うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望
チュンチュンチュンと、鳥の声。
目覚ましではなく、鳥の声で目を覚ますとは、何たる贅沢であろうか?
枕の感覚の違いに一瞬だけ不安を覚えるも、すぐに魔女協会へ泊ったことを思い出し、ゆっくりと起き上がろうとする。
だが。
「……ん? なんだか、体が重い?」
開いた視界には、昨晩も見た通りの天井が見えている。
少なくとも場所は変わっていない。だとすれば……っ!
「「……んっ♡」」
重たい体を何とか動かそうと身じろぎをすると、なぜか耳元に艶のある声が響いた。
それもどういうわけか両耳から。
「……は?」
そして、左右を確認してみれば——そこには衣服が乱れ、今にも双丘がこぼれ出てしまいそうな千里と、はたまたこちらもどういうわけかシャツのボタンが胸の位置だけ外れ、俺の手をその中へと押し込んでいる会長さんの姿があった。
全神経が手に集中していく。
千里の沈み込むような柔らかさとは違い、ギュッと夢を詰め込んだかのような、張りのある会長さんのそれは知らない幸せを教えてくれた。
「……これが、俗にいう朝チュンってやつか」
体の代わりに起床時の生理現象が起き上がっていくのを感じる。
……いや、いやいやいや。
一足先に賢者になっている場合じゃないだろう、俺!
状況を整理しろ。
俺は昨日、千里を見送ってからすぐに寝たはず……。
「んぅ? なんか、硬いです……」
しかし、思考をまとめる前に、さらなる事態が発生していた。
……まさか? と、現実を疑うのもつかの間、掛け布団を挟んで股の上。
そこにもう一つ分、違う重さがあることに気が付く。
「……あ、あれ? ここって、確か……誠治さんの……」
「……」
首だけを起こして下半身の方を見た俺と、目覚めたばかりであろうロスティの視線が交錯する。
「……え、は、え? せ、誠治さん……? じゃ、じゃあ、この硬いものは……」
俺とロスティの視線がある一点に集中した。
「は、は、破廉恥ですぅぅぅぅ~~~!!!」
「ま、待ってくれ! これは……!」
顔を真っ赤にして飛び上がるロスティに向けて、反射的に手を伸ばそうとしてしまう。
だが、今の俺の手は、こぼれかけた千里の双丘と、会長の秘境の中。
つまり……。
「んっ♡ あっ♡ 急に、なに、これぇぇぇっ♡♡♡♡♡♡」
「イッ♡ んぅっ♡♡ ま、魔力がぁんっ♡♡♡♡♡♡」
無警戒のところから触覚に伝わってくる柔と張りの暴力。
こんなもの、興奮するな、という方が無理な話なわけで……。
「せっ、いじぃ♡ あなた、朝からっ♡ んっ♡」
「積極的なのもっ♡ んっ♡ 悪くは、ないねっ♡♡」
「ち、ちがっ……」
「う、うわぁーん!!! 欲求不満魔女と破廉恥魔人が朝から盛ってますぅ~~!!!!」
悲鳴と嬌声に包まれて、俺の穏やかな目覚めはどこかへと消えていった。
◇◇◇
「……で? お前ら、なんで俺の布団にいたわけ?」
しばらくして、何とか二人から距離を取り、落ち着かせることに成功した俺は、二人を部屋に正座させて、詰問をしていた。
「……」
「……」
「おいおい。だんまりかよ……。お前ら二人のせいで、ロスティに破廉恥魔人とか勘違いされてるんだけど? なぁ?」
「……魔力増幅が起きたのは誠治が興奮したからなんだから——」
「……誠治君が破廉恥魔人というのは間違っていないんじゃないかな?」
詰める俺に、なぜか不服そうな顔で食い下がろうとする二人。
「そ、それは今、関係ねぇだろ! まずは質問に答えろよ。なんで俺の部屋に居たんだ?」
「それは……」
「……いいよ、フェル。言い出したのは私だ。こうなってしまった以上、私から説明しよう」
会長さんがピンと背筋を伸ばす。
胸のボタンはもう留められていた。
「昨日も少し話題に挙げていたんだけど、私の魔法は視ることに特化していてね。その魔法を使って誠治君の能力の全貌を明らかにしようと思ったんだよ。眠っている間なら君も興奮せずにいてくれるだろうと思ってね」
「……なるほど?」
「それで、でも、もし万が一誠治が目を覚まして、会長と、その……なんだかんだあったら、あれだから、その見張りとして私も一緒に部屋に来て、それでロスティも……」
恥ずかしそうに尻すぼみに声を小さくしながら千里が言う。
つまり、なんだ?
