君のココロを守るため 作:一般魔法少女
「デートしようか」
そう言うと、有無を言わさずほむちゃんの腕を引っ張り家に連れ込んで行ってしまう。
昔からまどかは決めたら迷わない。
そこがいい所であり、変に突っ走しるので悪い所でもあった。
「準備するか」
一人取り残された僕。
何処に行くとかは聞いていないので、適当に白のYシャツと黒のパンツを着ることにする。
ワックスで軽く身だしなみを整え、ネックレスと腕時計を巻く。
簡素ではあるが一応の外着へと着替え終えたので、まどかに準備できたら教えてね、と連絡を送っておく。
さて、待っている間も暇なので力の練習でもしておこう。
僕の力。
ウルトラマンの力確かに強力であるが、1分30秒という時間は短すぎる。
知恵の魔女の時のように遅滞戦闘をされたら、取れる選択肢が限られてしまう。
そのため、いかに人間形態の時の戦闘力を上げるかが重要だ。
だが、今から鍛えたところで身体的な成長はあまり見込めないだろう。
つまり、光の操作性を上げることこそが強さに繋がる筈だ。
指先から光の糸を操り、様々な形状に編み込んで行く。
光単一での形状変化は普段から取り組んでいたので、今回は趣向を変えて編み込むことで作ることにする。
動物だったり、洋服といった身の回りの物だったり、その形状は多彩だ。
最初は形が崩れたり不安定だったりと上手くいかなかったが、徐々に形になりその内実物大の再現にも成功し出した。
集中力が研ぎ澄まされる感覚。
こういった時には物事が上手くいくのを経験として知っていた。
よし、ここから模様もつけて────
その時、スマホが鳴った。
気がつけば1時間も時間が経過しており、二人の準備が終わったようだ。
「今から向かうよ、っと」
行くとしようか。
「ただいま〜」
ガチャリ、と玄関の扉が開く音が聞こえる。
我が家の不良娘が帰ってきたようだ。
深夜に出ていったのには気づいていたが、どうせ大地の所に行くのだろうと放置していた。
親として褒められた行為ではないのかもしれないが、これも一種の信頼ではある。
「まどか、アンタまた大地のとこ行ってたの?構わないけどさ、深夜に行くのは辞めときな」
「ごめんなさ〜い」
「まったく……」
新聞から顔を上げると、もう一人いることに気づいた。
綺麗な黒髪に、端正な顔立ち。
スケスケなエロいネグリジェに身を包んだ女の子。
顔良!!!!てか、エッロ!!!!!
「その後ろの寝巻きみたいな格好した子は?」
「……はじめまして、暁美ほむらと言います」
顔を赤らめ、俯きながら挨拶をされる。
そらそうだ。
その格好で堂々と挨拶されたらリアクションに困るわ。
「最近、友達になったほむらちゃん。この格好は寝巻きだから、パパは見ちゃダメだよ。タツヤの目も塞いどいて」
「はいはい」
「いや、何で寝巻きなのかを聞きたいんだけど。家近いの?」
「暫く大地くんの家に泊まるからお隣さんだよ。部屋に行こ、ほむらちゃん」
「そう……なのか。何やってんだ、アイツ」
ドタドタと部屋に向かう娘を呆然と見送ってしまう。
娘といい感じの男がエロい女を連れ込んでいた時、親としてはどうしたらいいのだろう?
大地のことを信頼してる。
してるけどさぁ。
しばらく唸りながら考えるハメになった。おのれ。
「私の服と合わせて一緒に選ぼう?どんなのがいいかな〜」
ゴソゴソと衣装棚を探る。
まどからしいフリフリとした衣装から、大人びた物まで多様な服が入っていた。
私の服の三倍はある気がする。
「まどか。私お母様にすごい誤解をされている気がするのだけれど」
「大丈夫だよ〜。詰められるの大地くんだから、上手いこと誤魔化してくれるよ」
それでいいの?
