【読者参加型】戦国の弱小武家に転生しました~転生先も特典もその他いろいろ、アンケートで決まります~ 作:病んでるくらいが一番
公開から24時間以上経過した最終結果は、次のとおりです。
・信長が信頼する家臣を推す:0票
・権六を中心に守る案を推す:4票
・鳴海に残った者の登用を推す:5票
最多票の「鳴海に残った者の登用を推す」を反映します。
「
若様は頬から手を離した。
「城の者をまとめたという者か」
「はい。門を開けるために働いて、そのあとも人をまとめてくださったと聞きました。その働きに役目で報いていただきたいです」
「あれに従う者がわしにも従うと思うか」
俺は庭へ目を向けた。
城に残った兵と、こちらから来た兵が話している。向かい合ったまま腕を組む者もいた。
「若様から任せると、皆の前で仰っていただけますか。その方が何を命じられるのか、こちらの兵にも聞いてもらいたいです」
「皆の前で申す。お前もその者とわしの兵の両方へ顔を通せ」
「分かりました」
若様はうなずき、入口にいた者へ先ほど頼んだ男が戻ったら知らせるよう命じた。
*
呼ばれて来たのは、俺より十ほど年上に見える男だった。
日に焼けた首に着物との境が白く残っている。座る前に膝の辺りを払ったが、乾いた土が少し畳へ落ちた。
「
城へ話を通した男が隣に座り、清兵衛のことを若様へ伝えた。
門を開けたあと、武具を持ち出そうとする者と止める者が言い争い、清兵衛が間へ入ったという。引き渡す物を確かめ終えるまで、門の兵も持ち場へ戻していた。
「
「出ました」
若様が聞くと、清兵衛は顔を上げたまま答えた。
「今川が来たらどうする」
「城へ近づく兵を確かめ、すぐにお知らせします」
「その中に知った者がおったら」
「退くよう呼びかけます。それでも攻めてくるなら、槍を出します」
清兵衛の手は膝の上に置かれていた。指の節が太く、親指の付け根に古い傷があった。
赤塚では、この人も向こうにいたのか。
あのとき俺が前へ出る場所が違えば、今ここに座っている相手へ槍を向けていたかもしれない。
「城にどれだけ人を置きたい」
若様が尋ねた。
清兵衛は城に残った兵の人数を答えてから、戸口の方を見た。
「門の番へ殿のお連れの者も六人ほど残していただきとうございます」
「お前の知る者で固めぬのか」
「門を通る者を知っているのはこちらの兵です。ただ、こちらの兵だけでは身内を先に通すこともありましょう。殿の兵にも一緒に見ていただきたい」
部屋の端にいた家臣が残せる者の名を挙げた。
若様はその人を呼び寄せ、清兵衛と引き合わせた。
「清兵衛に鳴海の守りを預ける。お前も残り、兵と物の様子をわしへ知らせよ。足りぬ物があれば、二人で確かめて申せ」
二人が頭を下げた。
「清兵衛。城の者を集めよ。わしからも話す」
「はっ」
清兵衛が立つと、若様は俺も呼んだ。
「藤十郎はわしのところへ通っておる。榎並から出す者のことはこやつに聞け。わしへの使いにも動かす」
俺は清兵衛へ向き直り、
清兵衛は俺の顔を見て、少し眉を上げた。
「お若いのですね」
「この城のことで聞きたいことはたくさんあります。よろしくお願いします」
「こちらこそ。あとで門へもおいでください」
清兵衛は俺へ一礼し、隣の家臣と連れ立って出ていった。
廊下を歩きながら、もう門の番を交代させる話をしていた。
*
若様が城の者を集めて清兵衛の役目を告げ、その日のうちに門の番も組み替えられた。
「道を来る者の顔が分かれば、相方にも名を言え。顔を知っているだけで通すな。何の用で来たかも聞くのだぞ」
清兵衛はそう言い、俺たちにも門の外が見える場所を空けた。
「榎並殿もここを通っていただくことになります」
門から延びる道を見ていると、外にいた兵が声を上げた。
二人連れが歩いてくる。一人がもう一人の腕を肩へ回し、引きずるようにして近づいていた。
「そこで止まれ」
門の兵が呼びかけた。
支えている方が足を止め、こちらへ顔を上げる。
「清兵衛はおるか。会わせてくれ」
清兵衛が俺の横から進み出た。
男の顔を見つけると、門の内側で立ち止まった。
「
「ああ。戻ってきた」
与吉の背には槍があり、腰には刀もあった。肩を借りている男は片足を地面から浮かせている。
膝の下へ巻いた布が黒く汚れていた。
「清兵衛。弟が歩けん。中へ入れてくれ」
