うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望
俺がソファに体を投げ出せば、これ幸いと言わんばかりにフェルと会長さんが距離を詰めてくる。
俺的に言えばおいしい状況ではあるのだが、こう、がつがつ来られすぎると、意外と興奮しないもので、俺の視線は相変わらず大きく開かれたフェルの胸元と、スーツに包まれた会長さんの胸元を往復していた。……ん?
本能と理性は別物なんだ、という現実を実感しながら、そんな光景を堪能していれば、背後で扉が開き誰かが入ってくる音がした。
「か、会長~! 聞いてくださいよ! フェルが男の人を連れ込んで……」
「……」
「……」
豊満な果実の揺らぎに視線を釘付けにされているせいで後ろを向くことはできないが、おそらくこの声は先ほどのロスティと呼ばれた少女だろう。
視線が合ってしまったのか、こちらに迫っていた二人の動きがぴたりと止まる。
「うわぁーん! ここには欲求不満の魔女しかいないです~~~!!!」
「ま、待ちなさいロスティ! これは違うのよ!」
「そ、そうだよ、ロスティ。これは、そう。調査なんだ。だから、一旦落ち着いて……」
二人の制止も甲斐なく、扉を勢いよく開けて廊下へ走り出すロスティと、それ以上の速さで確保に動く二人。
背後ではすでに二人による事情説明()が行われている。
はぁ……本当に騒がしい奴らだ。
俺はいそいそと股間の位置調整をしながら、ため息を吐いた。
◇◇◇
説得されて、三人で部屋に戻ってくる頃には全員が落ち着きを取り戻しており、適切な距離感でもう一度テーブルについた。
「ほ、本当に、こちらの方が魔力の元で、その条件がせ、性的、興奮を伴う接触なんですか……?」
俺の斜め前に腰を掛けたロスティが控えめな視線でこちらを見上げながら、尻すぼみに言葉を小さくして聞いてくる。
「ああ、それは間違いないよ。私の眼できちんと確認したから」
「眼じゃなくて、直接触れて確かめてましたけどね……」
「フェル? 何か言ったかい?」
「……いえ、なんでもないわ」
眼、か。
また魔法の類なのだろうか?
「そ、そうですか……。でも、人が魔力の元となると、どうするんですか?」
「そこよね、問題は」
「そうだね……」
そんなことを考えていれば、三人は神妙な雰囲気を漂わせ始めた。
「……本来、魔力の元を見つけたときはどう対処しているんだ?」
なんとなく怖くなって聞いてみる。
「……破壊よ」
「は、破壊します」
「破壊だね。粉々に、跡形もなく、ね」
返事は三人同時に返ってきた。
言い方こそ三者三様だが、意味はすべて同じだ。
「……そうか」
聞かなければよかったかもしれない。
というか、俺、ここにいて安全なのか?
「……でも、今回ばかりはわけが違う。媒体が誠治君という人であることもそうだし、それ以上に誠治君は増幅の力も持っているんだ。これはいくら私たちがギルドの動きを抑制するために魔力の元を破壊しているとしても、破壊できないくらいには貴重な力なんだよ」
俺の一抹の疑問を拭うように会長さんが付け加える。
そういえば迫ってくる直前にそんなことを言っていたか。
「増幅、というと?」
「そのままの意味よ。本来魔力の元は非魔法使いにしか効果がないの。だけど、あなたとその……条件を満たした場合、既に魔法に覚醒している魔法使いでも、自分の持つ魔力量やら制御力が上がるのよ」
さっき見せた火の玉も普段より大きかったもの、とフェルが教えてくれた。
「まあ、なんにせよ、だ。誠治君をこのまま帰すわけにはいかないね」
「そうね。できることなら、誰にも見つからない場所に監禁したいくらいだけど……」
「おいおいおいおい、冗談はやめてくれよ」
「ふふっ。ま、もちろん人権を著しく侵害するような真似をするわけにはいかないから、現実的なところだと……」
慌てる俺を微笑でいなし、会長さんはフェルをまっすぐに見つめた。
「フェル、君に新しい任務を与える。君はこれから誠治君ともに生活をし、彼が自衛をできるようになるまで、付きっ切りで魔法を教えるんだ」
「……はい?」
思わず声が漏れる。
ともに生活? 自衛できるように? ……つまり、それって現状では俺に対処する方法がないってことか?
「……分かったわ。でも、私の普段の任務は」
「それについてはロスティ。大変だと思うけど、頼めるかな?」
「こ、ことの緊急性は理解しています。でも、私以外にも増員を。フェルの任務は転移魔法ありきの範囲ですから……」
「そうだね……。なるべく内密に手は回しておくよ」
俺を置いて、どんどん話は進んでいく。
「い、いや、ちょっと待ってくれ。ほんとにそれしか対処方法はないのか?」
「まあ、そうなるね。もちろん、非人道的な手段を含めれば、その限りではないけれど」
一瞬、鋭くひそめられた会長さんの視線に、思わず身震いしてしまう。
「それに、いいじゃないか。フェルは確かに少し直情的なところはあるが、絶世の美女だよ」
「直情的って……」
「か、会長の言う通りです。せ、誠治さんのことを考えるなら、それ以上の案は現状ありません」
隣に座るフェルこと千里の方を見つめる。
「……な、なによ? 嫌なの?」
「いや、そういうわけじゃ、ないが……」
こいつとの共同生活?
