バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチ族が本戦出場者のために用意した、あまりにもデタラメな超大型飛行機――『パッチジャンボ』。
その広大な機内に非情なアナウンスが響き渡った。
『――本戦出場者の諸君。これよりシャーマンファイト本戦、第一の試練を開始する。パッチ族の里を見つけ、時間内に辿り着いてみせよ』
「……よし、予定通りだな」
アナウンスを聞いた瞬間、俺はシートベルトを外し、足元に置いていた大きな旅行カバンを素早く開けた。
そして、その中から「ある特注の装備」を取り出し、手慣れた手つきで背中へと背負い始める。
《主、それは一体……? 随分と頑丈なリュックサックのように見えますが》
左手の指輪から、サクヤが不思議そうに首を傾げて念話を送ってくる。
(ハハ、これか? サクヤ。これは現代日本の高度な情報社会が産んだ文明の利器――『ネット通販』で事前に購入しておいた、プロ仕様のパラシュート一式だ)
《ぱらしゅーと……? それは一体……》
サクヤが答えを聞く前に、機体に凄まじい衝撃が走った。
――いや、衝撃ではない。
フッと、それまで俺たちの身体を包んでいた座席も、壁も、床も、パッチジャンボのすべてが突如として眩い光の粒子となって消え失せたのだ。
「うわあああああああーーーっ!?」
「飛行機が消えたーーーっ!?」
そう、このデタラメな超大型飛行機は、パッチ族が作り出した巨大なオーバーソウル。アメリカ上空まで出場者たちを送り届け、パッチ族の巫力が尽きた(あるいは役目を終えた)ことで、システムとして完全に消滅したのだ。
機内にいた有象無象のシャーマンたちが、悲鳴を上げながら次々とアメリカの上空へと真っ逆さまに投げ出されていく。
隣の席のほうにいた麻倉葉やホロホロ、道蓮たちも「アイキャンフライ!」とばかりに、パラシュートも何もない生身のまま、はるか高度数千メートルから虚空へと強制的に放り出されていた。
普通のシャーマンならパニックになる絶望的な状況。だが、俺は前世の原作知識で、この『飛行機消滅スカイダイビングイベント』が起きることを最初から知っていたのだ。
「悪いなみんな! 事なかれ主義の傍観者は、トラブルの事前対策(ネットショッピング)を怠らないタチなんだよ!」
俺は虚空へと投げされ、強風に煽られながらも、カチリと胸のバックルをロックすると、カバンをしっかりと抱えてタイミングを計った。
確固たる意志で、右手のリップコードを思い切り引っ張る。
バサササササササッッッ!!!
心地よい衝撃と共に、俺の頭上に巨大な長方形のキャノピー(傘)が鮮やかに広がった。
一気に落下速度が相殺され、俺の身体はまるで鳥のように、ゆったりとアメリカの空を滑空し始める。
「ふぅ……最高に快適だな。やっぱりネットのレビューで星5だっただけのことはあるわ」
《な、なるほど……! 道具一つでこれほど優雅に空を舞うとは、現代の技術、恐るべきものにございますな、主!》
その時、はるか下方から、風の音に混じってデカすぎる絶叫が聞こえてきた。
「って、おい見ろよ葉!! 上、上!! なんか一人だけめちゃくちゃ優雅に浮いてる奴がいるぞ!?」
「ええっ!? ……げっ、蓮夜じゃん! あいつ何やってんだーーーっ!?」
スノーボードのオーバーソウルで必死に足場を作ろうとしていたホロホロが上空を見上げて目玉を飛び出させ、葉が顔を引きつらせて叫んでいる。
さらにその近くでは、道蓮が「貴様……! シャーマンの神聖な試練に、そんな不届きな道具を持ち込むなどっ……ずるいぞ!!」と、風に流されながら理不尽な怒りの怒号を響かせていた。
そんな中学生たちの阿鼻叫喚を上空から見下ろし、俺は風に負けないように声を張り上げ、不敵な笑みを浮かべて言い放ってやった。
「ハハハ! ずるいと言われても困るな! お前ら、世の中には『微に入り細を穿つ』って言葉があるのを知らないか!? こういうトラブルをあらかじめ細部まで予測して完璧に対策しておくのが、大人の(・・)知恵ってやつなんだよ! お前らは泥臭く着陸を頑張ってくれ!」
「な、何が大人だ貴様ァーーーッ! 減らず口を叩きおってーーーっ!!」
「いや、あいつ普通にネット通販で用意してただろこれ! マジでなんなんだよアイツーーーッ!!」
ますます理不尽そうに激怒する蓮と、調子を完全に狂わされて叫ぶ葉たちの声を頭上に聞きながら、俺は優雅に空中散歩を楽しむ。
すると――ふと、さらに上の高度から、楽しげなクスクスという笑い声が聞こえたような気がした。
それは、スピリット・オブ・ファイアを密かに展開し、悠然と降下していたハオだった。
ハオは、霊視すら通じないくせに文明の利器で一人だけ安全圏を確保し、中学生相手に大人の理屈をのたまっている俺の姿を見下ろし、実におかしそうに目を細めていた。
「ふん……あはは! 面白いねえ、本当に準備がいい。まさかそんな方法で僕たちのシステムをすり抜けてみせるなんて。やっぱり君は、僕を退屈させない特別な『おもちゃ』だ」
その不気味な視線に気づき、俺の背中にチリリと冷たい緊張感が走る。
恐怖はある。ハオの圧倒的な巫力の前には、こんなパラシュートなど一瞬で焼き尽くされるだろう。だからこそ、このアメリカの大地で、あの怪物の英知をなんとしてでもハッキングしなければならない。
「待ってろよ、ハオ。次に出会う時は、お前のその余裕の顔を少しは崩してやるからな」
アメリカの広大な青空の下、一人だけリゾート気分でパラシュートの紐を操りながら、俺は不敵に笑みを作った。
事なかれ主義の男による、パッチ族の里を目指す本当の隠密行動が、ここから静かに開幕するのだった。