付喪神の戦車道   作:Верный510

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『兵器は何も言わずに指示に従う。
 その行動は兵器としてなの?姉さん』


【徘徊】

 暗い通路に潜む黒を、明かりで削りながら歩く人物がいる。

 頭部に刺さった鉢巻きアンテナ、制服の上から着ている陣羽織、長い髪に膝まである機械的なブーツ。

 久奈千春である。通称は、チハ。

 

「……見にく、この地図」

 

 だがチハは明かりを持っていない。

 その右目が光っているのだ。

 彼女は付喪神。九七式の前照灯がそのまま右目と役割を兼任しているのだ。

 

 さて、現在チハは学園艦の中を歩いている。

 戦車を探すためだ。

 なんか人手が足りないからと、駆り出されたのだ。

 

「……何してるんだろ、私」

 

 途中で歩を止めたチハ。

 止めた、というより止まった。

 

 かれこれずっと探し続けているが、未だにそれらしきもの一つ見つかっていない。

 ずっと夜中のようで、気がおかしくなりそうだ。

 

「……はぁ」

 

 また歩みを進めたチハ。

 まるで徘徊をしているように、憶測なく進んでいく。

 

『姉さん』

 

 チハは咄嗟に声が聞こえた方向を見る。

 同じような身長の、何かが横道にそれて行くのが見えた。

 チハは追いかけ、横に行ったであろう道を見ると、光が当たるか当たらないくらいの位置を、何かが歩いている。

 

 同じような陣羽織。だが、黄帯がチハのものとは違って比較的真っすぐだ。

 三菱製では無い。日立製だ。

 後ろ姿で顔は見えない。

 

 突然、後ろ姿は急速に遠ざかっていった。

 

「待ってよ!」

 

 反射的に、追いかけるチハ。

 もう置いて行かれるのは嫌なのだ。

 

 チハは全力で追いかける。

 足裏の履帯も使っているから、見かけによらず速く移動している。

 だが追いつけない。一向に距離が縮まらない。

 

「ねぇ!待ってよ!どうして置いていくの!?」

 

 走りながら、問うチハ。

 恨んでいるのであれば自分に何か言うだろうと。

 だが相手は応えずに走り続ける。 

 

 走り続けて、走り続けて。

 ついたところは行き止まりであった。

 

 そして、相手の姿も消えてしまった。

 

「……?」

 

 だが、チハは違和感に気づいた。

 行き止まりなのだが、その壁がおかしい。下に隙間があるのだ。

 さらに、人の話し声のようなものまで。

 

 なんとなくチハは登ってみる。そしたらなんと、上にも隙間があった。

 これ、戦車では?

 

「チハちゃん?」

「……へ?」

 

 下を見ると、何ということか沙織がいた。

 しかも確か濃い桃色のM3リーに乗っていた人たちも。確か1年生。

 

「目が光ってる!」

「ロボット?」

「サイボーグかも〜?」

 

「これですか?昔試験的に作ったカラコンであります!

 剥がせなくなって、しかも目を強く痛めるので私以外には使えませんが……」

 

 1年生組数人からの発言に対し、絶対に無理な嘘をつくチハ。

 

「それで、皆さんは何故ここに?」

 

「えーっとね、遭難しちゃった」

 

 チハの質問に答える沙織。

 

「あー、私が来た道ってどっちでありますか?」

 

 無事に、チハも遭難した。

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