バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
葉と墓場で言葉を交わしてから数日後。
俺はふんばりヶ丘の商店街をのんびりと歩いていた。
(前世では金がなくて、コンビニの惣菜一つ買うのにも躊躇してたからな。今世はしがない一般家庭とはいえ、小遣いの範囲で買い食いができるだけでかなりの進歩だ)
手に入れた肉まんを頬張りながら、肉汁の旨味に小さく感動する。前世の未練である「美食の探求」は、こんな小さな日常からすでに始まっていた。
《主、前方にただならぬ『刺々しい霊気』を感じます。あの気の抜けたお隣のシャーマンとは真逆の、鋭利な殺意を含んだ霊気です》
サクヤの念話が、俺の脳内に警戒を促す。
俺は肉まんを噛みちぎりながら、霊気の発生源へと視線を向けた。
(……ああ、やっぱり来たか。頭のトンガリがトレードマークの、中国からの刺客)
そこは、商店街の外れにある少し開けた通りだった。
学校帰りの麻倉葉と小山田まん太の前に、一人の少年が立ちはだかっている。
漆黒の衣装に身を包み、大きな馬孫刀を肩に担いだ少年――道蓮(タオ レン)。その背後には、乗馬した巨大な武将の霊体、馬孫が威風堂々と浮遊していた。
「霊は道具だ。人間ごときが友達などとヘラヘラと……目障りなのだよ」
蓮の冷酷な声が響く。彼は凄まじい霊力を発して阿弥陀丸を我が物にしようと、葉に対して明確な敵意を剥き出しにしていた。
(原作通りの初遭遇だな。道蓮の初期巫力は350。今の葉じゃ、まともにやり合ったらかなり厳しい戦闘になるはずだ)
普通なら、同じ学校の「友達(仮)」がピンチになれば加勢するのかもしれない。
だが、俺の本質はどこまでも事なかれ主義の傍観者だ。初期巫力1万を超える俺がここで手を出せば、歴史が大きく歪んでしまう。それに、ここで葉が自力で乗り越えなければ、この先のシャーマンファイトを生き残れるはずがない。
「サクヤ、あそこのビルの屋上へ行くぞ。特等席から見物だ」
《御意。隠形を完璧に展開いたします》
俺は周囲の人間の認知を狂わせる陰陽術の「隠形」をパッと発動させると、サクヤの霊力を足場にするようにして、一瞬で通りの脇にある雑居ビルの屋上へと跳躍した。
屋上のフチに腰掛け、足をぶらつかせながら眼下の戦場を見下ろす。
蓮夜の気配は、完全に世界のノイズとして消去されている。眼下で睨み合う葉も、あれだけ鋭敏な道蓮も、はるか頭上から自分たちを見下ろしている「バグ(俺)」の存在には1ミリも気づいていない。
「おいおい、始まったぞ……!」
道蓮が馬孫刀を振り抜き、凄まじい一撃を葉に叩き込む。
火花が散り、激しい衝撃波が通りを駆け抜けた。まん太が短い手足をバタつかせて「ひえええーっ!」と悲鳴を上げている。
《主、あの中国の少年、若年にしては実に見事な身のこなし。持霊の力を完全に武器へと上乗せしておりますな。お隣の葉殿は……防戦一方でございます》
(まあな。今の葉はまだ、阿弥陀丸の力を引き出しきれてない。だけど、あいつの本領はここからだ。どんな窮地に陥っても、あの『なんとかなる』の精神でバグみたいな成長を見せるのが主人公だからな)
激化していくシャーマン同士の戦闘。
コンクリートが砕け、霊気の嵐が吹き荒れる様子を、俺は特等席の傍観者として冷徹に、しかしどこかワクワクしながら見つめていた。
(圧倒的な強さってやつには、やっぱり憧れる。あの道蓮の苛烈な戦闘スタイルも悪くない。……けど、俺が目指すのはあんな窮屈な強さじゃない。五行を統べ、世界をハッキングするような、絶対的な規格外だ)
自分の魂の最深部で静かに脈打つ、1万の巫力の奔流を感じながら、俺は最後の一口の肉まんを口に放り込んだ。
いずれ訪れる世界の崩壊(ハオとの邂逅)に向けて。
今はただ、この特等席で、物語の歯車が回り出すのを楽しませてもらうとしよう。