うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望
九重が正式に魔女協会へと加入し、俺も回復魔法の訓練を初めて、二週間ほどが経った。
最近になってようやく、出力を絞った魔力の解放が出来るようになってきている。
「誠治ー会長が全員集まってくれだって」
自室で一人、魔力制御の訓練をしていれば、おもむろに扉を開いた千里がそう言った。
「おう、分かった。すぐ行く」
結局、あの日、デリートの襲撃があって以来、俺たちは魔女協会を離れられていない。
千里はちょこちょこ必要な物資の調達やらに行っているようだが、それも最低限だった。
「全員集合なんて、珍しいわよね」
「だな。ここに来てから初めてだ」
「デリート関連で何かあったのかもしれないわね」
「そうだな」
そんな会話をしながら、会長さんの執務室へ行く。
途中で、ロスティと九重にばったり出くわした。
「あ、先輩! と、フェルさん」
「二人も執務室ですよね?」
「ああ、そうだ。……九重、効かないから魅了を使ってくるのはやめなさい」
「……むぅ、一回位いいじゃないですか!」
「良くない。それより集合掛けられてるんだから、早く行くぞ」
九重の固有魔法は消却から魅了へと変わり、日々こうして魅了を狙ってくる。
もちろん、一度も掛かったことはないが、気は抜けない。
そんな九重のもともとの固有魔法だった消却だが、依然として使えるものの出力は下がってしまっているらしい。
理由は分からないが、十中八九、固有魔法でなくなったことが関係しているだろう、とのこと。
「誠治さん、訓練の調子はどうですか?」
「結構いい感じ。ロスティがさらに壁を厚くしてくれたおかげで、遠慮なく訓練できるしな」
「わ、私も魔力量を増幅してもらってるので……でも、お役に立てているようで良かったです」
「ああ、助かってるよ」
そうこうしているうちに、あの門の前まで辿り着く。
何度見ても、この門には違和感を覚えてならない。
「会長、来たわよ」
千里が声を掛けながら扉を開ける。
「すまないねみんな。急に集まってもらっちゃって」
そんな部屋では隠しきれない疲れの滲んだ表情の会長さんが待っていた。
「会長、大丈夫ですか?」
「ああ、ロスティ。大丈夫だよ。とりあえず、座ってくれるかな」
四人並んでソファに腰を掛ける。
日陰先生は昨日、急患が来た、と言って、ロスティから新しい鍵を受け取って帰ってしまったのでこれで今の協会に居る人間は全員だ。
「それで、今日集まってもらった件なんだけど……二年前の再来だよ。また、消却の魔女が暴れ始めたんだ」
「「「「!?」」」」
二年前の再来、その言葉に特にロスティが大きく反応する。
「まさか……」
「ああ、そのまさかだよ。日陰先生が帰ったのも、その被害者を見るためだったんだ。最初は消却の魔女の仕業だとは思わなかったんだけどね。でも、昨日今日で、既に協会の魔女が三人やられた。いきなりこんな勢いで協会の魔女を攻撃できるとなるとギルドの仕業で間違いない。それに、やられた三人はみんな胸を抑えるようにしていたらしい」
「——っ!」
「今回の攻撃は明確に私たち魔女協会が狙われている。目的は間違いなく誠治君だろうね」
会長さんの目が俺を射抜く。
俺を狙ってギルドが動き出した……。
この数週間の間にどんな変化があったのだろうか?
それとも、俺たちが全く顔を出さなくなったから、強硬手段に出たのか?
