うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望
触れられるかと伸ばされていた手は、俺を指さす手に変わり、正体見たりとでも言いたげな口調で千里は言う。
「……はい?」
当然言っている意味が分からない俺は間抜けな声を上げることしかできなかった。
「だから、この部屋にある魔力の元! それがあなただと言ってるのよ!」
「俺が? 魔力の元? はぁ……? 何を馬鹿な……」
「まぁ、いきなり言われても信じられないわよね。でも、本当よ」
とても冗談を言っているとは思えない顔つき。
だが、そんな顔をされてもこればかりは信じられない。
「待ってくれよ。まずその魔力の元とやらに人がなることはあるのか? それに、そんなに大きな力が急に宿ることもあるのか?」
「それは……後者はあるけれど、人が魔力の元という例は聞いたことがないわ」
「だろ? やっぱり勘違いじゃないのか?」
「いや、でも……」
千里の瞳がわずかに揺れる。
どうやら千里も半信半疑ではあるようだ。
「ま、誰にだって勘違いはあるんだから、気を取り直して探してみようぜ。俺も手伝うから——」
そんな千里の肩に手を置き、その魔力の元とやらを俺も探してみるかと動きだそうとした時——
「脱いで」
「……は?」
「だから、着ている物、全部脱いでって言ってるの! もしかしたらその服のどれかが魔力の元かもしれないし、違えば、過去に例はなくてもあなたが魔力の元だって証拠になるんだから」
「いや、でも……」
「いいか、らっ!」
半信半疑に揺らいでいたはずの瞳をなぜかまっすぐに燃やし、千里が俺の服を脱がせようとしてくる。
「お、おいっ! ちょっと待てよ!」
「何よ、ちょっと確認するだけでしょ! それにあなたの裸ならついさっきも見てるわ!」
「そ、そういう問題じゃねぇだろっ!」
なぜか始まる取っ組み合い。
体勢を崩した俺はその場に尻もちをつき、その上に跨るようにして千里が俺に乗り上げた。
「ほら、いいから! 脱ぎな、さいっ!」
「や、やめろっ!」
前のめりに服を脱がせようとしてくる千里から何とか逃れようと手だけでも反抗する。
そうでもしていないと、下腹部にかかる柔らかい重さに意識が持っていかれそうになってしまう。
だが、抵抗虚しく、俺の頭まで服がずり上がり、視界が塞がれる。
視界を物理的に塞がれてしまえば、勝手に残りの五感が研ぎ澄まされ——。
「ほら、やっぱ、り——んっ♡」
満足げな声を上げた千里がその直後に艶っぽい声を漏らす。
柔らかい重さに反発して自らを堅固にしたそれがズボン越しにもわかる存在感を示していた。
「ちょ、ちょっと誠治……あんた、これ……」
「……一旦、どいてくれ」
「え、あ、うん。ごめんなさい……」
羞恥の滲む声でそれについて訴えかけてくる千里に、俺は努めて冷静に声をかける。
すると、視界が塞がったままでもわかる程度に慎重に千里は俺の上から立ち上がった。
「……それで、魔力の元とやらは本当に俺だったのか?」
それについては一切触れず、気まずい空気ごと押し流すように、俺から話を切り出した。
「え、ええ。そうね。やっぱり、魔力の元は誠治。あなた自身で間違いないわ……」
ちらちらと下半身に視線を感じるが、触れるわけにはいかない。
「そうか……。それで、俺が魔力の元だとすると、どうなるんだ?」
「それは……一度協会本部に確認してみないとわからないわ」
「わかった。俺はどうすればいい?」
「こうなってしまった以上、私と一緒に転移して協会に来てもらうしかないわね」
「……今からか? 明日も仕事なんだが……」
「それについては、協会から話が通ると思うわ」
「話? なんで魔女の協会とやらが俺の職場を知ってるんだよ?」
「そんなもの、協会が調べれば一発よ。誠治が知らないだけで、魔女の存在はかなりこの国にも根付いているんだから」
魔女協会だとかギルドだとか、それだけでも大ごとだと思っていたら、次は国か……。
いったい俺は何に巻き込まれようってんだ?
