君のココロを守るため   作:一般魔法少女

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複合魔女迷宮・サバト

 

 

「ここだな」

 

 使い魔を追うことしばらく。

 いよいよたどり着いたのは郊外の廃病院だった。

 三滝原の街にこんな場所があったなんて……。

 

 廃病院内を並んで歩く。

 周囲を警戒しながら進むが、驚くほど静かで何も起こらない。

 

 そして、104号室と書かれた病室へと着く。

 部屋の中から濃い魔女の気配が漂ってきた。

 

「佐倉さん、本当にいいんだね?」

 

 今回の魔女はソウルジェムを奪う。

 もしかしたら、魔女結界内であっても奪われる可能性は否めない。

 

「アタシに何もせず待ってろって?そんなのゴメンだね。

 さやかもマミも、アタシの仲間だ。

 だったらアタシも戦うのが筋ってモンじゃん?」

 

「それに、アンタが負けたらどの道手詰まりなんだ。それなら、一緒に戦ったほうが勝率高いだろ?」

 

 かっこいいなぁ。

 どうして僕の周りの女性陣はこうもかっこいいのか。

 見習いたいものだ。

 

「わかったよ、佐倉さん。一緒に戦おう」

「杏子って呼べよ、大地。アタシらも、もう仲間だろ?」

 

 心は決まった。

 意を決して魔女結界に足を踏み入れる。

 

「行こう、杏子」

 

 

 

 

 未知の魔女結界。

 先程までの廃病院から打って変わって、ぐるりと円周の壁に囲まれた巨大な街があった。

 壁の上からの景色は視界が開け、遠くまで見えるようになった。

 

「広いなぁ」

「アタシもこの大きさは初めて見たな。

 

 とてつもなく広い。

 ちょっとした街並に広い魔女結界に気が遠くなる。

 

「杏子、調子はどう?」

 

 杏子には僕の力を事前に話しており、ソウルジェムは穢れ一つない新品同然になっていた。

 

 変身した姿で調子を確かめるようにその場で跳ねる。

 

「悪くねぇ。

 使い魔も来ないみたいだし、アタシも戦えるな」

 

 あらかじめ予想されていたが、あの使い魔は魔女結界外での活動を前提として作られていたみたいだ。

 でなければ、あまりにも無法すぎる。

 恐らく、ソウルジェムを魔女に届けるためだけに作られているのだろう。

 

「よかった。それでも何が起きるかわからない」

 

 油断せず行こう、と続けようとして街の一角が蠢くのが見えた。

 

 なんだ?

 

 蠢きは止まらず、柱のように天へと舞い上がる。

 それは徐々に近づいてきており、姿を視認することができた。

 

 あれは使い魔だ。

 その数、実(・)に(・)十(・)万(・)体(・)。

 

「逃げろ!」

 

 街中へ逃げ込み、狭い路地裏を駆け抜ける。

 

「馬鹿じゃねぇの!なんだよあの数!」

「つべこべ言わず、走って!」

 

 脇目も振らず、全力で走る。

 少しでも足を緩めるとすぐにでも追いつかれてしまうだろう。

 

「任せろ!」

 

 杏子が背後に何十もの鎖を張り巡らせる。

 幾重にも重なった鎖が、使い魔の進行を妨げる。

 

 完全にではないが杏子の助力により徐々に距離が離れてきた。

 相手の移動速度より走るスピードのほうが速い。

 

 振り切れる、と淡い希望を抱いた瞬間。

 

 正面に使い魔が降ってきた。

 

 

 空を飛んでいたのだ。

 当たり前のように挟み撃ちにあう。

 

 背後に迫る使い魔と、正面から襲ってくる使い魔。

 時間にして1秒にも満たない間に決断を下す。

 

「後ろはやる!正面任せた!」

 

 その場で反転し、腕を十字に組む。

 交差した箇所が光で輝きだす。

 

「スペシウム光線!」

 

 狭い通路、直線という好条件が重なったため大量の敵が消え去る。

 僕が千体の敵を薙ぎ払っている間に、一万の敵が追加でやってきた。

 

