君のココロを守るため 作:一般魔法少女
翌朝。
まどかが作ってくれた朝食に舌鼓を打ち、家を出る。
昨日は疲れ果ててすぐ眠ってしまったほむちゃんも復活して三人での登校。
「何か新鮮だね〜」
「そうね。私も誰かと一緒に登校することないから新鮮だわ」
「へー、今まで行くことなかったの?」
「私の家、遠いから」
少し、寂しそうに笑うほむちゃん。
両親は今も海外にいるらしく、退院してからは一人暮らしをしているらしい。
広い家に一人でいる寂しさは僕もよくわかる。
「じゃあ、うちに住む?ワルプルギス終わるくらいまで」
思わぬ提案に目を丸くしている。
僕も思わず提案してしまって、少し後悔した。
どうもほむちゃんと接していると、まどかと同じように気軽に誘ってしまっている。
相手は年頃の女の子だと言うのに、一緒に住もうはないだろ。
「なんてね」
照れを隠すように冗談めかす。
そんな僕の内心を読んだみたいに、微笑まれる。
「それも、いいかもしれないわね」
「えっ?」
「おはようございます。みなさん」
「おはよ〜筑紫ちゃん」
いつもの合流。しかし、さやかの顔は伏せられていて、よく見えない。
「どうして、三人で来ていますの?」
「昨日お泊まりしてたんだ〜」
「もう、そこまでの関係になっていたのですね。大地さんも随分と手が早いですわ」
「何もしてないよ。まあ僕の人徳の成せる技かな」
冗談めかして場を和ませるが、やはりさやかの雰囲気は暗い。
「アタシ……先行くわ。ごめん」
ついに小走りで立ち去ってしまった。
「どうしたのでしょう?さやかさん」
「さやかと喧嘩しちゃっててね」
「大地さんがですか?珍しい事もあるものですね」
「ちょっとね……」
たわいも無い雑談を四人で交わしながら、学校に行く。
すると、校門に金髪縦ロールが特徴的な女生徒が立っているのが見えた。
スタイルがとても良く、出ているところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいる、所謂ボンキュッボンと言われる体型。
女子大生と言われたら信じてしまいそうだ。
「ごめんなさい、筑紫さん。先に行ってて貰えるかしら」
「彼女が巴マミよ」
「凄いな」
もの凄い金髪縦ロールだ。
初めて見た。
「確かに凄いおっぱいよ」
「そっちじゃない」
「冗談よ」
やめてくれ。
セクハラは僕に効く。
「どうやったらあんなにおっきくなれるんだろうね」
「運動よ、まどか。運動するべきだわ」
「運動か〜。苦手なんだよね」
男の身としては、女性同士の下の話になると肩身が狭くなる。
聞かないフリしたほうがいいだろうか?
「大地くんは大きいのと、どっちが好き?」
振ってこないで、お願いだから。
巴先輩と視線が合う。
すると、探していた人物を見つけたのか歩いてくる。
「こっち来てない?」
「そうね。来てるわね」
「戦う気かな」
「そこまで理性ない人ではないわ」
ほむちゃんが揉めたらしいので、少し距離を離して向かい合う。
「はじめまして。私は巴マミ」
「はじめまして、先輩。僕は円大地って言います」
頭のてっぺんからつま先までジロジロ見られる。
なんだろう?