「会長、それで、私たちを集めたってことは……」
「そうだよフェル。これ以上の犠牲者を出すわけにはいかない。ギルドはデリート一人の組織じゃないからね。このまま協会メンバーが被害に遭い続けて、何かの拍子にここが特定されるようなことになれば危険だ」
「こ、ここがバレることなんて……」
「ない、とは言い切れないだろう? ロスティ。だって、ここに戻るにはフェル以外、みんな鍵を使うんだ。ここまで連続して協会メンバーが被害に遭っているとなれば、鍵の存在を気取られていてもおかしくない」
「そ、それは……」
ロスティが身体を小さく縮こまらせる。
そんな彼女に一瞥をくれてから、会長さんは言った。
「フェル、九重君、誠治君。君たち三人には任務に出てもらうよ」
「……ちょっと待ってください。狙われている先輩を外に行かせるんですかっ!?」
会長さんの言葉に俺より先に九重が反応する。
「そうよ。さすがに危険だわ。いくら気配察知の精度、魔力の出力制御が出来るようになったからって誠治はまだ魔法に触れ始めてから一か月程度なのよ?」
九重の言葉を援護するように千里も続いた。
だが、
「それでもだよ。協会の現在勢力はそこまで多くない。もはや未完成でも誠治君の回復魔法に縋らないとまずい状況がそこまで来てるんだ。だから、そうなったときにすぐに動けるために、三人には動いてもらいたいんだよ」
会長さんの目は必死だった。
いつもの余裕そうな笑みはどこにも見られない。
それだけ逼迫した状況だということが伝わってくる。
「分かりました。フェル、九重、やろう」
だから、俺から名乗りを上げた。
「誠治……」
「先輩……」
元々、事の原因は俺なのだ。
俺が魔力の元になった理由こそ不明だが、それでも、魔女協会はそんな俺を匿ってくれた場所。
まだ顔を合わせたこともないメンバーが被害に遭っているとなれば、その責任の多くは俺にある。
なら、俺が出来ることをしたい。
もちろん、捕まるわけにはいかないのは分かっている。
それでも、少しでも俺に出来ることがあるのならば、俺はその役目を全うしたいと思う。
「頼めるかな、誠治君」
立ち上がった俺を見てか、会長さんの顔に微かな笑みが宿る。
「ああ、任せてください。フェル、九重、頼む。手伝ってくれ」
会長さんに答えた後で、俺は一歩前に踏み出してから振り返り、二人へ頭を下げた。
「「……」」
微妙な空気が辺りを包む。
しかし——
「分かったわよ。私はあなたのパートナーだもの。あなたがやると言えば、私に否やはないわ」
そんな空気を千里が打ち壊した。
「……フェル、ありがとう」
千里も立ち上がり、こちらへ一歩を踏み出してくれる。
「……私は嫌ですが、それが、先輩の意志なんですよね?」
九重も、複雑そうな表情をしながら立ち上がる。
「ああ。俺も、守ってもらうばかりじゃ恰好つかないだろ」
「……先輩がそう言うならわかりました。私の力は先輩のための力ですから」
「ありがとう」
初任務にして大仕事。
だが、二人となら、大丈夫な気がする。
そんな漠然とした感覚が沸き上がってきた。
「誠治さん、九重さん、フェル……」
そんな俺たちをロスティが申し訳なさそうに見上げた。
「ロスティはここを守るっていう何より重要な役目があるだろ? お互い、頑張ろうぜ」
「……はいっ!」
でも、そう声を掛ければ、暗い顔を振り切って元気よく返事をしてくれた。
「よし、じゃあ、三人には準備が出来次第、まずは日陰先生の病院に行ってもらう。そこで誠治君には回復魔法を使ってほしい。初めての実践がいきなりこんな時で悪いけど、大丈夫かな?」
「ええ。何とかうまくやって見せます」
「お願いするね。……フェルと九重君はその護衛だよ」
「はい」
「任せて下さい」
全員で頷き合う。
「じゃあ、いきなりだけど、世界の存亡をかけた、と言ってもいいくらいの大仕事だ。また無事にここで顔を合わせよう」
円陣のような態勢で、会長さんが音頭を取る。
「「「「おお!」」」」
それに俺たちは声を合わせて応えた。
◇◇◇ ——デリート視点——
「……次の標的は?」
「……はぁ、はぁ……お、俺の探知範囲には、もう……」
「……ああ、そう」
まだ大して魔法を使わせたわけでもないのに、今にも死にそうな顔をしている男から目線を外す。
こいつも使えなかった。
魔法使いとしての素質は、かなり人によって左右される。
接触した魔力の元や、その人の器量、素質と言っても様々だが、個人差が大きいのは間違いなかった。
そんな魔法使い、魔女の中で、私は特殊な存在だった。
——先天的な魔法使い。
ごくまれに生まれると言われる、生まれついての魔女、それが私だった。
はじめは良かった。
そこそこ大きな魔法使いの家系に生まれ、そこで一番に期待されて育ってきた。
