バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
第23話:『千年の秘術と、50万の夜明け』
ハオ組の胃袋をスタミナ料理で完全に掌握してから、さらに数週間。
俺たちは荒野を渡り、パッチ族の里の入り口が隠されているという、アメリカ中西部の険しい岩脈地帯へと差し掛かっていた。
葉たちが各地で血みどろの予選を戦い抜いている裏で、俺は移動の合間、狂ったようにハオの地獄の特訓を浴び続けていた。
「――そこまでだ、蓮夜」
漆黒の夜、赤茶けた断崖の頂上。
ハオの声と共に、周囲に渦巻いていたスピリット・オブ・ファイアの爆炎が、スン……と一瞬で消滅した。
俺は地面に両手をつき、肺がちぎれそうなほど激しく喘ぎながらも、その瞳にはこれまでになく鋭く冷徹な光を宿していた。
《主……! 素晴らしい、素晴らしい変転にございます! 主の指輪の奥で、五行の波形がかつてないほど完璧な円を描いて駆動しておりますぞ!》
脳内に響くサクヤの歓喜の声。
今の俺は、ただ1万の巫力を力任せに全パイルするだけの素人ではない。ハオから授かった千年の設計図を魂にハッキングさせ、五行の理を自由自在に変転させる「本物のシャーマン」の術理を完全に我が物としていた。
ハオはゆっくりと歩み寄ってくると、夜風に長い髪を揺らしながら、実にお愛おしそうな目で俺を見下ろした。
「本当に君の魂(バグ)の吸収力には驚かされるよ。五行の基礎をすべて呑み込んだ君に、いよいよ僕の魂の根幹――『泰山府君祭(たいざんふくんさい)』の深淵を教えてあげる」
泰山府君祭。
それは、生と死の境界線をハッキングし、魂の輪廻を統べる大陰陽師の絶対的な聖域。
ハオは俺の胸の前にその冷たい手をかざすと、幾千もの魂の記憶を共鳴させるように、静かに呪文を紡ぎ始めた。
「五行を統べ、陰陽の狭間を渡る者よ。君の魂に刻まれたその『不確かな累積バグ』の波形はね、泰山府君の理を使えば、死ぬたびに力をすり減らすどころか、すべての因縁と経験を内側に完璧に結晶化させていくことができる」
ハオの言葉、そして彼から直接流れ込んでくる泰山府君祭の深淵の術理が、俺の魂の最深部に眠る【周回仕様】のバグと完璧に噛み合った。
ガチリ、と脳内で何かが噛み合う音が聞こえた。
(……あ、――。これだ、これだったんだ……っ!)
自力での修行に限界を感じ、1万という壁の前でピタリと止まっていた俺の魂。
足りなかったのは、蓄積された力を完璧に駆動させるための「最上位の理(システム)」だった。ハオという千年の怪物の手によって正しい答えを与えられた瞬間、俺の魂のバグは、狂ったように世界の境界線をハッキングし始めた。
ドクンッ!!!!!
心臓が、魂が、大気そのものが激しく爆発を起こすように脈打つ。
俺の体から噴き出したのは、これまでの純白の光ではない。ハオの陰陽術を完全に独自の極みへと昇華・完成させた証――白銀と紅蓮の巫力が、まるで巨龍のように渦巻いて夜空を貫いた。
ドンッ!!!! と、俺が立っている断崖そのものが、俺から放たれた桁外れの霊圧だけで粉々に砕け散り、周囲の空間が自重で歪み始める。
ピピピピピピピピピピピピピピピピ!!!!!
ポケットの奥で、オラクルベルが壊れたように警告音を鳴らし続けていた。
画面に表示された巫力値は、1万の壁を容易くへし折り、5万、10万、30万――そして。
【現在巫力:50万2000】
最初期からは想像もつかない、まさに全知全能の神(ハオ)に次ぐ、神クラスの圧倒的な領域へと、一気にとんでもない跳ね上がり方を見せて覚醒を果たしたのだ。
「……あはは! 素晴らしい、素晴らしいよ蓮夜……っ! 1万そこらのガキが、僕の泰山府君祭を触媒にして、一気に50万の領域へ至るなんてね!」
ハオは狂喜と極上の愉悦に身を震わせ、またしても怪談の八尺様よろしく、ゼロ距離まで顔を覗き込んできた。
いつもなら恐怖で震えるはずの俺だったが、50万の夜明けを迎えた俺の心は、不思議なほど冷徹に冴え渡っていた。
俺は左手の白銀の指輪を強く握り締め、覗き込んでくるハオの切れ長の瞳を、真っ直ぐに睨み返す。
「ハオ……言ったろ。お前の持つすべてを、俺が味見してやるって」
「うん、その不敵な目、本当に気に入った。君のその累積するバグの魂……僕のすべてを教え込んであげるから、パッチの里のその先まで、ずっと僕を退屈させないでおくれよ?」
ハオの美しい手が、俺の髪を愛おしそうに撫でる。
1万のゴリ押しから、50万の怪物へ。
パッチ族の里への道中で、事なかれ主義の傍観者だった男は、ハオの英知を完全にハッキングし、この世界を引っ繰り返すための『真の規格外』へと、ついにその魂を完成させるのだった。