バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
「――来い、サクヤッ!!」
俺の叫びに応じて、左手の白銀の指輪から純白の霊気が爆発的に噴き出した。
戦国を生き抜いた女武者――サクヤの霊体が、眩い光の粒子となって俺の左腕へと収束していく。
高度な『甲縛式』なんて未来の技術はまだ知らない。五行の理による調律も、この時の俺には縁遠いものだ。
だが、俺には生まれ持った【1万】というデタラメな巫力がある。
バカ高い巫力の奔流を、ただ力任せにサクヤの霊体へと流し込み、指輪の媒体へと縛り付ける。
キィィィィン!!! と大気を切り裂くような高音と共に、俺の左手に実体化したのは――眩い純白の輝きを放つ、巨大な『弓』だった。
それは光の塊のような雑なものではなかった。
まるで伝統的な弓道選手が手にするような、洗練された美しい和弓の形。しかし、その白銀のフレームからは、どこか触れる者を拒むような圧倒的な神聖さが漂っている。
術理もクソもない、ただの巫力のゴリ押しによるオーバーソウル。
しかし、現段階の麻倉葉はおろか、並のシャーマンなら一生をかけても到達できない圧倒的な「質量」が、そこには確かに顕現していた。
「な……んて強引で、美しいオーバーソウルだ……!」
シルバの顔が、驚愕と戦慄で歪む。
先ほどまで生活苦の皮肉で精神ダメージを負っていた神官の目は、完全に目の前の「バグ(俺)」を本物の脅威として捉えていた。
俺は左腕でがっしりと白銀の弓を保持し、右手を弦へと かける。
ギチ、ギチギチと、俺が力任せに弦を引き絞ると同時に――。
引き絞られた弦の間に、俺の1万の巫力が急激に消費され、一本の巨大な純白の光の矢が形成されていく。周囲の空気が霊圧だけでバチバチと放電し、河川敷の草木が激しく逆立った。
ただ真っ直ぐに、圧倒的なパワーで全てを押し潰す、俺の最初期の全力――。
「喰らいやがれ――『神鳴の一矢(かむなりのひとや)』ッ!!」
パァン!!!
放たれた純白の閃光は、文字通りの暴風となって河川敷を駆け抜けた。
「防げ、五大精霊(トテムポールズ)――ッ!!」
シルバが即座に叫び、シルバーウイングをはじめとする五大精霊を前方に展開、強固な防御壁を形成する。パッチ族の伝統に裏打ちされた、完璧な術理による防御体制。
だが――。
ズドォォォォォンッ!!!
「ぐ、あああああーーーッ!?」
激突の瞬間、シルバの口から悲鳴が漏れた。
俺の放った『神鳴の一矢』には、小細工も誘導の術も一切ない。ただ、1万という暴力的な巫力の質量が、弾丸のように真っ直ぐ突っ込んだだけだ。
しかし、その「ただの質量」が、パッチ族の洗練された術理を正面からへし折った。
シルバの防御壁がミシミシと音を立てて歪み、五大精霊たちがその重圧にカタカタと震えだす。
「重……すぎる……ッ! 技術は、技術は間違いなく素人のそれなのに……ただの質量だけで、私の精霊たちが押し潰されるというのか……っ!?」
押し寄せる純白の暴風に耐えかね、シルバの身体がズズズと地面を削りながら後方へと押し込まれていく。
正式な技の術理(陰陽術)を持たない俺が放った無骨な一撃は、パッチ族の神官のプライドごと、その防御を強引に粉砕した。
凄まじい衝撃波が河川敷を吹き飛ばし、巻き上がった土煙が静かに夕日に染かっていく。
「……ハァ, ハァ……」
土煙が晴れた中心で、シルバは片膝をつき、激しく肩で息をしていた。
衣服はボロボロ、羽根飾りのついた帽子はどこかへ吹き飛んでいる。手当てのない連勤と自腹出張の疲労に加えて、この肉体的ダメージ。まさに満身創痍だった。
俺は左腕のオーバーソウルを解き、ふぅと息を吐き出す。
「……どうだ、試験官サマ。一撃どころか、結構いいのを入れたつもりだけど」
シルバはしばらく呆然と俺を見つめていたが、やがて諦めたように深い溜息をついた。
商売道具であるオラクルベルを懐から取り出すと、泥だらけの手で俺へと放り投げてきた。
「……文句なしの、合格だ。御門蓮夜。君のようなデタラメな存在、パッチの歴史でも聞いたことがない。術理を学べば、一体どこまで化けるのか……」
キャッチしたオラクルベルの冷たい感触を確かめ、俺はニヤリと口元を歪める。
「ありがとよ。おかげでブラック企業に入社する資格(これ)が手に入ったわけだ」
「だから、パッチ族はブラック企業では……っ!」
泣き言を漏らすシルバをその場に残し、俺は今度こそ、満足感と共に河川敷を後にした。
(自力での修行は頭打ちだった。だけど、これで本戦――パッチ族の里へ行く切符(チケット)は手に入れた。待ってろよ、ハオ。お前の持つ千年の英知、五行の理のすべてを、この累積バグの魂で味見してやるからな)
手に入れたオラクルベルをポケットに放り込み、俺は事なかれ主義の傍観者から、世界の不条理へと挑む『挑戦者』としての第一歩を踏み出したのだった。