バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
「あぁーっ、美味かった! 異世界転生最高だな!」
アメリカンダイナーの席で、俺はすっかり空になったステーキの皿と、山積みのハンバーガーの紙包みを前に、極上の満足感に浸りながらコーラを啜っていた。
前世の未練である「美食の探求」を本場で完璧に果たし、俺の魂のエネルギーはこれ以上ないほど満タンだ。
(さて、ハオは見つからなかったが、腹も膨れたし次の街へ移動するか……)
そう思って伝票を手に立ち上がろうとした、その瞬間だった。
カランコロンと、ダイナーのドアベルがけたたましく鳴り響き、複数の騒がしい足音が店内に流れ込んでくる。
「あー、腹減ったなぁ。竜の旦那、アメリカの飯って何が美味いんだ?」
「そりゃおめえ、本場の肉料理に決まってんだろ、ホロホロ! おお、あそこの席のアンちゃんが食ってる肉なんか最高に美味そうじゃねえか……って、ええっ!?」
聞き覚えがありすぎる声に俺の全身の筋肉が硬直する。
恐る恐る視線を向けると、そこには案の定、泥だらけのボロボロの姿をした麻倉葉、ホロホロ、道蓮、そして木刀の竜の一行が立ち尽くしていた。
「あーーーっ!! 蓮夜ァーーーッ!?」
「げぇっ!? お前、なんでこんなところにいるんだよ! 先にパラシュートで降りたはずだろ!?」
ホロホロと蓮が目玉を飛び出させて絶叫し、葉が「よお、蓮夜。やっぱり運命ってやつはあるんだな」とへらへら笑いながら、当然のように俺のテーブルの向かい側の席へと滑り込んできた。
(ふざけんなよ運命の強制力……! 俺の完璧な単独行動計画(ステルスフライト)を1話で台無しにしやがって……っ!)
「おい麻倉、座るな。俺は今ちょうど会計を済ませて出る――」
「まーまー、お前が美味い店を引いてくれたおかげで助かったよ。店員さーん、この包帯ダルマの分も合わせて、一番デカいステーキ人数分ね!」
「人の話を聞けッ!!」
結局、事なかれ主義の傍観者の抵抗も虚しく、俺は「ふんばりヶ丘の知り合い」という謎の絆で彼らの同行旅(ロードムービー)に強引に巻き込まれることになってしまった。アメリカの荒野を、竜の借りたオンボロのオープンカーで走る羽目になるとは、つくづく事なかれ主義の天敵である。
――だが、この「運命の同行」は、ただのドタバタ劇では終わらなかった。
葉たちのルート66沿いの旅に付き合う形で進んでいたある日。
俺たちは、アメリカの荒野にひっそりと佇む、不気味な気配を纏った古い集落へと足を踏み入れることになる。
そこは、原作知識が俺に告げている通りの場所だった。
(……ここが、リリララの住処か。パッチ族に滅ぼされた、セミノア族の最後の生き残りの……)
集落の奥から現れたのは、部族の伝統衣装を身に纏い、冷徹な復讐の炎を瞳に宿した一人の女性――リリララだった。
彼女は俺たち本戦出場者を見るやいなや、激しい憎悪を剥き出しにして、一族を裏切り、虐殺したという「パッチ族の真実」を語り始める。
「お前たちが目指すパッチの神官どもは、聖人などではない……! 500年前、彼らは我がセミノア族の巫力と技術を奪うため、一族を根絶やしにした不条理な悪魔だ!!」
リリララが怒りと共に召喚した、かつてパッチ族の神官(ハオの前世)に惨殺されたというセミノアの戦士たちの怨霊が、悲痛な叫び声を上げて周囲を取り囲む。
一族を滅ぼされた末裔の、500年分の呪詛と怨念が、荒野の空気をひび割れんばかりに重く沈み込ませていた。
葉やホロホロたちが、パッチ族の隠された血塗られた歴史に衝撃を受け、言葉を失っている。
だが、俺はひとり、左手の白銀の指輪を静かに見つめながら、その凄まじい怨念の波形を冷徹に観察していた。
《主……この哀しき霊たちの残した無念、そして500年前のパッチの術理……あまりにも苛烈で、歪んでおりますな》
(ああ。パッチ族に滅ぼされた一族の末裔。……そして、500年前にこれだけの部族を一瞬で蹂躙し、その力を強奪した張本人(ハオ)。やっぱりあの怪物の術の深さは、俺たちの独学じゃ100年かけても届かねえ領域だ)
自力での修行に限界を感じ、1万の巫力で行き詰まっている俺のバグ魂。
だからこそ、この滅ぼされた一族の悲劇の歴史と、その裏にあるハオの圧倒的な「五行の理」の爪痕は、恐怖と同時に、俺が強くなるためのこれ以上ない最高に危険な『教科書』でもあった。
「パッチの歴史に、ハオの過去……。事なかれ主義で通すには、ずいぶんと重い歴史の特等席に座らされちまったな」
荒野に吹き付ける冷たい風を受けながら、俺はポケットの中でオラクルベルをぎゅっと握りしめる。
消えた部族の末裔との遭遇を経て、俺の多世界周回の物語は、いよいよ未来王ハオの闇の核心へと、深く、深く足を踏み入れようとしていた。