こいつらは——
「……それで、調査のはずの会長さんと、見張り役の二人も一緒に寝落ちした、と?」
「……誠治の増幅能力のおかげか、あなたの布団に仕込んだ催眠魔法が意外と強力で……あっ!」
「おい? 今、俺の布団に催眠魔法を仕込んだって……」
「せ、誠治君。お詫びと言っては何だが、朝食を振舞わせてはくれないか? 私はこう見えて料理の腕には自信があってだね」
「そ、そうなのよ! 会長の料理は絶品なのよ。さ、会長。準備に行きましょう! それじゃ誠治、また呼びに来るから!」
「そうだ! それと、ロスティにはちゃんと男性の起床時の生理現象についても説明しておくから!」
勢いよく立ち上がり、部屋を飛び出していく二人。
「……はぁ」
とんだポンコツ魔女集団じゃねぇか……。
今日からこんなポンコツの魔女と共同生活を送るのか? 俺?
「仕事辞めたの、やっぱり早まったかなぁ……」
今度こそ一人きりになった部屋の天井に向けてぼやく。
実家を思わせるような木目の天井の、大きくて丸い二つの染みが俺を見返していた。
………………。
「……とりあえず、トイレ行っとくか」
なんとなく、少し前かがみになりながら、俺はトイレに向かった。
◇◇◇
「誠治、ご飯できたわよ」
それからまたしばらくすると、今回はちゃんとノックをしてから扉越しに千里が声を掛けてきた。
「ああ、分かった。今行く」
昨日と同じ、胸元の大きく開いた服装の千里に連れられて、昨日とは違う部屋に通される。
「一応ここが共用の調理スペースになってるわ。今は私たちしかいないから、好きに使って」
その部屋はキッチンダイニングのような作りになっており、四人掛けのテーブルが何脚か設置されていた。雰囲気としては学食が近いだろうか? まあ、学食と比べたら圧倒的に狭いが。
ひとまず、キッチンに一番近いテーブルに座ると、エプロンを付けた会長さんが朝食を配膳してくれる。
「どうだい? なかなかの腕だろう?」
出してもらったのは焼き鮭に卵焼き、野菜の味噌汁に白米と、純日本風の朝食メニュー。
確かにどれも食欲をそそるものばかりで、朝食は和食派の俺からしてみれば大歓迎のメニューだが、仮にも魔女協会なんて言う洋風な組織の会長が得意顔で出す料理がこれなのか。
……でも、エプロンをかけた会長さんはそこはかとなく人妻感があって眼福だったので、そんな些細な疑問はすぐに吹き飛んでいった。
「ああ、美味そうだ。人に作ってもらった朝食なんて、いつぶりだろう?」
「ふふっ、そういってもらえると嬉しいよ。明日からはフェルに作ってもらうと良い」
「……それもありか。と、そういえばフェルは? さっき、俺を連れてきた後、また外に行ったけど」
「ああ、ロスティを呼びに行ったんだよ。もうすぐ来るさ」
会長さんが振り返るのに釣られて俺も扉を振り返る。
すると、ちょうど二人が部屋に入ってくるところだった。
「……」
「ほら、ロスティ。謝るんでしょ?」
「は、はい」
部屋に入るや否やなぜか、もじもじと俺と床で視線を上下させながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「?」
「あ、あの、誠治、さん。さ、さっきはごめんなさい。私、男の人の生理現象のこと、よく知らなくて……。朝はああやって勝手にカチカチになっちゃうんですね。破廉恥魔人なんて言って、ほんとごめんなさい」
「……あ、ああ。いや。俺も、なんか、悪かったよ」
頭を下げるロスティを申し訳ない感情で見つめる。
そのまま視線を斜め上に持ち上げてみれば、そこではフェルこと千里がこちらにウインクを飛ばしてきていた。
……なんだその説明しておいてあげたわよって顔は!
そもそもお前と会長さんが……いや、思い出すのはやめておこう。
今ここでカチカチになって、それをロスティに見つかる方が気まずい。
「さ、誤解も解けたことだし、朝食にしようじゃないか。ほら、フェルもロスティも、早く席について」
若干の気まずさの中、俺は会長の振舞ってくれた朝食に手を付けた。
言っていた通り味は抜群で、特に卵焼きは俺の好みドンピシャの味だった。
◇◇◇
「なあ、会長さん。ちょっと聞いていいか?」
「なんだい? きわどい質問でなければなんでも答えるよ?」
朝食後、俺は後片付けの手伝いをしながら、会長さんに話しかけた。
「きわどいって……聞かねぇよ、そんなことは。そうじゃなくて、ここっていったいどこなんだ? 歩いた感じ、かなり広そうだが」
「ここ、というと魔女協会のことかな? うーん、難しい質問だね。そもそもここは、場所に定義できる位置には存在していないからね」
「……? どういう意味だ?」
「まあ、簡単に言ってしまえば、この建物自体、すべてが魔法で作られたモノなんだよ。だからここは現実に存在する建物とは全く別。そこにあって、そこにはない。そんな空間なんだ」
「……よくわからないな」
「ふふっ、そうだろうね。実際私もよくわからない。でも、ここがあるおかげで私たちの存在はかなり秘匿されているんだ」
「へぇ。……って、じゃあ、俺もここに居たら安全なんじゃないのか? どうしてわざわざ戻って共同生活をする必要があるんだ?」
