【読者参加型】戦国の弱小武家に転生しました~転生先も特典もその他いろいろ、アンケートで決まります~   作:病んでるくらいが一番

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お読みいただき、ありがとうございます。
今回は七歳になった竹丸が、父の供として柴田家を訪ねます。
後書きの下に、次に深めていく仕事や交流を選ぶアンケートを設けます。

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こちらは人間が追記。
二話連続投稿のこちらが2話目です。


第9話「よその家でも、名を呼ばれる」

「那古野(なごや)は、弾正忠様のお城になった」

 

 父がそう話したとき、俺は七歳になっていた。

 ここでの数え方なら、八つだ。

 

 織田信秀(おだのぶひで)。信長の父親。

 父たちが弾正忠(だんじょうのじょう)様と呼ぶ人の名と、俺の知っている名は、もう結びついている。

 

 ただ、その人がどの城をいつ取ったかまでは知らない。

 那古野という音にも、最初は前世の大きな駅や建物が浮かんだ。

 もちろん、あれがここにあるわけではない。

 

 俺にとって大事だったのは、その話に続いて、父が言ったことだった。

 

「柴田殿のところへ参る。お前も来い」

 

     *

 

 父の用向きで外へ出ることは、珍しくなくなった。

 

 相手が約束した日に来ないとき、ただ帰って待つのではなく、いつなら会えるかを聞く。話が変われば、勝手に引き受けず父へ戻す。

 そういうことを繰り返しているうちに、向こうから俺へ言づてを頼まれるようにもなった。

 

 庄助(しょうすけ)は、その一人だ。

 板を頼んだ一件のあとも家の仕事を引き受け、今では俺の顔を見ると、先に済んでいる分を教えてくれる。

 

「まだ何も聞いていませんよ」

 

 そう言ったら、今から聞くのでしょう、と笑われた。

 

 ただ、今日は知っている家を回る使いではない。

 父は出る前に、俺の襟元を確かめた。

 

「聞かれたことには、はっきり答えよ。分からぬことまで答えようとするな」

「はい」

 

 弥助も一緒だったが、いつものように俺のすぐ後ろを歩くのではなく、父と荷を確かめている。

 今度の板は、うちの床に使う物ではない。柴田殿を通じて頼まれ、父が庄助へ手配した十枚だ。品を見てもらい、引き渡しの話をするのだという。

 

 父は俺へ、包んだ紙を渡した。

 

「お前が書いた分だ。持っておれ」

 

 受け取った板の数、まだ渡していない分、運ぶ人の手配。

 家で父に言われながら書き直した覚え書きだった。

 

 字が整っていればよいだけの手本とは違う。

 俺は包みを、懐へしまった。

 

     *

 

 柴田家では、権六(ごんろく)が先に俺を見つけた。

 

「竹丸。ずいぶん、すました顔をしておるな」

 

 前より声が低い。

 俺も背が伸びたはずなのに、見上げる角度はあまり変わらなかった。

 

「今日は父上の供です」

「それは見れば分かる」

 

 権六は俺の手を見た。

 

「棒は持ってこなかったか」

「荷に板ならあります」

「それで打たれては、かなわぬ」

 

 笑いそうになって、肩の力が抜けた。

 父がこちらを振り返る。

 

「後ほどお相手を願え。先にご挨拶だ」

 

 権六も笑うのをやめ、俺たちを中へ案内した。

 

 柴田殿には何度か会っている。

 だが、父の後ろに座っているだけのときと、自分の書いた紙を持って会うときでは、落ち着かなさが違った。

 

 俺は父に続いて頭を下げた。

 

「竹丸でございます」

「うむ。よく来たな」

 

 柴田殿のそばには、知らない男が一人いた。

 父たちへの挨拶を済ませると、男はすぐ板の話へ戻った。

 

「品は、先に拝見いたしました。あれで結構です」

 

 まず一つ、胸が軽くなった。

 庄助にも、その言葉を伝えられる。

 

     *

 

 知らない男は、宗吉(そうきち)と名乗った。

 人から頼まれた品を集め、届ける仕事をしているらしい。

 

