うちに転移してきた魔女がエロゲ出身すぎる   作:匿名希望

9 / 9
まろび出るご立派様

 朝食を済ませ、この後の予定について話し合う。

 

「さて、今日はどうする?」

「そうね。囮にならなきゃだし、どこかへは出かけたいところだけど」

「……千里の趣味ってなんだ?」

「急に何よ……口説いてる?」

「ちげぇよ……」

「あら、残念。でも、私はもう誠治の女みたいなものだものね」

「……出かける先の参考になるかと思っただけだ」

「ああ、なるほどね。そうねぇ……」

 

 思考を巡らせるように視線を泳がせる千里。

 その先には、千里の持ってきた大きめのスーツケースがあった。

 

「そういえば、荷解きも終わってないな。手伝おうか?」

「……それはいいわ。もう必要ないもの。なんなら一度協会に戻って置いて来たいくらいよ」

「えぇ……そんなことないだろ。あれだけの荷物。大事なものとか入ってるんじゃないのか?」

「……そ、そうね。大事なもの、だったわ。すごく」

「なんだよ、その言い淀みは」

「……いいでしょ、別に」

 

 急にそっけなくなった反応。

 それによって、俺の興味がスーツケースに向いた。

 

「中、見たら怒るか?」

「……誠治でも許さないわ」

 

 本気の睨みで伸ばした手を引っ込める。

 だが、そんな反応により興味が強くなってしまった。

 

 そんなに隠したいけど、どうしても持ってきたかったもの。

 そしていきなり必要なくなったもの。

 一体なんだ?

 

「それより、趣味の話だけど、私はやっぱり服かしら。中々肌に合う服ってないのよね」

「……そりゃ、千里の求める服はそうそうないだろうな」

 

 相変わらず胸元がガッツリと開いた痴女服を着ている千里。

 あんな服、売っている物なんだろうか?

 露骨に話をそらされた感は否めないが、あの服の購入先については確かに少し気になるかもしれない。

 

「……じゃあ、どこかに服でも見に行くか? 平日でも大型の商業施設ならそれなりに人もいるだろ」

「いいの?」

「ああ。仕事してないから、買ってはやれないけどな」

「お金は大丈夫。よくわからないけど、会長にこのカードを持たされてるから!」

 

 スーツケースをガサゴソと漁り、千里は黒く輝くカードを取り出して見せる。

 それは言わずと知れた、限度額のないクレジットカードいわゆるブラックカードというやつだった。

 

「……会長さんって一体何者なんだよ」

「さぁ? 私もよく知らないわ。でもすごい人なのは確かね」

「ま、じゃあ、出かけるか」

「ええ、ちょっと寝室借りるわよ。せっかくデートなんだから、もう少しちゃんとした服に着替えるわ」

「デートて……まあ、違わないか」

 

 スーツケースを片手に寝室へ引っ込んでいく千里を見送る。

 そして、一人になった部屋で、不意にさっきまでスーツケースが置かれていた場所を見て、ぎょっとした。

 

 よほどはしゃいでいたのだろうか?

 どうやら千里はスーツケースから一つ、物が落ちたことに気が付いていなかった。

 

 そこには中々に立派な()()()()が鎮座されていた。

 

「……なるほど、な。これは確かに見せられないよな」

 

 完全に超プライベート用品。

 特に女性ともなれば、絶対に隠しておきたいものだろう。

 

 目を逸らそうにも、あまりに立派な立ち姿に思わず視線が吸われてしまう。

 

 そういえばロスティも千里が夜な夜な自室で——とかなんとか言ってたもんな。

 ……待てよ、それが必要なくなったって……。

 

「………………」

 

 テーブルに肘を付き、下を向く。

 対照的に俺の俺が立派な姿になって顔を合わせるように上を向いてきた。

 

 

「お待たせ。行きましょ、せい——」

 

 しばらくして寝室から戻ってきた千里の言葉が途中で止まる。

 おそらく、床の上にそそり立つアレに気が付いたのだろう。

 俺は顔を下に向けたまま、耐えることにした。

 

「……見た?」

「……」

「見た、のね?」

「……いや」

「正直に言って」

 

 だが、あまりの圧に俺は思わず口を開いてしまう。

 

「見、ました」

「……なさい」

「へ?」

「今すぐ忘れなさい! いや、記憶を消すわ! 頭を寄越しなさい!!」

 

 すると、半狂乱になった千里が、落ちていたご立派様を掴みこちらへ殴りかかってくる。

 

「ま、待て、待てって。こればかりは不可抗力だろ!」

「なんでもいいわよ! とりあえず記憶を消して!」

 

 涙目になりながら暴れる千里。

 まずい。

 このままでは収集が付かない——!

