バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
ドオォォォォン!!!
アメリカの果てしない荒野に、鼓膜を震わせる爆音が轟いた。
俺の目の前で、巨大な岩山がスピリット・オブ・ファイアの放った一撃によって一瞬で消滅し、ガラス状にドロドロに溶けたクレーターへと姿を変える。
「ほら、どうしたんだい? 1万の巫力を持つ『異世界の旅人』が、ただの火の粉に炙られただけでそんなに息を切らすなんてね」
業火の照り返しの中、ハオは相変わらず優雅に、しかし冷徹な目で俺を見下ろしていた。
「ハァ、ハァ……っ! クソ、やっぱり理不尽すぎるだろ……っ!」
俺は膝をつき、全身のシャツを汗と煤で真っ黒に濡らしながら、荒く呼吸を繰り返した。
リリララの集落で地獄の師弟関係を結んでから数日。パッチの里へ向かうロードムービーの裏側で、俺はハオから直々に、千年の英知たる『五行の理(ごぎょうのことわり)』の洗礼を受けていた。
今の俺にあるのは、生まれ持った1万というバグ巫力の「質量」だけ。
それをただ矢に全パイルしてぶち放つだけのゴリ押しスタイルだった。だが、ハオの教えはその独学の雑な小細工を根底からへし折ってくる。
「巫力の本質は心だ。だけど、それを効率よく世界の形へ変換するには木・火・土・金・水という五行の属性、そしてその相生(そうじょう)と相克(そうこく)の理を完璧に理解しなければならない。君のオーバーソウルは綺麗だけれど、ただの力の無駄遣いだ。僕の火を中和するイメージで、その指輪に宿る『金(ごん)』の属性を『水(すい)』へと変転させてごらん?」
ハオの言葉と共に、再びスピリット・オブ・ファイアから猛烈な火柱が俺に向かって放たれる。
(五行の変転、波形のハッキング……! 理屈はわかってる。前世の知識(原作)で全部知ってるんだ。なら――このバグ魂で、再現できないはずがねえだろっ……!!)
俺は決死の思いで左手の白銀の指輪を突き出し、魂の奥底から1万の巫力を引き出す。
ただ力任せに出力を上げるんじゃない。ハオに叩き込まれた五行の設計図を脳内に描き、炎の波形を相殺する「水」の概念を無理やりその和弓の霊気にハッキングさせるように流し込んだ。
キィィィィン!!!
俺の左手に顕現した白銀の和弓『真・神鳴の神弓(仮)』が、一瞬だけ青白い神聖な輝きを放ち、迫り来る紅蓮の業火を正面からジュウウウッと中和して消滅させた。
「……っ、ハハ、できた、ぞ……!」
「へえ。……本当に驚いたな」
それまで俺を「霊視の通じない面白いおもちゃ」として眺めていたハオの目が、初めて本物のシャーマンを見るかのように鋭く見開かれた。
五行の理をこれほどの短期間で、しかも独学の素人が体得するなど、千年の歴史の常識ではあり得ない。だが、俺の魂には死ぬたびに記憶とセンスを累積させる【不確かなバグ】が刻まれている。ハオが授けた正しい設計図さえあれば、その吸収速度はバケモノそのものだった。
ハオはゆっくりと歩み寄ってくると、いつものように至近距離からじっと俺の顔を覗き込んできた。
恐怖で背筋が凍る。だが、その切れ長の瞳の奥に灯っていたのは、嘲笑ではなく――明確な『感嘆』と『執着』だった。
「ただの退屈しのぎの『おもちゃ』として拾ったつもりだったけれど……君は僕の想像を遥かに超えてみせるね。五行の理の基礎を、わずか数日でここまで自分の形にハッキングするなんて」
ハオはフッと、今までで一番極上の、歪んだ愛着に満ちた微笑みを浮かべた。
「認めるよ、御門蓮夜。君はもう、僕を退屈させないただの玩具じゃない。僕の千年の英知を受け継ぐ、本物の『弟子』だ」
ハオの冷たい指先が、俺の頬の煤を優しく拭い取る。
その瞬間、俺のオラクルベルがピピピッ、と静かに電子音を鳴らし、ハオの巫力に中和されたことで、頭打ちだった俺の巫力値がほんのわずかに――だが確実に『1万』の壁を越えて上昇し始めた。
(おもちゃから弟子への昇格、か。……ハオ、お前に認められたのは、俺の周回バグが本物の『最強』へ動き出した証拠だ。このままお前のすべてを、貪り尽くしてやるよ)
事なかれ主義の傍観者は、世界の最悪の絶望に弟子として認められたその荒野の夜、1万の限界を突破し、真の規格外へと至るための飢餓感をさらに昏く燃え上がらせるのだった。