私の固有魔法も消却と言う、有を無にする力として、将来、様々な分野での活躍が決まったようなものだった。
だが、強すぎる力はいつだって人を不幸にする。
私には魔法の才能が有りすぎた。
強力な固有魔法だけではない。
人並外れた魔力量、熟練の魔法使い以上に優れた制御力。
魔法における素質、そのすべてが私には備わっていた。
すると、何が起きるか。
答えは簡単だ。
期待は恐怖へ、知らない何かを見るおぞましさへ変わっていった。
私を産んだはずの両親ですら、私を人ならざる何かとして見るようになっていった。
そして、ある日、私は聞いてしまった。
『あの子は本当に人なの? 私たちは、人ではない、本物の魔女を産んでしまったんじゃ?』
一言一句、正確ではないかもしれない。
しかし、強すぎる私の力を両親が明確に自分たちとは違う存在だと、そう認める瞬間を目撃してしまった。
そして、気が付けば……私の中から両親と言う存在は消えていた。
抜け落ちた記憶の穴から推察するに、両親にあたる存在がいたことは分かるが、残念なことに声も顔も、何も思い出せない。
こうして一人になった私は、似たような境遇の者を探し、出会った数人とギルドと言う組織を結成した。
くだらない自己満足、居場所を失った者たちが傷を舐めあうだけの、小さな組織。
最初はそれだけでよかった。
でも、そんな仲間とともに過ごしていくうちに私たちの中には一つの感情が生まれていった。
今思えば、確かにあの時から私は人ではないのかもしれない。
その感情とは——魔法至上主義。
他より、遥かに優れている私たちが、どうして迫害されなければならないのか。
むしろ、人は、私たちに縋り、頼るべきではないのか。
そんな思考が私たちを塗りつぶしていった。
だが、いくら私たちが優れていようとも、所詮は数人。
物語のように、たった数人で常識と言う、強すぎる相手を打倒することは不可能だった。
それでも、私たちは諦めずに活動を続け——そして数十年の時が過ぎた。
気が付けば、私以外の者たちはみんな老いぼれ、日に日に動かなく、冷たくなっていく。
そんな中で、私だけは、人間的に言えば三十歳ほどの外見から見た目が変わらなかった。
そして、ようやく気が付いたのだ。
私は、本当に人ではないのだと。
生まれついた、きっとその時から、私は魔女だったのだ、と。
気が付いたときは、それはそれは狂ったものだ。
同じ存在を探して、手当たり次第に魔法使いを襲った。
自分の魔法で自分の魔力が消せないことが分かってから、私は魔力の消せない存在を探し続けた。
傍からはまだ、ギルドが魔法至上主義を目指していると思われているようだが、それは違う。
私はただ、探しているのだ。
自分と同じ、人ならざる存在を。
魔力の元を求める理由だって簡単だ。
もし、居ないのならば、作ればいいと。
おそらく強い力を持った魔力の元があれば、私と同じ存在を作り出すことが出来る。
ともに悠久の時を生きる仲間が……。
私を理解してくれる、唯一の居場所になってくれる存在が。
「……ふっ、急に感傷的になってしまったね」
急に笑みを浮かべた私を見て、死にそうな顔をした男が肩を震わせる。
……こいつも違うな。
私はその男に手を伸ばし、消却の魔法を発動した。
「へ……あ、あぁっっがぁっ」
すると男は胸を抑えるようにしながら、その場に崩れ落ちる。
「まあ、そうだよね」
彼の固有魔法は便利だった。
対象に敵意を持つ人間を探知する魔法。
二年前のあの日から、私を恐れ、敵意を抱いている魔女協会の人間を探すのにはうってつけだった。
とはいえ、もうこれ以上はいらない。
種は撒き終えた。
「永礼誠治君……そろそろ出てくるんだろう?」
彼の魔法技能はパッとしか見ていないため、はっきりとは覚えていない。
でも、あの日、九重悠月を使って彼に接触したとき、彼は私の知らない方法で九重悠月を攫っていった。
彼我の実力差には気が付いていただろうに。
こういう正義感、行動力と言うものはそう簡単に抑えられるものではない。
ああいうタイプは自分のせいで誰かが被害に遭っていると知れば、黙っていられないタイプだ。
「……ああ、願わくば、キミが私の同類であることを」
そんな言葉を残したデリートの身体が、まだ日中の景色の中に溶け込んでいく。
景色に溶けていく彼女の表情は恋焦がれた相手を待つような蕩け切った表情だった。
Q.「これ、本当にエロコメ作品ですよね?? コメディとファンタジーとシリアスの比がおかしくなってませんか???」
A.「……た、溜めですから(震え)」
評価が下がった翌日にまだこんな話を投げるパワープレイですが、それでも読んでくださる読者の方に最大級の感謝を!
きっとここからエロエロコメコメするので!……多分!