「わかった。じゃあ、その協会とやらに行こう。転移の魔法だったか?」
「ええ、そうよ。じゃあ早速いいかしら?」
千里がこちらに手を伸ばしてくる。
今度は顔に向けてではなく、握手を求めるような感じだ。
「ああ」
頷き、その手を取る。
すると、突如体の回りが光り出し——気が付けば、俺は知らない空間へ飛ばされていた。
◇◇◇
「ここが……?」
瞬きの合間に移動した空間はかわいらしい雰囲気の部屋だった。
「ええ、そうよ。ようこそ魔女協会へ。といってもここはまだ、居住スペースで協会本部ってわけじゃないんだけどね」
「へぇ? ってことは、ここが千里の部屋だったりするのか?」
「いいえ、違うわ。ここは——」
千里が言いかけた途端、扉の向こうからドタドタとすごい足音が聞こえてくる。
「フェ~ル~! また私の部屋に転移しましたね……!」
そんな勢いのままバンと扉が開かれたかと思えば、バスローブ姿の女の子、おそらく女子中学生くらい? が怒りをあらわに千里を睨んでいた。
「仕方ないじゃないロスティ。この部屋が一番魔力探知しやすいんだもの」
「仕方なくないですよっ! フェルの部屋だって大して変わらないじゃ……ない……へっ? だ、誰ですかっ!?」
ロスティと呼ばれた少女がこちらに気が付く。
「あ、どうも」
格好のこともあって、まじまじ見るのは悪いと思い、視線をそらしながら軽く会釈をした。
「——っ!? お、男の人っ!? フェ、フェルっ! あなたついにやったんですね! 欲求不満が積もりに積もっ——」
「ち、違うわよっ!! さっき報告に挙げておいたでしょ! 魔力の元の回収に行ってくるって! 彼がそうなの!」
「そんな見え透いた嘘に私は騙されませんよ! 知ってるんですからフェルが夜な夜な——」
「あー! あー! やめなさい! それ以上は、というか何で知って……」
……なんだかやかましいのがもう一人増えたようだ。
ここが魔女協会の居住スペースなのだとしたら、おそらくそこの少女も千里と同じく魔女なのだろう。
魔女にはやかましい人しかいないのか?
「フェルの変態! 確かにあなたの魔法があれば男の人なんて連れ込み放題でしょうけど、そういうことするならなおさら私の部屋は通らないでください!」
「だから、違うって言ってんでしょ! これから会長にも会いに行くんだから!」
「か、会長に紹介!? ま、まさか、子供が……!」
「なっ! はぁっ!? そんなわけないでしょ!」
あーあーもう、収集つかないよ。
でも、ここがあのロスティと呼ばれた少女の部屋だとすれば、あんまり長居するのもかわいそうだろう。だってまだあの子バスローブ姿だし……。
俺はそう思って、黙ってやり過ごそうとするのをやめ、口を挟む。
「な、なぁ、いいか? そろそろ案内をしてほしいんだが。それに、君もそろそろ着替えないと湯冷めするんじゃないか?」
なるべく彼女たちの方を直視しないようにしながら、やんわりと仲裁に入る。
「あ……そうよね。ごめんなさい誠治」
「湯冷め……あ、ひゃっぁ!」
千里は落ち着きを取り戻し、こちらに謝罪。
一方で少女はギュッと自分の身体を抱きしめて、その場にしゃがみ込んでしまった。
「み、見られてしまいました。もうお嫁にいけません……」
「なに馬鹿なこと言ってんのよ。あんたのつるペタな胸なんてすっぽりバスローブに隠れてるじゃない。肩しか見られてないんだからノーカンよ」
「なっ! 普段から痴女の恰好をしているフェルからすれば、そうかもしれませんが、そういう問題じゃないんですよ!」
「ち、痴女ですって!? あのね、この格好なのは魔力探知がしやすいからで……」
「あー、はいはい。その辺で! 千里、会長? とやらのところに行くんだろ。早く案内してくれよ」
「……分かったわ。ロスティ、あんたさっきの言葉覚えておきなさいよ」
「ふ、ふんっです! 痴女フェルの脅しなんてこれっぽっちも怖くないですから」
一瞬でも気を抜くとやかましくならずにはいられないらしい二人を何とか諫め、俺と千里は少女と入れ替わる形で部屋を出た。
「千里、今の子は? 彼女も魔女なのか?」
「……ええ。そうよ。彼女はロスティことロスティール。ああ見えてもう二十歳よ」
「は、二十歳っ!? あの感じで、か……」
「身体つきはともかく、言動が幼いのよね。あ、そうだ。それから、ここでは私のことはフェルって呼んでくれる? それがルールなの」
「あ~、コードネーム的な?」
「まあ、そんなところね。……ここよ」
そんな話をしながら二階分ほどの階段を下れば、両開きの大きな扉の前で千里ことフェルが止まった。
普通の現代風建築の建物には似つかわしくない、古めの引き戸。
どちらかと言えば、部屋の扉ではなく、玄関先の門か何かの扉のようなそれは異質な存在感を放っている。
ここが本部なのだろうか?