まあいいか、頑張って大くん。
「ほむらちゃん、お化粧道具とか持ってる?」
「いいえ。そんなの気にしてる余裕がなかったから、持ってないわ」
「えー、折角綺麗な顔してるんだから、ちゃんとお手入れした方がいいよ。今日は私がやってあげるね」
「……ありがとう」
手慣れた様子で化粧をしてくれる。
慣れない感触に思わず身動いでしまいそうになるが、なんとか我慢した。
「やっぱり肌綺麗だよね、ほむらちゃん」
綺麗なのだろうか。
普段、意識して鏡を見ることはないからよくわからない。
化粧よりも、泥や埃にまみれることの方が多かったから綺麗と言われてもいまいちピンと来なかった。
「できたよ。見てみて」
渡された鏡で見てみる。
…やはりイマイチ実感がわかない。
「可愛い、の?」
「可愛いよ。とっても」
わからない。
普通なんてとっくに忘れてしまっていたから。
でもーーーー
「大くんは褒めてくれるかしら?」
「褒めてくれるよ。自信持って」
それなら少しづつやってみよう。
大切な友達が喜んでくれるなら、頑張れる気がする。
「髪、私が作るね。ほむらちゃんも私のお願い」
「上手くできるかしら」
「挑戦あるのみだよ」
鹿目家の玄関を開けると、すっかり見違えた二人が立っていた。
あまりの可愛さに思わず目を奪われてしまう。
「二人とも可愛いね。化粧で更に美人に磨きがかかってる」
いつもとは真逆の装いの二人。
まどかはホワイトを基調としたコーディネートでパステルラメ入りロングカーディガン。
いつものツインテールを解き、三つ編みを後ろで一つに纏めている。
ほむちゃんは黒を基調としたタートルニットプルオーバー。
髪型もロングからツーサイドアップになっていて、いつぞやの赤縁の眼鏡を掛けている。
普段とは対照的な二人が、何だかおかしかった。
「大地〜。ちょっと来い」
奥の扉から顔だけ出した詢子さんに呼び止められる。
嫌な予感がする。
近づくと肩を組まれ、顔を近づけられた。
「あの子とはどんな関係なわけ?」
「友達ですよ。今、一人暮らしだと言うので紆余曲折あって同居することになっただけです」
「アンタ……口煩く言う気はないけどさ、ウチの娘泣かせたらタダじゃあすまないからな」
「わかってますよ。心配するようなことは────」
脳裏に浮かぶは、朝のほむちゃんのパンツ。
あまりの衝撃に記憶に焼き付いていた。
「心配するようなことはありませんよ」
「なんで言い直した?」
「何でも無いです」
怪訝な顔。
あからさまに疑われている。
しかし、僕は知っている。
ここで大事なのは動揺しないことだ。
「もー、いい加減にしてよ。ママ」
「悪い悪い。それじゃあ気をつけてな」
まどかの助けにより、難を逃れる。
これ以上追求されると苦しかったので助かった。
「じゃあ、いってきまーす」
まどかを中心に手を繋ぎながら歩く。
いつも思うが女の子の手って何でこんなに柔らかいんだろう。
「それで、今日の予定は?」
「ショッピングに行って、その後映画見に行こ?」
ショッピングというと、最近できた大型複合施設か。
確かにあそこなら色々な事ができるな。
多様な店が出店しており、お出かけには丁度いいとのショピングモール。
多くの中高生が出入りしているため、話題性には事欠かない。
バスに乗り、三滝原郊外に向かう。
「ふんふ〜ん♪」
「ご機嫌だね」
「だって、ほむらちゃんと初めてお出掛けするんだよ?楽しいに決まってるよ。ほむらちゃんは?」
「私も楽しみだわ。こんな風に出掛けるなんて、何年振りかしら」
道のりはまだ長い。
折角のデートだ、楽しく行こう。
目的地であったショッピングモールに着く。
初めて来たが、あまりの大きさに思わず圧倒されてしまった。
「まずは洋服見に行こ?」
「はいはい。まどかが好きなメーカーはこの辺りのだったっけ?」
「そうだよ〜。ほむらちゃん、お揃いの洋服買おう?」
「ええ、まどかのセンスが試されてるわ」
「ハードル上げないでよ」
「ほむらちゃん白のワンピースね。私は黒にしよっ」
「だめよ!そんなの!えっちすぎるわ!」
「どの口が」
服屋の次はランジェリーショップに連れ込まれる。
毎度のことながら、男の僕には肩身が狭い思いだ。
「ほむらちゃんとお揃いのスケスケ下着だよ。私は色違いで白にしたんだ」
「だめよ!そんなの!えっちすぎるわ!」
「どの口が」
「ご飯にしよっか」
お昼時、お腹も空いてきたのでフードコートに向けて歩く。
その時、背筋にゾワッとした感覚が走る。
魔女の気配。
いや、これは使い魔だな。
ハァとため息をつく。
折角のデートにまで出てほしくなかったが、人命には変えられない。
まどかには申し訳ないが、速攻で倒してこよう。
ほむちゃんにアイコンタクトを一つ。
僕、行ってくるよ。
一人で大丈夫?
