消却の魔女もといデリートもとい藍による日陰先生の病院襲撃? からしばらくして。
「——んぅっ♡」
俺は藍によって魔力を失ったり、弱くなった人に対して魔力の元としての力を発揮する任務を請け負っていた。
もちろん相手側に了承を取ったうえで希望する女性に限った話ではあるが、何と言うか、悪いことをしている気分になる。
無論役得ではあるのだが。
「……これで、魔力は取り戻せたかと」
「……んふっ、ありがと。最初は魔女協会に男が入ったって聞いてびっくりしたけど、君なら納得ね」
「ははは……肩身は狭いですけどね」
「嘘だぁ。常駐の子たちでハーレム作ったりしてるんでしょ?」
「いやぁ……ははは……」
「ふふっ、今後は私も偶に協会に顔を出そうかしら?」
「それはいいんじゃないですかね? ロスティとかも喜ぶと思いますよ」
「ロスティって……ああ、あの小さい子よね? ……もしかして、君……」
「………………じゃ、じゃあ、協会でまた会うことがあれば……!」
「あっ! ……もう、私で最後だったんでしょう? お疲れ様、ありがとね~」
お姉さん魔女の声を背中に受けながらそそくさと病室を出る。
すると、部屋を出たすぐそこで千里が待ち構えていた。
「悪いな千里、待たせた」
「47分……」
「え?」
「17分オーバーなんて、随分と楽しんだみたいね?」
「……いや、話とか、直前確認とか色々あるから、な?」
「ふぅん? まあ、いいけど……さあ、帰りましょ」
「おう、頼む」
若干不機嫌そうだったが、こちらに差し出してきた手を握ればすぐに転移の光に包まれる。
……そういえば、いつの間にかまた、転移の時に身体へ触れるようになったな?
なんて考えるのも束の間、すぐに目の前の視界が晴れ、協会の部屋が——ってあれ?
「主役が約20分の遅刻とは……まあ、サプライズだから仕方ないけどね」
「お疲れ様です先輩! さぁ、こっちに」
「や、やっぱり誠治さんの能力は破廉恥ですよ……でもお疲れ様です」
転移した先はいつもの自分の部屋、ではなく、協会のキッチンダイニングだった。
しかも普段は飾り気のない食堂のようなキッチンダイニングがパーティー仕様に飾り付けられ、どういう訳か千里以外の三人も待っており、俺をねぎらってくれる。
「せ、……フェル? これは一体?」
「誠治が初めて一人で任務を達成したでしょう? だから、そのお祝いをしようって話になっていたのよ」
「……そういえば」
言われてみれば、今回の件の患者は今日のさっきのお姉さん魔女で最後だった。
初めての達成と言われると少し疑問が浮かぶが、確かに千里による送迎以外は俺の力でこなした任務だ。
「と、言う訳で——」
「改めて、誠治くん。魔女協会へようこそ! 今後もよろしく頼むよ! 今日はおめでとう!!」
「おめでとう!」
「「おめでとうございます!!」」
会長の号令に合わせて、クラッカーが弾けた。
みんなに囲まれて祝われて、何とも照れくさい気分になる。
と言うか、協会に入ったのは俺よりも九重の方があとだろうに……。
とは思ったが、わざわざ水を差すのも違うと思い、黙って受け入れる。
「こちらこそ、みんなありがとう。これからもよろしく頼む」
照れて痒くなった鼻の頭を擦りながら、俺も言葉を返す。
すると、キッチンの方から器用に二台のティーワゴンを押しながら、藍も顔を出した。
「誠治君、キミって人は罪な男なんだね」
「……そういうお前は償い中か?」
「ああ、そうだよ。人の輪の中で何かをするっていうのはいいものだね」
「そうか、良かったな」
「ああ。これもキミが友達になってくれたおかげだね」
「俺はきっかけを作っただけ……いや、そうかもな」
「ふっ、そうだよ。さぁ、たくさん食べてよ。私が作ったんじゃないけどね」
嬉しそうな顔をして料理の数々を並べていく藍。
最初はひと悶着あったが、真摯な態度で謝罪を続けた結果、こうして償いの機会を貰っている。