「二人か」
「そうだ」
「槍と刀をまずそこへ置け。迎えに出る」
与吉は清兵衛を見た。
それから、弟を道端へ座らせ、背から槍を外した。刀と一緒に地面へ置く。
清兵衛は門の兵二人へ、二人のほかに人が来ていないか見るよう頼んだ。もう一人には、城に残っている与吉の叔父を呼ぶよう言った。
俺と甚助も清兵衛に続いて外へ出た。
「手を借りてもよろしいですか」
清兵衛に聞かれ、俺は与吉の弟のそばへ膝をついた。
弟は俺の腰の刀を見てから、顔を上げた。
「肩を貸す。立てるか」
うなずいたので、背中へ腕を回す。
甚助が反対側から支え、与吉の弟を立たせた。痛む足が地面へ触れそうになるたび、こちらへ重みがかかった。
「もう少し上げるぞ」
甚助と声を合わせて持ち上げ、門のそばまで運んだ。
兵が持ってきた
与吉は清兵衛へ城を出てからのことを話していた。
山口方について出たが、弟が道で足を痛めた。歩けなくなって列から離れ、鳴海へ引き返してきたという。
「家へ帰りたい。叔父もまだおるだろう」
「今呼んでおる。お前たちに向こうからの言づてはあるか」
「ない」
清兵衛は返事を聞き、二人が持っている荷も確かめさせた。
そこへ年配の男が走ってきた。与吉を見つけて名を呼び、筵に座る弟の顔を覗き込む。
「何をしとった。待っておったぞ」
与吉が何か答えようとしたが、叔父は弟の足へ手を伸ばした。巻いた布を少し持ち上げると、弟が顔をしかめた。
俺は甚助に水を頼んだ。
清兵衛は叔父にも二人を確かめてもらい、弟を休ませる場所を尋ねた。
叔父が連れていくと答えると、門の兵へ向き直る。
「二人と一緒に行ってくれ。武具はここで預かる。殿にも知らせる」
与吉が清兵衛を呼んだ。
「俺のことも、殿に話すのか」
「わしが任された日のうちに、お前たちが帰ってきた。誰を迎えたかはわしから話す」
与吉は門に並ぶ兵を見て、やがてうなずいた。
「分かった。弟のこと助かった」
叔父と兵が弟を支えて歩き出す。
与吉は預けた槍を一度振り返り、あとに続いた。
水を持って戻った甚助へ、清兵衛が二人の行った先を伝えた。
俺の袖には、弟がつかんだ泥の跡が残っていた。
*
清兵衛と城の奥へ戻ると、若様はまだ家臣たちと話していた。
与吉の弟へ水を届けた甚助も戻ってきた。取り次ぎを待つ間に、清兵衛が俺へ聞いた。
「榎並殿は赤塚にも出られたとか」
「はい。甚助と一緒に」
「私も出ておりました。与吉もです」
門で俺を見た与吉の顔を思い出した。
あの人も向こうから槍を出していたのか。
「城に残った者には、戦で親しい者を失った者もおります」
清兵衛は俺の手へ目を落とした。
俺が見下ろすと、指は着物の袖を握っていた。
「顔を合わせて、すぐに笑えぬ者もおりましょう。私へ話してくだされ。殿の者と組ませる兵も考えます」
「清兵衛殿も俺に言いたいことがあれば仰ってください」
清兵衛は一度うなずいた。
「承知しました」
呼ばれて部屋へ入ると、清兵衛が門でのことを若様に話した。
若様は与吉が山口方を離れた場所を尋ね、次に、弟を休ませた先を聞いた。
「与吉には明日わしに会わせよ。山口の行く先を聞く」
「はっ」
「帰ってきた者の名は控えておけ。離れておった家の者にも知らせよ」
清兵衛が頭を下げた。
若様は、残す兵の名を確かめていた家臣を呼んだ。六人のうち、誰を今夜の門へ立たせるか決め、清兵衛にもその名を聞かせた。
「藤十郎。榎並から預かっておった者は帰してよい。お前の父親にも伝えろ」
俺も頭を下げた。
部屋を出ると、甚助と門へ向かった。
門の内側で、与吉が俺たちを待っていた。
甚助を見つけると、頭を下げた。
「弟が礼を言ってくれと」
「足は」
「今は横になっておる。叔父が見てくれている」
与吉が俺へも向き直った。
「榎並の方と伺った。お名前を聞いておいてもよいか」
「藤十郎だ」
「俺は与吉。……さっき清兵衛が呼んでおったな」
俺がうなずくと、与吉は少し笑った。
「与吉。またな」
「お気をつけて」
与吉が頭を下げ、俺たちのために道を空けた。
お読みいただき、ありがとうございます。
今回は新しいアンケートはありません。
清兵衛・与吉とその弟、鳴海城奪還後の任命・守備の配置・帰還者への対応は、本作の創作です。清兵衛は史実の鳴海城代を示す人物ではありません。