バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】   作:カミト6622

27 / 76
第26話:【サイドストーリー】『荒野の湯煙と、王の洗髪』

 

カンナたち女性陣が「極楽、極楽……」と完全にポンコツ化した顔で温泉から上がってきた後。

今度は俺が陰陽術で作った石壁の防壁を一旦開放し、ハオ組の男性陣の入浴タイムとなった。

 

「おお、こいつはすげえや! 蓮夜の坊主、本当にいい場所を見つけてくれたな!」

 

ペヨーテが骨の楽器を置いてザブザブと湯船に浸かり、ハン・ザンチンも「フゥー……荒野のサバイバルで凝り固まった筋肉が解けるようだ」と、巨体を湯船に沈めて至職の溜息を吐き出している。

ラキストすらも、いつもの厳格なスーツを脱ぎ捨てて、静かに湯船の端で目を閉じて温泉を堪能していた。

 

(ハハ、ハオ組の男どもが全員で温泉に浸かってる光景、原作じゃ絶対に見られねえからシュールすぎるだろ……)

 

俺も彼らから少し離れた岩肌に腰掛け、男同士の気楽な空気の中、二度目の湯船を楽しんでいた。

飯に続いて風呂環境まで提供したおかげで、男性陣からの俺(新参の弟子)への好感度も完全にカンストしているのが伝ってくる。事なかれ主義の衛生兵としての任務は完璧だ。

 

――だが、そんな男臭い風呂場の空気が、一瞬で張り詰めた。

 

湯煙の向こうから、音もなく歩いてくる影。

長い髪を夜風に揺らし、バスタオルを片手に持った少年――ハオが、平然とした様子で風呂場へと乱入してきたのだ。

 

「ハ、ハオ様っ!?」

 

ラキストやペヨーテたちが一斉に湯船の中で直立不動になり、慌てて場所を空けようとする。

だが、ハオは「まーまー、皆そのまま寛いでいてよ」といつもの気の抜けたトーンで笑うと、湯船に入る前に、なぜか俺のすぐ隣の岩場へとのんびり腰掛けた。

 

正式なハオ直々の教えを請うて弟子になって以来、ハオは俺の正体(周回バグ)を知ってからというもの、徐々に俺に惹かれ始めているのが、その視線からひしひしと伝わっていた。

ハオは俺に向かってその長い、美しい黒髪をさらりと差し出してくる。

 

「ねえ、蓮夜。君、前世の知識(大人の知恵)で色んなことができるんだろ? 僕のこの髪、ちょっと洗ってくれないかい? 荒野の砂のせいで、少しごわついていてね」

 

(……はぁ!? 未来王サマの髪を、俺が洗うのかよ!?)

 

心臓が跳ね上がる。ハオ組の男性陣が「な、何たる大役を……っ!」と羨望と驚愕の目で俺を凝視している。

拒否権などない俺は観念してハァとため息をつくと、持参していたお気に入りのシャンプーのボトルを手に取った。

 

「わかったよ、ハオ様。じっとしてろよ。……美容室での洗髪の手順くらいは覚えてるからな」

 

俺はハオの背後に回り、50万の巫力を応用して手のひらに温かい湯を微調整しながら生み出し、ハオの頭頂部から長い髪へと優雅に注ぎ込んだ。

シャンプーを手のひらでしっかりと泡立て、ハオの頭皮へと指を滑らせる。

 

前世の現代日本の美容室で培った、爪を立てず、指の腹で優雅に頭皮をマッサージするプロ並みのテクニックだ。

 

「……ほう。これは心地いいね」

 

ハオが気持ち良さそうに目を細め、小さく息を漏らす。

俺は黙々と、ハオの千年の孤独が詰まったその頭を、元大人の慣れた手つきで優しく、丁寧に揉みほぐしていった。

 

《主、お見事にございます。あの未来王殿、主の洗髪の心地よさに、完全に毒気を抜かれておりますぞ》

 

(サクヤ、茶化すな。これ、力加減を一歩間違えたら俺の首が飛ぶスリル満点の洗髪なんだからな……)

 

指先を動かすたびに、ハオの長い髪から荒野の汚れが落ち、ツヤツヤとした本来の美しい漆黒の輝きが戻っていく。

ひとしきりマッサージを終えた後、俺は温かい湯でしっかりと泡を洗い流し、最後にバスタオルでハオの髪を丁寧に包み込んで水分を拭き取ってやった。

 

ハオはバスタオルを頭に巻いたまま、フッと振り返ると、いつも怪談の八尺様よろしく覗き込んできたその切れ長の瞳に、これまでになく深い、歪んだ愛着の光を灯して俺を見つめた。

 

「本当に、君という『弟子』はどこまでも僕の常識を超えてくるね。霊視をバグらせる正体、圧倒的な五行の成長速度、プロ級の料理、何より君の秘密――すべてを教えてもらったけれど、君という人間が、だんだんと愛おしくなってきちゃったよ」

 

ハオはツヤツヤになった自分の髪に触れ、実にお愛おしそうな、そしてどこか切なげな微笑みを浮かべてそっと零した。

 

「……あはは。ねえ、蓮夜。君が女だったら、本当に良かったのに」

 

ハオから放たれた、歪んだ最大の愛着の告白。

前世童貞の俺にはあまりにも刺激が強すぎるその言葉に、俺は一瞬だけ硬直したが、すぐに顔を背け、少し大人のフリをしてはぐらかすように言い放った。

 

「――御冗談を、ハオ様。男で悪かったな」

 

俺は気恥ずかしさを隠すように、そそくさと湯船へと飛び込んだ。ハオもまた、俺の「御冗談を」というあしらいが実におかしかったらしく、嬉しそうにクスクスと笑いながら、俺の隣へとドボンと浸かってくる。

 

飯とお風呂、そして洗髪まで完璧にこなしてハオ組全員の胃袋と衛生を完全に支配した俺。

ハオからの底なしの執着を背中に感じながら、俺たちの漆黒の旅路はいよいよ、パッチ族の里の本戦会場へと、圧倒的な50万の質量を伴って突入しようとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。