囮の実力者になりたくて!Return15 作:ボルメテウスさん
テロリストの襲撃が始まって数時間。
さて、現在、俺は何をしているかと言うと。
「なんで、こうなるんだよぉ!!」
「いや相変わらずだねぇエロゲは」
現在俺は絶賛走っている。
必死に走っている俺の横で、シドは余裕の笑みを浮かべながら、並走している。
そして、何から逃げていると言うと。
「「我らはシャドウガーデン。我らはシャドウガーデン」」
「なんじゃ、ありゃあ!」
頭が狂ったような言葉を呟きながら、追いかけてくるテロリスト共である。
教室の襲撃が終わった後、すぐに避難指示が行われた。
当然、俺達もそれについてきた。
そこまでは問題無かった。
けれど。
「奴だな」
「へっ」
避難中、なぜか俺を睨むようなテロリストが襲い掛かってきた。
さすがにマズイと思ったので、思いっきり窓を突き破って、そのまま離脱した。
だが、奴らは、まるで取り憑かれたように俺を追いかけてきた。
それがここまでの出来事である。
そして。
「それにしても、エロゲって、意外と足が速かったんだねぇ、なんだ?」
「デルタの狩りに付き合わされたからだよ、馬鹿野郎!!」
「へぇ、そうなんだ」
「お前笑っただろう!!」
そう言いながらも、廊下の角を曲がろうとすると、誰かに引っ張られる。
「ぐぇ!?」
思わず声を出しながらも、口を押さえられる。
驚いている間に、追ってきた奴らは、そのまま通り過ぎた。
俺はゆっくりと振り向くと、そこには知らない女子生徒がいた。
「……えっと、とりあえず、助けてくれて、ありがとう。君は?」
俺がそう尋ねると彼女はそのまま頭を下げた。
見た目は、眼鏡美人というべき人物だが、まるで見覚えがない。
「初めまして新たにナンバーズの1人となりましたニューです。エロゲ様」
……は?
「……ちょっと待て、いや待ってくれ」
「はい、何でしょうか?」
目の前の女子生徒が、小首を傾げる。
眼鏡の奥の瞳が、真っ直ぐに俺を見据えていた。
「まず、エロゲ様ってのはやめてくれ。威厳も何もない」
「承知いたしました、エロゲ様」
「だからやめろ」
何この子、聞く気ゼロだろ。
横から、シドの乾いた声が飛んでくる。
「……ところで、君、ナンバーズって何?」
「はい。シャドウガーデンの新規ナンバーズでございます。ナンバーズ第221番まで存在しておりますが、私が特別に『ニュー』と名付けられました」
「いや、それってつまり……」
「はい。エロゲ様の護衛として配属されました」
待て待て待て。
順番におかしいだろ。
「なんで俺に護衛なんて付くんだ?」
「はい。本部より通達がございました。『エロゲ様の誘枴体質は看過できない。常時護衛を配置せよ』とのことです」
「誘枴体質って何だよ」
思わず声が上ずる。
横でシドが、鼻で笑った。
「事実だろ」
「お前は黙ってろ」
「事実ですね」
「お前もか!」
ニューと名乗った女子生徒は、きょとんとした顔で俺を見ている。
まるで当然の事実を口にしただけ、と言わんばかりだ。
「……で、アルファは知ってるのか?」
「もちろんです。アルファ様より直々にご指名を受けました」
「マジかよ」
アルファまで一枚噛んでるとは。
頭を抱えていると、シドが興味なさそうに呟く。
「……護衛ねぇ。ま、いいんじゃない?」
「何がだよ」
「エロゲがまた枴われる度に、こっちが呼び出されるのは迷惑だからさ」
「お前、何その言い方」
「事実だろ」
「だから事実って言うな!」
ニューが、小さく頷く。
「はい。エロゲ様の誘枴回数は、過去半年で12件。内、7件は学園関係者によるものです」
「なんでそんな細かい数字出してくるんだよ!」
「記録は正確に。それがナンバーズの務めです」
眼鏡の奥で、彼女の瞳が淡々と光る。
俺の誘枴履歴なんて、絶対見たくないランキング一位だ。
「……で、何でお前は俺を知ってるんだ?」
「はい。エロゲ様のお写真を拝見しております」
「写真?」
「はい。本部の資料室に、エロゲ様の写真集が保管されております」
「……写真集?」
「はい。日常編、戦闘編、就寝編、入浴編――」
「待て待て待て待て!!」
