バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
ピピピピ、ピピピピ。
学校からの帰り道、ポケットの奥で電子音が鳴り響いた。
取り出した漆黒の端末――オラクルベルの画面には、幾何学的な光の文字で、最初の『予選』の対戦相手と指定座標が映し出されていた。
シャーマンファイト本戦に進むためには、予選で3勝を挙げる必要がある。
葉たちがホロホロやファウストといった実力者たちと死闘を繰り広げる裏で、俺にもようやくその順番が回ってきたらしい。
「ふん、思ったより早かったな。サクヤ、場所はふんばりヶ丘の北側、うらぶれた資材置き場だそうだ」
《主、お気をつけて。通知が来たということは、向こうもこちらの位置を把握しているはず。傍観者を気取る主を、引きずり出そうとする不届き者かもしれません》
(ハ、上等だ。さっさと3勝を毟り取って、パッチ族の里への切符を確定させてやるよ)
指定された資材置き場は、夕暮れの影が長く伸びる、人気のない寂れた場所だった。
錆びついたコンテナや鉄パイプが乱雑に積まれた空間へ足を踏み入れると、奥のコンテナの上から、品性のない笑い声が降ってきた。
「ケケッ! 出てきたな、御門蓮夜! しがない一般家庭の生まれのくせにオラクルベルを授かったっていうからどんな奴かと思えば、ただのガキじゃねえか!」
コンクリートの地面に飛び降りてきたのは、妙に派手なライダースジャケットを着た男だった。
その背後には、獣の頭骨を持った大蜘蛛の霊体が、禍々しいオーラを放ちながら這い出てくる。
「俺はシャーマンファイトで勝ち上がり、世界の王(キング)になる男だ! お前のオラクルベルと巫力、ここで俺の『大蜘蛛(タランチュラ)』の餌にしてやるよ!」
男が叫ぶと同時に、大蜘蛛の霊体が凄まじい速度で糸を吐き散らしながら、俺に向かって突進してきた。
(……やれやれ。原作にも出てこないような有象無象(モブ)か。キングを目指すのは勝手だが、事なかれ主義の俺を巻き込んだのがお前の運命の尽きだ)
俺は左手を前に突き出し、白銀の指輪を強く握りしめる。
「来い、サクヤ。一瞬で終わらせるぞ」
《御意にございます、我が主!》
キィィィィン!!! と空気を引き裂く霊的暴風。
俺の左手に、どこか神聖さを感じさせる洗練された白銀の和弓がオーバーソウルとして実体化する。
それを見た対戦相手の男が、一瞬だけ動きを止めて目を見開いた。
「な、なんだそのオーバーソウルは……!? いや、それ以上に、なんだこの重苦しい霊圧は……っ!?」
「技術も術理も知らねえよ。ただな――」
俺は右手を弦にかけ、力任せに引き絞る。
ギチギチと音を立てて弦が引かれると同時に、俺の魂に刻まれた【1万】のバグ巫力が一気に消費され、眩い純白の巨大な矢が形成されていった。ただのパワーの全パイル。しかし、それだけで資材置き場全体のコンクリートがピキピキと悲鳴を上げて砕け始める。
「お前じゃ、この『質量』には耐えられねえってことだ」
狙いを大蜘蛛の胸のコア、そしてその裏にいる男へと定め――。
「喰らいやがれ――『神鳴の一矢(かむなりのひとや)』ッ!!」
パァン!!!
鼓膜を打つ凄まじい衝撃音と共に放たれた純白の閃光は、周囲の鉄パイプやコンテナを文字通りの暴風で吹き飛ばしながら真っ直ぐに突き進んだ。
「防げ、大蜘蛛ッ! 絡め取れぇーーーっ!!」
男が絶叫し、大蜘蛛の霊体が無数の硬化させた糸の壁を幾重にも展開する。
だが、そんな小細工は、1万の出力をそのまま弾丸にした俺の『神鳴の一矢』の前には紙切れ同然だった。
ズドォォォォォンッ!!!
「ぎ、あああああああーーーッ!?」
激突の瞬間、大蜘蛛の防壁は微塵も機能することなく粉々に爆散した。
糸の壁ごと霊体を一撃で完全に消滅させられた男は、光の矢が巻き起こした超質量の衝撃波をもろに食らい、後ろの錆びたコンテナへと大砲の弾のように吹き飛んで激突した。
ドシャァァン!! と大きな音を立ててコンテナが歪み、男は白目を剥いてその場に崩れ落ちる。一撃での完全なノックアウト(戦闘不能)だった。
ピピピッ。
静まり返った資材置き場に、俺のオラクルベルが非情なシステム音を鳴らす。
画面には、燦然と『1勝』の文字が刻まれていた。
「……ハ、呆気ないな。やっぱりただの1万のゴリ押しだけでも、予選レベルの有象無象なら問題にすらならねえか」
俺は左腕のオーバーソウルを解き、指輪を軽くさすりながら、倒れた男には目もくれずに踵を返した。
《見事な一射にございました、主。これで本戦へのパスポートへ、また一歩近づきましたな》
(ああ。残り2勝。さっさと終わらせて、ハオのいるパッチ族の里へ乗り込むぞ)
事なかれ主義の傍観者は、自分の圧倒的な『質量』の優位性を確信しながら、夕暮れの街へと静かに消えていくのだった。