バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】   作:カミト6622

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オリジナル展開有


第38話:『炎上エンジェル』

 

 

パッチ族の十祭司たちに莫大な札束の質量(マネーパワー)を叩きつけ、強引に拵えさせた我が『ハオ組専用特等席』。砂埃を完全にシャットアウトする特注の防音・防砂結界の内側は、外界の過酷な戦場とは完全に切り離された、場違いなほどラグジュアリーなプライベート・リゾート空間だ。

 

日よけの大きなパラソルの下、特注の最高級ポータブルクッションに深く腰掛けた俺は、日本のスーパーから大量に買い込んでおいた濃厚なコンソメ味のポテトチップスを、バリッ、サクッ、と遠慮なく咀嚼していた。過酷なシャーマンファイトの本戦会場で、冷えた炭酸飲料をゴクゴクと喉に流し込みながら貪るジャンクフードは、背徳的であるからこそ最高に美味い。これが、事なかれ主義を貫く俺の、完璧なる精神的防衛線(ひきこもり)だった。

 

しかし、手元に設置した、パッチ族の通信回線をハッキングして強引に同期させた特注マルチモニターに映し出された『別のメサ(岩山)』のライブ映像を見た瞬間、俺のポテトチップスを口へと運ぶ手が、ピタリと止まった。

 

「……ついに始まったか。」

 

思わず口から漏れ出たのは、前世の記憶――すなわち、この世界の未来と展開をあらかじめ知っている転生者としての、極めて解像度の高い呟きだった。

 

ただし、この本戦リングで対峙しているのは、原作通りの星組の試合ではない。

未だ本戦1回戦の続き。閉ざされた結界の向こう、赤茶けた不毛の岩山で、俺と同じハオ組の『星組』――すなわちハオ様本人、ラキスト、オパチョの3人を相手に絶望の特攻を仕掛けようとしているのは、全身を純白の衣服で包んだ正義の過激派『X-LAWS(エックス・ロウズ)』の特攻チーム、『X-III(エックス・スリー)』。

メンバーはリーダーのクリス・ブンスター、ケビン・メンデル、そして女性シャーマンのミイネ・モンゴメリ。彼らは過去にハオ様によって大切なものを奪われ、あるいは肉体を無残に焼かれ、その凄絶な復讐のためだけに今日まで命を繋いできた、深い因縁を持つ男たちだった。

 

本戦1回戦における、血の因縁が絡み合う復讐劇。

ハオ様の放つ圧倒的な暴力の質量を前に、X-IIIの面々がどのような絶対的な絶望を突きつけられるのか。俺はその結末を、前世の知識によってすべて知っている。だからこそ、面倒な争いに関わりたくなくてこの快適な特等席に引きこおっていたわけだが……生で見るその戦いの予兆は、画面越しでもこちらの肌をチリチリと焦がすような、異様な圧力を孕んでいた。

 

「ちょっと蓮夜、さっきから何をそんなに真面目な顔をしてモニターを見つめているのよ。そのポテトチップス、美味しいんだから手が止まるなら私が全部貰っちゃうわよ?」

 

高級ソファーにだらしなく寝そべっていたカンナが、俺のただならぬ気配を察して、横からぐいとモニターを覗き込んできた。

その背後では、マリとマッチの魔女コンビも「なになに? 蓮夜、また何か美味しいご飯のヒントでも映ってるの?」と興味津々で身を乗り出してくる。

 

「蓮夜の坊主、これは……ハオ様の本陣である『星組』の試合でヤンスね!」

タープの影で冷えたビール缶を傾けていたハン・ザンチンや、他の男性陣もその言葉に一瞬で色めき立ち、ぞろぞろとモニターの前へと群がってきた。戦場をリゾート化している俺の快適装備の前に、ハオ組の面々はすっかりただの「ラグジュアリーな野次馬」と化していたが、やはり自分たちのボスの試合となれば話は別のようだ。

 

《主、いよいよあの方の本気が動きますな。五行の炎を従える、千年の生を巡る星の王……その圧倒的な霊魂の輝き、側近を名乗るあの白装束たちの執念を、どう受け止めるつもりか。画面越しにあっても魂が震えるほどでございます》

 

左手の【白銀の指輪】の奥から、持霊であるサクヤが静かな、しかし極めて緊迫感に満ちた念話を脳内に響かせる。彼女ほどの高位の霊体であっても、ハオ様という存在の底知れなさには本能的な畏怖を抱かざるを得ないらしい。

 

画面の中では、パッチ族の審判による試合開始の号令がけたたましく鳴り響いていた。

それと同時に、クリス、ケビン、ミイネの3人が一斉に自らの媒介を掲げ、凄まじい巫力の奔流を解放する。彼らの背後に顕現したのは、機械的な幾何学模様と近代兵器の硬質さを纏った、大天使のオーバーソウルたち。ハオ様を道連れにするため、最初から自らの魂(巫力)のすべてを燃やし尽くす手向けとして練り上げた、あまりにも悲壮で巨大な光の質量だ。

