バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチ族が本戦出場者のために用意した、あまりにもデタラメな超大型飛行機――『パッチジャンボ』。
その広大な機内の片隅で、俺は完全に頭を抱えていた。
(……なんでだよ。単独行動でトラブルを避けるためにわざわざ一人で手続きしたのに、なんでこの広い機内で真っ先に見つかるんだよ)
「あーーーっ!! やっぱり蓮夜じゃん!!」
機内の通路を指差しながら、大声を上げたのはホロホロだった。
その声に反応して、ヘッドホンを首にかけた麻倉葉、腕を組んだ道蓮、さらには木刀の竜までがゾロゾロと俺の座席へと集まってくる。
「よお、蓮夜。お前も同じ便だったんだな! 席、俺たちの近くに移動してこいよ。アメリカに着くまでのんびり話そうぜ」
「断る。俺は静かに空の旅(フライト)を楽しみたいんだ。事なかれ主義の傍観者にこれ以上構うな」
「まーまー、そうツンツンすんなって! ほら、竜の奴なんか蓮夜に会えて涙ぐんでるぞ」
「おお、蓮夜の旦那……! あのファウストのクソ骨野郎からまん太を救った漢気に、おいらのリーゼントは未だに震えっぱなしだぜ……!」
「だからあれは、元大人としてのただの倫理観だっつーの……!」
賑やかに(傍観者としては非常に迷惑に)絡んでくる葉たち。
だが、そんな騒がしい機内の空気が――唐突に、一瞬で凍りついた。
ザワついていた有象無象のシャーマンたちが、怯えたように一斉に口を閉ざす。
通路の奥からゆっくりと歩いてくる、長い髪の少年。
――ハオ。
千年の孤独を抱える、この世界の『最悪の絶望』が、そこにいた。
あからさまに殺気を放つ道蓮やホロホロを、ハオは一瞥もせず、まるで有象無象のゴミでも見るかのように退屈そうな目を向けている。
だが、そのハオが――俺の座席の真横で、ピタリと足を止めた。
(……ッ!?)
その瞬間、俺の魂の奥底に宿る【1万】のバグ巫力が、未だかつてない恐怖で激しく悲鳴を上げた。
身体が、動かない。
指先一つ動かすことすら許されないような、天と地ほどの圧倒的な力の差。1万の出力を全パイルした『神鳴の一矢』など、この怪物の前ではただの火遊びにすらならないことを、俺の生存本能が冷徹に理解させられる。
ハオは退屈そうに俺を見つめていたが、その切れ長の瞳が、不意に怪しげな光を帯びて細められた。
「へえ……。君、本当に面白い魂(バグ)をしているね」
ハオの言葉に、機内の空気がさらに張り詰める。
ハオはゆっくりと俺の顔の前にその美麗な顔を近づけてくると、声のトーンを一段落として呟いた。
「僕の『霊視』はね、どんな人間の心も、魂の記憶も、すべて筒抜けに読み取ることができるんだ。だけど……不思議だな。君の魂の最深部にある『それ』だけは、モザイクでもかかっているみたいに、僕の目には何も見えないんだよ」
(……しまっ――霊視で読めてねえ……っ!?)
心臓が跳ね上がる。
ハオの霊視ですらハッキングできない、死ぬたびに世界を渡る俺の魂の【累積バグ】。
ハオにとって、人の心が読めない存在など「麻倉葉」以外にいるはずがなかった。だからこそ、ハオの知的好奇心は、今この瞬間に完全に俺へと向けられてしまったのだ。
「一体、何を隠しているのかな? 君の魂の奥には、僕の知らない何があるんだろう?」
ハオの瞳に宿る、底なしの好奇と冷徹な観察。
見かねたハオは、俺の魂の正体を暴こうと、ネット怪談の妖怪『八尺様』よろしく、ぬうっと至近距離までその大きな影を落とし、俺の顔を文字通りゼロ距離で覗き込んできた。
(ひ、――ッ……!!)
逃げ場のない、絶対的な捕食者を前にした恐怖。
あまりの恐ろしさに、俺は座席の背もたれに身体を限界まで押し付け、ただカタカタと震えることしかできなかった。事なかれ主義の傍観者などという生ぬるいプライドは、この神の領域のプレッシャーの前に完全に粉砕される。
《し、主……っ! お気を確かに……っ!!》
脳内でサクヤが必死に叫んでいるが、彼女の霊体すらハオの霊圧に圧殺され、指輪の中でガタガタと震えるのが精一杯だった。
「……ふん。まあいいさ、今はまだ怖がらせるつもりはないんだ」
ハオは俺の怯えきった表情を見て満足したのか、フッと楽しげに笑うと、ようやくその顔を離した。
「本戦のパッチ族の里で、ゆっくりとその魂の『正体』を見せてよ。せいぜい僕を退屈させないでくれ、面白いおもちゃ(・・・・・・)」
ハオは最後に、底の知れない笑みを浮かべてそう言い残すと、そのまま機内の奥へと優雅に去っていった。
「ハァッ……! ガハッ, ハァ, ハァ……!」
ハオが去った瞬間、重力が戻ったかのように、俺は座席に崩れ落ちて激しく酸素を求めて喘いだ。全身のシャツが、冷や汗でビショビショに濡れている。
「……蓮夜、大丈夫か!?」
葉が本気で心配そうな顔で駆け寄ってくるが、今の俺にはそれに応える余裕すらなかった。
(圧倒的すぎる……! 1万の巫力なんて、ただのゴミだ。……だけど、ハオの霊視が俺のバグを読めなかった。あいつが俺に『興味深い存在』として目をつけたのは、ここから全てが狂い出す盛大なフラグってことか……!)
ハオに本気で怯え、自らの無力さに戦慄しながらも、俺はパッチ族の里で何としてでもあの怪物の英知を強奪し、この見えない壁を越えてやる、と心の底で固く、固く誓うのだった。