夜蛾正道の忘れ形見   作:なかりょた

1 / 1
思い付きの見切り発車です対戦よろしくお願いします


夜蛾澪です!

呪術高専東京校の五条・夏油・家入の教室では、担任である夜蛾正道が教卓にたち、生徒達にことの経緯を説明していた。

 

「授業に入る前にお前たちに言わなければいけないことがある」

 

夜蛾が話を続ける前に五条がさえぎる

 

「何?禿げてきたとか?」

 

「こらこら、悟。もうちょっとオブラートに包まないと」

 

「それ、五条よりひでぇーよ」

 

それに便乗し、夏油と家入も茶化し始める。すると、夜蛾は咳払いをし、話しを続けた

 

「実は、娘がいてな。呪術界に関わらせる気はなかったんだが呪力量も人並より多いのに加えて術式も発現してまってな。私は仕事で忙しいときもあるからお前らにも世話を頼んでもいいか?たまにあそんでやるぐらいでいいんだが」

 

夜蛾が話し終わると、静寂が場を支配する。しかし、その数秒後どっと教室が沸いた。

 

「え、先生子供いたの!?」

 

「そもそも結婚してたのかよ!?」

 

「早くあわせろ!」

 

生徒たちの反応に夜蛾は予想外だったのか、笑いを漏らす

 

 

「「「・・・なんだよ」」」

 

「いや、何。問題児達がこどもに興味があるなんて思わなかったからな」

 

「悟はあまり乗り気じゃないようだけどね」

 

「・・・ガキは嫌いなんだよ。すぐ泣くし」

 

「それはお前の問題じゃねーか、クズ」

 

「とりあえず、教室にいれるぞ。入ってもいいぞ、澪」

 

夜蛾の声に反応し、扉の奥から少女が入ってくる。

年の頃はまだ幼く、黒く艶やかな髪は肩より少し下まで伸びている。癖のない髪が顔の両脇にさらりと垂れ、その白い肌をいっそう際立たせていた。

整った顔立ちは、どこか現実味に欠けるほど美しい。長い睫毛に縁取られた大きな瞳は黒く、じっと見つめれば吸い込まれてしまいそうだった。小さな鼻と薄い唇も均整が取れており、その表情には年齢に似合わぬ落ち着きがある。

服装は黒を基調としたものだった。控えめなレースのあしらわれたワンピースに、黒い靴下。華美というほどではないが、どこか古めかしく上品なその姿は、まるで古い洋館に飾られている人形をそのまま人の姿にしたかのようだった。

そして、少女は一体の人形を大切そうに胸へ抱いていた。

夜蛾の作る独特なセンスの人形に似ていることから夜蛾にもらったことは明白だった。

少女は教室にいる三人を一度だけ見渡す。

そして、人形を抱いたまま小さく頭を下げた。

 

「……こんにちは」

 

少女が小さく頭を下げる。

夜蛾が教卓から三人を見る。

 

「ほら、自己紹介しろ」

 

「……夜蛾澪です」

 

澪は胸に抱いた人形を抱え直す。

 

「よろしくお願いします」

 

「みじかっ」

 

五条が即座に口を挟んだ。

 

「名前言っただけじゃん。好きなものとかないの?」

 

「……人形」

 

「へえ、じゃあそれ?」

 

五条が澪の抱いている人形を指差す。

 

「うん」

 

「ふーん」

 

五条は興味なさそうに返しながら、澪を見る。

 

その瞬間だった。

 

「……あれ?」

 

五条の目が、わずかに細くなる。

六眼。

目の前にいる少女の呪力が、細部まで鮮明に映し出される。

たしかに子供にしては、呪力量はかなり多い。けれど、五条が引っかかったのはそこではなかった。

 

「……なんだこれ」

 

「悟?」

 

夏油が声をかけるが五条は答えない。澪の身体を流れる呪力の流れの中に、妙なものが混じっている。術式が発動している。

それも――

 

「自分に?」

 

五条が呟く。

 

「何が?」

 

家入が聞く。

 

「いや、こいつ」

 

五条が澪を指差す。

 

「自分に術式かけてる」

 

「え?」

 

夏油が澪を見る。

 

「……澪」

 

夜蛾が少し驚いたように娘を見る。

 

「自分に術式を使っているのか?」

 

「……?」

 

澪は不思議そうに首を傾げた。

 

「わからない」

 

「わからない?」

 

「何かしてるの?」

 

その答えに、五条の顔がぱっと明るくなる。

 

「マジで?」

 

ずい、と澪に近づく。

 

「自分でやってんのに気づいてないの?」

 

「……?」

 

「すげー!」

 

「悟、近いよ」

 

