付喪神の戦車道   作:Верный510

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 チハは現在、わざわざ森まで行き、枝を折っては抱えて運ぶを繰り返していた。
 車体を隠す偽装のためである。

 途中、大洗が2両撃破したとの放送が入り、現在6対9。
 数的有利には程遠い。

『全車、128高地に集合してください。ファイアフライがいる限り、防御力の低いこちらに勝ち目はありません。
 危険ではありますが、128高地に陣取って上からファイアフライを一気に叩きます』

 みほから通信が入った。
 傍受されていると言ったのに、なぜ通信してきたのか。

 チハは察した。
 無線傍受を、逆手に取るつもりだと。


【生還】

 車内で待ち構えるチハ。

 キューポラからは一切出ず、ただ息を潜める。

 盛り上げた土にも枝や葉で隠してある。飛び出ている砲塔にも枝をかぶせてあるし、元から迷彩が施されている。

 あとは、祈るだけ。

 

 轟音が近づく。

 エンジンを切っているので、周りの音がよく聞こえる。

 数はおそらく4両か5両。

 

「……」

 

 このまま撃ち合っても装甲は抜けない。

 タ弾でさえも、もしかしたら抜けないかもしれない。

 あの聖グロの黄色い奴には、至近距離だったから上手く狙えただけだ。

 

 突撃するべきか。

 そんな考えが脳裏に浮かぶ。

 

 だがその考えは振り払った。

 

 相手は今4両か5両。こちらの近くにおり、このままこちらに釘付けにしておけば、5両の大洗と残存車両の差は5対4か5。

 

『こちら鴉チーム。敵を釘付けにします』

 

 みほへと通信をあえて入れる。

 絶対に傍受されたが、それが何だというのか。

 

 砲撃を開始する。

 装填、砲撃、排莢。

 その繰り返し。

 

 数発が敵車両に命中するが、弾かれる。やはり貫通は難しい。

 だが1両の履帯が弾け飛んだ。

 さらに、ほかの車両が砲塔を回し始める。車体ごと。

 

 それを確認し、チハは急いでエンジンを回す。

 相手の砲撃が飛んでくるが、前進して窪みから飛び出して回避。

 継続的に回避しつつも、敵車両に砲撃。排莢された薬莢は誰も乗っていない車内下部へと落ちて行く。

 

 榴弾により、2両目の履帯を切断。

 車体の機関銃も使いながら、とにかくこちらへ注意を向けさせる。

 満遍なく、全車両に砲撃をぶち当てていく。貫通はできないが。

 

「……!

 行かせない!」

 

 後退を始める車両を発見したチハは、突然向きを変えて加速した。

 回り込もうというのだ。

 タ弾を装填し、構えるチハ。

 

「逃さない!」

 

 砲塔側面を敵砲弾が削りつつも、後ろに回ったチハ。

 ちょうど後退し始めた車両の進路である。

 残念ながら相手も馬鹿ではなく、進路に敵がいると見るや車体を回し、後部を守ろうとするが遅い。

 

 少し位置を調整しタ弾を撃ち出した。

 上手く車体後部へ命中し、白旗が上がる。

 

 直後に来る周りからの砲撃も、急発進でギリギリ回避。

 履帯を狙い、榴弾をお返しに放つ。

 弾数が少ないので、こうするしか無いのだ。

 残り20発。タ弾を合わせれば23発。

 

『鴉チームであります!

 釘付けが外れるかもしれません!』

 

 みほへ連絡し、最悪の状況に対する予防線を張る。

 だが、弾切れになろうともチハは止めるつもりだ。

 

『できるの?』

 

 バギンという音がし、履帯が切れた。

 相手の砲弾が命中したのだ。

 

 なおもチハは砲撃を続行し、さらに2発消費。残り21発。

 

 敵車両が砲身をこちらに向ける。

 

 そして、砲弾が放たれる……。

 

 

 

 ことは無かった。

 

 

『サンダースフラッグ車、行動不能!

 よって、大洗女子学園の勝利!』

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