バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
キーンコーンカーンコーン。
ふんばりヶ丘中学校に、放課後を告げるチャイムが響き渡る。
部活動に向かう奴、友達と連れ立ってゲーセンへ向かう奴。教室がにぎやかな解放感に包まれる中、俺はのんびりとカバンに教科書を詰め込んでいた。
(よし、今日のところは葉たちとの接触もなく、無事にやり過ごせたな。早く帰って美味いもんでも食うか……)
《主、油断召されるな。例の隣のクラスのシャーマンが、こちらに向かって歩いてきております。……いえ、すでに教室の前で、主が出てくるのを待っているご様子》
サクヤの冷静な念話に、俺は心の中で小さく舌を巻いた。
(マジかよ。あいつ、わざわざ隣のクラスまで出張してきたのか。やっぱり事なかれ主義の天敵だな……)
覚悟を決めてカバンを肩にかけ、教室の引き戸を開けて廊下に出る。
すると案の定、廊下の壁に背中を預け、ヘッドホンを首にかけた葉が、のんびりとした様子で佇んでいた。その背後には、未だに警戒の色を隠せない阿弥陀丸の霊体がピタリと張り付いている。
俺が教室から出てくると、葉は「よっ」と軽く手を挙げた。
「あのさ、御門。ちょっと今から時間ある? 西の森の墓場まで、散歩でも行かねえ?」
「……麻倉、悪いが俺はこれから売店の残りのパンでも買って帰る予定なんだ」
「まーまー、そう堅いこと言うなよ。あそこの墓場、夕方は結構風が気持ちいいんだぜ?」
飄々とした態度で笑う葉。だが、その目は決して冗談を言っている風ではなかった。
あからさまな誘いに、俺はため息を隠さずに肩をすくめた。
(サクヤ、これ同行した方が早そうか?)
《ええ、主。ここで拒絶しても、あの御仁のことです、おそらく明日も明後日も付きまとわれるかと。一度腹を割って話した方が、結果として主の望む平穏に繋がるやもしれません》
(チッ、しょうがねえな……)
「わかったよ。ただし、長話はナシだぞ、麻倉」
「お、話が分かるねえ。ありがとな、御門」
葉は嬉そうに白い歯を見せて笑うと、先に立って廊下を歩き始めた。
夕暮れ時の西の森の墓場。
オレンジ色の残光が墓石を長く染める中、俺と葉は適当な切り株や石の上に腰を下ろした。少し離れた場所では、まん太が心配そうにこちらを覗き見ているが、葉は気にした様子もない。
「で、何の用だ? わざわざ隣のクラスの俺を呼び出してさ」
俺が切り出すと、葉はふっと表情を緩め、背後の阿弥陀丸を見上げた。
「いやさ、今日の朝、お前が学校に来た時さ。俺の持霊の阿弥陀丸が、急にカタカタ震えだしてさ。『隣の教室に、とんでもねえ化け物がいる』って大騒ぎするんだわ」
《は、葉殿! 化け物とは些か人聞きが悪い! 某はただ、あの御門殿の身から漏れ出る霊気が、あまりにも洗練され、かつ膨大であったため、武人として本能的に身構えただけでござる!》
焦って弁明する阿弥陀丸を無視して、葉は真っ直ぐに俺の指輪へと視線を向けた。
「お前、シャーマンだろ? それも、俺なんかよりずっと凄腕の」
ストレートな追及だった。
隠し通すこともできたが、初期巫力1万を超える俺の魂の強度は、一度気付かれたら完全に欺くのは難しい。何より、下手に嘘をついて警戒される方が面倒だ。
俺はふっと息を吐き、右手の白銀の指輪を軽く撫でた。
「……気づいてるなら話が早い。ああ、俺も霊が視えるし、一応シャーマンだ。だけどな、麻倉」
俺は葉の目をじっと見据え、冷徹なトーンで告げる。
「俺は事なかれ主義の傍観者なんだ。誰かと争う気もないし、世界の王(シャーマンキング)とやらに興味もない。お前たちが何を目指してようが、俺を巻き込まないでくれればそれでいい」
俺の言葉を聞いた葉は、驚いたように瞬きを繰り返した。
てっきり、力を見せつけてくるか、あるいは敵対的な態度を取られるとでも思っていたのだろう。
やがて、葉はいつもの気の抜けた笑みに戻り、頭の後ろで両手を組んだ。
「なんだ、そうか。まー、お前が悪い奴じゃなさそうで安心したわ。俺もさ、楽に生きられる世界を作りたいだけで、誰かと殺し合いをしたいわけじゃねえしな。仲間(シャーマン)の友達ができるかもって思っただけなんだ」
「友達、ねえ……」
「おう、友達だ。クラスは違っても学校は同じだしさ。よろしくな、蓮夜」
さらりと、苗字ではなく名前で呼んできた転校生。
俺は内心で(調子が狂うな)と苦笑しながらも、夕日に染まる墓場の空を見上げた。
(事なかれ主義、ね。……ハオの存在を知っている以上、いつまで傍観者でいられるかはわからないけどな)
魂のバグを抱えた俺の、最初の世界での人間関係が、望まぬ形で少しずつ広がり始めていた。