に角度が付き始めたそれにかけ、鏡から目を逸らす。
「もう三日だよ? 三日、私の初めてを奪っておいて」
だが、そんな俺の配慮など一切気にせず、背後まで歩み寄り、背中に体重を掛けてくる。
張りがあり、美しい球体を思わせるそれがこれでもかと存在を主張していた。
「……いや、確かに会長さんとは三日間してないかもですが」
「酷いなぁ。フェルとは毎晩しているんだろう? それにさっきはロスティともしたみたいだし。私ももう我慢の限界なんだよ」
「……」
そう言われると何を言っていいかわからなくなる。
と言うか、もう、背中に触れているあれが気になりすぎてまともに頭が回っていない。
覆い隠すために使ったタオルはすでにテントを張っていた。
「……ふふ。どうやら、その気なのは私だけじゃないみたいだね」
肩越しに身を乗り出し、それをしっかりと見つめた会長さんは嬉しそうに耳元で囁く。
「フェルとロスティは九重君の部屋だろう? これだけ離れていれば声は聞こえないよね?」
話しながら、体を俺と鏡の間に滑り込ませる。
視界が、会長さんで埋まった。
「……いいんですね?」
「その言葉を待ってたよ♡」
ここまでされては理性のタガも吹き飛んでしまうというもの。
「んっ♡ あんまり長風呂して疑われるのも良くないからね♡ 早速——ぁっん♡」
♡♡♡
肩を並べて、湯船に浸かる。
ベッドではない分、無理をした体勢に温かい湯が染みた。
「はぁ……♡ 良かったよ誠治君」
「それは良かったです。俺も、刺激的でした」
ピロートークならぬ、バストークに興じながら、疲れた体をねぎらう。
それにしても、このタイミングで会長さんが風呂に来たというのはもしかして狙ってだったりしたのだろうか?
「……良かったよ。この快感を知ったのが、二十五を超えてからで。私は立場上ストレスのたまることが多くてね。特に会長になりたての頃はそれはそれは酷いものだったんだよ」
「……そういえば、会長さんが会長って呼ばれるようになったのは何時からなんですか?」
初対面の時は名前を隠したそうにしていたが、その前は何と呼ばれていたのだろうか? と疑問がよぎる。
「私が会長になったのは……五年前くらいだったかな。ちょうど誠治君くらいの年齢の頃だよ。先代会長は私の母だったんだけどね。色々あって急遽交代することになって、気が付けば私にお鉢が回って来たのさ」
「会長さんのお母さんですか……。そういえば、前にフェルも少し言ってましたが、魔法使い、魔女って意外と家柄が関係してたりするんですか?」
「そうだね。誠治君は魔法が使えるようになる方法は知っているよね?」
「はい。魔力の元との接触ですよね?」
「その通り。だけど、実はそれだけじゃないんだ」
「と、言うと?」
「中にはね、生まれたその瞬間から魔法を使える先天的な魔法使いも存在するんだよ」
「なるほど……それは遺伝とかですか?」
「おそらく、だけどそうだね。確認されている事例では、必ず両親のどちらかは魔法使い、魔女だった。その名残で、魔法使い、魔女の家系ってものが現存しているんだよ」
「フェルや会長さんもそんなご家庭の出身で?」
「そうなるね。ちなみにロスティも魔法使いの家系だよ。自分で言うのもなんだけど、みんな実家は裏の権力者だからね……私たちに手を出した責任は重いよ~?」
楽しそうに笑いながら、とんでもない爆弾発言が投下される。
そういうことは先に言ってほしい。
え? 言われたら止めたのかって? ……それは、ないかもしれないけど。
「……先天的な魔法使いの人は協会にはいるんですか?」
「ああ、いるよ。私もそうだしね。あとは……うーん、会うことがあれば教えるよ。フェルとロスティは魔力の元経由だね」
会うことがあれば、か。
そういえば、ここに来てもう一週間以上が経っているが、未だに三人以外の人を見かけていない。
あ、でも、九重を見てくれる医者の人はいるんだったか?