クリスとケビンが手榴弾を媒介に特攻を仕掛け、ミイネがメッシュのタイツを媒介に大天使ガブリエルを顕現させ、ハオ様を爆殺せんと狂気的な執念を見せる。

 

だが、その狂気的な巫力の嵐の中心に立つハオ様は、麻の赤マントをパッチの乾いた風に揺らしながら、ただ、退屈そうに佇んでいた。その唇が、哀れな羽虫を見るかのように「ちっぽけだね」と、無音の言葉を吐き捨てる。

 

そして次の瞬間、ハオ様が軽く指先を払うような仕客を見せた。

刹那、彼の持霊である【スピリット・オブ・ファイア(S.O.F)】の、万物を無に帰す「神の炎」が、爆発的な質量を持ってリング全体を包み込んだ。

 

ジュワァァァァァッッッ!!!

 

それは爆発ですらなかった。あまりの超高熱と、桁外れの巫力の密度。五行の理において「金」の属性を持つX-LAWSの近代兵器(天使)たちは、ハオ様の放つ絶対的な「火」の属性の前には、ただの融解するバターに過ぎない。

クリス率いるX-IIIの3人が、復讐のためにこれまで積み上げてきたすべての執念と自慢の天使たちが、ハオ様の気まぐれな一瞥によって、無慈悲に、そして醜く『炎上』させられていく。これ以上の皮肉が、この世にあるだろうか。

 

「な、何よこれ……。一瞬で、あの白装束たちの天使が、跡形もなく焼き尽くされてしていくじゃない……!?」

特等席のモニターを見つめていたカンナが、その圧倒的な蹂虙劇に、手に持っていたポテトチップスを落としそうになりながら声を震わせた。

マリもマッチも、普段の生意気な態度を完全に忘れ、ただただ画面に映る炎の質量に圧倒されて言葉を失っている。彼らが畏怖し、崇拝する王の力がどれほどの天災であるかを、改めて見せつけられた形だった。

 

画面の中のX-IIIは、自分たちの命をかけた特攻爆破すら届かず、ただ圧倒的な炎に巻かれて灰へと変わろうとしていた。ミイネが最期に仕掛けた衛星レーザー誘導すら、ハオ様の「酸素を遮断する」という五行の理の前に、火が消えるかのように呆気なく無力化された。自分たちの命のすべてを賭した正義が、ハオという巨大な概念の前に、塵一つ残さず焼き尽くされたのだ。

 

「これこそが、ハオ様の絶対の領域。五行の理の頂点であり、この世界の誰も抗うことのできない破滅の具現だ」

 

俺は冷えた炭酸飲料を一口含み、喉の奥を鳴らしながら静かに呟いた。

最初期の巫力1万から、ハオ様直々の修行によって50万の領域へと覚醒した今の俺。しかし、そんな規格外の力を得た今でさえ、あのハオ様のS.O.Fが放つ炎の圧倒的な質量には、ただ正面から巫力をぶつけ合うだけでは到底及びはしない。

だからこそ、俺はハオ様から教わった五行の理と陰陽術をベースに、前世の知識である「一点への超高密度圧縮」という独自の解答――いずれあの絶対防御の炎をも強引に吸い込み、胸のコアへと完璧に突き刺すための、純白の『無音の閃光』を研ぎ澄まし続けているわけだが。今の段階では、まだその爪を隠し、傍観者に徹するのが事なかれ主義としての正解だ。

 

モニターの向こうで、ハオ様はどろどろに溶けて炎上する天使たちの残骸を冷ややかに見下らし、命を散らしたX-IIIを「最後までつまらない奴らだった」と切り捨てながら、フッと、その美しい切れ長の視線を泳がせた。

それはカメラのレンズを通り越し、パッチ族の通信回線をハッキングして特等席でポテトチップスを齧りながら優雅に高みの見物を決め込んでいる、俺の存在を――その『霊視』によって完璧に見透かしているかのような、絶対的な確信に満ちた視線だった。

 

「あはは。見ているかい? 蓮夜。これが、君の愛する『ちっぽけな世界』の限界だよ。彼らの正義も、命を賭した特攻も、僕の炎の前にはこれほどまでに脆く、退屈なものだ」

 

ハオ様の低く心地よい声が、モニターの高性能スピーカーから、まるで俺の耳元で直接囁くかのようにおかしそうに響いた。彼にとって、この無慈悲な炎上劇すらも、俺という面白い弟子に見せるための「エンタメ」の一つに過ぎないのかもしれない。

 

実力は50万、財布の質量は無限、精度を極めた世界線のトップスピードで繰り広げられる、神々と王の凄まじき闘争。

麻倉葉をはじめとする他のシャーマンたちが、別の観客席で「ハオの奴、なんて規格外の力を……」と冷や汗を流しながら戦慄しているまさにその裏側で。

1周目の世界線を突き進む悪魔の弟子は、その圧倒的な炎上劇を冷ややかに、そして深く分析しながら傍観し、ハオ組の面々と共に、自らの『次なる隠居計画』を見据えて不敵に佇むのだった。

 

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