多分使い魔だし、すぐ終わらせてくる。ほむちゃんはまどかをお願い。
気をつけてね。
「ごめん、僕お手洗い行ってくる。先選んどいて」
「わかった。いつものでいい?」
「それでお願い」
二人から早歩きで離れる。
本当は走り出したいが、休日のためショッピングモールには数多くの人がいる。
そのため、迷惑にならない程度のスピードで人混みをすり抜けていった。
「じゃあほむらちゃん。行こっか」
再度、歩みを進める。
大くんのために、使い魔を倒しに行ったことがバレないようにしなくては!
「大地くんも言ってくれたらいいのにね。別に怒ったりしないのに」
嘘でしょ……!?
「な、何がかしら?唯のお手洗いでしょう?」
「魔女退治に行ったんでしょ?誤魔化さなくていいよ」
「……どうして、わかるの?」
「幼馴染だもん。考えてることくらいわかるよ」
当たり前のように言うまどか。
そこには確かな絆があった。
何も言わなくても通じ合える二人の絆に、何だか少し嫉妬してしまった。
映画まで時間があったのでゲーセンで時間を潰すことにした。
「くっ、取れない〜!」
「クレーンゲームって難しいわよね」
「大地くん!光でなんとかできない!?」
「ダメでしょ」
「ほむらちゃんすごーい!」
「射撃ゲーで満点って初めて見たよ」
「このくらい普通よ。まどかだってできるわ」
「無理だよ」
「プリクラ撮ろ!」
「やり方がわからないわ……」
「私に任せて!」
暗闇が館内を包む。
映画が始まるまでの僅かな時間が、僕は不思議と好きだった。
映画の内容としては、とある日転校生がやってきて男の子とその幼馴染と三角関係になるラブコメアクション。
何だか含みをものすごく感じるが、内容は面白かった。
まさか最後に男の子が宇宙に旅立つendだとは……
「男の子酷くないかしら。あれじゃあ逃げたも同然じゃない?」
「えー、でも帰ってきてくれると思うよ。ねぇ?大地くん」
「……そうだね」
宇宙に行く予定はないから、釘刺さないで。
すっかり日も落ち、辺りを暗闇が包み始める。
あまり遅い時間になっても危ないので、まどかを鹿目家に送り届ける。
「今日はすっごく楽しかったよ。ありがとう」
「私も、普通の女の子に戻れたみたいで楽しかったわ。また行きましょう」
僕も楽しかった。
まどかとのデートはよく行っていたが、ほむちゃんを交えてのデートは初めてだったから。
今日という日が永遠に続けばいいのに、なんて思って。
でも、永遠なんて物は無くて、それでも何か形にしたかった。
「三人の初めてのデート記念に」
何も乗ってない手を差し出す。
互いを見合わせて不思議がる二人。
それはそうだろう。
側から見たら手を差し出しているだけなのだから。
「何もないように見えるけど……」
「見てて」
手の中に光を灯す。
拳大の光が現れ、踊るように動き出した。
それはとても幻想的で見る人全てを魅了していく。
戦いの為の練習。
いつもそのためにやっていたこと。
それでも、今この瞬間だけは戦いとかじゃなくて二人のために力を使いたい。
一際大きく光り、収まると手には真っ白な二つの花束が握られていた。
「持ってみて」
まどかが持つと、淡いピンクと白が入り混じった花に。
ほむらが持つと、夜色と赤が入り混じった花に変化する。
「持った人の心の光が反映されるんだ。二人らしい綺麗な色だね」
「わぁ……ありがとう」
「とっても綺麗……」
思わず二人に見惚れてしまった。
戦いなんかより、花を見て微笑んでるほうが二人には似合っている。
「心の光で咲き誇るから、枯れることはないよ」
決して朽ちず枯れない花。
三人の心が繋がる限り、残り続ける絆の証。
決して特別な花ではない。
唯の光の塊だ。
それでも、感じる物はある。
大地からの小さな愛の形。
友愛、親愛、深愛。
様々な想いが込められた花束を二人は受け取った。
「この花なんて名前なの?」
「そうだね、あえて付けるとしたら────」
「────ルミナス」
「光り輝くこの花が、君達の心を守ってくれますように」
その笑顔を、守りたいから。
「マミさん、私達休日に何やってんですかね」
「言わないで。虚しくなるだけよ」