うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる 作:匿名希望
二人の手の先から、火の玉が出現する。
「……え、は、え?」
突然の状況に困惑する。
千里はともかく、九重がなんで?
咄嗟に目をこすり、改めて確認するも、やはり九重の手元には火球が出現していた。
間違いなく彼女の魔法だ。
「……ここをどうやって嗅ぎ付けたのよ」
手元に火炎の弾丸を出現させたまま、千里が聞いた。
「それをあなたに言う必要が私にあると? それより早く先輩から離れてください!」
しかし、同じように弾丸を手元に浮かべる九重も一歩も引かない。
「先輩先輩って何よ。あなた、誠治の
「なっ!? 先輩は先輩なんです! というか、あなたこそ何なんですか!」
「私? そんなの決まっているでしょう?」
しかし、そんな均衡状態をぶち壊しに行ったのは千里だった。
掴んでいた俺の手におもむろに自分の胸を当て、その暴力的な柔らかさで包み込んでくる。
「……は、はぁっ!?!? な、何してるんですか! その恰好で行いまで変態的じゃ、ほんとに痴女じゃないですか!!」
「別に、こういう関係なんだから、あなたが口を挟むことではないでしょう?」
さらに双丘の奥の方へ俺の手を押し込みながら、余裕たっぷりに煽って見せる千里。
「せ、先輩!! されるがままに堪能してないで、早く離れてください!」
「いいのよ、誠……治、んッ♡」
「な、な、ななに感じてんだこの痴女!! 私の先輩から離れろぉ!!!」
当然、こんな状況だろうと暴力的な柔らかさに興奮しないというのは無理なわけで……俺から千里へ魔力が供給されてしまった。
その結果、完全に取り乱した九重も発動待機させていた魔法を放棄し、千里と俺を無理やり引き剥がそうとして揉みくちゃの状態になる。
「ゃん♡ 誠治、そこは……」
「目の前で感じるな——ぁんッ♡ え? え? 何今の感覚……」
……まずい。
不可抗力だが、千里に続いて九重の色々なところも体に触れてしまったせいで、彼女に対しても俺の力が発動し始めてしまっている。
おそらく俺の能力の特性が他所にバレるのはよろしくないだろう。
九重が何なのかはわからないが、千里と敵対した以上、仲間ではないはず。
……心頭滅却。
深呼吸。精神を平静に保て、俺。
俺の力が発動する条件は性的興奮を伴う接触。
つまり、俺が興奮さえしなければ、魔力の増幅は起こらない……はずだ。
魔力を滝に捉えたように、脳内で滝行をイメージすれば——。
「んぅっ♡♡♡♡ せ、いじ……♡」
「せっ、せんぱいぃ♡♡♡♡」
「………………」
「あぁぁんっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「い゛っ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
……無理でした。
滝から流れてくるのは水ではなく、煩悩の数々。
到底百八にも収められないそれは、俺を鎮めるどころか昂らせていく。
このままでは本格的に俺の力がバレてしまいかねない。
……かくなる上は。
「え、せい、じ。この手の……動き♡」
「せ、せんぱい?♡」
………………。
「「あっ♡♡♡ そこっ♡♡♡ んぅっ♡♡♡♡♡」」
「………………ふぅ」
二人の体がピンと力を張ったかと思えば、次の瞬間には力なく床へ横たわる。
そしてひと仕事終えた俺は、二人の乱れた服を整えて、二人が目覚めるのを待った。
◇◇◇
「……」
「……」
数分後、ほとんど同タイミングで目を覚ました二人をテーブルに着かせて、水を渡す。