 

 そう思った時、千里のスマホからコール音が鳴る。

 

「……で、出なくていいのか?」

「……通話が終わったら、覚悟しておいて」

 

 一瞬だけスマホに目を落とすと、涙目のままこちらを睨み、千里がもたつきながらも電話に出た。

 

「……はい、もしもしフェルです」

「ああ、フェル。私だけど、今いいかな?」

 

 千里はスマホを耳にあてているが、スピーカーモードになってしまっているため、音が丸聞こえだった。

 相手はどうやら会長さんらしい。

 

「はい、大丈夫ですが……」

「そうかい? なにやら息切れしているようだから、もしかしたらお邪魔しちゃったかと思ったけど」

「だ、大丈夫です!」

「ふふっ、上手くやれているようで何よりだよ。……と、雑談はさておき、フェル、直近で魔力探知は何時したかな?」

「え? 朝食を買いに出る頃だったので、二時間ほど前かと思いますが」

「そうか……。念のため、今、してみてくれるかな?」

「? はい」

 

 言われるがまま千里が目を閉じる。

 すると数秒して、千里の目が驚きに見開かれた。

 

「えっ!? 監視の気配が、消えてる?」

「ああ。どうやらそのようだね」

「一体いつの間に? それに私に気付かせずに姿を消すなんて……相当なやり手、ということですね」

「……その可能性も考えられるけれど」

「会長?」

「もしかしたら、消された可能性も考えられるよ」

「——っ!? そんなっ。こっちが監視に気付いていることは絶対にバレないように逆探知はしないようにしていたのに」

「そうだよね。フェルがそんなミスを犯すとは私も思わないよ。けど、フェル。君と誠治君、それから私以外に監視の事実を知っている人物がいたりしないかな?」

「——!」

 

 会長さんは何かに確信付いているような声音で千里に確認した。

 

「そういえば、今朝、九重さんに、誠治の後輩だった流れの魔女に話しました……」

「やっぱり、そうだよね。おそらく彼女は今から二時間前の間に一切の魔力反応も残さずにギルドの監視を処理しているよ」

「そんな……一体、二時間程度の短時間でどうやって? それに、魔力反応を一切出さないなんて……まさか」

「いや、物理的な暗殺の線は薄いだろうね。——おっと、どうやら正解だったみたいだ。フェルと誠治君を監視していた奴らがいたと思われる場所に派遣したロスティからちょうど報告が上がってきたよ。男性が二人、胸を押さえながら、死んだように眠ってるらしい」

「眠っている? 魔法でしょうか?」

「どうだろうね。それについては調べてみないとわからないよ。フェル、すまないけど回収を頼めるかな? 住所はこのまま送っておくから」

「分かりました」

「ありがとう。じゃあ、また協会で」

 

 通話を終えると、千里がこちらを見た。

 先ほどまでの恥辱と涙に濡れた顔ではない。

 かつてないほどに真剣な表情だ。

 

「なんだか、大変なことが起こってるみたいだな」

「ええ。九重さん……あの子はいったい何者なのかしら」

「……でも、まだ九重がやったと決まったわけじゃないだろ?」

「……そうね。とりあえず、現場に行きましょう」

「ああ、だな」

 

 監視が消えていることに喜べばいいのか、より分からなくなった九重を警戒すればいいのか。

 落差の激しすぎる状況に頭が全くと言っていいほど付いていけていない。

 

 伸ばされた千里の手を掴む。

 すると、今朝ぶりに転移魔法の光に包まれた。

 

 ◇◇◇

 

「フェル! 誠治さん!」

 

 光が晴れるとすぐに、現場にいたロスティが駆け寄ってくる。

 