「それはひとえに君が規格外すぎるからだよ。この秘匿された空間からもはみ出してしまうくらいには君の魔力は圧倒的なんだ。ここだけは、絶対にバレるわけにはいかないからね。申し訳ないとは思うけど……」
「俺の魔力って、そんなになのか……」
拭いていたお皿を置いて、自身の手のひらを見つめる。
でも、特にオーラのような層が見えるわけでも、何かを纏っている感覚があるわけでもない。
「まあ、魔力についてはそのうちわかるようになるよ。フェルと一緒にちゃんと訓練をすればね」
「……その訓練ってのもよくわからないんだが、そもそも俺は魔力の元と接触したわけじゃないだろ? でも、魔法を使えるようになるには魔力の元との接触が必要なんじゃなかったのか?」
「ああ、それについては大丈夫だと思うよ。だって君の条件は性的興奮を伴う接触だろう?」
「? ああ、そうらしいな。ってか、会長さんがそう言ったんだろ?」
「ああ。だから、君はすでに接触しているはずさ」
「? どうやって? 俺が俺に性的興奮を伴う接触をするって、状況が想像つかな……」
い。と言いかけて、固まる。
まさか……。
「……あまり、言いたくはなかったんだけどね。君は今朝、魔法が使えるようになったはずだよ」
「………………」
頬を染めながら、視線を逸らす会長さんに、一気に恥ずかしさがこみ上げる。
「ま、まあ、それについては私たちにも責任があったと思うし、元気な証拠でもあるんだから、うん。いいと思うよ。それに異性との接触でなくとも効果があることが分かったのだし、さ」
「……慰めはいらねぇよ。余計みじめだろ……」
なんだか、一気に力が抜けてしまい、その場にしゃがみ込む。
「……言ってくれれば、私が相手をしたのに」
頭上から、何か聞こえた気がしたが、羞恥心でそれどころではなかった。
「誠治! 準備ができたわ! これでいつでも戻れるわよ!」
妙な雰囲気にいたたまれなくなっていれば、そんな空気をぶち壊すようにフェルが大きいスーツケースを持って再び部屋に戻ってきた。
「お、おう。って、デカいな……」
「これでも最低限にしたんだからね! でも、色々と落ち着いたら引っ越しも検討しましょう」
「引っ越しって……そんな金ないぞ? というか、仕事辞めちまったけど、生活はどうすりゃいいんだ?」
「それについては心配いらないよ。政府とのつながりは深いって言っただろう? 君たち二人分の生活費程度なら、二つ返事で支給されるはずだよ。引っ越しは……そうだね。すぐには無理かもしれないけど、同じ場所に居続けるって言うのも確かに危険だろうし、考えておくよ」
「ありがとう、会長!」
「ふふっ、フェル。なんだか楽しそうじゃないか? これでも、相当危険な任務なんだよ?」
「分かってるわよ。誠治のことは守らなきゃだし、魔法も教えなきゃいけない。でも、なんだか、誠治とは楽しくやっていけそうな気がするの」
まっすぐな瞳でこちらに笑顔を向けるフェル。
フェルからしたって出会って一日しか経っていない男と共同生活を送らなきゃだってのに、一体どうしてそんな顔ができるのか。
でも……。
「だってよ、誠治君?」
「……ああ。俺も、大変そうだが、なんだかんだ楽しくなりそうな気はしてる」
「ふふっ、そうか。妬けるなぁ……」
「暇が出来たら、会長も遊びに来てください」
「遊びにって……ほんとにフェル、君ってやつは。……君たちも、たまには報告がてらこちらに顔を出しておくれよ」
「はい!」
会長さんとフェルが握手を交わす。
「フェル! 誠治さん!」
すると、その背後から、今度はロスティが声を掛けてきた。
「も、もう出発ですか?」
「ええ。あんまりここに、誠治を長居させておくわけにもいかないでしょう?」
「……そうですね。フェル、どうか気を付けてください」
「なあに? ロスティ、心配してくれるの?」
「あ、当たり前です! フェルは破廉恥ですが、私の……と、友達、ですから」
「……二十歳にもなって青臭いこと言ってんじゃないわよ。でも、ありがと」
破廉恥の部分は見事にスルーしながら、照れ隠しに鼻を掻くフェルと、キュッと反対の手を握るロスティ。
なんだか、見せられている俺が邪魔している気分になってしまう。
かと思えば、今度はロスティが俺の正面にやってきた。
「せ、誠治さん。これ、どうぞ」
そして、なにやら小さな袋だろうか? 巾着のような何かを差し出してくる。
「ありがとう。これは?」
「そ、それは、私の魔法を込めた魔道具です。危険でどうしようもない時にその袋の口を開けてください」
「分かった。ありがとう」
「はい」
改めてお礼を言って受け取ると、会長さんがロスティに並んだ。
「それじゃ、二人とも、くれぐれも安全に」
「はい」
「ああ」
「た、たまには私の部屋に転移してきても、許します」
「ふふっ、ありがとロスティ」
フェルがこちらに手を差し出す。
「さ、行くわよ」
「分かった」
俺はその手を取った。
「では、ライアフェルト、任務に向かいます」
「ああ、吉報を期待しているよ」
身の回りが光に包まれる。
そして視界が白い世界に染まっていった。