バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
パッチ族の里の本戦会場、その入り口があるというアメリカ西部の街。
荒野のサバイバルを終えた俺たちは、いよいよ本戦突入という緊迫した空気の中、街の目抜き通りを歩いていた。
ハオ組の面々やハオ本人は、これから始まるシャーマンファイトの本戦に向けて、その霊気を冷徹に研ぎ澄ましている。
そんなシリアスな空気の中、俺は一人、通りの角にある銀行のATM(現金自動預払機)の前でピタリと足を止めた。
「――お前ら、ちょっと待ってくれ。軍資金を下ろす」
「はぁ? 軍資金って……お前、パッチの里に行く直前に何言ってるのよ」
カンナが呆れたようにタバコの煙を吐き出し、マリやマッチも不思議そうに俺の手元を覗き込んできた。
ハオ組の連中からすれば、しがない一般家庭の生まれである俺が、アメリカの銀行で大金を持っているはずがないと思っているのだろう。
だが、俺は表情一つ変えず、カバンから世界共通で使えるキャッシュカードを取り出すと、ATMの機械に滑り込ませた。
前世の現代日本において、36年間漫画やゲーム、精度抜群の経済システムを叩き込んできた俺だ。
お金がなくて美味いものが食えなかった未練。それを晴らすため、俺はこの二度目の生を得てからすぐに、前世の知識をフル活用して『FX(外国為替証拠金取引)』の口座を偽装名義で開設し、日常の裏で莫大な資産を運用していたのだ。
原作の時系列や世界情勢の波、通貨(ドルや円)の動きなんて、前世の記憶があれば面白いように先読みできる。
事なかれ主義を貫くためにも、美味しいものを貪るためにも、まずは圧倒的な『資本(カネ)』が必要不可欠。それはシャーマンファイトの本戦であっても変わらない。
画面にパスワードを入力し、引き出し額(上限一杯のドル札)のボタンをタップする。
ウィィィィン、ガシャガシャガシャガシャガシャ!!!
ATMの機械が、壊れたかと思うほどのけたたましい音を立てて駆動し始めた。
溢れ出るドル札の束を、俺は慣れた手つきで旅行カバンの中へと、まるでただのティッシュペーパーでも片付けるかのようにサクサクと詰め込んでいく。
「な……っ、ちょっと何よそれ!? どんだけ下ろしてんのよ!?」
「うわぁ! お札のタワーができちゃった!」
驚愕するカンナたちを尻目に、俺はドル札の束を綺麗に収納し終えると、真剣な顔で彼女たちを見据えてガツンと言い放った。
「お前ら、いいか。パッチ族ってのはな、シルバの自腹出張や物販の苦労を見れば分かる通り、組織の上司がクソみたいなブラック企業なんだよ。あいつら、本戦の里に入った瞬間に、出場者から生活費やお土産代で『ぼったくる気満々』だからな」
「ぼ、ぼったくり……っ!?」
「ああ。里の物価を異常に釣り上げて、俺たちの財布を毟り取りにくるに決まってる。いいか、もしここで金がなかったら、あのブラックパッチどものせいで、里に入ってからもずっと『野宿三昧』の極貧サバイバル生活を強いられることになるぞ。あのお風呂のない荒野の生活を、里の中でまで継続したいか?」
「の、野宿三昧はもう絶対に嫌ーーーっ!!」
「ベッドで寝たい! お風呂も入りたいーーーっ!!」
俺の放った極めて生々しい生活環境の危機に、お風呂回で温泉の快感を覚えてしまったカンナやマリ、マッチの魔女三人は完璧に恐怖を刷り込まれて戦慄していた。男性陣達も同様だ。パッチ族の里でもサバイバル生活など嫌に決まっている。シャーマンとしての戦い以前に、パッチ族の商業的罠を前にして、俺のカバンの中のドル札が完全に「救いの神」に見えているようだ。
《ふふ、主。ハオ様の部下の方々、パッチ族の強さではなく『里での極貧野宿』の恐怖の前に、またしても完全に調子を狂わされておりますな》
白銀の指輪から、サクヤがクスクスと楽しげな念話を響かせる。
「本当に、君はどこまでも僕を飽きさせないね。パッチのブラックビジネスと野宿の罠を見抜いて、FXの軍資金でそれに対抗しようなんてさ」
背後でその様子を眺めていたハオが、実におかしそうにクスクスと爆笑していた。
人の心を読めるハオですら、俺が前世の経済の記憶(FX)でこれほどの資産を築き、パッチの物価高を先読みしていたことまでは、魂のバグのせいで読み取れなかったらしい。ハオは俺の「徹底した事前準備(大人の知恵)」が本当に気に入った様子で、その切れ長の瞳を細めている。
「さあ、カネの準備もバッチリだ。いくぞ、ハオ様。パッチ族のブラックな里へ、優雅に乗り込もうじゃねえか」
50万の圧倒的な巫力、配置した莫大な軍資金。
事なかれ主義の男による、パッチ族のぼったくりと野宿の罠を完全にハッキングする快適な本戦ライフが、ついにゲートの向こう側で、圧倒的な質量を伴って幕を開けるのだった。