「とりあえず、水でも飲んで落ち着いてくれ。そしたら九重、事情を説明してもらうぞ?」
「……はい」
念のため、俺は少し離れたベッドに腰掛け、二人とは物理的に距離を取っておいた。
取り合われる経験というのも悪くはなかったが、それにしては手元に魔法があったりと物騒すぎた。
「じゃ、千里。九重に聞きたいことがあれば聞いてくれ」
「こ、この流れで私に振るの!? ……いや、でも、そうね。じゃあ、九重さん。あなたはどうしてここに? あなたが魔法使いであった以上、誠治の様子を見に、というだけの理由じゃ納得しないわよ」
場を整えて、千里に振る。
残念ながら魔法については俺はど素人だ。
場こそ整えたものの、思考は未だ大混乱の真っ最中。
九重が魔女って一体どういう? まさか、あの
そんなことを一人で考えて悶々としていれば、千里の質問に九重が口を開いた。
「……分かりました。ですが、大前提として、私が先輩の様子を見に来た、というのは嘘ではありません。本当に仕事でミスを連発し、今日は帰ったら? と帰され、せっかくなら直接聞きに行こうと思ってここに来ました。その途中です。おかしな魔法の気配に気が付きました。辿ってみればその気配も先輩の家からで……それで半ば強引に押し入ったという訳です」
「そう。……それで、その気配を見つけたとして、あなたはどうするつもりだったの?」
「先輩から遠ざけたかった、というのが偽りのない本音です。魔法なんて、関わらずに生きていけるのならそれが一番ですから……」
……九重の口から語られたのは、俺の想像とはまたベクトルの違った話だった。
俺から魔法を遠ざけようとしてくれていた、ということは九重はギルドの魔法使いではないのか?
「……そうね。その点は同意だわ」
二人の意見が初めてかみ合う。
やはり、魔法なんて理外の力は普通に生きる上では面倒だということなのだろう。
だが、俺にはもう関わらないという選択肢は残されていない。
「私の方からも、聞いていいでしょうか?」
「……答えられる範囲なら、構わないわ」
「では……あなたは魔女協会所属の魔女で間違いないのですよね?」
「——! ……ええ、そうね。そういうあなたは?」
「私はどこにも所属していません。普段から魔法は使わずに生きています」
「なるほど。流れだったのね」
二人を取り巻く空気が若干弛緩したのを感じる。
まだ、お互い無警戒とはいかないようだが、やはり、ギルドの所属でないという点が重要なのだろう。
「魔女協会の魔女と一緒にいるということは先輩も?」
九重がこちらを見た。
「まあ、一応そういうことになるのか?」
魔女ではないので違うような気もするが、どうなのだろうと千里へ視線を送る。
そんな視線を受け、千里が答えた。
「そうね。正式加入という訳ではないけれど、その庇護下にあると思っていいわ」
「……そうですか。つまり、あなたは先輩のボディーガード、ということですか?」
「まあ、そんなところね。誠治が魔法を使えるように指導する役割と思ってもらって構わないわ」
「なるほど。やっぱり、淫らな関係ではなかったのですね」
「……あなたね」
「ふっ、嘘を吐く方が悪いんですよ痴女さん」
……さっきまで揃ってそこで情けない顔を晒していた二人が何か言っている。
知り合いの男性宅に乗り込んであんな顔を晒した九重も十分痴女だろうと思うのだが……。
「先輩? 今、何か私に失礼なことを考えませんでしたか?」
「……いや、そんなこと、ないぞ?」
なんて考えれば、思考を見透かしたかのように九重が睨みを利かせてくる。
女の勘ってやつなのか?