「キュウべぇが言うような人には見えないわね」
「へぇ、どんな風に聞いてたんです?」
「あなたはキュウべぇと敵対している者達の一人で、巨人になれる宇宙人だって」
まあ、大体あってるな。
「で、実際に見てどう思いました?」
「そうね。普通の男の子にしか見えないわ……。
人を襲う気はあるの?」
「ご心配なく、今の所その予定はないですよ」
「ならいいわ。キュウべぇがどういうつもりかはわからないけど、お互い不干渉でいましょう?」
教室に着くと、暫くぶりの顔が見えた。
「やあ上条くん、無事退院できたのかい?」
「ああ、何故かわからないが腕が治ってね。お医者様も不思議がっていたよ」
さやかが魔法少女になったタイミングからして、そろそろ登校してくるかと思っていた。
彼を見ていると否応にも魔法少女になってしまったという実感が湧いてくる。
「さやかとは話したの?」
「いや……」
「どうして?」
「お見舞いに来てくれたさやかに酷いことを言ってしまってね、少し気まずいんだ」
「じゃあ、尚更話すべきだと思うよ。今までお見舞いに来てくれた幼馴染を、蔑ろにするべきじゃない」
「まぁ、その内ね」
コイツ、チキったな。
彼女は、さやかは君のために人間を辞めたんだぞ。
怒りが喉元まで込み上げてくるが、飲み込む。
落ち着け、上条くんに怒りを持つのは筋違いだ。
誰かのための願いであっても、願われた側に知る術はない。
ならば、彼は友達と喧嘩して気まずくなっているだけだ。
それだけの話なんだ。
それに、無理に会わせてもあまり良くないだろう。
特にさやかには僕のこととかで、変な心労が溜まっているだろうし。
「そっか。まあ、退院したばっかりだし無理しないようにね」
「ああ、ありがとう」
「そろそろホームルームを始めますよ〜」
放課後、ほむちゃんと昨日逃げた補習を受けていた。
まどかには申し訳ないが、終わるまで図書室で時間を潰してもらっている。
「いいですか、円くん。男女交際について先生はとやかく言うつもりはありませんが、二股はいけません!二股はいけませんよ〜!先生も昔されたことがありましたが、相手の男性をものすごく恨みました。それほどまでに二股とは罪深く、色々な人の人生を狂わせてしまう物です。心に決めた相手がいるのであれば、その人のために一途に思ってあげる。これが、人生においては大事なのです。暁美さんも気づかない内に相手がいる男性を好きになってしまうこともあるかもしれませんが、彼女さんとのキャットファイトに発展してしまう場合もあり、トラブルを招く原因にもなりえます。先生も昔ありました。気持ちはわからなくもないですが、節度ある関係を気づくのも人間関係を築いていく上でとても重要なことで────」
長い。
僕は誰とも付き合ってないし、二股をかけた覚えもない。
先生の人生経験話にゲンナリしつつ、ほむちゃんに目配せする。
逃げる?
もう少しで終わると信じているわ、我慢よ。
絶対終わらないって。
それでも諦めないことが大事よ。私は諦めなかったわ。どんなことだって。
ここで聞きたくなかったよ。そんなセリフ。
溜め息を溢す。
帰れるようになるまで先は長そうだ。
「朝ぶり、かしらね。鹿目まどかさん」
「巴先輩?」
本を読んでいたら思わぬ人から話しかけられ、驚いてしまう。
「私に何か用ですか?」
「ええ、折角知り合った縁だし少し話したいと思ってね」
時計を見る。
昨日の補習時間を考えると、まだまだ終わるには長そうだ。
「大丈夫です。大地くん達、まだ終わらなそうなので」
「そう、それはよかった。…鹿目さん。あなたは叶えたい願い事がある?命を賭してでも叶えたいことが」
これはきっと、魔法少女への勧誘なのだろう。
ほむらちゃんから聞いた話だと、色々な私がマミさんを通じて魔法少女になっていたらしい。
「前は、あったんですけどね…。今はもう、叶っちゃったんです」
「へぇ、それは一体何かしら?聞いてもよろしくて?」
「昔は、どんくさくて取り柄なんて何も無い自分が嫌いだったんです。その頃の私だったら、誰かのために役立てるならそれだけで幸せだったかもしれません」
「でも、そんな私のことを好きだって、一生守ってくれるって、世界で一番大好きな人が約束してくれて、自分のことがちょっとは好きになれたんです」
「だから、もう願い事は叶っちゃったんです。それに、最近は私以上に、私のことを思ってくれる大切な友達もできちゃって、私こんなに幸せでいいのかなって」
「これ以上求めたら、きっと罰当たりになっちゃいますよ」
「…そう、ごめんなさいね。変なことを聞いてしまって。私そろそろ行くわね」
「またお話ししましょう。巴先輩」
「マミでいいわ。それじゃあ」
結局、終わるまで1時間以上先生の恋愛論について語られてしまった。
長時間待たせてしまったことを謝り、それぞれ帰宅する。
変に疲れてしまった……。
明日は休みなので、多少家事をサボっても問題あるまい。
ピンポーン。
来客を告げるベルが鳴り響く。
こんな時間に誰だろう?