思わず両手を突き出して、彼女の言葉を遮る。
「入浴編って何だよ! 誰が撮ったんだそんなもの!」
「ベータ様でございます」
「あいつ……!」
いつか殺される。
いや、殺す前に俺が恥ずかしさで死ぬ。
横で、シドがけらけらと笑っている。
「ベータらしいねぇ」
「笑うな! お前も後で説明しろよ、何で黙ってた」
「僕、何も知らないけど」
「知らないって顔じゃないぞ!」
ニューが、冷静に続ける。
「ですが、写真集のおかげで、エロゲ様のお顔は把握できました。ですので、今回のような緊急時にも、迅速にお助けできます」
「いや、助けてもらったのは感謝するけどさ……」
「ありがとうございます、エロゲ様」
「だから様を付けるなってば!」
言い返すと、彼女はきょとんと首を傾げた。
「しかし、エロゲ様はエロゲ様では?」
「名前の問題じゃない! ……いや、名前の問題か?」
混乱してきた。
ていうか、写真集って何だよ。
就寝編って何撮ってんだよ。
シドが、窓の外をちらりと見て、伸びをする。
「……そろそろ行かないと、また追っ手が来るよ」
「あ、そうだな」
俺は頷き、ニューに向き直る。
「とりあえず、今は避難優先だ。後で話はしよう」
「はい。どこへでもお供いたします、エロゲ様」
「……ま、いいか」
文句を言っても直らないなら、諦めるしかない。
俺の人生、どうしてこうも波乱万丈なんだろう。
「さて、エロゲ。どこ行く?」
「安全な場所だ。テロリストが来ないところ」
「具体的には?」
「……決めてない」
シドが、呆れたように肩をすくめる。
「相変わらずだねぇ」
「うるさい」
ニューが、小さく拳を握った。
「エロゲ様をお守りします。ご安心を」
「……頼むわ」
俺はため息をつきながら、廊下の奥へと歩き出した。
背後で、シドの乾いた笑い声が響く。
「はいはい。じゃ、僕は先に行くよ」
「おい、待て!」
「護衛がいるんだろ? 僕の出番はないさ」
「何それ!」
軽く手を振って、シドは角を曲がって消えた。
……相変わらず、掴みどころがない奴だ。
「エロゲ様、参りましょう」
「……あぁ」
ニューに促され、俺は歩き出す。
(誘枴体質、ねぇ……)
自嘲気味に笑いながら、俺はシドの消えた方向を一瞥した。
* * *
――数分後。
「エロゲ様、右です」
「わかってる!」
曲がり角を曲がると、向こうから別のテロリスト集団が走ってくるのが見えた。
「「我らはシャドウガーデン。我らはシャドウガーデン」」
「……またかよ」
「右に避難を」
「言われなくても!」
ニューに背中を押され、俺は横の教室へと飛び込んだ。
中は空っぽだ。
机と椅子だけが、無機質に並んでいる。
「……とりあえず、ここで様子を見よう」
「了解しました」
ニューが、静かに頷く。
その表情に、焦りは一切なかった。
(……こいつ、本当になんとも思ってないのか?)
俺が誘枴されそうになってるのに。
平然と護衛を申し出てくる。
「なぁ、ニュー」
「はい?」
「お前、怖くないのか? テロリストとか、襲撃とか」
「怖いです」
即答だった。
「……あ、そうか」
「ですが、エロゲ様をお守りする方が、もっと重要です」
「……なんでそこまで」
「エロゲ様は、シャドウガーデンの宝ですから」
さらりと言われて、俺は言葉を失った。
宝、って。
俺が?
戦えない、誘枴されやすい、ただの魔力タンクが?
「……はぁ」
ため息が出る。
(勘弁してくれよ)
そんな風に言われる筋合いはない。
ただの後始末係だ、俺は。
でも。
「……ありがとな」
「はい」
小さく礼を言うと、ニューは静かに微笑んだ。
廊下から、遠ざかる足音が聞こえる。
俺たちは、しばらくその場で息を潛めた。
バレンタインで会うヒロインは
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イータ
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ニュー
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ウィクトーリア