この十数分で九重の印象が百八十度変わったような気がする。
「……まあ、事情は分かりました。先輩が突然会社を辞めた理由もある程度は納得しましたし、いきなり押しかけてお騒がせしてすみませんでした」
「いや、こっちこそ。なんの連絡もせずに悪かったな。九重さえよければ、また気軽に連絡してきてくれ」
「はい。ありがとうございます。毎日連絡しますね」
言いながら、九重が立ち上がり、玄関に向けて歩き出す。
俺たちも見送りのために後を追った。
「では、先輩。無事……と言っていいのかはわかりませんが、お会いできてよかったです。そこの痴女さんも、あんまり先輩に迷惑かけないでくださいね」
「おう。仕事、頑張ってくれよ」
「あなたに言われるまでもないわよ」
「それでは、失礼します。先輩、痴女さんのいない日は連絡してくださいね。いつかの夜みたいに」
九重はそれだけ言い残して扉を閉めた。
だが、その一言はこちら側の空気を凍り付かせるには十分な威力を持っていて——
「……」
「ねぇ、誠治? 別にどうでもいいのだけど、どうして会社の後輩があなたの家を知っていたのかしら? 別に、どうでも、いいのだけど」
「………………」
俺は黙秘した。
◇◇◇ ——九重悠月視点——
先輩の部屋を出てから、小走りで階段を駆け下りる。
エレベーターの監視カメラには映りたくなかった。
「……魔女協会。先手を取られましたか。でも、良かった」
非常階段にもなっているそこを二階まで降りてから、手すりに足をかけ、外の駐車場へと飛び降りた。
すると、まるでタイミングを見計らっていたかのようにスマホが鳴った。
「……九重君。首尾はどうだい?」
「残念ながら、魔力の元の回収には失敗しました。すでに魔女協会が回収済みのようでした」
「すでに回収を? 確かにそこに反応があったはずだが……?」
「はい。ですが、該当箇所にはすでに魔女協会の魔女がおり、形勢不利と判断し撤退しました」
「なるほど、我々の方が若干遅かったと」
「はい。申し訳ありません」
「いや、いいよ。下手に交戦して九重君を失ったりする方が問題だからね。それで、魔力の元だけど、今回は何だったんだい? マンションの、それも入居者のいる住宅内ということは家具かな?」
「いえ、それについても判断できませんでした。ですが、判断がつかないということは……」
「なるほど。相当に大きい魔力の元だったと」
「はい。おそらくは」
「分かった。では、数日、日を置いて、該当箇所をよく見張るように手配しておこう。悪いね急に手伝わせてしまって。もう君は組織を離れているのに」
「……いえ。ですが、その代わりに一つお願いをしてもよろしいですか?」
「お願い? まあ、いいよ、言ってみなさい」
「その見張り役、私にやらせてはいただけないでしょうか?」
「……へぇ? 急にどういう風の吹き回しだい?」
「それは……」
「……まあ、確かに急な連絡に対応してもらっちゃったし、そうだね。こうして何かあった後に今後もまた報告をもらえるなら、いいよ。君に任せようかな九重君」
「! ありがとうございます!」
「ふっ、お礼を言うのはこっちだよ。ただでさえ人員不足だからね。やっぱり無理に増やした魔法使いは使い勝手が悪いから」
「……そう、ですね」
「それじゃ、引き続きよろしく頼むよ。組織にも戻りたくなったらいつでも言ってね。君なら大歓迎だよ」
「……考えておきます」
悠月の答えを聞く前に、電話は切られた。
「……ふぅ。先輩、一つ貸し、ですからね」
マンションの監視カメラに映らないように死角を通って、通りに出ると、悠月は誠治の部屋を見上げながら呟く。
だが、その部屋から薄っすらと感じられる魔力の元の気配に悠月は再び視線を下げた。
「まさか、先輩が魔力の元……なんてことは、ない、ですよね?」
早足に歩を進めながら、悠月は思考を巡らせる。
ギルド。
それは短大生の頃、魔女になってしまった悠月が一時所属していた組織であり、もう関わりたくないと思っていた組織でもある。
魔力の元を発見、献上し、その功績を持って辞めたはずの組織にまたこうして関わることになってしまうなんて……。
でも、誠治が関わっているかもしれないとなっては、悠月は引くわけにはいかなかった。
「魔女協会。何としても先輩を守ってくださいよ。もし先輩がギルドの手に落ちるようなことがあったら——」
強く握った拳に爪が食い込む。
今一度、マンションを振り返った悠月の瞳には強い炎が宿っていた。
「でも、今はとりあえず……服屋に行こ。下着……替えなきゃ」
再び歩き始めた悠月の足は、まっすぐ商業施設の衣料品店に向かっていた。
理由は……お察しの通りである。