「会長。フェルよ。魔力の元の回収に行ってきたのだけど、ちょっと予想外のことがあって直接報告に来たのだけど」
「……ああ、分かった。入ってくれ」
扉に向けて声をかければ、返ってきたのは大人びた印象を受ける低めの声だった。
会長ということはこの先に待つ人物も魔女なのだろうが、フェルやロスティとはタイプが違うであろうことは顔を見なくともわかった。
「やぁ、フェル。回収ご苦労。そして君は……永礼誠治君だね。突然のことですまない。迷惑をかけるよ。私は……そうだな。会長、と呼んでくれ」
扉の先、俺たちを迎え入れてくれたのはエリートな雰囲気漂う美人、フェルとは違った色気のお姉さんだった。
切れ長の目に腰まで垂らした黒髪が良く映える典型的な美人。
だが、その美貌にとらわれるより先に、俺の意識は別のところに引っ張られた。
「俺のことを知っているんですか?」
「ああいや、そういうわけではないんだが……すまない。これを詳しく話してあげるわけにはいかなくてね。まあ、つまり魔法のおかげなんだよ」
「はぁ……なるほど」
「もちろん、それ以外のことについてはいろいろと説明させてもらうよ。さあ、二人ともかけて」
指されるがままにソファに並んで腰を掛けると、会長さんに向けてフェルがここに至るまでの説明を始めた。
「——というわけ。ほかに目ぼしいものは見当たらなかったから、誠治が魔力の元で間違いないと思うわ」
「……なるほど。人が魔力の元に……魔力の元の事例は色々聞いていたけれど、生物、それも生きた存在がなってしまう事例は初めてだね」
「やっぱりそうですよね」
「……まあ、なんにしても、魔力の元というのなら、私たちで保護をするしかない。誠治君、少し手を貸してくれるかい?」
「え、ええ、どうぞ」
会長さんに両の手を差し出す。
すると、会長さんはおもむろに俺の手と指を絡めるようにして手をつないだ。
綺麗な白い指が俺の指と絡められ、その柔らかさに少しだけ心臓が早鐘を打つ。
「え、ちょ……」
「悪いね。すぐに済むか——んっ♡」
急なことに戸惑っていれば、突然艶っぽい声を出して肩を跳ねさせる会長さん。
「会長?」
「えっと、どうかされました?」
フェルと二人で怪訝な目を向ける。
「そ、そんな目で見ないでくれ……。違うんだこれは……」
すると会長さんは額に小さく汗を浮かべて、頬を軽く紅潮させながら言う。
「フェル。誠治君の……条件が分かったよ。んぅっ♡。彼という魔力の元から……魔力を引き出すトリガーは……異性との性的興奮を伴う接触だ」
「……え?」
「はい……?」
俺たちは二人して間抜けな声を上げる。
だが、いまだに俺の手を握ったままの会長さんだけは真剣だった。
「会長? おっしゃっていることの意味が……」
「ぁんっ♡ だ、だからね。……こうした直接的なスキンシップが、彼から魔力を取り出す——んぅっっっ!」
ビクンと会長さんの腰が跳ねた。
「ちょ、ちょっと誠治! 早くその手を離しなさい!!」
「あ、ああっ!」
まったくわけがわからないが、俺は強く繋がれた手を離し、会長さんから距離を取る。
「………………」
「はぁ、はぁ……」
肩で息をする会長さんの呼吸音だけが響く、気まずい空間。
でも、さっきの会長さんの言葉を整理すると——
「ンンッ! な、情けない姿を見せてしまったね。でも、分かってもらえたと思う。彼の条件は間違いなく、異性との性的興奮を伴う接触だよ」
どういうわけか勝手に乱れた服を直しながら、会長さんが宣言する。
俺から魔力を引き出すトリガーが、異性との性的興奮を伴う接触?
「それも、誠治君はかなり貴重な魔力の元。覚醒だけではなく増幅の力も持っている」
「魔力増幅……あ! そういえば、私も誠治に触られた後、不自然に魔法が強くなっていました!」
「……参考までに、フェル。どこを触られたのか聞いても?」
「……胸、です」
「なるほど。やはり間違いないようだ」
フェルと会長さんの目がまっすぐに俺を捉える。
その目はまるで獲物を見つけた獣の様で——。
「誠治、今日は遅いから私の部屋に泊まっていいわよ」
「誠治君。この後私の部屋に来ないかな?」
……うーん、これなんてエロゲ?
俺はソファに体を投げ出し、天井を見上げた。
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