「ロスティ。いつの間にこっちに派遣されていたの?」

「昨晩です。ここと後四か所ほど、会長が絞った監視の潜伏場所に動きがないか見張っていました」

「見張っていたあなたでも、この二人が処理されていることに気が付けなかったってこと!?」

「……はい。情けないです」

「いや、責めているんじゃないわよ。でも、そうだとしたら、やっぱりかなりのやり手よね」

「はい。それは間違いないと思います」

 

 会話をしている二人を横目に見ながら、俺はその奥で倒れている二人の男の様子を見る。

 すると確かに、二人の男は胸を抑えるようにしながら眠っていた。

 だが、その顔色は酷く、まさに死んだように、という表現がしっくりくる状態だった。

 

「この二人ね……ロスティ、見覚えはある?」

「いえ、ですが、二人を監視していた以上ギルドの魔法使いだと思います」

「そうね。まあ、詳しいことは会長に視てもらいましょう。さ、ロスティも誠治も私に掴まって」

「フェ、フェル? この人数を一気に転移させるのですか? それはさすがに魔力が持たないんじゃ……」

「いや、大丈夫よ。昨日、魔力量が結構増えたの」

「へ?」

「…………」

「じゃあ、行くわよ」

 

 心配するロスティの言葉をひらりと躱す千里。

 転移魔法の光に包まれながら、少し遅れてその意味を理解したらしいロスティが俺の方を見て何かを言いかけたが、それは転移の瞬間に阻まれた。

 

 ◇◇◇

 

 当分来ることはないのだろうと思っていたのだが、存外早く再び足を踏み入れることになった魔女協会。

 だが、昨日までいた時とはなんだか雰囲気が異なっていた。

 

「あら? ロスティ、何か変えたの?」

「あ、はい。誠治さんが来ても、場所の特定がされないように、普段より少し壁を分厚くしました。そのせいで、監視の二人を見落としてしまったのかもしれませんが……」

「そういうことなら、仕方ないわよ。でも、こうして監視者を捕まえることはできたわけだし」

「はい……」

 

 その違いは千里も感じていたようで、それについてロスティと話をしていた。

 

「……もしかして、この空間? というか魔女協会ってロスティの魔法で作られてたりするのか?」

 

 そんな話を聞いて、脳裏に浮かんできた疑問をそのまま口に出してみる。

 

「そうですよ。なにせ私は会長の前代の会長の頃から魔女協会の一員ですから! こう見えて古株魔女なんです!」

 

 すると、少しだけ自慢げにロスティが胸を張った。

 

「そうだったのか……魔法って言っても、本当に色々あるんだな」

「そうね。まあ、ロスティのこれは魔法の中でもかなり特殊な部類だけどね。ロスティのおかげで魔女協会はかなり行動がしやすくなったのよ」

「そうだよな。見つからない拠点があるって相当な利点だよな」

「でも、私の魔力はここの維持にほとんど使ってしまっていますから、今回のように手隙の魔女がいない時くらいにしか、単身での任務は受けられませんけどね」

「いや、それでもすごいだろ」

「えへへ、ありがとうございます」

 

 嬉しそうに頬を掻くロスティに和んでいれば、背後のドアが開かれ、会長さんが入ってきた。

 

「やあ、フェルに誠治君。昨日ぶり。ロスティも無理させてしまったね」

「あ、会長」

「昨日ぶりです」

「いえ、私こそ、気づくのが遅れてすみません」

 

 昨日見たのと同じようにいかにも仕事が出来そうなスーツ姿の会長さんはそう言いながら、まっすぐに横たわる男たちの元へ歩み寄る。

 

「さて、早速だけど視てみるよ」

「はい」

「お願いします」

 

 そして、男たちの頭上でしゃがみ込むとその額に手を置いた。

 

「……なあ、会長さんの魔法って何なんだ?」

「詳しくは私も知らないけど、なんでも、相手の情報やら記憶やらを読み取れるらしいわよ」

「誠治さんは漫画とか読まれますか? ああいう創作に出てくる鑑定みたいな魔法らしいです」

「なるほど、鑑定眼か……」

 

 確かに、会長さんの風貌はどちらかと言えば、アクティブな魔法よりそういうパッシブな魔法を使いそうだ。

 