 織田方の家から頼まれている物に、今回の板も使うのだという。

 那古野の城の話に続いて来た用事ではあるが、板を全部、城へ運ぶわけではなかった。

 宗吉にはほかにも届け先があり、父の引き渡す分を、その荷と合わせたいのだと言った。

 

「早いほうを、明日にでも運びたいのですが」

 

 父が俺へ目を向けた。

 俺は紙を取り出し、父の前へ置いた。

 

 六枚は運ぶ人が決まっている。

 残り四枚は、向こうが引き取りに来る話だった。

 父と確かめた内容を、紙の行に沿って声に出す。

 

 宗吉は、途中で俺の顔を見た。

 

「その覚えは、若様がお書きに?」

「はい。父に見てもらいました」

 

 紙を向けると、宗吉は少し身を乗り出した。

 

「これは読みやすい」

 

 父が、わずかに口元を緩めた。

 自分が褒められたような顔だったので、俺まで少し照れた。

 

「ですが、六枚とも明日に回すとなると、こちらの者が足りませぬな」

 

 宗吉が言った。

 父は紙から目を上げる。

 

「六枚は、こちらで運ぶと申したはずだが」

「おや。引き取りを、こちらで揃えるものと」

 

 一瞬、部屋が静かになった。

 

 父は先ほどの話を繰り返した。

 宗吉は覚えを取り出し、どこから話が食い違ったかを確かめる。

 六枚と四枚の数は合っている。違ったのは、どちらが人を出すかだった。

 

 俺は口を挟まず、父の紙を押さえていた。

 早く言い直したほうが勝ち、という話ではない。

 

 柴田殿が二人の話を聞き、確認した相手の名を尋ねた。

 やがて宗吉が息を吐いた。

 

「こちらで伝え違えたようです」

 

 父も、紙へ目を戻した。

 

「まだ人を出す前で、よかった」

 

 その言葉で、部屋の空気が動いた。

 

     *

 

 話を直すあいだに、俺は父へ小声で尋ねた。

 

「同じ覚えをもう一枚書きましょうか」

 

 父がうなずく。

 紙を借り、決まったことを写した。

 

 何を、幾つ。

 いつ、どちらが運ぶ。

 

 これで世の中の行き違いがなくなる、などとは思わない。

 ただ、俺は書くのが速い。急いでも字が潰れないし、手のほうは同じ形を繰り返せる。

 この場で二枚を見比べてから渡せば、少なくとも今日決めた内容は揃う。

 

 父と宗吉に読み合わせてもらい、直すところがないことを確かめた。

 

「こちらをどうぞ」

 

 宗吉へ渡すと、男は紙を見てから俺を見た。

 

「もう一度写す間も、話を聞いておいででしたな」

「書くほうで迷わなければ、その分は聞けます」

 

 言ってから、少し大人びすぎたかと思った。

 けれど宗吉は、うらやましい、と笑っただけだった。

 

「私など、聞きながらでは何かを落とします」

「俺も、知らない名前は聞き直します」

 

 実際、今日の届け先は一度では覚えられなかった。

 特典は手を助けてくれるが、人名まで勝手に頭へ残してはくれない。

 

 柴田殿が父に言った。

 

「よい手伝いができたな」

 

 父は頭を下げた。

 その横で俺も、遅れないように頭を下げる。

 

 柴田殿は、今度は俺を見た。

 

「父の言いつけをよく聞け。よそで頼まれたからと、何でも請け合うでないぞ」

「はい」

 

 宗吉が苦笑した。

 

「先に釘を刺されてしまいましたな」

 

     *

 

 話が済むと、庭で権六につかまった。

 

「筆ばかり動かして、足が鈍ってはおらぬか」

 

 そう言って、細い棒を一本渡してくる。

 俺は父を見た。父は戻り支度をしているところで、少しならよいとうなずいた。

 

 向き合う。

 権六の手元ばかり追わず、足と肩も見る。

 

 一度目は、棒を軽くはじかれた。

 二度目は棒を引きすぎず、足の位置を保つ。

 権六が動いたとき、俺も横へ出た。

 

「お」

 

 短い声がした。

 届くと思った瞬間、こちらの棒の先が外へ流された。

 

 負けた。

 でも、さっきより近い。

 