改めて千里を見てみれば……不思議な色の髪に、目をつむれば触感を思い出せそうな胸。スラリと細い腰つきに、これまた柔らかな下半身……。
……いいんですか?
いや、待て、一旦落ち着くんだ。
性欲で考えるな。
よくよく考えろ、俺は永礼誠治二十四歳。
どこにでもあるような一般企業勤め、新卒からそこそこ努力をして今年昇給し、手取りは二十五万ないくらい。
貯金は百万もない。
性癖は巨乳としゃがんでる女性の尻。
つまり、オールオーケーだ。
「あ、職場については気にしないで大丈夫だよ。こっちで手を回して退職扱いにしておくから」
「あ、ああ……。……いや、待て。退職!? 待て待て、確かにせ、フェルとの共同生活をすることは理解したが、それがどうして俺の退職につながるんだ?」
突然出てきた退職の話に、性欲に飲まれかけていた思考が一気に冷める。
「当然でしょ? だって、さすがの私もあなたの職場にまでついていてあげることは難しいもの。それとも一日中私に付きまとわれながら誠治は仕事するつもり?」
「一日中って……フェルに与えられた任務は俺と生活して、魔法を使えるようにすることじゃないのか?」
「もちろんそうだけど、大前提としてあなたをギルドから守るっていう任務があるじゃない」
「……そういえば。俺の存在はすでにギルドに勘づかれているのか?」
「どうだろうね? けど、間違いなく近いうちに奴らは嗅ぎ付けるよ」
「せ、誠治さんがギルドの手に渡ってしまったら、世界中のありとあらゆる女性が魔女に……ああ、もしかしたら男性までも……はぅぅ……」
そ、そんなになのか……。
新卒時点では妥協の就職ではあったが、それでもかなり力を尽くして勤めてきた。
そんな職をいきなり手放せと言われて、心残りがないわけではない。
でも、俺も未だによく理解はしていないが、この魔法という力が世界に溢れかえってしまったら、昨日までのように何も知らずに日々を過ごしていた俺のような人の安全を脅かすことになってしまう。
それはなんとなく、いい気はしない。
別にヒーローを気取るつもりはないが、俺一人の犠牲でなんとかできるのなら、それはきっといいことだ。
それに、犠牲とは言ったが、俺にメリットがないわけではない。
絶世の美女である千里との共同生活に加え、話によれば俺も魔法が使えるようになるとのこと。
中二病なんてとっくの昔に克服したと思っていたが、心の中で何かに期待する俺がいる。
「わかった。くれぐれも礼を欠かないように頼む。お世話になったからな」
「了解だよ」
間違いなくここが俺の人生の分岐点。
きっと、楽な道ではないのだろう。
でも、どうせ一回限りの人生ならば、知らない世界に飛び込んでみる、というのも悪くないだろう。
俺は会長さんと握手を交わす。
「……じゃあ、今日は解散にしようか。フェルの準備もあるだろうし、今日は協会に泊まっていって。部屋は……」
「だ、だめですよ! 空き部屋があるので、そこを使ってください!」
誘惑するような会長さんの艶めかしい視線をロスティが遮り、俺の手を引いて立ち上がる。
「よ、欲求不満魔女たちは置いて行きましょう。案内します」
「あ、ああ。頼む」
「はい。おやすみなさい、会長、フェル」
「ま、待ちなさいよ! 私も行くわ!」
「おやすみ、誠治君、ロスティ、フェルも」
「おやすみなさい」
すでに時間は日をまたいでいるだろう。
だというのに、不思議と眠気を感じない。
これはこの数時間の非日常体験に胸を躍らせていた。
◇◇◇
「こ、ここです」
ロスティに手を引かれ、やってきたのは、さっきフェルと一緒に転移してきたロスティの部屋の二つ隣の部屋。
「そういえば、この部屋は使われてなかったわね」
「は、はい。今日はここを使ってもらいます」
「ありがとな。……そういや魔女協会の人たちってみんなここに住んでるのか?」
「それは……分からないわね」
「分からない?」
「ま、魔女協会のメンバー全員を知っているのは会長だけなんです。基本的に皆、それぞれが任務にあたっていて、私やフェルは
「協会のメンバー以上に気になるワードが出てきたな。
「え? フェ、フェル! 説明していないんですか!?」
「いや、いきなり
「そ、それならいいですが……」
「で、結局
「まあ、私の転移魔法みたいに、ほかの人には使えない魔法が魔法使いには一人一個あるのよ」
「なるほどな……それで、見せてくれた火の玉みたいなのはみんな使える魔法ってことか?」
「そういうこと」
夢が広がるな。
俺も魔法が使えるようになれば、
「お、お話はこのくらいにして、今部屋を開けますね」
言いながら、ロスティが部屋を開けた。
「お、お手洗いはこちらで、奥がリビングルームです。何もないので簡素な部屋ですが、一晩泊ってもらう分には問題ないと思います」