「だって面白いじゃん!」

 

五条は楽しそうに澪の周りをうろつきながら、六眼で術式を観察する。

 

「なにこれ。どうなってんの?」

 

「私に聞かれても……」

 

「じゃあ、いつから?」

 

「……わかりません」

 

「ずっと?」

 

「たぶん?」

 

「へぇー……」

 

五条はしばらく澪を見つめる。

そして、にやりと笑った。

 

「夜蛾先生」

 

「なんだ」

 

「この子、面白い」

 

「……そうか」

 

「俺、こいつの術式もっと見たい」

 

「授業中だぞ」

 

「いいじゃん、ちょっとくらい!」

 

「よくない」

 

「ケチ」

 

五条が不満そうに頬を膨らませる。

その横で、夏油が苦笑する。

 

「まったく……会って数分でそれか」

 

「だってさ、無意識に自分へ術式かけてるんだよ? 気になるじゃん」

 

五条はそう言って、もう一度澪を見る。

澪は相変わらず、人形を抱えたまま不思議そうに五条を見返していた。

その姿は、ただの可愛らしい少女にしか見えない。

けれど六眼だけは、その少女の内側にある異質な術式を見逃さなかった。五条が澪に絡んでいるのを見かねて夏油がお互いに自己紹介をしようと提案した。

 

「えー、もう名前知ってるじゃん」

 

「君はさっきから澪ちゃんに質問しているだけだろう。自分のことは何も話してないじゃないか」

 

「……それもそうか」

 

五条は少し考えたあと、澪の方を向いた。

 

「じゃ、俺からね」

 

そう言うと、五条は胸を張る。

 

「五条悟。最強の呪術師だからよろしく」

 

「自己紹介になってないよ、悟」

 

夏油が呆れたように言う。

 

「なってるだろ。俺のことなんて、それで十分じゃん」

 

「自分で言うことじゃないだろ」

 

「でも事実だし」

 

「はいはい」

 

夏油は諦めたようにため息をつき、澪へ向き直る。

 

「私は夏油傑。こいつと同級生だよ。まあ……見ての通り、少々騒がしい奴だけど、悪い奴じゃない」

 

「誰が騒がしいって?」

 

「君だよ」

 

「じゃあ次、硝子」

 

「私?」

 

いつのまにか、澪の背後に,まわり頭をなでていた家入が面倒そうに顔を上げる。

 

「家入硝子。よろしく」

 

「……以上?」

 

「以上」

 

「そっけな」

 

五条が笑う。

 

「悟よりマシでしょ」

 

「俺は最強って言ったじゃん」

 

「だから何だよ」

 

家入は興味なさそうに返し、またなでることに集中した。

三人のやり取りを、澪は黙って見ていた。

五条悟。

夏油傑。

家入硝子。

父がいつも話していた、高専の生徒たち。

 

「……よろしくお願いします」

澪が小さく頭を下げる。

 

「うん。よろしく、澪ちゃん」

 

夏油が笑う。

 

「よろしくー」

 

五条も軽く手を振る。

 

「……よろしく」

 

頭上から顔をのぞかせて家入が短く答える。

そのとき、五条がふと思い出したように口を開いた。

 

「そういやさ」

 

「ん?」

 

「澪ちゃんって、何歳?」

 

「……3歳です」

 

五条は、改めて澪の姿を上から下まで眺めた。

 

「ちっちゃいなー」

 

「悟、君も三歳の頃はそのくらいだっただろ」

 

「俺はもっとデカかった」

 

「そんなわけないだろ」

 

夏油が呆れたように返す。

 

「本当だって」

 

「はいはい」

 

「なんだよ、その反応」

 

二人のやり取りを、澪は人形を抱えたまま眺めている。

すると五条が、ふと思いついたように澪の目の前までしゃがみ込んだ。

 

「なあ、澪」

 

「……?」

 

「俺のこと知ってたんだよな?」

 

「うん」

 

「何て聞いてた?」

 

「……ごじょうさん」

 

「それだけ?」

 

「あと……」

 

澪は少し考える。

 

「すっごくもんだいじ」

 

「おお」

 

幼女からの予想外の攻撃に五条が動揺する

夏油はその様子を見て苦笑する。それに家入も便乗して五条を煽る。

そんな三人の会話を聞いていた澪は、腕の中の人形へ視線を落とす。

しばらくしてから、ぽつりと呟いた。

 

「……おとうさん」

 

「ん?」

 

夜蛾が振り向く。

 

「この人たちと、遊ぶの?」

 

「ああ」

 

「……いつ?」

 

「澪が一人で寂しいと思った時いつでもだ」

 