「会長さんの仕事ってどんなことがメインなんですか?」
「ん? 私の仕事かい? まあ、そうだね。基本的には各地に調査、任務に出向いている魔女たちから進捗を聞いて、まとめて、適切な情報を回すことだね。あとは……面倒なお偉方とのやり取りとかね」
「国ともつながりがあるんだもんな……大変そうですね。月並みですが」
「ははっ、そうだね。でも、私は魔法があまり得意ではないからね。こういうところで頑張らないといけないんだ」
「得意じゃない?」
「ああ。私は固有魔法以外の魔法は基本的に下手くそでね。身体強化だって、もう誠治君の方が上手いくらいさ」
そう言いながら、湯船から手だけを出して、その上に水の塊を出現させる。
だが、その塊は本当にただの塊で、千里が見せてくれた火球のようなきれいな球状とは程遠かった。
「ほら、歪だろう? 運動神経が悪いみたいな感じでね、どうにも上手くいかないんだよ。だから、私は裏方に徹しているのさ」
「そうだったんですね。なんか、ちょっと意外です。何でもできそうな人だと勝手に思ってました」
「ふふっ、まあ、そう見えていた方が都合が良いだろう? 会長なんて立場なんだから。でも、君にはあんな所やこんな所まで見られてしまっているからね。隠さなくてもいいかなって……そうだ! せっかくだし、このお風呂にいる間、誠治君の質問になんでも答えてあげよう! スリーサイズでも、一番良かった体位でもなんでも聞いておくれ」
……恥はないのだろうか?
と思ったが、上気する頬を見て、若干のぼせているんだろうと察する。
すでに俺たちは三十分以上、熱い時間を過ごした後だ。
とは言え、このテンションの人にさっさと上がりましょう、と言っても素直に聞いてもらえるとは思えない。
ここは簡単な質問で、会長さんを満足させて、サクッと風呂を上がりやすい空気を作るべきだろう。
会長さんとは反対に、段々冷静になってきた思考が、そんな結論をはじき出す。
なるべく、それ以降の会話につながりにくくて、なおかつ、会長さんが満足しそうな質問……。
「あ、じゃあ……」
「うん、なんだい?」
「会長さんの名前が知りたいです。あんな所やこんな所を知っているのに、名前だけ知らないって何だか変な感じですし」
少し考えて、俺はそう質問した。
名前なら、そこから別の会話には発展しにくいし、なおかつ俺も気になることだ。
それに、会長さんはわざわざ会長と呼んでほしいというくらいには名前を隠したがっていた節がある。
そんな、ウィークポイントを突けば、満足してくれるだろう、と言う魂胆だった。
だが……
「な、名前、ね……」
言い淀むだろうとは思っていたが、想定していた言い淀み方とは違う。
想像では、いつも通りの余裕な態度で「へぇ? それを聞くの?」みたいに濁される者だろうと思っていたのだが、なんだか本当に言いにくいことを言いあぐねているようなそんな雰囲気を感じる。
もはや、下ネタなんかよりよっぽど恥ずかしがってないか?
「……あ、いや、もし言いたくない事情とか、そういうのがあれば、別に」
そろそろ風呂から上がらせようとして聞いた質問で、どんどん顔を湯船に沈めていく。
顔の紅潮具合はもはやリンゴレベルだ。
「……誠治君。笑わない、と約束できるかい?」
「は、はい」
そんなに本名を名乗るのが恥ずかしいのだろうか?
もちろん、何を恥じらうかは人の勝手だが、さっきまで、スリーサイズでも好きな体位でも何でも聞いてと言っていた人とは思えない。
なんて、思っている横で、会長さんは意を決したと言わんばかりに顔を上げる。
ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
「……るく」
「え?」
「……みるく、だ。ひらがなで」
「………………みるく、ちゃん?」
「ちゃ、ちゃんを付けるな! ああっ! もう! 悪かったね! クール系を気取っている私がみるくなんて可愛い名前で!」
思わず、ちゃん付けで呼んでしまった。
でも、それも仕方のないことだろう。
会長さんの言う通り、とてつもないギャップだった。
「……い、いえ、いいと、思います」
「わ、笑ってるだろう! 良いよもう! 私出るから!」
ざばん、と波が立つほどに勢いよく立ち上がり、怒ったような、それでいて恥ずかしがるかのような歩みで浴場を出ていく会長さんもといみるくちゃん。
「……みるくちゃんか。また今度、呼んでみよ」
そんな反応が、俺の中に眠っていた妙な嗜虐心に火をつけてしまったのはまた別の話だ。
◇◇◇
「……長かったわね」