「ふざけろバーカ!」

「こっちだ!」

 

 ぐいっと襟を掴まれ、建物に逃げ込む。

 逃げ込んだはいいが、敵が押しかけてきた。

 

「どうすんの!?」

「こうすんだよ!」

 

 杏子が手をついたかと思うと、建物全体に赤い鎖のような模様がつく。

 使い魔達は突破できないのか、雨のように建物に打ち付けられた。

 

「おお、器用」

「伊達に魔法少女やってないんでね。こんくらいは出来るのさ」

 

 まさか結界が使えるとは。

 だが、逃げ道がなくなってしまった。

 周りは既に使い魔で埋め尽くされているだろう。

 

「どうやって抜け出すの?」

「それは、アンタ。地面掘っていくしかないだろ」

「嘘でしょ……?」

 

 頑張った。

 

 

 

 

 ウルトラ式超掘削術を編み出すことでなんとか窮地を脱出。

 

 あれから何度か襲われたが、順調に使い魔を減らしていった。

 その度に実感するが、杏子の実力は本当に高い。

 少なくとも、接近戦において僕よりも遥かに上だった。

 

「アンタ、接近戦弱くない?前も思ったけど腕に光纏わすだけってどうよ?」

「そうなんだけどさ、イマイチ感覚が掴めなくてね」

 

 光線とか光の操作は得意なのだが、人を殴ったりするのはどうにも苦手だ。

 性に合わないというか、どうにも肌に合わないのだ。

 

「じゃあ光線を圧縮したりして、腕の周りに飛ばしとけば?」

 

 おお。

 

「その手があったか」

 

 スペシウム光線を円盤のノコギリ状にして中に浮かべる。

 これで懸念事項だった接近戦の殺傷力は解決した。

 

「よし、これを八つ裂き光輪と名付けよう」

「大地もマミの同類かよ……。なんで技名とかつけるわけ?」

 

 なんで、と言われても心のティガがそう言ってる気がするからだ。

 

「技名、というかイメージの方が重要なんだ。イメージがしっかりしてないと、技の威力が落ちたり発動しなかったりするんだよね」

「あー、なるほど。技名でイメージ補強してんのね。納得したわ」

 

「巴先輩もそれで言ってるんじゃない?」

「いや、あれはタダのカッコつけだな。本人がカッコいいからって言ってたわ」

 

 マジかよ……。

 

 

 

 

 しばらく探索すると、一つの大きな檻を見つけた。

 

「ここだな」

「魔女の気配がする……?」

 

 気配はするが、どうも妙だ。

 一つじゃない気がする。

 気のせいか?

 

「どう思う?」

「入って確かめるしかねーな。どの道倒さなきゃ終わらないんだ。気合い入れていこうぜ」

 

 踏み入れた瞬間、背後で扉が勢いよく閉じる。

 

「来るぞ!」

 

 ガシャリ、ガシャリといくつもの柵が上がる音がして魔女が現れる。

 

 

 

 

 

絆の魔女【Nexus】

 

誓いの魔女【Nexus】

 

友情の魔女【Nexus】

 

永遠の魔女【Nexus】

 

希望の魔女【Nexus】

 

 

 

 その数、五体。

 

「なっ!?」

「なんでこんなにいるんだよ!」

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

『当時の魔法少女達のソウルジェムを奪っていってね。

 僕達は彼女達が魔女になる際のエネルギー回収が目的であって、殺したい訳ではないのさ。

 彼女がソウルジェムを奪うと魔女化はするものの、エネルギー効率が悪かったから封印することにした』

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 キュウべぇは確かに言っていた。

 奪われたソウルジェムは魔女化したと。

 

 ならばその魔女はどこへ行ったのか?

 答えはここにある。

 

────当時の魔法少女達か!

