付喪神の戦車道   作:Верный510

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 重い身体を引き起こし、学校へ行く。
 意外と近いので、すぐ到着する。まぁ、塀を乗り越えているからなのだが。

「千春さん、大丈夫ですか?」
「顔色悪い」

 戦車の倉庫へ着くなり、みほと……カチューシャをつけた身長が低めな人が声をかけてくれた。
 麻子とか言う人らしい。

「あ、そうだ。千春さんはチーム名どうしますか?」

 見れば、ちょうど本体である九七式が鎮座する倉庫の前の扉だけ、開いていた。
 多分何かすることがあるので空けているのだろう。
 チーム名。チハの他に誰も載っていないのに。

「鴉がいいであります!」

 と、言うことで鴉になった。

 砲塔側面に大洗のエンブレムと、車体側面にシルエットだけの鴉のエンブレムがペイントされた。
 何故これにしたんだろうな、とチハは思った。

『当てつけかな』


【接敵】

 大会第一回戦。

 相手はサンダース大学付属。

 

『パンツァー・フォー』

 

 無線から聞こえた合図と同時に、チハは進み始めた。

 ルールは特定の車両を守り、相手の特定の車両を撃破するフラッグ戦。

 さっきまでルールブックを読みふけっていたので、その点などは大丈夫だ。

 

 そのまま大洗チームは森へと入り、M3リーと八九式が偵察のために離れていった。

 チハに与えられた役目は無いが、この特定の車両、つまりフラッグ車を守ることが最優先なので、その付近を走っている。

 

「……砲撃?」

 

 周りのエンジン音の合間から、遠くから僅かに聞こえる。

 果たしてそれが本当に砲撃音なのか確証は持てず、耳を澄ませてみるチハ。

 どうしても聞こえない。

 だがだんだんと近づいてきている気がする。

 

 

 M3リーと八九式が戻ってきた。

 最悪な敵を引き連れて。

 

 前方に、2両の敵車両がいた。

 シャーマンが。

 

『            』

 

 無線が何か言っているが、チハの耳には入らない。

 身体が一切動かない。

 何も反応できない。

 視野が狭まる。

 

『千春さん!ついてきてください!』

 

 停止してしまった直後、みほからの無線で我に返り、慌てて追いかけるチハ。

 進路を塞ごうとシャーマンが動くが、チハはフェイントを入れてそれを躱して裏へと抜ける。

 砲塔の振り向きざまに砲弾をお見舞いするも、残念なことに不貫通だった。

 

『そのまま撃たれれば良かったのに』

 

 包囲を抜けたが、チハは底冷えするような気分を味わっていた。

 腹部が以上に冷えて、頭が凝縮されるように痛い。

 手先が震えている。

 

 シャーマン。

 日本戦車の天敵。数多の車両を撃破した、鉄壁の戦車。

 それが、シャーマンに対するチハの評価だ。

 トラウマでもある。

 

「あの、チハさん」

 

 みほが呼びかけてきた。

 車両同士の距離が近いので、なんとか声が聞こえる。

 

「こちらの無線が盗聴されています。

 それを逆手に使うので、128高地に移動してください。敵が多く来るかもしれませんが、とにかく時間稼ぎを」

 

 他のみんなは携帯で会話をしているようだが、チハは持っていない。

 そのため、口頭で伝えたのだ。

 

「わかりましたであります!」

 

 陸軍式敬礼をして、チハは大洗チームから離れて高地へと移動する。

 地図は全て覚えているので問題ない。

 たとえ任務が嫌でも、全ては戦いに勝つ為。

 

 

 

 高地へと到達するチハ。

 早速地面へと榴弾を発射、地面を吹き飛ばし、柔らかくなった土に本体を埋める。

 少しでも周りから見にくくしようとしたのだ。

 

 さらに手で土を押しのけ、さらに本体を埋めていく。どかした土は穴の縁へと盛り上げ、ほぼ意味の無い壁を作る。

 シャベルを持ってくればよかったと、チハは少し後悔した。




急ぎ足で本当に済まない。
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