「今の足はよい」

 

 権六はそう言ってから、俺の握る位置を直した。

 

「そのままでは、手が詰まる」

 

 指をずらし、もう一度。

 次は、同じところでは止まらなかった。

 

 権六が笑った。

 

「お前は、本当に覚えるのが早いな」

 

 悔しそうではあるが、嫌そうではない。

 それがうれしくて続けようとしたところで、父に呼ばれた。

 

「そこまでだ。帰るぞ」

 

 俺は棒を返した。

 

「またお願いします」

「次は、もう少し早く来い」

 

 今日は仕事の供だった、と言いかけてやめた。

 権六も、それは分かって言っているのだろう。

 

     *

 

 宗吉が門のところまで出てきた。

 

「殿。先ほどのお話ですが」

 

 父が立ち止まる。

 宗吉は俺を見てから、父へ向き直った。

 

「次に品を集める折、若様にもご覧いただいては。値も納め先も違えば、同じ板でも話は変わります」

 

 俺は思わず父を見た。

 父はすぐに返事をしなかった。

 

「用向きによる。お任せすると決めたわけではないぞ」

「むろんでございます」

 

 宗吉は笑って引き下がった。

 

 家へ向かう道で、父が尋ねた。

 

「行ってみたいか」

「はい」

「どこへだ」

 

 答えかけて、言葉が止まる。

 宗吉の仕事を見てみたい。品を集めて、よその家と値や運び方を決めるところだ。

 けれど、柴田家を通して、織田方の用向きに同行できるなら、それも気になる。

 

 那古野。

 今日、何度か耳にした城の名前が浮かんだ。

 そこから先に、いつか信長と会う道もあるのだろうか。

 

 父は、考えている俺を急かさなかった。

 

「庄助も、お前を連れて仕事を見せてもよいと言うておった。あちらも、面白かろう」

 

 板ができてから運ぶだけでなく、何をどう直すために作るのかを見る。

 道や家の修繕に、もう少し深く関わる道もある。

 

「全部、では駄目ですか」

 

 父が笑った。

 

「いつかは見ればよい。だが、同じ日にあちらにもこちらにもは行けぬ」

 

 俺も笑った。

 話を聞くだけなら簡単だが、通って覚えるには時間が要る。

 

 前なら、外へ行けるだけでうれしかった。

 今は、どこへ行くかを考えている。

 

 父が歩みを緩めた。

 

「まず何を頼みたいか、考えておけ。先方には、わしから話す」

 

 俺はうなずき、懐の紙に手を添えた。

 今日決めた板の引き渡しが済んだら、父に答えようと思った。




お読みいただき、ありがとうございます。
那古野城を信秀が奪取した年代には異説がありますが、本作では一五三八年ごろとする説明を採っています。
今回の柴田家での会合、宗吉、板の手配や稽古は創作です。実在の城の普請に榎並家が関わったと史実として述べるものではありません。

今回のアンケートは、前回選ばれた「父について家や土地の仕事を学ぶ」を続けたうえで、次にどの仕事・相手との関わりを深めるかを選んでいただくものです。

・織田方への使いや荷渡しに同行
 父や柴田家を通じ、他家の用向きに触れます。信長との即時の対面や重用を保証する選択ではありません。
・宗吉と品物の手配や交渉を学ぶ
 商いに関わる人や届け先とのやり取り、物を集めて運ぶ仕事を中心に描きます。
・庄助と領内の修繕を学ぶ
 物を作る・直す現場に入り、家や土地の暮らしとの関係を深めます。

いずれも大人の同行や監督のもとで、竹丸が担える範囲から始めます。家の仕事、基礎の読み書き、普段の稽古や既にできた縁は続きます。
第9話の投稿から約24時間後の最多票を、第10話以降へ反映します。同票の場合は最多票の候補から作者が選びます。
投票は下のアンケートからお願いいたします。

前回選ばれた「父について家や土地の仕事を学ぶ」を続けたうえで、次にどの仕事・相手との関わりを深めるかを選んでいただくものです。

  • 織田方への使いや荷渡しに同行
  • 宗吉と品物の手配や交渉を学
  • 庄助と領内の修繕を学ぶ
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