 

  盾持ち、槍持ち、剣持ち、弓持ち、杖持ち。

 魔女の姿形は似ているものの、手に持つ武器はまるで違う。

 

 そっくりだが、コピーなんかじゃない。

 五体それぞれが確かな存在感を放っていた。

 

「杏子ッ!」

「ああッ!」

 

 二人で同時に駆け出す。

 

 先手必勝。

 相手の陣形が整っていない内に、一体でも多く倒す。

 そうしなくては、倒しきることなど不可能に思えた。

 狙いは杖持ち。

 他の奴ほど危険な気配はしない。

 だが、想像通りなら真っ先に倒さなくてはいけない。

 

 手の平を擦り合わせ光をスパークさせる。

 可能な限り限界まで光を凝縮させ、解き放つ。

 

「ハンド・スラッシュ!」

 

 瞬時に出せる技の中で最高の威力を込めた一撃。

 牽制ではない、正真正銘本気の一撃だった。

 それが横から割って入った盾持ちに呆気なく弾かれた。

 

「杏子ッ!」

「どりゃああああッ!」

 

 既に相手陣営深くまで潜り込んだ杏子が、杖持ちの顔面を大きく削る。

 

「もう、いっぱぁぁぁぁぁつ!!!」

 

 大きく振り下ろす必殺の一撃。

 全体重を乗せた落下の一撃でトドメを刺そうとして、伸びてきた槍に阻まれる。

 

「邪魔だ!」

 

 数百以上も打ち合い、槍持ちを切り刻んでいく。

 流石は対魔女戦のエキスパート。

 一対一の戦いであれば、難なく倒すことができただろう。

 一対一であれば。

 

 弓を構え限界まで引き絞られる弦。

 何かが放たれたかと思うと、レーザーのような光線が一直線に伸び、射線上にいた杏子を消し飛ばそうとする。

 

「ウルトラ・シールドッ!」

 

 間一髪であったが、ギリギリ割り込むことに成功した。

 レーザーの放出が収まるまで耐えるが、振り下ろされた剣によって粉々に砕かれた。

 

「ガッ!」

 

 二人纏めて壁まで吹き飛ばされる。

 

 朦朧とする視界に杖持ちが杖を掲げるのが見えた。

 杖が光り、負わせた傷が瞬く間に回復する。

 

 杏子が必死に付けた傷が、あっさりと元通りになってしまった。

 

「あああああ゛あ゛あ゛ッ!!!!!!」

 

 あれはダメだ。

 どれほどダメージを与えても、杖持ちが存在する限り勝機はない。

 

 脇を締め、腰で握り拳を構える。

 手の平を水平に交差し、紫のエフェクトが煌めく。

 L字に組まれた腕に、光を集中させる。

 

 チャージ10秒。

 

「ゼペリオン光線!!!!!!」

 

 全てを撃ち消す光線。

 未だに負けたことがない必殺技。

 絶対の信頼とともに放つ。

 

 全ての魔女を消し飛ばし、僕達は未来を掴む。

 

 そんな夢を見て──── 

 

 

 

「クソッたれ……」

 

 

 

 盾持ちによってあっさりと防がれた。

 

 いや、盾持ちだけの力ではない。

 杖持ちへと放たれた光線の前に全員が割り込んできたのだ。

 剣持ちと槍持ちがその武器と体を持ってして。

 弓持ちがレーザーを放ち、威力を減衰させ。

 大幅に減衰した光線を盾持ちによって防ぐ。

 

 一糸乱れぬ美しい連携。

 自身の傷も厭わない自己犠性の精神。

 

 特に、剣と槍は胴体に大きな風穴があいている。

 それでも光線に身を投げ出せるのは、杖持ちが絶対に治してくれるという信頼があってこその行動だった。

 

 魔女に堕ちてなお、美しい絆があった。

 

 思わず膝に手をついてしまう。

 強力な光線を打った反動が、体に負担を強いる。

 

「大地、何か手はあるか?」

「当然」

 

 最強の光線技を打ち破られてしまった。

 だが、あくまでも10秒チャージした光線が、だ。

 

 もっと時間をかけた光線であれば、きっと打ち倒すことが出来るだろう。

 そんな時間があればの話だが。

 

 

「行くぞ……!」

 

 光を集中させる。

 溜めて、溜めて、限界以上に溜めようとして、飛んできたレーザーによって阻止された。

 

「やっぱり邪魔してくるよな……!」

 

 ゼペリオンを見せたのは失敗だった。

 相手の中での脅威度が跳ね上がったのか、溜めを作る暇さえ与えてもらえない。

 

 接近戦で杖持ちか弓持ちを削りきるしかない……!

