君のココロを守るため 作:一般魔法少女
最近、あたしは絶好調だ。
魔法少女としての修行は順調だし、大切な仲間もできた。
頼もしい先輩とちょっと生意気な仲間。
どちらもあたしよりずっと強くてとても頼りになる。
あたしが一番弱い。
恭介とはちょっとギクシャクしてるし、大地のことも解決していないけど時間の問題だろう。
大丈夫。
きっと全部うまくいく。
「おはよー。仁美!」
「おはようございます。さやかさん」
この幼馴染とも長い付き合いだ。
小学校の頃からだからもう10年になるのか。
あたしの大切な友達。
「さやかさんに大事なお話がありますの」
「何さ?改まって」
仁美から大事な話ってなんだろ?
あたし、何かやったっけな?
「私、上条くんに告白しようと思いますの」
時が止まった。
告、白?
仁美が、恭介に?
「へ、へー。仁美みたいなお嬢様が、恭介に?学年の男共が泣きそうだね〜」
動揺を隠そうと、空元気を装う。
大丈夫、あたしは気にしていない。
「誤魔化さないでください」
仁美の真剣な眼差しに、思わず怯んでしまう。
「さやかさん。
私、さやかさんのことを大切なお友達だと思っています。
さやかさんが、上条くんのことをずっと思っていたのを隣で見てました。
さやかさんが、上条くんのために行動していたのをずっと見てました。
さやかさんが、上条くんをどれほど好きなのかも知っています」
「だからこそ、抜け駆けのような真似は致しません。
あなただからこそ、先に告白する権利があると思うのです」
あたしは何も言えなかった。
そんな覚悟、できていなかった。
「……私、金曜の放課後に勝負を決めます。それまでに、考えておいてくださいませ」
「はぁ?告白〜?」
「美樹さんが?例の男の子かしら?」
恥を忍んで二人に相談する。
他に頼れる人達はいなかったし、まどかは関係が近すぎて少し恥ずかしかった。
「それ、相談する相手間違ってるだろ。アタシ告白なんてしたことねーよ」
「わかってるわよ。アンタじゃなくてマミさんよ。マミさんほど美人なら彼氏の一人や二人、いたことあるんじゃないかなーって」
期待の眼差しを向ける。
すると、少し困った顔をされた。
「あのねぇ、私ずっと魔法少女やってきたのよ?彼氏なんて作ってる暇あるわけないでしょう?」
「それでも、告白くらいはされたことあるんじゃないですか?」
「あったけれど、全部お断りしてます。そんな時間ないわよ」
ぐぬぬ、ダメだ。
まったく参考にならない。
「好きなら好きって言えばいーじゃん。何ひよってんだ?」
野生児か、コイツは。
「あんたねぇ。今までの関係も壊れるかもしれないし、断られたらあたしが積み上げてきたものが全部パーになっちゃうの!」
「でも結局その仁美ってやつが告白すんだろ?なら時間の問題でしょ」
「いや、まだ仁美が振られる可能性も……」
自分で言ってて、わかってる。
仁美は可愛い。
あたしと違って繊細で、可憐で、お嬢様で。
世の男共が夢中になるのもわかる。
きっと振られることなんてないだろう。
「あーもう!めんどくせぇ!早く告白してこい!」
「いや、でもさ……」
ウジウジと決めることができない。
心が決心してくれない。
あたしって、こんなに決めれなかったっけ?
「じゃあこうしましょう?金曜に告白すると言うのなら、木曜にウルトラマンに襲撃するの」
「えっ!?」
そんなんで襲撃日決めていいの!?
「木曜にお友達を解放して、気持ちよく告白する。解放できなかったら、告白しない。こうすれば、美樹さんも修行に身が入るでしょう?」
「いい案じゃん。気合い入れろよ、さやか」
決定事項なの!?