少し時間を空けてから、風呂を出て九重の部屋へ戻る。
すると、なぜかこちらをジト目で睨みつける千里が待っていた。
「あ、ああ。疲れてたからな。長風呂しちまった」
「……へぇ? ずっとお風呂にいたんだ?」
「ん? ああ。ずっと風呂にいたぞ?」
「おかしいわね。ちょうどさっきロスティがお手洗いに立った時、お風呂上がりの会長を見たって言ってたんだけど。魔女協会ってお風呂は一つだけなのよね……ねぇ、誠治?」
「………………」
「あなたがお風呂に行く直前、今晩は検証も兼ねたことをしようって言ってたわよね私たち。なのに、その前に誰かとするんだ。ふーん」
「……すまない」
「何が? 別に、誰としても私はとやかく言える立場じゃないし、それにして良いって言ったでしょ?」
「……ああ」
「……ねぇ、誠治。私が何にもやもやしているかわかる? 隠そうとしたことよ。別に隠す必要はないじゃない。して良いって言ってるんだし」
「……すまな——」
「もう謝罪はいらない。……ん」
続けて謝ろうとする俺の言葉を遮ったかと思えば、こちらに向けて大きく手を広げる千里。
「いや、千里……」
「ん!」
もう一度、こちらに大きく手を広げてくる。
どうやら俺に応えないという選択肢はないらしい。
求めに応じるように千里の身体を抱き込めば、ギュッと、中々の力で抱擁が返ってくる。
「このすけこまし。でも、どうせすけこますならもっと堂々としてなさい」
「……分かった」
「……あ、でも、開き直ってオラオラ系になるのとかはやめて」
「……分かった」
「…………あ、あと、ちゃんと今晩、検証も、するから」
「…………分かった」
……くそっ。
めんどくさ可愛いが過ぎるだろう。
なんだこのめんどくさいと可愛いのいい塩梅は。
ちょっと嫉妬深い甘え系? 大好物ですが?
直前まで脳内を占めていた申し訳なさが、一気に隅へ追いやられる。
そのくらいの威力を秘めた行為と言葉だった。
「……そういえば、夜の見張り、と言うか九重の面倒はどうするんだ?」
「深夜の1時くらいになったら交代してくれるって」
「俺たち二人で抜けちゃっていいのか?」
「うん。次は私の番だからって、ロスティが」
「……念のため、声は控えめにしよう」
「……分かったわ。でも、しっかり検証するから」
「ああ、それは分かってる」
しばらく抱き合ったまま、耳元で囁き合う。
ベッドに眠らされている九重が、少しだけ眉を潜めたような気がした。
◇◇◇
起きてきたロスティと見張り役を交代し、今日は俺の部屋ではなく千里の部屋へ向かう。
俺の部屋では、九重の部屋と隣り合っているが、千里の部屋は部屋一つ分離れている。
何が、とは言わないが、念のためだった。
部屋に入れば、いきなり千里は後ろ手に鍵を閉め、ぴたりと俺にくっついてくる。
「……じゃあ、始めましょう。興奮の度合いと魔力の増幅量に関連があるのかの調査を♡」
「ああ」
軽く触れ合うところからゆっくりと始めていく。
直截的な場所には触れず、あくまでスキンシップ的なやり取り。
「っ♡」
少しだけ、千里の肩が跳ねた。
「……うん、今までと比較すると、増加量は小さいわね」
「そうか。……じゃあ、こうすると、どうだ?」
軽く唇を合わせるだけのフェザーキス。
仕掛けた側の俺の鼓動がわずかに早くなった気がした。
「んっ♡」
「……間違いなく、さっきよりは大きいわね」
「なるほど。少なくとも、行為による差はありそうだな」
「そう、ね。んぅっ♡ ねぇ、もっと……」
求められ、次第にヒートアップしていく俺たち。
だが、今日は検証と言う目的があるため、それでも少しずつ、少しずつ進めていった。
♡♡♡
「……はぁ、ふぅ……。やっぱり、関係がありそうね」
「ふぅ……だな」
お互いに肩で息をしながら、検証結果を振り返る。
何が作用しているか、については残念ながら、会長さんでもない限り分からないが、それでも体感的に、いつもより大きい、小さいの判定はできた気がする。
「……ねぇ、今、キスしたらどうなると思う?」
「それは……」
「ええ。確かめましょう」
乱れ切った髪をかき上げながら、跨ってくる千里。
俺たちの検証は明け方まで続いた。
◇◇◇ ——???視点——
「……へぇ? 久しぶりに連絡を寄越したと思ったら、だいぶ面白いことになってるみたいだね」
深夜、溢れるメールボックスの一番上に届いたそのメッセージを開いてボーイッシュな人影が呟いた。
「魔力の元となった人間に、消却の魔女……これは、往診の必要がありそうだ」
性癖大公開スペシャル。
恥ずかしがる女の子とめんどくさい女の子、好きですよね?