バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
第40話:『傍観者のティータイムと、交錯する覚悟』
「……で、なんでお前が当たり前みたいに茶を淹れてんだよ」
ホロホロがツッコミを入れたのも無理はなかった。
海鳴りが響く崖の上、緊迫した空気が流れていたはずの場所に、いつの間にか蓮夜の術(五行の理)によって生成された、折りたたみ式のテーブルとパイプ椅子が並んでいたからだ。
蓮夜は、パッチの里のブラックな物価をハッキングでくぐり抜けて仕入れた、最高級の緑茶を全員の湯呑みに注いで回る。
「いや、話が長くなりそうだし、立ち話もなんだなと思って。ほら竜くん、リーゼントが潮風でしなびる前に座って」
「お、おう……気遣いありがてえ。って、そうじゃねえだろ!」
竜がセルフツッコミを入れつつも椅子に座ると、葉は「ありがとね」といつもの調子で湯呑みをすすり、ほっと息を吐いた。
「これ、美味いな。……なぁ蓮夜。お前、ハオの弟子になったんだろ。あいつ、普段どんな感じなんだ? やっぱり、いつもあんな風に人を見下して笑ってるのかな」
葉の言葉に、周囲の面々がゴクリと息をのむ。ハオの身近にいる蓮夜から、少しでも情報を引き出そうとする視線が集まった。
「うーん……まあ、基本的には傲慢だし不遜だよ。千年の秘術を修めて泰山府君の教えを極めてるからね。僕みたいな新参の弟子から見ても、ただの質量兵器というか、理不尽の塊さ。……ただ、」
蓮夜は自分の湯呑みを見つめ、少し言葉を濁す。
「ただ?」
ホロホロが身を乗り出した。
「……あいつ、めちゃくちゃ退屈そうだよ」
蓮夜の脳裏に、他人の心を読めるがゆえに、世界をすべて見透かして退屈しきっているハオの、あのどこか寂しげな目が浮かんだ。
「心が読めるってことは、驚きが無いってことだからね。だからこそ、僕の魂のバグ仕様とか、そういう『理から外れたもの』を面白がって、陰陽術を教えてくれてるんだろうけど」
その言葉に、葉は少しだけ目を見開いたあと、寂しげに笑った。
「そっか……。あいつも、寂しいのかな」
「同情してる場合かよ葉! あいつは、さっきX-LAWSの奴らの魂を喰ったんだぞ!?」
ホロホロが拳を握りしめて叫ぶ。その瞳には、ハオの圧倒的な力への恐怖と、それに対する激しい怒りが混ざり合っていた。
「わかってる。わかってるよ、ホロホロ」
葉は静かに湯呑みを置いた。その目は、もう迷っていなかった。
「あいつがどれだけ強くても、どれだけ寂しくても、あんなやり方は止めなきゃなんねえ。それが、麻倉の家に生まれた俺の……弟としての役目だからさ」
原作知識通りの、葉のブレない覚悟。
間近でその輝きを見た蓮夜は、内心で「やっぱりこの主人公は主人公だな」と感心しつつ、冷めかけたお茶を飲み干した。
「ま、僕はハオ様から最高の経験と最強の力を貪り尽くすっていう目的があるから、どっちの味方もしないけどね。お互い、事なかれ主義の野次馬の邪魔だけはしないでよ?」
「へっ、お前が一番怪しい動きしてんだろ」
チョコラブが呆れたように鼻を鳴らす。
夕暮れの海辺。ハオの弟子という最強の盾を背負いながらも、ふんばりヶ丘のクラスメイトとして葉たちと茶をすする。そんな歪で、けれど少しだけ愛おしい境界線の上で、蓮夜の不確かな多世界周回はさらに加速していくのだった。