唖然とするチハ。
そんなに早くフラッグ車を倒したのか?と。
改めて相手車両の数を見る。
なんと、6両もいた。必死で気づかなかったのだ。
となると、大洗5両対サンダース4両となる。車両数で有利を取って勝ったのだ。
と、思うことにした。
「今日はありがとね」
試合後、突然知らない日本人から声をかけられた。
「あ、どうも?」
当然のように握手を交わしてくるのだが、チハは相手が誰だか全く知らない。
そもそも顕現してからほとんど他人と関わっていないので、会う機会すら少ないはず。
「誰だかわからないって顔してるね?
私はほら、あなたの倒したシャーマンの車長だよ」
屈託のない笑顔を浮かべる相手。
チハは衝撃を受けた。
「……日本人?」
「そうだよ」
チハにってシャーマン搭乗員は全員米兵という認識だ。
そして敵だ。
だが、相手は日本人だ。完全に。
付喪神のチハだからわかる。相手が日本人だとを
そう、かつての搭乗員と同じ。
「まさか九七式でシャーマンを撃破するなんて!
本っ当に驚いたよ、すごい腕前じゃない!」
高めのテンションで話しかけてくる相手。
なんかいい人そう。
『本当に?』
ちょっと気になっていることがあったので、チハは質問してみることにした。
「何故擱座した私を、周りは撃たなかったんでありますか?」
あの瞬間、試合終了の試合がなった後でも別に撃てば良かったのではないかと言いたいのだ。
負けてしまったのなら、少しでも相手が苦労するようにするべきだと。
「あぁ、あなた達は戦車道復興したばっかりだからか。
試合終了したら砲や機銃にロックがかかるの。強制的にね。
だってこれは戦車道であって、戦争じゃないから」
「……戦争じゃ、無い」
「そ、これは試合。正々堂々、フェアな戦い方をしないとね!」
相手の隊長と、同じようなセリフを言う相手。
そして戻って行った。またね、と言い残して。
多分、無線傍受のことをあの人は知らない。
「……戦争、は、終わった」
チハはその言葉を繰り返した。
噛みしめるように。
『まだ終わってないよ、勝手に終わらせないで』
ーーーー
「チハちゃん、すっかり書類整理上手くなったよね」
学園艦に戻ったチハは、生徒会室で書類整理を手伝っていた。
すっかり柚子とは壁が少なくなり、敬語での会話も少なくやった。
チハの口調は変わらないが。
「いやぁ、柚子さんから褒められるとは恐縮であります」
もう書類整理には慣れたもので、他にも色々手伝ったりしているが、だがやはり書類整理が多い。
それぞれ纏めてファイルに挟んだり、逆にファイルから資料を見つけ出したりもする。
今は纏めてファイルに挟む作業をしている。
「ん?」
チハの目に、とある文字が飛び込んできた。
「廃校?」
それは、学園艦が廃校になるという内容の紙だった。
「あー、見つけちゃったか」
会長の声が聞こえる。
チハが振り向くと、会長は真面目な顔で言った。
「これはまだみんなに言わないでほしいんだけど、大洗に廃校になると文科省から連絡があった。
でも、戦車道大会で優勝できれば廃校を免れるかもしれない。」
だから戦車道を復活させたんだ、と会長は言った。
いつものお調子感覚な話し方ではなく、しっかりとした、強い意志を感じるような話し方だった。
「言わないって約束できる?
……いや、もう言っちゃったから約束してもらわないと困るんだけどさ」
「わかりました。約束します」
「……」
チハは寮へ帰る途中にふと思い立った。
「……私、ここが無くやったらどうなるんだろう」