君のココロを守るため 作:一般魔法少女
「お前が、お前こそが魔女だ!」
「私が望んだのはこんなことじゃない!」
「私が救いたかったのはこんな方法じゃない!」
「死ね!この悪魔め!」
結界に突入してから20時間が経過していた。
魔女達は不思議に思う。
このちっぽけな人間達はどうして死なないのだろう?どうして諦めないのだろう?
戦い初めてずっと嬲ってきた。
優勢だった場面など一度もないはずだ。
勝ち目など、ない。
魔女達には理解できなかった。
少女だった頃なら理解できたはずなのだ。
なぜ、諦めないか。
なぜ、戦うのか。
お互いに思い合っていた彼女達こそ、よく理解できるはずだったのだ。
今はもう、できない。
「ジリ貧だなぁ!」
迫り来る剣を打ち払い、後退する。
こうも戦闘が長引くのには理由があった。
杖の再生力は勿論のことだが、後一歩という所で弓の邪魔が入ってくるのだ。
そのため、もう一歩が踏み込めない。
ソウルジェムの穢れの心配はないため魔力切れにはならないが、ジワジワと削られていた。
「やっぱりゼペリオンで薙ぎ払うしかないか……。でも、溜めを作る隙ができない」
どうする?やはり杖持ちを倒すしかないか?
敗れかぶれの突撃案しか出てこない自分の頭を呪う。
ほむちゃんならもっといい案が出るだろうに。
「……アタシの魔法なら時間を稼げる。幻影を作り出す魔法だから、時間稼ぎにはピッタリなはずだ」
杏子の魔法?
そんな便利なものどうして……?
いや、使わなかった理由があるんだろう。
深くは聞くまい。
「いいんだね?」
「…………ああ!やるぞ!」
魔法を発動しようとして────
◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️
「お前が、お前こそが魔女だ!」
「私が望んだのはこんなことじゃない!」
「私が救いたかったのはこんな方法じゃない!」
「死ね!この悪魔め!」
◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️
父さんの声が聞こえる。
手が震え、動悸が止まらない。
アタシの一番弱いところ。
過去のトラウマが固有魔法を使わせてくれない。
「杏子っ!?」
咄嗟に杏子を庇い、飛び退く。
尋常じゃない様子に訳を聞きたいが、魔女が許してくれない。
「敵は抑える!その間に深呼吸してくれ!」
一人で魔女に突撃する。
勝つにはもう、杏子の魔法に賭けるしかない……!
頼む……発動してくれ……!
荒い息を治めるように必死に深呼吸をする。
冷や汗が止まらない。
どれだけ息を吸っても、手の震えが止まらない。
「頼むよ!今回だけでいいんだ!」
しかし、どれほど願ったところで何も起こらない。
奇跡など、ない。
アタシの願いが家族を壊した。
ただ、父さんの話をみんなに聞いて欲しかっただけなのに、父さんはアタシを否定した。
当たり前だよな。
父さんは話を聞いて欲しかったんじゃない。
みんなを助けたかったんだ。
それなのに、アタシの願いが父さんの願いを破壊した。
アタシのせいで、父さんは暴力を振るうようになった。
アタシのせいで、母さんは父さんの言いなり人形になった。
アタシのせいで、妹は燃え盛る家で火炙りになった。
みんなを殺したのはアタシだ……。
それから、アタシは自分のために生きるようになった。
魔法少女の力を使うようになった。
人のために生きるのは辞めよう。
好き勝手やって生きようって。
他人のためにやったって、最後は父さんみたいにしてしまう。
アタシが何かやったって碌なことにはならない。
キュウべぇの話に乗ったのも、そのためだ。
他人の命なんかどうでもいい。
ウルトラマンが死んだってアタシには関係ないって。
でも、死にそうだったマミを助けた。
自分のために生きようとしてたのに、体が勝手に動いちまった。
バカだよな。
アタシは結局何も変わっちゃいなかった。
変われてなかった……。
さやかに教えるのは楽しかった。
昔のアタシを見てるみたいで、友達のために頑張るって張り切ってるやつだった。
バカだなって思って、バカにしない自分がいた。
上手くいったらアタシも少しは救われるんじゃないかって、勝手に思ってた。
結果はみんな死んだ。
やっぱり、アタシのせいだ。
「おおおおおおっ!!!!!!」
遠くで大地の声が聞こえる。
アタシの新しい友達。
アイツも他人のために一生懸命になれるバカな奴だった。
始まりは良くなかったし女二人侍らせてる最低ヤローって印象だったけど、本当に大切に思っているのが伝わってきた。
ほむらとの別れを見て、助けてやりたいって思えた。
コイツを絶対に返してやりたいって思えたんだ。
アタシのせいで、死にかけてる。
弓が輝く。
遠くの魔女が光るのが見えた。
ダメだ、避けられ────
「杏子ぉぉぉぉおおおおお!!!!」
今にも泣きそうなアイツが見えて、なんでかアタシも泣きそうになった。
肉の焼ける匂いがする。
アタシは死んだのか……?
ふと、体に重たい物が乗ってるのに気づく。
胸元を見ると大地が覆い被さっていた。
体のあちこちが焼け、重傷を負っていた。
「バカ……!何で!」
「……うるさいばか。仲間を助けるのは当たり前でしょ」
「でも、足が……!」
真っ黒に焼けた足。
これでは逃げることも動く事もできない。
戦うことなど、もっての外だ。
なのに、大地は立ち上がる。
痛くないはずがないのに、怖くないはずがないのに、それでも立ち上がった。
「杏子のこと、信じてる。
会ってまだ時間は経ってないけど、それでも信じてる。
一緒に使い魔と戦ってくれた。
一緒に魔女と戦ってくれた。
みんなのために必死に戦ってくれた君を信じてる」
信じるなんて、それだけで十分だった。
それだけで、敵に向かっていけた。
アタシはこのままでいいのか?
過去に囚われて、現在を助けれなくて、未来を失う。
本当にそれでいいのか?
いいのか!佐倉杏子!
「いいわけ、ねーだろ!!!!!」
佐倉杏子は、立ち上がった。
「大地!アタシを信じてくれ……!」
「信じる!」
一瞬の躊躇いもない。
本当に心の底から信じてくれている。
その信頼に応えたい……!
「マミ、アタシに勇気をくれ!」
マミがつけてくれた名前。
恥ずかしくって中々言えなかったけど、今だけは声を大きく張り上げる。
誰よりも大きな声で。
死んでいるあの人にも届くように────
「ロッソ・ファンタズマ!」
杏子が十人に増えた。
どれも本物ではない。
だが、大地の姿を隠し、相手を混乱させるのにはピッタリな魔法だ。
(ごめん……!ごめんなさい!父さん!)
(アタシは魔女だったかもしれない!
悪魔なのかもしれない!
間違っていたのかもしれない!
それでも、友達を助けたいんだ!)
アタシのために必死になってくれたバカ。
アタシに色々教えてくれたお人好しのバカ。
アタシにもう一度他人のために頑張ろうって思わせてくれたバカ。
アタシもみんなのために、もう一度バカになりたいんだ……!
魔女が翻弄される。
切ったかと思ったら幻影。
幻影かと思えば、本物に切られる。
偽物の中に潜む本物。
本物のような偽物。
どれが本体か、見分けるのは不可能だった。
刻む。
杖持ちによって修復されるが、ひたすらに刻みまくる。
延々と繰り返す作業に意識が遠くなる。
腕が痛い。
息も辛い。
体が千切れちまいそうだ。
「ああああああ!!!!!」
それでも、手を緩めることはない。
佐倉杏子の魂が折れることはなかった。
魔女に本物を見分けることはできない。
だから、武器を振り回すことにした。
相手の攻撃は効かないのだ。
適当に振り回しとけば、いずれ当たるだろう。
そして、その内の一発が偶然杏子に当たった。
地面にバウンドする杏子。
あまりの痛みに、立つことができない。
視界が滲む。
やっぱりアタシじゃダメなのか?
アタシは魔女でしかないのか?
諦めかけ、心が折れそうなその時────
────頑張れ!お姉ちゃん!
声が、聞こえた。
たった一人の、アタシの大切な妹。
アタシのせいで殺してしまった妹が励ましてくれた。
そんな気がした。
「ああああ!!!!」
再び駆け出し、魔女を抑える。
なぜ折れない?
なぜ死なない?
なんなんだ?この人間は。
「五対一だと思ったか!?
一人だと思ったか!?
違う!アタシには大切な仲間達がいる!
今はいないけど、心はいつも繋がっている!
アタシとさやかとマミと大地とほむら!
みんな合わせて五対五だ!
わかったか!バカヤロー!」
訳がわからない。
人はいつも一人のはずだ。
心の力などない。
だって私達は一人で死んだのだから。
一人……で……?
頭が痛い。
違う。
私達は一人じゃなかった……?
魔女達が頭を抱える。
わからない。わからない。わからない。
「ありがとう、杏子」
十分だ。
光が弾ける。
溜まりに溜まった光が漏れ出し、世界を照らしている。
脇を締め、腰で握り拳を構える。
手の平を水平に交差し、紫のエフェクトが色濃く煌めいた。
L字に組まれた腕に、全ての光を集中させる。
「ゼペリオン光線!!!!!!」
最初の一発とは違う。
正真正銘の本気の光線が、剣と槍と弓を抵抗も許さず飲み込んだ。
残るは盾と杖。
杖が必死に盾を治し、光線と拮抗させる。
「ぐぅううぅうう!」
なぜ、多くのウルトラマンが人間態のときに光線技を本気で撃たないのか?
答え、体が持たないから。
熱い……!熱くて体が消し飛びそうだ……!
腕が赤く染まる。
あまりの熱さに体が悲鳴を上げている
ウルトラマンの技の多くは人間態で使っていいものではない。
それは単純に肉体強度が足りていないためだ。
ウルトラマンの体は宇宙空間などの極限状態であっても耐えれる体になっている。
人間はなっていない。
光の扱いに関して天才的な才能を持っていた大地だからこそ、人間態であっても光線を撃てたのだ。
手加減の一切を捨て去った光線に体が持つ筈がない。
腕が炭化し、指がボロボロと崩れ落ちていく。
尋常じゃない痛みが走る。
傷に塩を塗るどころの話じゃない。
脳に棒を突っ込まれ、かき混ぜられているのような痛みが常に走っている。
あまりの痛みに足が挫けそうになる。
血も抜けすぎて力が抜けてしまいそうだ。
「だとしてもぉぉおおおお!!!」
頑張れ!頑張れ僕!もう少しだから!
もう少しで、全部取り返せる!
自分を鼓舞するが、それでも足が踏ん張ってくれない。
ジリジリと後ろに下がっていってしまう。
もうだめだ、と諦めてしまいそうな時、背中を支えてくれる手があった。
「踏ん張れ!アタシも支えるから!」
熱いはずなのに。
背中といえど手が焼ける音が聞こえる。
それでも支えてくれる。
手を通して杏子の光が流れてくる。
熱い、燃え上がりそうな熱。
その熱が心を熱くさせてくれた。
そうだ!僕は!僕達は一人じゃない!!!!!
「いっけえええええええ!!!」
気合一閃。
杏子の心で一回り大きくなった光線が抵抗を許さない。
その奇跡の光線が魔女達消滅させ、光へ導いてくれた。
「勝った……!」
完全に消滅した。
あれほど再生していた魔女達が復活する気配もない。
その証拠に五個のグリーフシードが落ちていた。
「やったな!大地!勝ったぞ!」
思わず喜び、跳ねてしまう。
それほどまでに強い敵だった。
一人ではとても勝てなかっただろう。
喜びを分かち合おうとすると、衝撃の一言を言われてしまう。
「まだ、本元を叩かないとね……」
「は?」
本元?
何言ってるんだ?
そういえば、ソウルジェムがない。
「あっ、えーとね。実は────」
「そーいう事は早く言え!このバカ!
バカ!バカ!バカ!
バカ大地!」
「イテテテ、ごめんごめん」
魔女達を倒した後、一つの大きな扉が開かれていた。
中を伺うように覗き込むと、一人の女性がいる。
【Jail・Jewel・Jem】
「いたな……」
両の腕にソウルジェムを抱える魔女。
大切な赤子を抱くようにしっかりと抱き込んでいる。
「倒さないと取り返せない」
「でも、強すぎる攻撃はソウルジェムを壊しちまうぞ」
「そうだよね……」
うーん。
「とりあえずぶっ飛ばそうぜ。アドリブでなんとかなるだろ」
「その脳筋思考はどうなの……?」
扉に滑り込み、腕を構える。
魔女は反応できないのか、動く気配がない。
いや、動いた。
こちらを見るなり大きく手を広げる。
「八つ裂き光輪」
円盤状の光線が空を舞う。
一直線に魔女に向かい、呆気なく頭を切り落とした。
カランカランと音を立てて落ちるソウルジェム。
「倒しちゃったよ……?」
「呆気ねーな。本当に倒したのか?」
あまりの呆気なさに困惑する。
どの魔女も強大な力を持っていただけに、不安になる。
『────』
「ん?」
「どうした?」
「いや、今何か言った気がしたんだけど……」
空耳か?
魔女結界が崩れ始めていく。
どうやら本当に倒せたみたいだ。
スッキリとしない終わりだったが、無事終わってよかった。
指とかもろもろないけど。
「ま、とにかく一件落着だな。早くマミ達の所に持っていかねーと」
「だね。僕も早くほむちゃんに────」
そして、気づく。
最も重要な、ワルプルギスを越えるための大切な物がない。
「スパークレンスが、ない」
『スパークレンスもこの通り回収。目的は達成した』
『いくら魔法少女が束になったところで、ワルプルギスの夜は越えれないだろう』
『鹿目まどかを魔法少女にするといい。それで解決だ』
『僕達の勝ちだ。ウルトラマン』
監獄の魔女 ジュエル・ジェイル・ジェム
その性質は慈愛。
魔女としての能力はないに等しい。
たった一体の使い魔だけか彼女の全てだったのだ。
大切な宝石をいつも腕に抱いている。
しかし、本当に抱きたいものは最後まで抱けなかった。