囮の実力者になりたくて!Return15 作:ボルメテウスさん
「……で、私たちはこっちへ行くのね」
アウロラが白い通路の奥へ視線を向け、確認するように呟いた。
デルタが疾風のように消えた方向とは逆。俺としては、あの狼の鼻に任せた方が脱出の確率は高いと思うのだが、残念ながら俺の足で追いつける速度ではない。大人しく出口のありそうな方向へ歩を進めるしかなかった。
「文句があるわけじゃないけど、連れて行かれるたびに置いていかれるのは、なんだかんだで慣れないわね」
「……俺の方が慣れてるから大丈夫だ」
「それが一番問題なんですけど」
アウロラが短く息を吐く。その声には呆れよりも、どこか柔らかな響きが混じっていた。
白い床を踏むたび、微かな音が反響する。壁も天井もないらしい。あるのは目の前に続く白い道と、隣を歩く赤い瞳だけだ。
それにしても、とアウロラが歩調を緩めた。俺を見上げる瞳が、値踏みするように細められる。
「一つ聞いてもいい?」
「さっきも結構聞かれてる気がするけど」
「いいから。あなた、その魔力、どうやって手に入れたの?」
予想していた質問ではあった。少しだけ歩幅が詰まる。アウロラの視線が正面から俺の横顔へと移った。
正直に言えば、答えられない質問だった。シドにも聞かれたことがある。何度も。そのたびに適当に誤魔化してきた話題だ。
「……生まれつき、としか」
「生まれつき」
アウロラがぴたりと足を止めた。赤い瞳が、白い空間の中で燃えるように俺を見つめている。
「生まれつき、ってそれだけ?」
「それだけって言われても」
俺は肩をすくめるしかなかった。事実、それ以上の説明ができない。なぜ自分の体にこれほどの魔力が詰まっているのか、なぜ他人に分け与えられるのか、なぜ自分自身ではそれを戦闘に使えないのか。
全部わからない。
「……変ね」
アウロラが小さく笑った。嘲るような笑いではなく、どこか不思議なものを見つけた時のような笑みだった。
「私がこれまで会った魔人や英雄と違う。鍛えた形でも、誰かから与えられた形でもない。ただ在るだけ。それが一番不思議だわ」
彼女は再び歩き出した。白い通路の奥へ向かって。
「あなた、ちょっと面白いかもしれないわね」
背中越しのその声が、俺の背筋を奇妙な熱で撫でていくのを感じながら、俺は無言でその後に続いた。
「ねぇ、あなた」
歩調を緩めず、アウロラが横目で俺を見た。
「ひとつ、試してみてもいいかしら」
白い通路に二人分の足音だけが響く。何を試すのか、と問い返す前に、彼女の赤い瞳が真っ直ぐに俺を射抜いた。
「キス」
「は?」
思考が一度停止した。キス。口と口を合わせる行為。それが聖域からの脱出と何の関係があるのか、脳内で疑問符が渦を巻く。
「さっき、わんちゃんにした時みたいに。あなたの魔力がどう反応するか、確かめたいの」
至極もっともらしい理由を口にしながらも、アウロラの声には好奇心と少しの悪戯心が混じっている。長い睫毛が、ゆっくりと瞬いた。
「いや、ちょっと待て。それは必要なのか?」
「必要だと思ってるわ」
間髪入れずに返された。嘘をついているようには見えない。が、その瞳の奥に揺れる色は、純粋な探究心だけではない気がした。
俺は一歩、後退る。だが白い空間には逃げ場などなく、壁
バレンタインで会うヒロインは
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