「告白なんて、できる時にしておいた方がいいわよ。言いたい時にその人がいないって、本当に辛いもの」
伏し目がちに笑うマミさん。
そっか。
マミさんはご両親を交通事故で亡くしているんだった。
伝えたい時に伝えれない辛さは、誰よりも知っている。
これは、マミさんなりの激励だ。
「はい!あたし、頑張ります!」
これは誘われてるな。
まどかとほむちゃんと歩く帰り道、遠くから見られている気配を感じた。
数は3。
恐らく、さやか、巴先輩、佐倉さんだろう。
「ごめん、僕行ってくる。先に帰っといて」
「大丈夫かしら?私も……」
着いていこようとするほむちゃんを静止する。
「いや、まどかをお願い。僕はウルトラマンになれば、なんとでもなるしね」
それにこれは僕の我儘だが、ほむちゃんにはあまり人と戦ってほしくない。
ソウルジェムが穢れるのもあるし、今まで辛い想いをしてきたのだ。
人と争わないに越したことはないだろう。
「じゃあね」
駆け出そうとして、手を引かれた。
手の先を見ると、まどかが不安そうな表情を浮かべていた。
「大地くん。私待ってるから、ちゃんと無事に帰ってきてね」
その不安を解かしたくて、安心してと微笑んでその体を抱きしめる。
「行ってきます」
前に佐倉さんと戦った路地裏に踏み入れる。
すると、世界が黄色いリボンと赤い結界で覆われていく。
囲まれた。
「結界だ。この間のように、途中で終わりにはならねーからな」
内からも外からも侵入できないような結界。
巴マミとの二重結界に、何人たりとも入れないようになっていた。
「佐倉さん、本気だね。この間の話については考えてくれた?」
「終わったら聞いてやる。話は後にしな」
キュウべぇに対する不信感は無事植えれたみたいだ。
よかった。
それに問答無用と言うわけでもない。
これなら交渉もできそうだ。
「二度目ましてね。円大地くん」
「巴先輩、干渉しないって言ってませんでしたっけ?」
「事情が変わったのよ。悪いわね」
肩をすくめ、諦める。
交渉するのは全部終わってからになりそうだな。
「大地、アンタを解放する」
「行くわよ!二人とも!」
駆け出す杏子とさやか。
光を両腕に纏わせ、刀と槍と打ち合う。
「ハァァァァァア!」
さやかと杏子の連撃。
息のあったコンビネーション。
さやかの動きも初日とは打って変わり、人が違ったように良くなっている。
最小限の動きで必死に捌いていくが、体が徐々に切られていく。
問題ない。
動きはあってる。
だが、さやかの動きはまだ荒い。
狙うならそこだ。
刀を振り下ろした腕を掴み、杏子へとぶつける。
二人はぶつかった衝撃で一瞬動きが止まってしまう。
背中を蹴り付けることで纏めて距離を離した。
「ちょっ!」
「ハンド・スラッシュ」
体勢を崩した二人を光の弾幕が襲う。
だが、巴マミがそれを許さない。
止まらない射撃音。
その全てが光の弾を撃ち落としていく。
「銃撃戦で、私と張り合えると思わないことね」
役割を把握する。
さやか、杏子が前衛。
マミが後衛。
なら、最初に潰すべきは巴先輩だ。
撃ち込まれる銃弾の雨の中を進む。
体に銃弾が当たるが、一つ一つ弾く必要はない。
全身に光を纏い、全てを弾きながら最短距離を駆け抜けた。
「喰らえ!」
腕に光を込め、全力で殴りかかる。
何故か、まったく動かなくなった巴先輩。
なんだ?
不思議に思いつつも、拳を振り抜く。
そして拳が当たった瞬間、
溢れ出るリボンに全身を絡め取られる。
どれほど力を込めようと、動かせない。
分身!?トラップか!?
「ティロ────
リボンの影から巨大な砲身が見える。
不味い!これは、話に聞いていた────。
────フィナーレ!」
「ウルトラ・シールド!」
高密度の砲撃をウルトラシールドで受け止める。
拮抗する、砲弾とシールド。
いや、徐々に押されてる!
「ああああああああっ!」
「今が、チャンス!」
起き上がったさやかと杏子が背後から振り下ろしてくる。
目の前には、巴マミ。
逃げ場はない。
「ティロ!」
二発目!?
