バグ魂の不確かすぎる多世界周回 〜シャーマンキング編〜 【AI本文利用】 作:カミト6622
「ただいま戻りました、ハオ様。頼まれていた買い出しの品です」
パッチの里の特産品が詰まった袋を片手に、俺――御門蓮夜はハオ様の個人テントへと足を踏み入れた。
事なかれ主義の俺としては、先ほどの川辺での大立ち回り(泰山府君祭による道蓮の蘇生)の言い訳をどうしたものかと、道中ずっと頭を悩ませていた。
何しろハオ様直伝の、それも死生観を司る絶対の秘術だ。それを勝手に使って、あろうことか麻倉葉の身内を救ってしまったのだから、新参の弟子としては完全にアウトである。
テントの奥、静かに座していたハオ様は、俺の気配を察するとゆっくりと顔を上げた。
その双眸には、すべてを見透かすような、どこか悪戯っぽくも底知れない笑みが浮かんでいる。
「おかえり、蓮夜。……ずいぶんと面白い買い出しになったようだね」
「……お気づきでしたか」
「気づかないわけがないだろう? 君が放った白銀の巫力も、そして僕が授けた『泰山府君祭』の理を強引に書き換えるような君独自の『質量』もね。里の境界があれほど激しく震えれば、嫌でも伝わってくるさ」
ハオ様は立ち上がり、音もなく俺の目の前へと歩み寄ってきた。
お仕置きでもされるか、あるいは激怒されるかと身を構えたが、彼の纏う空気は予想に反してどこまでも穏やかで、むしろ愛おしげな色彩を帯びている。
「まさか、葉たちのために僕の秘術を使うなんてね。君は本当に面白い。……どうだい? 葉は、僕に頭を下げにくる様子はあったかい?」
ハオ様が、楽しそうに首を傾げる。
なるほど。ハオ様は元々、葉が自分の手下に殺された蓮を救うために、プライドを捨てて自分(ハオ)に頼み込んでくるシチュエーションを想定していたのだろう。葉を揺さぶり、自分の元へ引き寄せるための極上の舞台装置だったわけだ。
しかし、俺は頭の後ろを掻きながら、のんびりとした声を返した。
「いえ。あいにくですが、麻倉くんは最初からハオ様に頼る気なんてサラサラなかったみたいですよ。僕が通りかかった時、あいつらはハオ様に頭を下げるくらいなら、X-LAWSのアイアン・メイデンに頼ろうとしていましたから」
「……ほう?」
ハオ様の綺麗な眉が、ピクリと跳ねる。
「ええ。メイデンに蓮くんを蘇生してもらう代わりに、葉くん自身がシャーマンファイトを『棄権』する……そんな重い条件を突きつけられて、呑み込もうとしていたところでした。だから、あまりにも見ていて後味が悪くてですね。つい、レバレッジ最大級の気まぐれで、僕が冥府の門をこじ開けてしまったというわけです」
俺の言葉を聞いたハオ様は、一瞬だけ意外そうに目を見開いた。
だが、すぐにククッ、と喉を鳴らして可笑しそうに笑い始める。
「なるほど、メイデンの蘇生と、その対価としての棄権、か。……僕を頼らず、あくまで自力で、あるいは別の不条理に縋ってでも友を救おうとする。実に葉らしい、青臭くて頑固な選択だ。そして、それを『後味が悪い』というだけの理由で、僕の術を使って台無しにしてしまう君も……本当に、僕の計算を狂わせてくれるバグ(物件)だね」
ハオ様はそう言うと、俺の頬にそっと白い指先を滑らせた。
かつてアメリカの地に着いたばかりの頃、「陰陽術のすべてを教えてください」と懇願してきた俺に、徐々に惹かれていったあの修行の日々と同じ、底知れない親愛を秘めた瞳。そして一緒に温泉に入った時のハオの言葉を思い出す。
『君が女だったら良かったよ』
愛おしそうにそう零したあの方の言葉が、脳裏を過る。
「まあ、いいさ。君が僕の秘術をそこまで完璧に使いこなしてくれたんだ。僕の愛しい旅人の我が儘なら、このくらいのイレギュラーは喜んで受け入れよう。……けれど、次は事前に僕に相談しておくれよ? 新参の弟子としての『お仕置き』が欲しくなければね」
ハオ様の底知れぬ笑みと、首元に冷たく触れた霊圧に、俺は(やっぱり事なかれ主義を貫くべきだったか)と、内心で苦笑いするしかなかった。