降参を無視されて、そのまま砲弾をブチ込まれるかと思ったが、そうでは無くて安心だった。
格納庫に戻り自らのサスペンションを修理していると、生徒会に呼び出された。
正直、チハはあの会長に会いたくはない。
なぜなら持っていた刀を、本来玩具か何かだと思うものを一発で真剣と見抜いて没収したのだ。
しかし、呼び出されたからには行かねばならない。
チハは重い脚で尋問された部屋へと向かった。
「これ書いてね〜」
部屋に入るなり、片眼鏡の人から紙とペンを渡された。
あのツインテ……杏会長と言う人は机に向かって何かを書いていて、顔は上げずに声で指示している。
「これはなんでありますか?」
「生徒登録票だよチハちゃん」
サラッと言う杏会長。
しかも今、【チハちゃん】と呼んだ。千春だと偽の名前を名乗ったのにもかかわらず、チハと呼んだのだ。
もしや、偽名がバレているのでは?という考えが脳裏に浮かぶ。
「書けるところだけ書いてね〜」
そう言われ、紙に目を落とす。
何も書かれていないが、1つだけ埋まっている箇所がある。
現在所だ。何故かここだけ書かれている。場所はおそらく寮だ。
「つい昨日、戦車の騒音関係でその部屋を変えてさせてもらった人がいたんです。
チハさんは外で寝ていたようですし、ちょうど部屋も空いたのでそこに移させてもらいました」
チハはこの後ろで柚子と呼ばれる人の発言に驚いた。
まさか、外で寝ていたことを知られているなんて。
完全に人通りも少なければ、街灯も無い草むらの中で、本体と同じ迷彩柄を着て寝ていたのだ。
どうしてわかったのか、見つけられたのかは全くわからないが、チハは書き進めていく。
「質問よろしいですか?」
書き進める途中で、チハは問う。
「戦車道って、砲弾を選べたりするのでしょうか?」
「連盟が定めた規定範囲内のものなら選べるぞ」
河島と呼ばれる、片眼鏡をつけた人が答える。
怖い。
「今そのへんのことやってるんだよね〜。何か使いたい砲弾とかあるのチハちゃん?
そうだな〜、これ見てもらえる?」
杏会長が紙を河島に渡し、河島がチハに渡す。
渡された紙には、付箋がいくつも貼られており、内容はありとあらゆる砲弾の価格などが書かれていた。
砲弾の種類ごとはもちろん、車両ごとの価格もだ。一部の特別な砲弾までも記載がある。
ペラペラとページを捲り、九七式中戦車の記載を探す。すぐに見つけた。
というかよく見たら付箋が付いている。
「高……」
チハが探していたのは三式穿甲榴弾。通称タ弾だ。
だが、価格が高い。高すぎる。
チハが使う九二式徹甲弾と九○式榴弾が一発あたり三万いくらなのに対し、なんとタ弾は二十万もする。
「杏会長……さん、九七式式の通常弾は40発にして、タ弾を5発購入できませんか?」
少し考え、チハら杏会長に質問する。
「……できるけど、それで足りるの?」
初めて顔を上げ、チハを見つめる杏会長。
その顔を真っ直ぐ見つめ直しながら、チハは言い切った。
「十分です」
生徒登録票に書かれていた寮へ、歩いて向かうチハ。
すぐそこなので、意外と時間は掛からなかった。
それと、チハの脚の構造も関係している。
チハの足の裏には、ちょうど真ん中に履帯があるのだ。
これのおかげで、ローラースケートのように進むことができる。
歩きながら進む速度が異常に速いのも、これが理由である。
もらった合鍵を使い、扉を開けて中に入る。
足裏の履帯を外し、部屋に上がった。
ゴツン、ゴツン、とフローリングが傷みそうな音が鳴る。
暗い部屋でも、電気はつけない。付喪神ゆえ、夜目が効くのだ。
南方戦線の夜よりは、マシな明るさだとチハは思った。
「……」
チハは床に寝転がる。
眠るのだ。現実から目をそらし、