車体を隠す偽装のためである。
途中、大洗が2両撃破したとの放送が入り、現在6対9。
数的有利には程遠い。
『全車、128高地に集合してください。ファイアフライがいる限り、防御力の低いこちらに勝ち目はありません。
危険ではありますが、128高地に陣取って上からファイアフライを一気に叩きます』
みほから通信が入った。
傍受されていると言ったのに、なぜ通信してきたのか。
チハは察した。
無線傍受を、逆手に取るつもりだと。
車内で待ち構えるチハ。
キューポラからは一切出ず、ただ息を潜める。
盛り上げた土にも枝や葉で隠してある。飛び出ている砲塔にも枝をかぶせてあるし、元から迷彩が施されている。
あとは、祈るだけ。
轟音が近づく。
エンジンを切っているので、周りの音がよく聞こえる。
数はおそらく4両か5両。
「……」
このまま撃ち合っても装甲は抜けない。
タ弾でさえも、もしかしたら抜けないかもしれない。
あの聖グロの黄色い奴には、至近距離だったから上手く狙えただけだ。
突撃するべきか。
そんな考えが脳裏に浮かぶ。
だがその考えは振り払った。
相手は今4両か5両。こちらの近くにおり、このままこちらに釘付けにしておけば、5両の大洗と残存車両の差は5対4か5。
『こちら鴉チーム。敵を釘付けにします』
みほへと通信をあえて入れる。
絶対に傍受されたが、それが何だというのか。
砲撃を開始する。
装填、砲撃、排莢。
その繰り返し。
数発が敵車両に命中するが、弾かれる。やはり貫通は難しい。
だが1両の履帯が弾け飛んだ。
さらに、ほかの車両が砲塔を回し始める。車体ごと。
それを確認し、チハは急いでエンジンを回す。
相手の砲撃が飛んでくるが、前進して窪みから飛び出して回避。
継続的に回避しつつも、敵車両に砲撃。排莢された薬莢は誰も乗っていない車内下部へと落ちて行く。
榴弾により、2両目の履帯を切断。
車体の機関銃も使いながら、とにかくこちらへ注意を向けさせる。
満遍なく、全車両に砲撃をぶち当てていく。貫通はできないが。
「……!
行かせない!」
後退を始める車両を発見したチハは、突然向きを変えて加速した。
回り込もうというのだ。
タ弾を装填し、構えるチハ。
「逃さない!」
砲塔側面を敵砲弾が削りつつも、後ろに回ったチハ。
ちょうど後退し始めた車両の進路である。
残念ながら相手も馬鹿ではなく、進路に敵がいると見るや車体を回し、後部を守ろうとするが遅い。
少し位置を調整しタ弾を撃ち出した。
上手く車体後部へ命中し、白旗が上がる。
直後に来る周りからの砲撃も、急発進でギリギリ回避。
履帯を狙い、榴弾をお返しに放つ。
弾数が少ないので、こうするしか無いのだ。
残り20発。タ弾を合わせれば23発。
『鴉チームであります!
釘付けが外れるかもしれません!』
みほへ連絡し、最悪の状況に対する予防線を張る。
だが、弾切れになろうともチハは止めるつもりだ。
『できるの?』
バギンという音がし、履帯が切れた。
相手の砲弾が命中したのだ。
なおもチハは砲撃を続行し、さらに2発消費。残り21発。
敵車両が砲身をこちらに向ける。
そして、砲弾が放たれる……。
ことは無かった。
『サンダースフラッグ車、行動不能!
よって、大洗女子学園の勝利!』