バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
アメリカ西部の果てしない荒野。
一本道のルート66を、ガタガタとけたたましいエンジン音を響かせながら、木刀の竜が運転するオンボロのオープンカーが突き進んでいた。
「あー……腹減ったなぁ。竜の旦那、次の街はまだかよぉ」
助手席でぐったりとシートに背中を預け、ホロホロが野生を失った顔で呟く。
パッチの里を目指す彼らの旅路は、まさに泥沼のサバイバルそのものだった。リリララの一件を乗り越え、セミノア族の哀しき無念を胸に刻んだものの、直面している現実は「とにかく金がない、飯がない、ガソリンが足りない」という極めて世知辛い経済的事情だった。
後部座席でヘッドホンを首にかけた麻倉葉が、へらへらと笑いながら頭の後ろで手を組む。
「まーまー、なんとかなるってホロホロ。それよりさ、ちょっと気になってたんだけどさ」
「あ? なんだよ葉」
「御門のやつ……蓮夜さ、今頃どこで何やってんだろうな?」
葉の突飛な一言に、ハンドルを握る竜がバックミラー越しに不敵な笑みを浮かべ、トレードマークのリーゼントを誇らしげに揺らした。
「ハッ! 蓮夜の旦那のことなら心配いらねえさ、葉の旦那。あの人はあの雨の河川敷で、ただの一般人のためにあのイカレた骨野郎に真っ向からブチ切れてみせた、本物の『漢』だ。そんな旦那が、この程度の荒野で行き倒れるはずがねえ」
竜はアクセルを軽く踏み込みながら、しみじみとした、しかし絶対の信頼を込めた声で言葉を続ける。
「きっと今頃は、どこかおいらの知らねえ極上のベストプレイスで、美味いもんでも食いながら飄々と風に吹かれてやがるはずさ。おいらたちも、あの旦那に笑われねえような熱い走りをキメなきゃ嘘だろ?」
「あはは、竜の言う通りかもな。蓮夜、出発する前から『アメリカに着いたら単独行動で美味いハンバーガーでも食う』って言ってたし」
葉がのんきに笑うと、ホロホロが「なんだよそれ! ずるすぎるだろ!」とジタバタと暴れだした。
「俺たちがこんな泥だらけになって肉の干物とか齧ってるってのに、あいつは一人で本場のジューシーなハンバーガーとかステーキ食ってんのかよ! おい阿弥陀丸、お前の霊感であいつの場所探せねえのか!?」
「は、ホロホロ殿、某の霊感をもってしても、御門殿の気配はあの河川敷の夜から完全に世界の霧の彼方へ消え去ったかのように、一切感知できぬのでござる……。ただ、あのお方は一般人を救うほどの熱き義の心を持たれた御仁。きっとどこかで無事にお過ごしでしょう」
阿弥陀丸が申し訳なさそうに頭を下げる。
彼らにとって、御門蓮夜という男の認識は未だに「なんか隣のクラスにいた、実力は底知れないけれど、基本は戦いたがらない美味いもの好きな傍観者の一般人」の枠を出ていなかった。
「ま、あいつはシャーマンキングの座にも興味ねえって言ってたしな。パッチの里の入り口に着けば、またひょっこり美味しいお土産でも持って現れるだろ。今は自分たちの試練に集中しなきゃな」
「おうよ! パッチの里へ向けて、ロマンのアクセル全開で飛ばすぜ、お前ら!!」
葉の言葉に全員が深く頷き、再び自分たちの過酷なロードムービーへと意識を戻していった。
そうして、彼らの会話から、ひとまず「御門蓮夜」という存在は、のんきな日常の思い出として一度完全に忘れ去られることになる。
――まさか、自分たちが泥臭く荒野を走っているまさにその裏側で。
あの事なかれ主義のはずの同級生が、世界の最悪の絶望である未来王ハオの『本物の弟子』へと昇格し、泰山府君祭の深淵に触れて【巫力50万】という、自分たちのはるか頭上を行く神の領域のバグ怪物へと完全覚醒を果たしているなどとは、麻倉葉たち一行は夢にも思っていなかった。
夕日に向かって突き進むオープンカー。
物語の表舞台を歩む主人公たちの旅路の裏で、裏ルートをハッキングするように突き進む蓮夜の影は、いよいよ本戦の舞台であるパッチ族の里へと、絶対的な質量を伴って近づきつつあった。