協会内で暮らしたりはしていないが、社会人のように毎朝出勤してきて、自分から掃除やら配膳やらを手伝っているようだ。
「ほら、誠治。早く食べましょう? そして、17分オーバーの真相を事細かに語りなさい?」
「そうだよ誠治くん。せっかく私が腕を振るった料理が冷めてしまった責任は取らないとだよね?」
「先輩を悪く言うつもりはないですけど、きっとおっぱいですね。先輩はこう見えてかなりのおっぱい星人ですから」
「誠治さんの破廉恥……」
「……一応、俺のお祝い、なんだよな?」
冷たい炎を灯す千里と会長に、いつの間にか結構刺してくるようになった九重、いつも通りのロスティと本当にお祝いなのか怪しいムードが漂う。
でも、まぁ、なんだかんだと言って、こんな空気が悪くないと思う俺もいた。
「……そういえば、今日の対象は誠治君より4つ上だったかな? もしかして誠治君は年上が好みかい?」
「む……同い年の方がいいわよね?」
「違いますー先輩は後輩好きなんですよ?」
「……私はダメ、ですか?」
「………………」
「「どうなの?」」「「どうなんですか?」」
……前言撤回。
こんな空気は悪いです。とてもとてもいたたまれない。
助けを求めて藍の方を見れば——
「あ、誠治君は熟女好きかい? まあ、そうだよね~。敵だった私相手にあんなに……おっと、ゴミ捨てに行かないと」
「お、おいっ! 藍、てめぇ!」
ニヤリと顔を歪めて、そんな爆弾を落としていく。
「誠治?」
「誠治くん?」
「先輩?」
「誠治さん?」
「「「「今晩は——」」」」
「眠れると思わないことね?」
「寝かさないよ?」
「離しませんよ?」
「ずっと一緒に居てもらいます!」
四方から、フォークやら箸やらでつかまれた料理が伸ばされる。
くそっ、こうなりゃ自棄だ!
「……望む、ところだ!!」
四方から伸ばされた料理を次々に頬張っていく。
いつか日陰先生に言われたことを思い出す。
ここがエロゲなら、スチル回収のために一人ずつ選んでルートを攻略するだろう。
でも、ここは現実。
こうなった以上、誰か一人を選ぶんじゃない。みんなで幸せになるんだ。
千里が転移してきて魔法を知り、協会で会長やロスティと関わって魔女を知った。
一度戻った生活では、九重を通じて魔法使いの苦労を知り、藍との戦いを通じて、その特殊性を改めて認識した。
そのうえで、でも俺は、この世界で生きていきたいと思う。
現代の倫理観に照らし合わせれば、ハーレムなんてとんでもないのかもしれない。
だが、俺たちは魔法使い。
倫理や常識なんか、遥か彼方の存在だ。
これからも俺たちは俺たちの望む生き方をしていく。
とは言え、この日以上に、俺が『絶倫』で良かったと思う日はないかもしれない。
これにて物語は完結です!ここまでお読みいただきありがとうございました!!
エロコメ作品を書くのは初めてだったので、なかなか緩急というか、エロとコメディとシリアスのバランスが難しく、もどかしい思いをさせてしまったこともあったかと思いますが、それでもここまでお読みくださった読者の方々には本当に感謝です!!
感想などもすごく力になりました!重ね重ねですが、本当にありがとうございました!!
ぜひよろしければ高評価などしていただけると嬉しいです!
また、内容について気になる点やSSとして読みたいものなどありましたらコメント等いただければ、と。確約は難しいですが、執筆を検討しようと思います!※感想返信で代替させていただく可能性もあります。※夜verは別途検討中です。
また、しばらくしたらカクヨムにも投げようと思っているので、その際はぜひ、応援していただけると嬉しいです。
それでは、「うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる」をありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします!