君のココロを守るため 作:一般魔法少女
それから僕達は、沢山話した。
「じゃあほむらちゃんって何回くらい繰り返してるの?」
「そうね、100回は行ってなかったと思うけど……」
「じゃあ中学生って詐欺じゃない?」
「!?」
「学校では缶コーヒー、ありがとう」
「いいよ、あれくらい」
「なになに?何のお話」
「お礼のお礼に缶コーヒー奢った話」
「でも、変な人だとは思ったわ」
「えー、そうかな?」
「二人は随分仲がいいわよね」
「そう見える?」
「普通、いくら怪我してると言ってもお風呂は一緒に入らないと思うわ」
「でも、一週間前も一緒に入ってたし」
「普段から入ってるの!?!?」
「マドカダイチ。あの姿は一体何かしら?」
「あれはウルトラマンティガ。光と闇の巨人だよ」
「ウルトラマン?」
「わからないけど、頭にそう浮かんだんだ」
「やっぱり、友達なら名前呼びにしない?」
「……大地、くん」
「ほむらさん?」
「んーあだ名もいいかも」
「ほむちゃん……」
「大くん……」
「なんか、照れるね」
話して、話して、そして────
次の日、普通に寝坊した。
ピンポーン。ピンポーン。
遠くでチャイムが鳴る音がする。
短い睡眠時間だったためか、ズキズキと頭が痛む。
目を覚ますとほむちゃんの顔が間近にある。
まつ毛長くて美人さんだよなぁ。
何でほむちゃんと寝てるんだっけ?
えーと、確か昨日明け方まで話してて、それで……。
そうだ、三人で雑魚寝したんだった。
「おーい、まどかー!学校に、遅れるよー!」
遠くの知久さんの声で、ぼんやりとした頭が一気に覚醒する。
勢いよく起きた衝撃で傷が痛む。
ほむちゃんの治癒。
ウルトラマンの回復力を持ってしても、未だ全快していなかった。
「イタタタ……」
「大地くん。まだ休んだほうが良さそうだね」
背中を摩ってくれるまどか。
二、三巡考えたかと思うと、ほむちゃんにいい笑顔で言い放った。
「ほむらちゃん。今日学校サボろっか」
「昨日の夜、色々あって大地くんの体調悪いから今日休むー!パパは入ってこないでー!」
「!?!?!?!?」
「まどか、寝癖付いてるわ」
「そういうほむらちゃんも、寝癖付いてるよ」
お互いに指摘し合い、苦笑。
「じゃあ、髪をといてあげるから、私のもお願いできないかしら?」
「いいよ〜。それじゃあ、お願いします」
そっと、頭を差し出してくれる。
その綺麗な髪を、宝石を扱うように丁寧にときほぐす。
「意外ね」
「?何が?」
「あなたは、学校をサボろうなんて言うタイプだと思ってなかっただけ」
今までのまどかだったら、絶対に言わなかったと思う。
やはりまだ、私は過去のまどかを引きずっているのだろう。
そんな自分に嫌気が差す。
目の前のまどかを見ていない気がして。
「確かに学校の勉強も大事だよ?でも、それ以上に大事な事ってあると思うんだ」
「それは、そうね」
髪をとく。
多分、私がよく見ていなかっただけだ。
どの世界のまどかであっても、彼女の本質は同じなんだろう。
気高く、人を思いやれる。
優しい女の子。
そんな彼女に、ずっと憧れてたんだから。
「終わりよ」
「じゃあ、今度は私の番だね」
折角の休みにしたので、作戦会議を行うことにする。
「今後の話をしましょう。
第一目標は、まどかが魔法少女にならないこと」
広げられたノートに、可愛らしい文字で大きく書かれる。
「前回の世界では、魔法少女なったまどかが、一撃でワルプルギスの魔女を倒したわ。そしてその後、最悪の魔女になって世界を滅ぼした」
「うわぁ。それは確かに魔法少女になったらダメだね」
自分の所業に引くまどか。
そら、あなたは世界を滅ぼしますって言われたらね……。
「一応、聞いておくわ、まどか。あなたは叶えたい願いがある?」
「んー、前は無かったけど、今はほむらちゃんを普通の女の子に戻してあげたい、とかかなぁ」
少し頬を赤らめながら、否定する。
「……ありがとう。でも、辞めて」
「わかってるよ。ほむらちゃんの思いを踏み躙ることはしないよ」
「対策としては、まどかが契約しなければいいんじゃない?」
「いいえ。一人で行動した結果、魔女に遭遇することが多かったわ。それで契約する、なんて事もあったの。恐らくキュウべぇが誘導しているのではないかしら」
「そっか、僕かほむちゃんがガードに付くのが確実だね」
「第二目標に、ワルプルギスの夜の討伐」
「ごめん、強さがまだよくわかってないんだ」
「史上最強の魔女よ。複数の魔女の集合体。その破壊規模としてはスーパーセル級に並ぶわ」
一体でもあんなに苦戦したのに、それが複数体合体しているのか……。
とても想像がつかないや。
「つまり、台風に勝たなきゃいけないってこと?」
「それ以上の怪物に勝たなくてはいけない。ワルプルギスの夜が出現すると、天地は荒れ、ビル群は宙に浮かび上がる。自分自身が常に空に浮いているから、飛行手段も必要ね。前回の世界でミサイルを打ち込んだけれど、平然としていたわ」
生半可な攻撃が通じない高い防御力に、常に空にいる機動力。
きっと火力も高いのだろう。
「そんな奴をワンパンで倒せるんだね。まどか」
「わたしって、そんなに強いんだ……」
「対策として……」
言い淀むほむちゃん。
とても言いにくそうに、言葉を綴る。
「大くん。私と一緒に、戦ってくれないかしら」
「私は、今までの世界であなたのような存在を見たことがない。今回の世界でこそ、もしかしたら勝てるかもしれないの」
「どうか、私と一緒に戦ってほしい。お願いよ」
頭を、下げられる。
そのほむちゃんの姿を見て、僕の答えは────
僕は、戦うのなんて嫌いだ。
何より、誰かを殴らなきゃいけないのが嫌いだ。
誰かを傷つけるのが嫌いだ。
辛いし、痛いし、怖い。
もう二度と戦いたくないって思った。
でも。
「君が泣いてるなら涙を拭いてあげたい。
君が苦しんでいるなら、苦しみを取り除いてあげたい。
君が悲しむなら、笑わせてあげたい」
初めて見た時から、寂しそうな目をした女の子だって思ってたんだ。
君がいつでも笑える様にしてあげたい。
きっと素敵な笑顔だから。
「だから、助けるよ。ほむちゃん。
僕は、ウルトラマンだから」
「……ありがとう。大くん」
────当然、YESだ。
「そして、第三目標に魔法少女の協力よ」
「この三滝原にも魔法少女がいるの?」
「ええ、大体一つの都市に一人くらいはいるんじゃないかしら。
この三滝原周辺に居る魔法少女は三人。
三鷹原中三年、巴マミ。
風見野市、佐倉杏子。
そして……美樹さやか」
さやか?さやかが魔法少女だって?
「さやかちゃんが、魔法少女?」
「……上条くんの腕か」
彼女の長年の想い人、上条恭介。
将来有望なバイオリニストとして注目されていたが、最近腕を怪我したことにより、入院生活を余儀なくされている。
きっと願いがあるなら、彼のことだろう。
「その通りよ。彼女はどの世界でも上条くんの腕が治ることを願い、絶望し、魔女に成り果ててしまうの」
「そんな……そんなの絶対ダメだよ!」
悲痛なまどかの叫び。
長年の幼馴染を、怪物に変えたくはない。
僕だってそうだ。
「わかってるわ。彼女が契約するのは、私が転校してから一週間後が多いの。それまでに、何とかして阻止してみせるわ」
「私も、説得してみる」
……恐らくだが、相当難しいと思う。
僕自身、大切な人のためなら人間を辞めれた。
長年、思い続けた相手の腕を治せるのなら、人間であることを辞めてしまえるのかもしれない。
自分に対しては頑張らなくても、人に対しては頑張れる人間というのは、意外と多いのではないだろうか。
少なくともさやかは、そういった女の子だ。
まして、キュウべぇは魔法少女の全てを語らない。
契約してしまう可能性の方が高そうだ。
「美樹さやかを除いた二人には、どうにかして協力を取り付けたいわ。
正し、魔女化については話してはいけない」
「ソウルジェムが濁っちゃうんだね」
「魔法少女は、ストレスでもソウルジェムの穢れは溜まる。だから、魔女化については話してはいけない。……本当によくできたシステムだね」
自分がいずれ怪物になると聞いて、平然としていられる人がどれだけいるか。
まして、防ぐ方法が延命しかないだなんて。
ふと、思う。
もし、ワルプルギスの夜を超えれたとして、ほむちゃんはどうするのだろう?
ワルプルギスの夜を倒して、まどかが魔法少女にならなくっても、ほむちゃんの人生は続く。
そして、その結末は魔女になって、世界を呪うのだ。
それは……それは、何て悲しい終わりなのだろう。
頑張って、頑張って、ようやく目標を達成した結末が絶望しかないなんて、僕は許せない。
絶対に、認められない。
「ほむちゃん。グリーフシードを貸してもらえる?」
「構わないけれど、どうして?」
「ティガは光と闇のウルトラマン。光を操ることができる。
グリーフシードは人の呪いや、心の闇の塊。
ソウルジェムは人の魂や、心の光の塊。
だったら、どうにかできそうじゃない?」
「つまり、ソウルジェムの穢れも祓える?」
「理想はね」
できるかどうか、わからない。
闇を操れるのかも、わからない。
でも、絶対にできるようになってやる。
僕はきっと、欲張りなんだ。
まどかの未来も、ほむちゃんの未来も、両方掴み取りたい。
「ほむちゃん。想像してみて。大人になれたら、ほむちゃんは何をしてみたい?」
「……わから、ないわ。大人になれるなんて、思った事もないから」
「じゃあ考えといて。僕が、君の未来を作るよ。
君の未来は無限大なんだから」
未来なんて、来ないと思ってた。
私は過去にしか行けなくて、未来があるなんて想像もしてなかった。
あっていいの?
色んな人の想いを踏み躙ってきた、私が。
赦されるというの?
「……まどかは何がしたい?やりたいこととか、ある?」
「私?私はお嫁さんかなぁ。
おはようで見送って、おかえりって言いたい。きっと寂しがり屋だから子供も沢山いて、もう寂しくないよって抱きしめてあげたいな」
(お嫁さん……)
「私も、なれるかしら?」
「なれるよ、きっと。
だってほむらちゃん。こんなに可愛いもん」
「……そうね。なれたらきっと、素敵だわ」
「今日は、まどかも大地も、転校生も学校休んでたね」
放課後、学校終わりを仁美と歩く。珍しく稽古がなかったため、一緒に帰宅することにしたのだ。
「やはり、三角関係なのでしょうか?みなさん、同時に休むなんて、偶然にしては出来すぎてると思いませんか?」
「えー、あの幼馴染カップルの間に挟まれるやつとか存在する?」
「あの美貌なら十分ありえますわ」
「ないない」
あの絆があれば、二人の関係が変わることなんてないだろう。
きっと私と恭介も変わることはない。
そう、傲慢にも思っていた。
「じゃあ、あたしこっちだから」
「ええ、上条くんによろしくお伝えください」
だからきっと想像していなかったのだ。
「さやかは僕が嫌いなのかい?」
私が、どんなに酷いことをしていたのかなんて。
病院帰り、肩を落としながら、歩く。
まさか、自分が恭介を傷つけていたなんて、想像もしていなかった。
私はただ、恭介の腕が治って、またバイオリンが弾けるようになればいいって……。
それだけだったのに。
「あー!クヨクヨしてても仕方ない!切り替えろー!さやかー!」
大声を出し、悪い思いを振り切る。
だが、心に刺さった言葉が抜けてくれない。
しばらく歩いていると、白い生物が転がり込んできた。
『やぁ、はじめまして。僕はキュウべぇ』
「何?この珍生物は」
初めて見る生物に警戒する。
こんな生物、地球にいるのか?
『キミに願いごとはあるかい?美樹さやか。どんな願い事でも、叶えてあげるよ。かわりに、僕と契約して魔法少女になってほしいんだ!』
「何で、私の名前を知って……」
『前から魔法少女の素質があるキミに、目を付けていたんだ。
魔法少女は過酷な運命が待っている。そのかわりに、どんな願い事も叶えてあげる』
「願い……」
お菓子?お金?もっと頭が良くなるとか?
そんな、人間が持つなら当たり前の発想が頭を過ぎる。
違う……。
私が、本当に願っているのは。
────さやかは僕が嫌いなのかい?
「もし、もしもだよ?私が魔法少女になったら、絶対に治らない腕を戻すこともできるの?」
『そのくらいの願いは、当然叶えられるね。それだけの素質がキミにはある』
「わかった……私は────」
美樹さやか
まどか達の幼馴染で、幼少より友好を築いていた。
まどか達の仲を羨ましく思っており、いつか自分もああなりたいと思っている普通の女の子。