 

「八つ裂き光輪」

 

 円盤状の光が周囲でくるくると回る。

 友が教えてくれたこの技と共に走り出した。

 

「オオォォおおおお!!!!」

 

 槍と剣の同時攻撃。

 振り下ろされる武器に対して光輪をぶつけることで、僅かな空間を作る。

 

 一人通れる隙間に体を滑り込ませ、前衛を突破した。

 

 後ろの二体を杏子が抑えてくれる。

 僕は目の前の敵に集中し、確実に殺す気で挑む。

 

「行け!」

 

 立ちはだかる盾持ちを光輪が切り刻む。

 バラバラの肉片になるほどの勢いで全身を駆け巡るが、刃が当たった端から体が治り始める。

 

 痛みなどない。

 動きを阻害することもできず、盾という質量をぶつけられ吹き飛ばされた。

 

「ガッ……!」

 

 勢いよく地面にバウンドし転がされる。

 

「……まだ、だ」

 

 再度突撃。

 槍の攻撃を潜り抜け、杖持ちに辿り着く前に剣の切先が腹をかすり切り裂かれる。

 

 光で腹を縫い合わせ、臓物が零れ落ちないように止血する。

 

「まだだ……」

 

 杏子も追撃がいかないように必死に魔女を抑える。

 だが、近距離はどうにか対応できるが、遠距離の相手には無力だ。

 

 遠くで弓が光る。

 絶死の閃光が大地の体を包んだ。

 

「大地っ!」

 

 魔女達は勝利を確信した。

 杏子は思わず目を逸らしてしまった。

 

 もう、勝てないのか……?

 

 

 

 

「まだだッ!!!!!」

 

 大地はそれでも立ち上がった。

 

「諦めてたまるか!

 お前達がどれだけ強くても!

 お前達がどれだけ厄介でも!

 僕達が諦める理由にはならない!」

 

 敵がどれほど強大であってもさやかを、巴先輩を、ほむちゃんを諦める理由にはならない。

 

 血は流れ、肉は焼け、いつ死んでもおかしくないほどの重症。

 痛くない箇所などない。

 全身が悲鳴を上げている。

 

 だとしても!

 

「僕を殺せるなら殺してみろ!

 僕の心を折れるものなら折ってみせろ!

 例えこの身朽ち果てたとしても、諦めてなどやるものか!」

 

 それでも折れない心。

 不撓不屈の精神が、杏子の心を震わせる。

 

「そうだな……。そうだったな……!」

 

 小さな人間の背中。

 ちっぽけな人間の背中が、魔女よりも大きく見える。

 アタシの心が弱音を吐いていた。

 折れかけた心を奮い立たせる。

 

 叫ぶ。

 

「アタシ達を倒すってんなら、覚悟しろ!

 何時間でも戦ってやる!

 何十時間でも戦ってやる!

 アタシ達の、人間の底力を舐めるんじゃねぇ!」

 

 高らかに宣言する。

 魔女に、この事態を仕組んだインキュベーター共に。

 人間の力を見せてやる。

 

 

「見せてやる!僕達の光を!」

 

 

 

 





絆・友情・誓い・希望・永遠の魔女 ネクサス
その性質は愛。

 かつて三滝原に存在した五人の魔法少女の成れの果て。
 当時、結界の主により同時にソウルジェムを奪われ同タイミングで魔女化した。
 そのため、性質が互いに混ざり合い複合型の魔女として各々が自立している。

 少女は祈った。
 ずっと一緒にいれますように。
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