「これは……」

 

 会長さんが男たちから手を離し、立ち上がった。

 

「会長?」

「何か見えましたか?」

「いや、この二人が監視者であろうことは間違いないんだけどね。眠らされる瞬間。その付近の記憶がどういう訳か視えないんだ。まるで、無理やり消されてしまっているように」

「会長の目でも視えないなんて……一体」

 

 千里とロスティが信じられない、という顔をする。

 だが——

 

「……でも、一つだけ視る方法があるかもしれないんだ」

 

 会長さんは俺の方をまっすぐに見て、そう言った。

 

「その方法って……まさか……」

 

 俺は思わず、聞いてしまう。

 

「ああ、そのまさかだよ誠治君。おそらくこれは魔法的な干渉を受けている。だから君の力を借りて、私の魔力を増やせれば、突破できるかもしれない」

「——っ」

「そ、それは——」

 

 隣で、千里の顔が少しだけ複雑そうな色を宿すのが見えた。

 ロスティも顔を赤くしながら、口をパクパクとさせている。

 だが、会長はそんな二人に構うことなく、俺に迫り、かっちりとしたスーツに包まれた胸を寄せ上げながら上目遣いで言う。

 

「どう、かな?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】鶴が恩返ししないんだが(作者:エタリオウ)(オリジナル現代/恋愛)

生まれつき鳥に好かれやすい高校生・佐鳥鳳介の家に、ある雪の夜、一人の美少女が訪ねてきた。▼これはまさか、現代版・鶴の恩返し――?▼だが、その出会いを境に、鳳介の日常は少しずつ鳥に侵食されていく。▼彼を守ろうとする居候。▼クラスメイトはストーカー。▼完璧すぎる幼馴染。▼そして、彼の過去へ踏み込んでくる後輩。▼鳥に愛され、鳥に狙われ、鳥に振り回される。▼これは、…


総合評価:5171/評価:8.88/完結:26話/更新日時:2026年06月26日(金) 20:07 小説情報

鬼畜陵辱エロゲの世界に転生したけど男女比がバグってるせいで竿役が俺しかいない(作者:乳と地位が比例する世界)(オリジナルファンタジー/コメディ)

——なら俺が竿役全員やるしかねえっ!!▼カクヨムにも投稿してます


総合評価:1086/評価:7.26/連載:9話/更新日時:2026年06月29日(月) 07:21 小説情報

救えなかったら時が戻る人、やり遂げたら何故か周りが病み始める。(作者:ゲーミング千手観音)(オリジナル現代/日常)

▼ 普通に日常を過ごしていただけなのに、何故か突然「その日毎に救助対象が変わって、しかも助けられずに死なせてしまうと一日の最初に戻る」という状態に陥ってしまう主人公。▼ 絶望して、心を壊しながらも一年間やり遂げた主人公はその呪いから開放される。▼ ────そしたらなんか今まで助けた人全員病んだ。なんで?▼ そう言ったお話。▼ 尚、助けられた人達は呪いが無くな…


総合評価:1150/評価:8.14/連載:8話/更新日時:2026年07月25日(土) 20:00 小説情報

俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど!(作者:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!)(オリジナルファンタジー/コメディ)

『ドラゴ・マギカ・クロニクル』 ▼ ドラゴン娘を育てて世界を救うという何とも特徴のない擬人化ゲーの世界に『カラバ・イルマイト』として転生して来た俺は特に波乱も無くモブとして生きていた。▼ シナリオの端っこでいつの間にか殺されているという様なことが無いことを願いつつ、ゲームのチュートリアルイベントで召喚したドラゴン娘は『R』でも『SSR』でも『UR』でも無かっ…


総合評価:183/評価:7.22/連載:9話/更新日時:2026年09月21日(月) 07:20 小説情報

恵まれた血筋と才能をネタ職業でふいにするクズ(作者:ひよこ鑑定士)(オリジナルファンタジー/戦記)

性欲に負けた結果、強そうな職業フル無視して【女体鑑定士】選んだやつの話。▼ 


総合評価:209/評価:8.2/連載:4話/更新日時:2026年09月17日(木) 19:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>