バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
✍️ 第19話:『傍観者の離脱と、夜襲の火影』
リリララからパッチ族の血塗られた歴史を聞かされ、怨霊たちとの対話を終えた翌朝。
俺たちは再びルート66を進むため、集落の入り口に集まっていた。
「よし、それじゃ出発するか! 蓮夜、早くオープンカーに乗れよ」
葉がへらへらと笑いながら車のドアを開ける。だが、俺は旅行カバンを肩にかけたまま、彼らに向かってひらひらと手を振ってみせた。
「いや、お前ら先に行ってくれ。ちょっと買い忘れたものがあってさ、前の街まで一旦引き返して、後から追いかけるわ」
「え? 買い忘れってなんだよ、蓮夜。俺たちここで待ってようか?」
ホロホロが不思議そうに首を傾げるが、俺はすかさず「いらん世話だ」と突っぱねた。
「事なかれ主義の傍観者だって言っただろ。お前らとつるんでるとトラブルのバーゲンセールに巻き込まれるんだよ。じゃあな、パッチの里で会おうぜ」
「あはは、相変わらず冷てえなぁ。じゃあ先に行ってるぞ、蓮夜!」
竜の運転するオープンカーが、けたたましいエンジン音と共に荒野の彼方へと去っていく。
彼らの姿が完全に砂煙の向こうに消えたのを見届けた瞬間――俺の顔から、いつもの気の抜けた笑みが完全に消え失せた。
「……さて、時間がないな。サクヤ、リリララの集落へ全速力で引き返すぞ」
《御意にございます、主。……原作の知識通り、あの哀しき末裔を『口封じ』するために、あの怪物の手が伸びてくるのですね?》
(ああ。ハオの部下たちが、パッチの真実を知るリリララを滅ぼしにやってくる。……そして、ハオ本人もその場に現れるはずだ)
俺は全身に【1万】のバグ巫力を全パイルし、身体強化のゴリ押しで、今来たばかりの荒野の道を凄まじい速度で逆走し始めた。
事なかれ主義の傍観者。それが俺のスタンスだ。
だけど、前世の知識でこれから起きる『虐殺』を知っていながら、美食だけを貪ってスルーするほど、俺の魂は腐っちゃいない。何より、独学での修行に行き詰まり、1万の壁にぶち当たっている今の俺がここから先へ進むためには――あの最悪の絶望(ハオ)の懐に、自ら飛び込むしかなかった。
――深夜。月明かりすら届かない、漆黒に包まれたリリララの集落。
静まり返った集落の広場に、俺が足を踏み入れたその瞬間、ツンと鼻を突いたのは……不穏な『焦げ臭い空気』だった。
「――おや。葉たちの仲間かと思ったけれど、わざわざ一人で引き返してくるなんて。君は本当に、僕の霊視を狂わせる奇妙な『おもちゃ』だね」
暗闇の奥から、パチパチと薪が爆ぜるような音と共に、一人の少年が歩み出てきた。
――ハオ。
その背後には、圧倒的な熱量と質量を誇る神クラスの持霊、スピリット・オブ・ファイアが、禍々しい紅蓮の炎を揺らめかせながら闇夜にそびえ立っている。
彼の足元には、ハオの部下たちによってすでに制圧され、息も絶え絶えに倒れているリリララの姿があった。
(……間に合わなかったか、いや、ハオ本人が直々に口封じの現場にいやがるのか……っ!)
パッチジャンボの時とは比べ物にならない、本物の戦場におけるハオの霊圧。
立っているだけで魂が焼き尽くされそうな圧倒的な不条理を前に、俺の身体は本能的な恐怖でまたしてもガタガタと震えだした。1万の巫力なんて、この炎の前ではただの消えかけの蝋燭に等しい。
ハオは冷徹な、しかし実におかしそうな目で、震える俺の【左手の指輪】を見つめてくる。
「どうしたんだい? そんなに怯えながら、一体何をしにここへ戻ってきたのさ。パッチの歴史に同情して、この哀れな末裔を助けにでも来たのかな?」
炎の照り返しの中、ハオの圧倒的な不条理が、静かに俺を品定めするように見下ろしていた。
恐怖で奥歯がガタガタと鳴る。
だが、俺は逃げ出さなかった。左手の白銀の指輪を強く握り締め、死に物狂いでハオの瞳を真っ直ぐに見据える。
事なかれ主義の男が、自らの限界を突破し、神の英知を強奪するための危険すぎる『交渉』が、この燃え盛る闇夜の中でついに幕を開けようとしていた。