目の前には、よくある風呂なし1Kタイプの部屋が広がっている。
本当にごく普通の、アパートの一部屋の様だった。
少しだけ魔法的な何かがあったりするんじゃ、と期待していた俺もいたが、まあ、世の中そううまくはいかない。
「ありがとな。じゃあ休ませてもらうわ」
「は、はい。では、おやすみなさい。何かあれば、二つ隣が私の部屋で、間の部屋がフェルの部屋ですから」
「了解」
「じゃあ、おやすみロスティ」
「はい」
こちらにペコリと頭を下げて自室に戻るロスティを見送る。
「……で、お前はいつになったら部屋に戻るんだ?」
「あら、どうせ明日から一緒に暮らすんだもの。今日も明日も変わらないでしょ?」
「お前な……」
「嘘よ。布団、敷いてないでしょ? 手伝ってあげるわ」
「……あ、ああ、頼む」
部屋に上がると、フェルは迷いなくタンスから布団を取り出し、ベッドに敷いてくれる。
「ロスティはいい子なんだけど、いまいち気が回りきらないのよ。ま、言わなくても布団の場所くらいわかるって思ったのかもしれないけど」
「なんにせよありがとな。……なんかお前とは今日あったばかりなのに、全然そんな気がしないよ」
「なにそれ。口説いてる?」
「違ぇよ」
「ふふっ、そう? じゃあ、これは——!」
俺をからかったかと思えば、今度は敷き終わった布団に向けてダイブするフェル。
「サービスよ! 私の匂いに包まれて、悶々としながら寝るのね」
「なっ——」
「じゃ、今度こそおやすみなさい誠治」
「……ああ、おやすみ千里」
「——! ふふっ!」
何がしたかったのかはよくわからないが、少なくとも悪意は感じない。
そして、扉の閉じる音がして、俺は帰宅時ぶりに一人になった。
「……ふわぁ」
一人になると、途端に眠気がやってきた。
若干の緊張を感じながら、俺は布団に潜り込む。
「……」
微かに女性っぽい匂いが残っている気がする。
だが、興奮するというより、どちらかと言えば安心するような……。
疲れのせいか、匂いのおかげか、俺はほどなくして、眠りについた。
◇◇◇
「眠ったわね」
「フェル。さっきのは無理がありすぎないかい? サービスで匂いをつけるって、意味が分からないけど」
「そ、それに破廉恥ですよ!」
協会本部、会長の執務室。
先ほどまで四人で会話をしていたその部屋に、三人の魔女は再び集まっていた。
「で、でも、その不自然のおかげで特に怪しまれることなく催眠魔法を布団に仕込めたんだからいいじゃない」
「まあ、そうだね。……それで? ロスティ、さっき君が彼の手を握った時はどうだった?」
「と、特に魔力の増幅は感じませんでした。やっぱり、せ、性的興奮が重要な様です」
「そうか……。でも増幅の力が、まさかこんな風に転がり込んでくるなんてね……。お手柄だよフェル」
「運が良かっただけよ。あんな強大な魔力の気配。誰が気付いてもおかしくなかった」
「……あれ? でも、今は誠治さんからあまり魔力を感じないような」
「……本当だね。念のためにかけた催眠魔法がいい方向に機能したかもしれない。彼のトリガーは性的興奮。睡眠時は落ち着くのかもしれないね」
眠りにつく誠治の姿を見ながら、三人の魔女はそんな話をしていた。
「で、会長。誠治を無理やり眠らせた本当の意図はなんなの?」
「そんなに睨まないでおくれ、フェル。別に悪いことをしようって訳じゃない。ただ、じっくり視させてもらおうと思っただけだよ」
「それなら、まあ……」
「と言うわけで……じゃあ、私は誠治君の部屋に行ってくるよ。二人もゆっくり休んで」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 別にここからでも視れるでしょう?」
「いや、直接見た方が感度がいいのは事実だからね」
「は、破廉恥ですよっ!」
三人の間に火花? が散る。
「……仕方ないな、分かったよ。今日はみんなで誠治君の部屋に行こうじゃないか。そうすれば私は誠治君を見ることができるし、フェルは私が何かしないか見張ることができる。そして、ロスティも私たち二人を見張ることができる。どうだい?」
「……分かったわ」
「そ、そんな、男の人の部屋で一晩を過ごすなんて……」
「じゃあ、ロスティはやめておくかい?」
「……! い、いえ、欲求不満魔女二人と男の人だけを同じ部屋に居させるわけにはいきません!」
「別に、もう全員成人してるんだから、好きにすればいいと思うのだけど……」
「そういう問題じゃありません! そ、そういうことがしたいなら私の見えないところでしてください! 今日はだめですからね!」
「分かっているよ。じゃあ、行こうか。あ、ちゃんと全員誠治君が目を覚ます前に部屋を出るんだよ?」
こうして三人の魔女は足音を殺して、誠治の部屋に忍び込んだのだった。