その行動は兵器としてなの?姉さん』
暗い通路に潜む黒を、明かりで削りながら歩く人物がいる。
頭部に刺さった鉢巻きアンテナ、制服の上から着ている陣羽織、長い髪に膝まである機械的なブーツ。
久奈千春である。通称は、チハ。
「……見にく、この地図」
だがチハは明かりを持っていない。
その右目が光っているのだ。
彼女は付喪神。九七式の前照灯がそのまま右目と役割を兼任しているのだ。
さて、現在チハは学園艦の中を歩いている。
戦車を探すためだ。
なんか人手が足りないからと、駆り出されたのだ。
「……何してるんだろ、私」
途中で歩を止めたチハ。
止めた、というより止まった。
かれこれずっと探し続けているが、未だにそれらしきもの一つ見つかっていない。
ずっと夜中のようで、気がおかしくなりそうだ。
「……はぁ」
また歩みを進めたチハ。
まるで徘徊をしているように、憶測なく進んでいく。
『姉さん』
チハは咄嗟に声が聞こえた方向を見る。
同じような身長の、何かが横道にそれて行くのが見えた。
チハは追いかけ、横に行ったであろう道を見ると、光が当たるか当たらないくらいの位置を、何かが歩いている。
同じような陣羽織。だが、黄帯がチハのものとは違って比較的真っすぐだ。
三菱製では無い。日立製だ。
後ろ姿で顔は見えない。
突然、後ろ姿は急速に遠ざかっていった。
「待ってよ!」
反射的に、追いかけるチハ。
もう置いて行かれるのは嫌なのだ。
チハは全力で追いかける。
足裏の履帯も使っているから、見かけによらず速く移動している。
だが追いつけない。一向に距離が縮まらない。
「ねぇ!待ってよ!どうして置いていくの!?」
走りながら、問うチハ。
恨んでいるのであれば自分に何か言うだろうと。
だが相手は応えずに走り続ける。
走り続けて、走り続けて。
ついたところは行き止まりであった。
そして、相手の姿も消えてしまった。
「……?」
だが、チハは違和感に気づいた。
行き止まりなのだが、その壁がおかしい。下に隙間があるのだ。
さらに、人の話し声のようなものまで。
なんとなくチハは登ってみる。そしたらなんと、上にも隙間があった。
これ、戦車では?
「チハちゃん?」
「……へ?」
下を見ると、何ということか沙織がいた。
しかも確か濃い桃色のM3リーに乗っていた人たちも。確か1年生。
「目が光ってる!」
「ロボット?」
「サイボーグかも〜?」
「これですか?昔試験的に作ったカラコンであります!
剥がせなくなって、しかも目を強く痛めるので私以外には使えませんが……」
1年生組数人からの発言に対し、絶対に無理な嘘をつくチハ。
「それで、皆さんは何故ここに?」
「えーっとね、遭難しちゃった」
チハの質問に答える沙織。
「あー、私が来た道ってどっちでありますか?」
無事に、チハも遭難した。