「はーい」
玄関のドアを開けると大きなスーツケースを持ったほむちゃんが立っていた。
「……どうしたの?」
「同居しに来たのよ」
「同居、ってまさか本当に住む気だったの?」
「貴方が言ったんじゃない。ウチに来るかって」
「言ったけども……」
「じゃあ責任取りなさい。それにまどかの護衛をするなら近い方が便利だもの」
そう言われてしまうとその通りだ。
前に家の場所を聞いた時、だいぶ距離があったからすぐ駆けつけることは難しいだろう。
「……迷惑、かしら?」
捨てられた子犬みたいな顔で見つめてくる。
その顔はズルい。
そんな顔されたら、ダメだなんて言える訳がないじゃないか。
「……仕方ないなぁ。父さんの部屋は使わせれないし、僕の部屋かリビングになるけど、いいかい?」
「ええ、お願いするわ」
そして、彼女が選んだのは僕の部屋だった。
なんでだよ。
「いい?今から少しの間だけ絶対に部屋を開けてはいけない。もし、開けたら」
「開けたら?」
「私のえっちな姿が見られるわ」
「……着替えたいなら普通に言ってね」
リビングにてほむらが着替えるのを待つ。
何故か僕の部屋で重たい物を置く音が響いているが何をしているのか。
待っている間にスマホを開き、まどかにメッセージを送る。
| ほむちゃん暫くうちに泊まることになったから |
| 何で? |
| 説明して |
| 私は今 |
| 冷静さをなくしています |
| また明日説明するよ |
「待たせたわ」
視線を向けると、そこには薄手のネグリジェを纏ったほむちゃんがいた。
肩は露出しているし、膝丈もうちの学校のスカート並に短い。
うちのスカートはどの角度から見ても、中が見える事はないという謎機能があるが、この服にそんな機能は付いていないだろう。
白い太腿が眩しく光っており、思わず頭を抱えた。
「その服……薄くない?」
「普通よ」
「いや、でもさ、脚のラインがさ」
「普通よ」
「……はい」
淹れたコーヒーを片手に情報の擦り合わせを行う。
「なるほど、変身時間は1分30秒。ティガには複数形態あってマルチ、パワー、スカイと三形態を使いこなすのね」
「それぞれで出来ることも変わってくるから、頭に入れといて」
「ワルプルギスの出現時期と、範囲はおおよそこの辺り」
「後二週間もないのか」
「ただし、これは今までの統計だからイレギュラーの多い今回だと、当てにならないかもしれない。過信はしないで」
「わかった」
話し合いも一通り終わったので、ソファーで隣り合い、適当な映画を見る。
タイトルはよく覚えてないが、肉親が怪物に変わってしまい主人公が殺してしまうパニックホラー物だった。
「ほむちゃんはさ、両親と仲良い?」
「……私が魔法少女になる前は、良かったと思うわ。なってからは、もういつ話したかすら覚えてないの」
「……そっか」
「……大くんのお母さんはどうして亡くなったの?」
「原因は不明だけど僕を出産して間も無く、病院で亡くなったらしいんだ。それで父さんは、母さんの親族に凄く責められたらしい。まあ二人とも18歳での結婚で、反対を押し切っての妊娠だったみたいだからね」
「昔の僕は、酷い子供だったんだよ。父さんだって母さんに会いたいはずなのに、何で僕にはお母さんがいないの?何て聞いてさ」
「それは……普通のことじゃないかしら。子供だったら、誰だってそう思うはずよ」
「でもさ、父さんはいつだってごめんって謝ってくれて、部屋で一人泣いてたんだよ。父さんを泣かすなんて、やっぱり酷い子供だよ」
「一人で、何処にいても泣いていた僕にどうしたの?寂しいなら一緒にいよって言ってくれたのがまどかだったんだ」
「それで、まどかと家族になろうって約束をしたの?」
少し、驚いた。
まどかが、その約束を話しているなんて。
さやかも仁美も知らないのに。