「フィナーレ!」
世界がスローモーションになる。
ゆっくりと二発目の砲撃が進んでくるのが見える。
ウルトラシールドといえど、流石に二発は無理だ。
回避は不可能。
拘束も解けない。
それならば、目の前にある砲弾を利用するしかない。
ウルトラ念力、と呼ばれるウルトラマンが度々使う超能力がある。
時に怪獣を持ち上げ、時に相手を拘束したりする技。
いくら人間体とはいえ、砲撃一つ跳ね返すのは訳ないことだ。
「跳ね返し────」
砲撃同士がぶつかり合い、大きな爆発が起こる。
僕も、巴先輩も、さやかも、杏子も、全員が吹き飛ばされた。
「いっつぅ」
頭が割れるほど痛い。
ウルトラ念力は使うのに多大な集中力と精神力を消耗する。
そう易々と使える技ではなかった。
更に爆発による熱傷。
ウルトラシールドを張っていたお陰であまり怪我はないが、全身の至る所に痛みが走る。
ふざけやがって。
殺してしまおうか。
壁に打ち付けられた三人が立ち上がってくる。
よかった、みんな無事みたいだ。
「まさか、跳ね返してくるとはね」
「それ、連射できるの反則じゃないですか?」
「あなたの方がよっぽど理不尽よ」
確かに、そうかもしれない。
それほどまでにウルトラマンの力は強大だ。
だが、このままでは負けてしまう。
仕方ない。
人間態で勝とうなどと、虫のいい話だった。
懐から取り出すはスパークレンス。
杏子にやったような囮ではない。
正真正銘、本気の変身。
後のことは、全員ぶちのめしてから考えるとしよう。
輝くは、光の神器。
天高く掲げ、全てを照らす光が世界を輝かせる。
「ティガァァァァア!」
その時、黒い影がスパークレンスを覆った。
「あれが、キュウべぇの言っていた変身アイテムね」
打ち付けられた衝撃から、何とか立ち上がる。
ダメだ。
この距離では阻止できない。
「あ〜あ、これは負けたなぁ」
スパークレンスが輝き、世界を照らす。
暖かな光。
心が安心する、最後に見る光景があれなら悔いはないわ。
いや、美樹さんを巻き込んでしまったのは後悔だ。
告白をさせてあげたかった。
目を瞑り、1秒、2秒と待つ。
何も、起こらない?
目を開けると大地くんの手元を黒い影が覆い、離れていった。
何だ?
一体何が────?
「変身を解け!」
「え?」
「早く!」
焦った様子で忠告を飛ばされる。
だが、もうすでに遅い。
正体不明の謎の影が、私の頭を覆った。
スパークレンスが輝かない。
違う。
手元から
まさか、あの影────。
僕の手元から離れたかと思うと、巴先輩の頭を覆う謎の影。
忠告を飛ばすが、それよりも移動の方が早かった。
巴先輩の頭を離れると、魔法少女の衣装が解除される。
何が起きたかわかっていないのか、呆然とした表情の巴先輩。
残るはさやかと杏子。
影は既に移動している。
さやかは僕を疑っている!
信じてくれるかもしれないのは、佐倉さん!
「佐倉さん!変身を解いて!早く!」
「えっ!?あ、ああ」
あまりの剣幕に、只事じゃないことを察してくれた佐倉さん。
変身を解いた時には、さやかの腹を影が覆っていた。
「な、何これ!?マミさん!」
「わからないわ!でも、私のソウルジェムを奪われてしまった!」
「私のソウルジェムも!?」
影が離れる。
三日月の形をしていたソウルジェムはその形を失い、魔法少女から普通の少女へと戻った。
既に獲物がないことを察知したのか、黒い影が撤退していく。
追うか?
いや、ダメだ。
いくら佐倉さんのメンタルが強いと言っても、仲間二人がいきなり死んでしまっては魔女になってしまうかもしれない。
「さやか!聞いてくれ!」
「な、何よ!話しかけないで!」
肩を掴み話しかける。
抵抗されるが、そんなのに構っている暇はない。
「今から君は気絶する!でも、落ち着いて!目を覚ました時には、佐倉さんかほむちゃんを探してくれ!きっと、力になってくれる!」
「はぁ?一体何言って────」
カクン、と膝から力が抜け、地面に倒れる前に体を支える。
目から光が消え、全身の力が抜けていた。
ソウルジェムの範囲から体が抜け出したのだろう。
死んでしまった。
影が消えてから10秒。
ソウルジェムの範囲が半径100メートルとして、おおよそ時速36キロで動いている計算だ。
思ったよりも早い速度に、思わず舌打ちしてしまう。
これでは今から追っても見つからないだろう。
僕が判断を間違えた。
「おい!マミ!しっかりしろ!おい!」
倒れたまま動かない巴先輩を、佐倉さんが必死に揺さぶる。
しかし、既に死んでいる巴先輩は何も返さない。
返せない。
死人が喋ることはないのだから。
「おいアンタ!どういうことだ!これは!」
怒ろうとして、そして、僕が横抱きにして持っているさやかに気がつく。
胸の動きがない。
指ひとつ動かさない。
顔から力が抜け、口が半開きになっている。
生きているのであれば行う生理現象を、何一つ行わない。
一つの最悪が、杏子の頭に浮かんだ。
「まさか……死んでる、のか?」