バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パラシュートのおかげで、何のトラブルもなくアメリカの乾いた大地に無事ソフトランディングを果たした俺。
当然、はるか遠くで土煙を上げながら強行着陸していた葉たちとは合流せず、即座に逆方向へと歩き出して完全に単独行動を開始していた。
目的はただ一つ。あの『最悪の絶望』――未来王ハオ(覚醒前)を自ら探し出し、その千年の英知を強奪するためのコンタクトを取ることだ。
……だったのだが。
「……広すぎるだろ、アメリカ」
荒涼とした一本道が続くルート66の片隅で、俺は盛大なため息を吐き出した。
原作知識があるとはいえ、パッチ族の里への道中でハオがいつ、どこに現れるかという正確なピンポイントの座標までは網羅していない。1万の巫力センサーを広げて気配を探ってみるものの、広大すぎるアメリカの大地を前にしては、砂漠で落とした針を探すようなものだった。
《主、そう気落ちなさるな。あのハオという少年、ただ者ではありませぬ。我らが血眼になって探さずとも、向こうがこちらを『面白いおもちゃ』と認識している以上、いずれ向こうから現れるやもしれませぬぞ》
左手の指輪から現れたサクヤが、慰めるように俺の肩に手を置く。
「まあ、そうだな。焦っても仕方ねえ。……それに、探すのを一旦ストップしてでも、今の俺には絶対に優先しなきゃならない至上命題がある」
グゥゥゥゥ、と俺の腹の虫が盛大な音を立てて鳴り響いた。
そう、長旅とパラシュート降下を経て、俺の胃袋は完全に限界を迎えていた。前世でお金がなくて美味いものを満足に食べられなかったという未練。世界を渡ることで都度目的を変えていく事なかれ主義の俺にとって、この胃袋の欲求を満たすことこそが、何よりも優先されるべき正義だった。
「サクヤ、あそこのダイナー(アメリカの食堂)に入るぞ。本場の実力ってやつを味見してやる」
俺が目をつけたのは、荒野のオアシスのように佇む、古びたネオンサインが光るアメリカンダイナーだった。
カランコロンとドアベルを鳴らして中に入ると、肉が焼ける暴力的なまでに美味そうな香りと油の匂いが鼻腔を貫く。
席につき、メニューを眺めて適当に注文を済ませる。待つこと数分、目の前に運ばれてきた料理を見て、俺のテンポは完全に狂い、そして歓喜に震えた。
「……おいおい、マジかよ。最高じゃねえか」
テーブルにドカンと置かれたのは、皿からはみ出さんばかりの『巨大なトリプルチーズバーガー』。
日本で食べる上品なハンバーガーとは何もかもが違う。炭火で香ばしく焼かれた極厚のパティが3枚も重なり、そこから濁流のように溶け出したチェダーチーズと肉汁が、バンズを伝って滴り落ちている。
俺は両手でその凶悪な質量を掴み、大口を開けて思い切り齧りついた。
ガブッ!!!
「っ――う、美味すぎる……ッ!!」
口に入れた瞬間、圧倒的な肉の旨味とアブラの暴力が脳髄を直接揺さぶった。
噛み締めるたびにスパイスの効いた赤身肉の肉汁が溢れ出し、濃厚なチーズのコクと絡み合って、喉を獰猛に駆け抜けていく。日本のファーストフードでは絶対に味わえない、まさに「肉を喰らっている」という圧倒的な幸福感。
さらに追加で頼んだ、顔の大きさほどもある極厚の『Tボーンステーキ』にナイフを入れる。
表面はガリッと強火で焼き上げられているのに、中は完璧なロゼ色のミディアムレア。一口サイズに切って口に放り込めば、肉の繊維が解けるたびに、アメリカの大地を凝縮したような濃厚な赤身の味が口いっぱいに広がった。
「ハァ……最高だ。前世じゃこんな贅沢、夢のまた夢だった。これだよ、これのために俺は転生してきたんだ……!」
《ふふ、主、本当にお幸せそうな顔をなさる。某も霊体でなければ、ぜひ一口頂いてみたいものにございますな》
サクヤがテーブルの横で目を輝かせながら、俺の豪快な食べっぷりを楽しそうに見つめている。
コーラで口の中の油を豪快に流し込み、ぷはぁと息を吐き出す。
ハオの圧倒的な恐怖、伸び悩む巫力、パッチ族の里へのサバイバル。問題は何も解決していない。だけど、この本場の美食を五感で堪能したことで、俺の魂のエネルギーは完全に満タンにチャージされていた。
「美味いものを食ったら、またやる気が出てきた。……さて、サクヤ。腹ごしらえは完璧だ。ハオが向こうから現れるのを待ちつつ、俺たちは俺たちのペースで、この本戦のルートをのんびり進むとしようぜ」
《御意にございます、我が主》
事なかれ主義の傍観者は、アメリカの本場の質量(グルメ)に胃袋を完璧に掴まれながら、夕日に染まる荒野の道を、再び気楽な足取りで歩き始めるのだった。