「……そう。でも私にはお人形さんたちがいるから大丈夫」

 

澪は人形を抱きしめる力をさらに強めた。

その様子を見ていた五条が、口を開く。

 

「じゃあさ、その人形見せてよ」

 

「……これ?」

 

「うん。それ」

 

五条が人形を指差す。

澪は少しだけ人形を抱きしめる。

 

「……だめ」

 

「なんで?」

 

「おとうさんがくれたから」

 

「見るだけだって」

 

「……だめ」

 

「ケチだなー」

 

「悟、三歳児相手に何を言ってるんだ」

 

夏油が呆れたように言う。

 

「だって気になるじゃん」

 

五条は人形をじっと見る。

 

「俺、夜蛾先生の作る人形って結構好きなんだよね」

 

「……そうなの?」

 

澪が初めて少しだけ興味を示す。

 

「うん。変な顔してるけど」

 

「おい、悟」

 

夜蛾が低い声を出す。

 

「褒めてる褒めてる」

 

「どこがだ」

 

「……おとうさんが作ったから、変じゃないよ」

 

澪がぽつりと言った。

五条は一瞬だけ黙った。

 

「……そっか」

 

そして、にっと笑う。

 

「じゃあ、今度俺にも作ってよ」

 

「悟、お前が作ってもらう側なのか?」

 

「だって欲しいし」

 

「自分で頼めばいいだろ」

 

「夜蛾先生、作って」

 

「断る」

 

「即答!?」

 

教室に笑い声が響く。

澪はそんな三人を見ながら、少しだけ目を細めた。

 

「……ふふ」

 

「笑った!」

 

五条がすぐに反応する。

 

「笑ってない」

 

「いや、今絶対笑っただろ!」

 

「悟、いちいち反応するなよ」

 

「だってさ!」

 

五条は楽しそうに笑う。

さっきまでガキは嫌いと言っていた男とは思えないほど、澪に絡み続けている。

家入がそれを横目に見ながら、ぽつりと言った。

 

「……子供嫌いなんじゃなかったっけ」

 

「嫌いだよ」

 

「じゃあ何でそんなに構ってんの」

 

「こいつは普通のガキじゃないから」

 

五条はそう言って、澪を見る。

 

「だって自分に術式かけてるんだぜ?」

 

「本人は分かってないけどね」

 

夏油が答える。

 

「それが面白いんじゃん」

五条はそう言うと、今度は澪の抱いている人形ではなく、その顔を見る。

 

「なあ、澪」

 

「……なに?」

 

「俺たちと遊ぶの、嫌?」

 

澪は少し考えた。

三歳の少女には、まだ呪術師だとか術式だとか、そんなものの意味はよく分からない。

ただ、父親がこの三人を信頼していることだけは知っていた。

だから――

 

「……嫌じゃない」

 

「よし!」

 

五条が嬉しそうに笑う。

 

「じゃあ決まりな!」

 

「何が決まったんだ」

 

夜蛾が尋ねる。

 

「俺たちが澪の面倒見るんでしょ?」

 

「遊んでやってくれと言っただけだ」

 

「同じじゃん」

 

「全然違う」

 

「じゃあ明日から遊ぼうぜ、澪!」

 

「明日も来るの?」

 

「来るよ」

 

「……学校だから?」

 

「そうそう」

 

「じゃあ、私も来る」

 

「澪ちゃんはどこに住んでるの?」

 

夏油が質問する。

 

「それは――」

 

澪が夜蛾を見る。

夜蛾は小さくため息をついた。

 

「高専の寮に住まわせている」

 

「……じゃあ、ここは私の学校?」

 

「……まあ、そうだな」

 

「そっか」

 

澪は納得したように頷いた。その様子を見ていた五条が、ふっと笑う。

 

「じゃあ俺らと一緒じゃん」

 

「……うん」

 

澪は小さく頷いた。

その日から。夜蛾正道の教室には、ときどき一人の幼い少女が姿を見せるようになった。

黒い服に身を包み、いつも一体の人形を抱えた少女。

そして、その少女の周りには――

最強を自称する問題児と、妙に真面目な問題児と、どこか醒めた問題児。

まだ誰も知らない。

この四人の出会いが、後の呪術界を大きく変えることになるなど。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

『ミレニアム治安維持局局長』、空崎ヒナ(作者:無名のカヤ推し)(原作:ブルーアーカイブ)

 ゲヘナでの日々の業務や重責で限界が来てしまった空崎ヒナ。▼ そんな彼女がある出来事がキッカケで、ミレニアム(超ホワイト)へと転校するお話。▼


総合評価:2416/評価:8.41/連載:32話/更新日時:2026年09月24日(木) 00:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>