車両回収車に運ばれている。
左頬と左足がジンジンと痛い。
チハは本体とリンクしている。つまり、被弾すると痛みなどのフィードバックが来るのだ。
『話すんでしょ?全部』
「……」
『楽になれるの?それで。
散々人に暴言吐いたくせに』
「失礼します」
生徒会室の扉を開けて入ってきたのは、みほだった。
「ごめんね〜みほちゃん。呼び出しちゃって」
「いえいえ大丈夫です。
それよりも、大事な話って何ですか?」
そこで会長は、視線をチハに向けた。
チハは下を見つめてしまっているが、視線を察知したかのように顔を上げた。
「……言いたいこと、が、あります」
歯切れの悪い始め方だが、チハは続ける。
「私は……その……」
中々言い出せず、言葉に詰まるチハ。
少し言葉を止めて、深呼吸するかのように落ち着かせる。
「…………私……私は人じゃ、ないんです」
「? それってどういうこと?」
会長が質問する。だがチハは、そんなこと耳に入らないかのようにそのまま続けた。
「私が乗ってる九七式は……本体です、私の。
そして、本当の、戦争経験車……」
段々とチハの視線が下がっていく。
まるで撃破された戦車の砲身のように。
「だからといって、だからといって何でもしていいわけじゃないってわかってます。
でも、でもです。
ずっと、聞こえるんです。妹や弟たちの声が」
チハは初めて、幻聴のことを打ち明けた。
なおもチハは言葉を続けていく。
「私は英雄なんかじゃない……。
なのにみんな私の前に飛び出して、撃たれて、燃やされて、潰されて……。
みんな盾になって、死んだ。こんな
「なっ……」
この言葉に反応したのは、河島だ。
彼女には何人もの妹や弟がいる。何か思うところがあったのかもしれない。
「何度も、何度も、目の前で弟妹達が殺されて……」
ボタ、と黒い液体が床に落ちた。
零れ落ちるそれは数を増やして、カーペットを濡らしていく。
「妹も、弟も私を恨んでる。
そんなのもう、わかりきってる。でも、私はもうそれを止められない」
チハの口調がだんだんと冷たくなっていく。
冷酷さではない。まるで体温が下がっていくかのような冷たさだ。
「みんな私を置いてった、みんな私を勝手に祭り上げて、私のことなんかそっちのけにしたくせに、今更私に言うの。
『どうして生きてるの?』って
でもそれは本当のこと。みんな私に託して行ったのに、私はそれに応えることができなかった……」
ついには膝をつけてしまい、頭を抱え始めた。
チハの長い髪が、床の黒い液体と混ざってどす黒い。
嗚咽のような機械的な音が生徒会室に響く。
「チハちゃん」
呼ばれたチハは、顔を上げた。
「チハちゃんは苦しいんだってよく分かった。
私は直してあげることはできないけど、軽減することはできるかもしれない」
会長はチハの肩に手を置く。
「何してるときが楽とかあったら、教えてほしいな」
そう言うと会長は柔らかく、少しだけ笑ってみせた。
その笑顔が、まるで聖母のようにチハには見えた。