「まどかは、勉強も運動も得意じゃない。取り柄なんて何もないなんて言うけど、彼女の良いところなんて沢山知ってるんだよ」
「そうね。あの子にどれだけ救われたことか。あの子自身は普通の事だって思っているけど、その普通に助けられた人はきっと大勢いるのよ」
「だから、普通の彼女が特別なんだ。この14年、返しきれないほどの感謝があるんだよ」
「……わかるわ。私も同じ気持ち。命を賭けたって構わないほどの」
「僕達ってさ、似てるよね」
テレビでは映画のエンドロールが流れ始めている。
時刻を見ると、既に23時を回っていた。
「そろそろ寝よっか」
ほむちゃんの寝床どうしよっかな。
そう思いつつ、自室のドアを開けると見慣れたベッドに隣り合うもう一つのベッド。
わぁ〜、ベッドが二つある。
「何であるの???」
「私の盾に収納できるギリギリのサイズだったから、持ってきたのよ」
どおりで待っている間に部屋がゴトゴト言ってた訳だ。
「隣り合っているのは?」
「あなた、この一週間で二回も死にかけてるのよ。横にいないと護れないじゃない。それに、いつ美樹さやかに襲われるかわからないでしょう?」
驚いたことに僕の護衛も兼ねて、訪ねてきてくれてたみたいだ。
「ありがとう。僕のことも気にかけてくれて」
「当然よ。だって私達、友達だもの」
ベッドに潜り込むと、疲れていたのかすぐにウトウトとしてしまう。
「……最近ね、毎日楽しいの。まどかが居て、大くんも居る。前までは、明日が来ることが怖かった。でも、今は明日は何しようかなって、楽しみなの」
「君が笑顔でいられるなら、僕は嬉しいよ」
深夜、枕元に気配を感じた。
寝ぼけ眼を擦りながら、視線を向けるとまどかが無言で立っていた。
まどかには合鍵を渡しているので、それで入ってきたのだろう。
「まどか。どうしたの?」
「ほむらちゃんと一緒に寝ているんだ。私には何も言ってくれなかったのに」
ズルい、ズルいと小さく呟く。
怖いよ。
「わかった。一緒に寝よう?もう眠たいよ」
無理矢理ベッドに引き摺り込む。
そのまま頭を撫でながら、瞼を閉じるとすぐに睡魔が襲ってきた。
「明日はずっと一緒にいるから……」
「私だって、ヤキモチ妬くんだよ」
意識が落ちる寸前、そんな声が聞こえた。
朝日と共に女の子が話す声が聞こえ、目が覚める。
「わあ〜可愛いねこの服。でもちょっと丈短すぎない?」
「そ、そんなことないわ。普通よ」
「でも、ちょっと捲ったらパンツ見えちゃうよ。ほら」
「ま、まどか!?」
朝から何をやってるんだあの二人。
どうやら、ほむちゃんのネグリジェの丈が気になっているらしい。
まどか、声音は普通だけどあの感じは怒ってるな。
触らぬ神に祟りなし、と狸寝入りを決め込む。
「ほら見えちゃった。透け透けの黒のレースだなんて、えっちだね」
「えっちじゃないわ!普通よ」
「いや、本当にえっちだな……。そんな格好で男の子の横で寝るなんて、ほむらちゃんて変態さんなんだね。へんた〜い♡」
やけに当たりが強いな。
どうも昨日の夜のことが大分頭にきてるらしい。
「もう、辞めて……!大くんが起きてしまうわ……!」
「とっくに起きてるよ。ね、大地くん」
怒れる神の前に頭を差し出すように、諦めて目を開く。
「……おはよう」
「うん、おはよう。眠ったフリは気持ちよかった?」
「ごめんて」
ほむちゃんに視線を向ける。
朝からベッドの上で揉み合ってたせいで、頬を赤く染め、まどかに乱された服装でいる。
肩紐は外れ、股の間からは黒のショーツが見えていた。
うわえっろ。
「……えっち」
「自己紹介はいいから」
「くっ……!」
そんなことより、怒れるまどか神を鎮めるのが先だ。
恐る恐る視線を合わせると、とてもいい笑顔でまどかが笑っていた。
「二人共、今日デートしよっか」
「いらっしゃい、美樹さん」
「私は巴マミ」
「あなたと同じ、魔法少女よ」